<<来栖>>
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#192 [nanoka]

「最初は気のせいかとも思ったんだけど、間違いなく叩かれてるんだ」

そう言って男は自分の後頭部を撫で下ろした。

「パーで平手打ちされたみたいな感じかな。でも振り向いても誰もいないんだよ。な?怖いだろっ?」

⏰:09/10/23 23:39 📱:P906i 🆔:V9FMlRY2


#193 [nanoka]

男に同意を求められ、俺は微妙に視線をそらした。

怖い話ならたくさん聞いてるし、正直他の人の話の方が何倍も怖かった。

でもその男にしてみたら、かなり怖いことらしく怖いだろ?と繰り返していた。

⏰:09/10/23 23:47 📱:P906i 🆔:V9FMlRY2


#194 [nanoka]

何度目かに男が怖いという単語を口にした時だった。

不意に蒼井さんが笑った。

笑ったのだ。いつもの微笑む方じゃなくて「ははっ」って声に出して。

⏰:09/10/23 23:54 📱:P906i 🆔:V9FMlRY2


#195 [nanoka]

蒼井さんがそんな風に笑うのを見るのはその時が初めてだった。

「何がおかしいんだ?」

蒼井さんに笑われたことがムカついたのか、止める暇もなく男は蒼井さんのシャツを掴んだ。

⏰:09/10/23 23:58 📱:P906i 🆔:V9FMlRY2


#196 [nanoka]

胸ぐらを掴むって光景を目にしたのも、あの時が初めてだった。

「痛っ!」

胸ぐらを掴んでいるのは男なのに、そう口にしたのはその男だった。

⏰:09/10/24 00:04 📱:P906i 🆔:pqfYGj1o


#197 [nanoka]

すでに蒼井さんから手を離し、殴られた(らしい)頭を押さえながら

「な?今見ただろ?」

と、今度は俺に詰め寄ってきた。

⏰:09/10/24 00:07 📱:P906i 🆔:pqfYGj1o


#198 [nanoka]

何だかもうただのおかしい人にしか見えなかった。

「覚えてませんか?」

そう訊いたのは蒼井さんだった。

俺と男の視線が蒼井さんに集まった。

⏰:09/10/24 00:16 📱:P906i 🆔:pqfYGj1o


#199 [nanoka]

「そんな風に頭を叩かれて怒られたこと、覚えてませんか?」

蒼井さんの言葉に男はしばらく考えてから問い返すように呟いた。

「ば…ばあちゃん…?」

⏰:09/10/24 00:22 📱:P906i 🆔:pqfYGj1o


#200 [nanoka]

「怒ってますよ、人の道に外れたことばかりしてるって。それから…」

蒼井さんは微笑みながら続けた。

「すごく心配してますよ。そんなことばかりしていたら長生きできないって」

⏰:09/10/24 00:24 📱:P906i 🆔:pqfYGj1o


#201 [nanoka]

これは後になって聞いた話なんだけど、頭を叩かれたのは何か悪いことをした時ばかりだったらしい。

男を心配したおばあちゃんなりのお仕置きだったようだ。

危害を加えるどころか心配して見守ってくれていたおばあちゃんを怖がっている男の姿に堪えきれず蒼井さんは笑ってしまったらしい。

⏰:09/10/24 00:28 📱:P906i 🆔:pqfYGj1o


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