■ Heartーfull〈ハート・フル〉■
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#32 [ひよこ。]
2・夢から覚めて
《ズキン‥ズキン‥》
あああ‥
頭が痛い‥
死にそう‥。
私はぱっと目を開けた。
「‥圭介。」
目の前には
無表情の圭介が
立っていた。
:09/10/28 18:20
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#33 [ひよこ。]
どこか遠くを見ているようだ。
「圭介‥圭介‥!」
圭介は反応しない。
相変わらず、何処かを見ている。
その視線の先には
私は居ない。
私はここに居るよ‥?
私だけを見てほしいのに‥。
「圭介‥ほんとは‥
もう私のことなんて‥。」
:09/10/28 18:22
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#34 [ひよこ。]
「‥‥‥。」
「‥‥私のこと
なんて‥。」
「‥‥‥。」
「‥好きじゃ‥
ないんでしょ?」
「そうだよ。」
圭介は、突然
はっきりとした
口調で答えた。
「‥‥!」
圭介は今、私を見ている。
無表情のまま、じっと。
:09/10/28 18:23
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#35 [ひよこ。]
「俺、静が好きなんだ。」
「え!?」
気づくと圭介の隣には、
親友、
――静が立っている。
「あたしも、
圭介が好きなの。」
「‥‥静?
なんで‥っ!!
なんで言って
くれなかったの!?」
「何故?
何故言う必要があるの?」
:09/10/28 18:25
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#36 [ひよこ。]
「だって‥。」
「彼はこころを
もう愛して
いないんだもの。
ただそれだけのことよ。」
「そんな‥っ!」
《ズキン‥!》
「‥痛っ!」
《ズキン‥ズキン‥》
:09/10/28 18:27
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#37 [ひよこ。]
静と圭介は
黙って私に背を向け
歩き始めた。
「‥しず‥か‥。」
遠くなる‥
二人が遠くなる‥。
私はまた意識を失った。
:09/10/28 18:28
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#38 [ひよこ。]
―――‥。
消毒液‥?
なにか独特な臭いがする。
私はゆっくりと
目を開けてみた。
「‥あれ?」
見渡すとそこは
病室だった。
「起きた?」
ベッドの脇には母が居た。
お花を花瓶に
活けてるようだ。
:09/10/28 18:29
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#39 [ひよこ。]
「麻酔でずっと
眠っていたのよ。
あなた、三針を縫う
怪我だったんだから。」
「なんで‥?
私、もう自分は
死ぬんだって
思ったけど‥。」
母は手を止めて私を見た。
――刹那
異変が起こった。
:09/10/28 18:30
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#40 [ひよこ。]
フィルターの越しのような
ぼんやりとした映像が、
私の脳に
流れ込んで来たのだ。
『こころーっ!
こころーっ!!』
これは母の声だ。
とても掠れているけど‥。
目の前には
担架に乗せられた私。
頭から、こめかみに
血がつたっている。
病院に到着したばかりのようだ。
:09/10/28 18:32
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#41 [ひよこ。]
視界がぐらぐら揺れる。
私に触れようと伸している
母の手が見える。
すると隊員のような人が
視界に入る。
『奥さん
落ち着いてください!
大丈夫です!
列車には轢かれて
いません!
とにかく彼女に
触れないで!!』
隊員はこちらに
向かって
はなしかけているようだ。
〈あのとき‥
あなたの血を見たら‥
落ち着いてなんか
いられなかったわ‥。〉
:09/10/28 18:39
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#42 [ひよこ。]
‥!?
これは‥母の心の声?
《ぎゅ‥》
はっと我にかえった。
気づくと母の
胸の中にいた。
今のはなんだった
んだろう‥。
幻‥かな‥?
:09/10/28 18:43
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#43 [ひよこ。]
「あなたがホームから
落ちたって聞いたときは
私、気を失いそうに
なったわ‥。
運よく落ちた弾みで
ホーム下の避難スペースに
転げ込んだみたい。
そのときに、
頭を打ったらしいわ。」
今もズキズキする
頭の痛みがそれを物語る。
「‥‥そうなんだ。」
:09/10/28 18:45
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#44 [ひよこ。]
あの夢といい今といい‥
頭打って、私おかしく
なっちゃったのかな。
「後遺症はない?
大丈夫?」
「‥‥うん。
ごめんね心配かけて。」
私も背中に腕をまわして
母をぎゅっと抱きしめた。
:09/10/28 18:46
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#45 [ひよこ。]
しばらくして
お互い腕を離し、
「まだ検査があるけど
異常がなかったら、
数日で退院できるって。」
と言い微笑んで
仕事があるから行くわね、
と母は病室を出ていった。
「ふぅ‥。」
私は改めて病室を
見渡してみた。
:09/10/28 18:48
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#46 [ひよこ。]
窓際の椅子に私の鞄が
置かれていた。
泥だらけで傷だらけ。
中身は無事だろうか。
私はベッドを降りて、
ふらふらしながら
鞄を手に取った。
中身はぐちゃぐちゃ、
だけど幸い無事のようだ。
‥ケータイが光っている。
私はケータイを手に取り、開けた。
:09/10/28 18:49
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#47 [ひよこ。]
1通、亜希から
メールが来ていた。
内容はこうだ。
『谷口くんから聞いた。
ホームから落ちたって。
大丈夫なの?』
谷口くん‥
つまり圭介のこと。
圭介は亜希とも
普通に仲が良いみたい‥。
:09/10/28 18:50
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#48 [ひよこ。]
私はとりあえず
『大丈夫だよー!』
と返信しといた。
《コンコン》
その時、
ドアをノックする音
が聞こえた。
「はい、どうぞ。」
《ガラガラ‥》
「‥こころ。」
「あ‥。」
そこに立っていたのは‥。
:09/10/28 18:51
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#49 [ひよこ。]
「‥静。」
数年来の親友だった。
頭に過ぎるのは
あの夢のこと。
『圭介が好きなの』
‥ただの夢だよね‥?
:09/10/28 18:52
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