こちら満腹堂【BL】
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#21 [ひとり]
恐らくこのアニメを流した張本人はこの人に違いない。

「お前好き?みみすま」

「はい?」

聞き慣れない単語に俺は聞き返した。

「なんすか、それ」

「みみすまだって、み・み・す・ま!!」

別に聞こえなかった訳じゃないのに、三田さんはもう一度謎の単語を繰り返した。顔が真っ赤だ。

⏰:09/12/08 23:08 📱:F01B 🆔:QWJBQQ5c


#22 [ひとり]
「いや、知らないんで」

「いや知らないとかじゃなくてさ〜、好きかどうかって話しさ」

「はぁ・・・」

そう言われても知らないものを好きか嫌いかなんて答えられる訳がない。曖昧に返事をする俺を余所に、三田さんは勝手に喋り続けた。

⏰:09/12/08 23:13 📱:F01B 🆔:QWJBQQ5c


#23 [ひとり]
「いいよな〜青いよ〜春だよ〜駆け抜けてるよこれ〜」

「・・・・はぁ」

「お前も覚えがあるだろ根岸、進路に悩み、恋に悩み、ってさ」

「・・・・いや、俺は特には」

実際俺は進路で悩んだ事も、色恋に悩んだ事もなかった。
何となく進学して、何となく彼女をつくり、何となく別れた。

「ないわけねーだろよオイ」

⏰:09/12/08 23:20 📱:F01B 🆔:QWJBQQ5c


#24 [ひとり]
そう言い切れるほど、あんたは俺の何を知ってるんだ。

「俺、基本なんとなくでここまで来てるんで」

「嘘つけカッコつけ〜可愛いあの娘にメロメロドキュンで悩んだ日々があっただろ?」

「いや、来るもの拒まずですから」

⏰:09/12/08 23:33 📱:F01B 🆔:QWJBQQ5c


#25 [ひとり]
実際そうだった。
付き合ってくれと言われるから付き合ったし、別れようと言われるから別れた。

「でたよっ!!モテ男発言!!!!」

三田さんが顔をしかめて俺を指差す、その指を払って聞き返した。

「そういう三田さんは経験あるんすか?」

⏰:09/12/08 23:44 📱:F01B 🆔:QWJBQQ5c


#26 [ひとり]
「俺?」

聞かれた三田さんは一瞬動きを止めて、それからヘラッとだらしなく笑った。

「そりゃあるべよ、好きだけど好きって気持ちが恥ずかしくってさ、無駄にチョッカイかけて嫌われたりね〜」

「ふーん」

「ふーんておま、聞いといて素っ気なさすぎじゃね?その態度」

⏰:09/12/08 23:53 📱:F01B 🆔:QWJBQQ5c


#27 [ひとり]
「いや、マヂ俺そういう経験ないんで」

ウソをついた。
本当は、まさに今がそうだ、今の俺が。

「嫌みなヤツだなーお前は」

三田さんが好きで、悩んで、ちょっかいかけて、そっけなくして。
全部が、独りよがりで。

「根岸も一度くらい経験したらわかるよ」

もうわかってる。

「いいぞ〜そういう甘酸っぱいのも」

全然よくねぇよ、苦しいんだよチクショー。

⏰:09/12/09 00:03 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#28 [ひとり]
「俺、明日マヂ用あるんで帰ります。」

遣り場のない気持ちを目の前のこの人にぶつけてしまいそうで、俺はそそくさと腰をあげた。

「え、なした急に?」

突然の行動に、俺を見上げる三田さんはポカン顔だ。

「いや、用事があるから、帰って寝ないと」

「ここで寝てきゃいいべ」

「風呂も入りたいんで、荷物もあるし」

「今2時過ぎよ?」

「チャリあるし」

⏰:09/12/09 00:15 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#29 [ひとり]
「いいから今日はここで寝てけって、俺が朝起こしてやっから」

腕を捕られた。

「いや、本当、帰ります」

「いや、本当ムリだし」

意味がわからない。

顔真っ赤で完全に酔っ払いだし、俺より5つも年が上のアラサーおやじだし、なのになんか帰るなとか腕掴んで上目遣いされて俺心臓バクバクいってんだけど。マヂで、

意味がわからない。

⏰:09/12/09 00:25 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#30 [ひとり]
三田さんの無意識の行動に、一々ムダな考えを巡らせては一喜一憂する。

帰るなと言われて喜んでいる俺と、何も知らずに無責任な事言うなと憤る俺が混在して、ぐちゃぐちゃだ。

いっそ今ここで言ってしまおうか。

あんたが好きだ

って。

⏰:09/12/09 09:19 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


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