こちら満腹堂【BL】
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#28 [ひとり]
「俺、明日マヂ用あるんで帰ります。」

遣り場のない気持ちを目の前のこの人にぶつけてしまいそうで、俺はそそくさと腰をあげた。

「え、なした急に?」

突然の行動に、俺を見上げる三田さんはポカン顔だ。

「いや、用事があるから、帰って寝ないと」

「ここで寝てきゃいいべ」

「風呂も入りたいんで、荷物もあるし」

「今2時過ぎよ?」

「チャリあるし」

⏰:09/12/09 00:15 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#29 [ひとり]
「いいから今日はここで寝てけって、俺が朝起こしてやっから」

腕を捕られた。

「いや、本当、帰ります」

「いや、本当ムリだし」

意味がわからない。

顔真っ赤で完全に酔っ払いだし、俺より5つも年が上のアラサーおやじだし、なのになんか帰るなとか腕掴んで上目遣いされて俺心臓バクバクいってんだけど。マヂで、

意味がわからない。

⏰:09/12/09 00:25 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#30 [ひとり]
三田さんの無意識の行動に、一々ムダな考えを巡らせては一喜一憂する。

帰るなと言われて喜んでいる俺と、何も知らずに無責任な事言うなと憤る俺が混在して、ぐちゃぐちゃだ。

いっそ今ここで言ってしまおうか。

あんたが好きだ

って。

⏰:09/12/09 09:19 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#31 [ひとり]
長谷部さんちの、酒の匂いが充満して換気もされてないこの部屋で。
みんなが横で寝ているこの部屋で。
『みみすま』とやらのエンディングロールが流れるこの部屋で。

あんたが好きなんだ

って。





そんなん

⏰:09/12/09 09:24 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#32 [ひとり]
「言えるわけねぇし・・・」

「ん?」

「いや、とにかく帰るんで離して下さい」

「店長の俺がこんなに言ってんのにお前は帰んのかよ根岸ー」

「帰ります」

「そっけなー」

三田さんは言いながら掴んでいた俺の腕を放るようにして離した。

⏰:09/12/09 09:30 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#33 [ひとり]
「じゃ、お疲れした」

俺が言って後ろの扉へ向かおうとすると

「おぅ、待てコラ」

「なに?」

「なにじゃなくて、送るし」

三田さんはふらふらと立ち上がった

「うぁ゙!!足痺れた気持ち悪りぃー」

それから痺れたらしい足にできるだけ刺激を与えないように、変な歩き方で俺に近付いてきた。

「ホレ、帰るんだろ?」

⏰:09/12/09 09:38 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#34 [ひとり]
「送るってあんた、俺チャリなんだってば」

「だからその辺までだよ、俺も風に当たりてぇし、付き合え」

そして俺より先に部屋を出ていってしまった。

「・・・・・・勝手だなぁ」

仕方なしに後に続く。

⏰:09/12/09 09:42 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#35 [ひとり]
「ちべ(冷)てぇー」

「もう12月っすからね」

「12月かよー1年早えーなオイ」

「その発言、かなりおっさんじみてますよ」

「ほっとけ!!」

俺達はチャリを挟んで横並びで歩いた。
二人分の白い息が、尖った冬の空気に溶けて消える。

⏰:09/12/09 09:48 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#36 [ひとり]
「今年のクリスマスも、このままじゃクソスマスで終わりそうだなー」

「三田さん彼女作んないんすか?」

「お前はっ倒されたいの?作んないんじゃねーよできねんだよ!!」

「ふーん」

「はい出た!!根岸の"ふーん"返し!!!!」

「あんた声デカいって」

⏰:09/12/09 09:55 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


#37 [ひとり]
もう既に三時になろうかというところ、寝静まった家々。俺達以外誰もいない道に三田さんの声はよく響いた。

「つぅかあんたそろそろ戻らないと」

「え?」

「いやだって、あんま行くと帰り面倒いでしょ」

「あ〜〜〜・・・・うん」

「・・・・・・・あんた」

「そうだね、帰り道がね、うん」

そっかそっかと頷く姿に、嫌な予感がよぎる。

「あんた俺を"送ってる"ってこと忘れてたでしょ」

現にもう一駅分は歩いてきてしまっている。

⏰:09/12/09 10:17 📱:F01B 🆔:vju6tYo2


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