こちら満腹堂【BL】
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#562 [ひとり]
「私、諦めないから、つぅか、ゆうちゃん振り向かせるから」

「・・・アキちゃん、戦国武将みたい」

「何言ってんの?」

「ほら、あの時代の武将は、合戦前に互いの陣地から名前を名乗って宣戦布告し合ったらしいじゃん」

「だから?」

「今のアキちゃん、それっぽいな〜って」

「喧嘩売ってんですか?」

「めっそうもない」

俺は相変わらず床と仲良くしたまんまの体勢で、両手を顔の脇に挙げてみせた。

⏰:10/02/25 09:56 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#563 [ひとり]
「とにかく、そうゆうことなんで、明日っから覚悟して下さいね、私本気になったら、フェアとかそんなん関係ないんで」

そこまで言うと満足したのか、ここでようやくアキちゃんは立ち上る。長いこと押し潰されてた腹から急に圧迫感が取り除かれると、今度はなんだかスカスカして落ち着かなかった。

「あ、それと」

「あ?」

「ゆうちゃんにこの事言ったら・・・」

「んな野望なこたぁしねぇよ」

察してこちらが言えば、今度こそ納得して。『お疲れさまでした〜』と彼女は元気な声で挨拶をして退勤を押すと、颯爽と帰って行った。

⏰:10/02/25 10:04 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#564 [ひとり]
宣戦布告を叩きつけた彼女は、可愛らしい外見とは裏腹。その内は男気に溢れていて気持ちいい程だった。

彼女が消えた満腹堂の店内で独り。ようやく上体を起こした俺は、そこから勢いをつけて一気に立ち上がった。

フェアとか関係ない───

服を叩きながらさっきの言葉を思い返した。それを前もって言ってしまってることが、もう十分にフェアプレイだってこと、彼女は気付いてんのかな?否、きっとわかってないんだろう。

明日から・・・・あっちがその気なら、俺だって本気だ。根岸は、やらない。

俺は闘志を燃やしながら、残りの仕事に取り掛かろうと倒れたスツールに手をかけ、そこで動きを止めた。

⏰:10/02/25 10:13 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#565 [ひとり]
なんとなく向けた視線の先に、気になって仕方がないものを見つけてしまったから。


「あのヤロウ・・・・」


スツールを立て直してから、俺は溜め息混じりにそこへ向かう、拾い上げたそれは、そうモップ。


そこにはやりかけのままアキちゃんに置き去りにされたモップと、セットのバケツがあった。

⏰:10/02/25 10:17 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#566 [ひとり]
【休憩】

こんにちは、ひとりです。
第二十七話完結致しました。アキに殴られた三田、可哀想にwWあんまドロドロし過ぎも違う気がして、軽くまとめたら気持ち悪い青春ドラマみたいになっちゃいました。ごめんなさい。もう少し、ドロっとマイルドにさせても良かったですかね。それにしてもこの話し、皆よく手がでますwW

⏰:10/02/25 10:22 📱:F01B 🆔:QEi6v1sE


#567 [ひとり]
【第二十八話/まだ注文とってる途中でしょうがァァア!!!!】


最近気になる、というか、気に食わない事がある。いつからそんな仲になったのか、三田さんとアキの事だ。

ここ数日、気付いたらいつも二人で何か話している。何の話しか、聞いても二人共答えてくれないだろう事は目に見えているので、敢えて聞かないが、突然どうしたのか。挙げ句、アキが三田さんちにまで付いて来たりする。

⏰:10/02/26 21:27 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#568 [ひとり]
いやいや意味がわからないから。俺達の関係を知らないから、そこ空気読めとは流石に言わないが、それにしたって何がどうしたっていうんだ。

現に、今も進行形で二人はじゃれ合っている。

三田さんにしたら俺の従兄弟で職場の新人なら、そりゃ気にかけてやるのが当たり前なんだろうけど。アキの急激な懐きようは異様だ。

もしかしたらアキ、三田さんの事が・・・なんて、いらない考えまで首を擡げる始末だ。

⏰:10/02/26 21:28 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#569 [ひとり]
いけないいけない。今は目の前の仕込みに専念しなければ。気持ちを切り替えようとした刹那、肩にかけられた手。

「あんた今日暇?」

「あ、はい、暇です」

それはノジコさんだった。

「じゃ、今日はべぇやんちで」

「わかりました」

夜の予定が決まった。長谷部さんち、久々な気がする。

「あんた達もね」

⏰:10/02/26 21:28 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#570 [ひとり]
それはこちらに背を向けていた三田さんとアキにかけられたものだったが、小突き合いをしていた二人は気づかない。ノジコさんは声のボリュームを上げた。

「三田!アキ!あんた達も夜はべぇやんちだからね!!わかった!!?」

聞き分けない子供を叱る母のような口調に、ようやく気付いた二人は、やや驚いたような顔の後『はい』と首を縦にふった。

その動作までが示し合わせたかのように似ていて、また余計な考えに飲み込まれそうになる。

そのモヤモヤを切り刻むように、手元のキャベツを千切りにして気を紛らわせた。

⏰:10/02/26 21:29 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


#571 [ひとり]
夜、時間はとっくに十二時を超えている。

満腹堂は基本『客が帰るまでが営業時間』というスタイルをとっている。事前によし皆で飲もうなんて決めた日に限って客足の引きが遅いなんてのは、よくある事だ。

「もうすぐ一時なるし」

「とっとと出て〜」

「酒家にあるん?」

皆思い思いに喋りながら店を出ると、もう春一番も訪れた後の今日の日はとても暖かだった。

⏰:10/02/26 21:47 📱:F01B 🆔:ssYbzadU


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