こちら満腹堂【BL】
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#630 [我輩は匿名である]
あげ
:10/04/06 00:28 :W43H :HsQRHS8U
#631 [ひとり]
はーいと間延びした返事を寄越したアキは、だるそうに写真をかき集め、一枚ずつアルバムに仕舞い始めた。
仕舞いながら、『へぇー』だの『ふーん』だの言って鑑賞することも忘れない。そうしてアキが全てを元通り仕舞った(俺が脇から手を出しても、『それはまだ見てないから』と再び取り出されてしまって二度手間になるから諦めた)所で根岸が部屋に戻ってきた。襖が横に滑る音に機敏に反応した俺は、入室一番根岸とバッチリ目が合ってしまった。
いやいゃ"しまった"ってなんだし、なんか俺後ろめたいことしてたみたいじゃん!!そういうんじゃないから!!!!
「これそういうんじゃないから!!!」
「は?」
「いや、何でもね・・てお前随分長いうんこだったな、縮便ですかコノヤロー」
「誰がうんこっつったんすか、煙草ですよ、切れたんで」
「あ、そ、」
「はい」
・
:10/04/10 21:27 :F01B :/UKBvUKY
#632 [ひとり]
そうして俺の横に腰を落とした根岸からは、微かな外の匂いがした。パンツのポケットから徐に取り出された一般的に見れば小さなその箱。一本取って自前のジッポで火を点けた。ジッポって。俺なんか百円ライターの使いすてなのに、生意気だ。
「なんでHOPEなわけ?」
「?」
表情(カオ)だけで『え?』ってポーズを取ってから、吸い込んだ煙りを控えめにふーと横に逃がして
「なんです?」
なんて聞いてくる。誰でも当たり前にするそんな仕草まで堪らなく艶っぽく見えてしまうのは、俺の贔屓目なのか。なのかってか、そうなんだろうな。痛いな、俺。
・
:10/04/10 21:39 :F01B :/UKBvUKY
#633 [ひとり]
「いや、もっとスタンダードなのがあるだろうに、何故にHOPEかと思って」
「あぁ、これですか」
"これ"と指に挟んだそいつを少し上げて見せる。
「うん、それ、何か理由でもあんのかって思ってたんだわ」
「いやー・・・特にないんですけどね」
「でも変えたことないんだろ?他も試したりしなかったのかよ」
「俺、一途なんすよ」
・
:10/04/10 21:46 :F01B :/UKBvUKY
#634 [我輩は匿名である]
あげます
:10/04/11 02:00 :SH903i :☆☆☆
#635 [ひとり]
「自分で言ってりゃ世話ねぇな」
「三田さんは?」
「俺?」
「うん」
『うん』と返した根岸の声が"二人の時"の甘さを湛えていて、俺は一瞬どきりとする。なんかこう、親密っぽい感じがだだ漏れてんじゃねぇかと心配になったからだ。
けど実際は俺の取り越し苦労に過ぎなくて、誰も彼もがてんで好き勝手やってるこの部屋で、俺達の存在なんてサキイカや氷結と同等くらいのもんだった。
「あんたは、一途なんすか」
・
:10/04/11 20:37 :F01B :6Q6imcXo
#636 [ひとり]
タバコの話からなんでテメェーの硬派ぶりのプレゼンにシフトしたのか。まぁ一途か一途じゃないかと言われれば
「一途・・かもね」
「なんすか『かもね』って、全然可愛くないんだけど」
「かっ!別にそんなん狙ってねぇよ!!」
「かもねはなしです、一途か、違うか、一か百しかないんです」
なんだよそれ、完全なお前ルールじゃねぇか。もしかしてコイツ、また酔ってやがんな。
・
:10/04/11 20:43 :F01B :6Q6imcXo
#637 [ひとり]
「お前、めんどくさいのな」
「・・・・傷つきました」
「はいはい」
「俺の心を傷つけた上に、答えまではぐらかすんですか」
「んなつもりねぇけどさぁ・・」
面白いから意地悪してみた。めんどくさいのは本当だけど、酔った根岸は可愛くもある。気分がよくて手元の缶ビールを口に含んだ。
「わかりました、じゃ、チューしますよ」
「ぶっ!!!」
「あーあー、何やってるんすか、まだ気管につまるような年でもないでしょう」
呆れ口調でツッコミつつ、緩慢な動作で箱ティッシュを手繰り寄せた根岸が俺の吹いたビールを始末してくれる。
て、違げぇだろ。
・
:10/04/11 20:51 :F01B :6Q6imcXo
#638 [ひとり]
今の俺悪くねぇし!!完全に根岸が悪いだろ!!!!何だろねこの子はいきなり『チュー』なんて破廉恥な!!!バカじゃねーの!!?バーカーバーカー!!!!!!
「げほっ、ごほっ、うぇ、ごふっ」
本当は言ってやりたいその台詞達は、咽せ返って次々でる咳に邪魔されて、頭の中を駆け巡るだけ駆け巡っただけだった。
根岸が、優しく背中をさすってくる。自分が起因であるくせに、第三者面で心配顔だ。何だよチクショー!!
・
:10/04/11 21:00 :F01B :6Q6imcXo
#639 [ひとり]
そこではたと気付いたんだが、酔ってつっかかる根岸を面白がっていた俺だけど、今のこの状況は完全に逆転しているんじゃあないか。酔った根岸の気まま発言に動揺して咽せるだなんて。
よくよく見れば心配面を貼り付けた顔の中で、口元。左の口角だけが微妙に上がっていた。
「からかったな」
それを見過ごさなかった俺は、咳でまだ整わない息のまま言ってやった。
「わかりました?」
とろんと虚ろな目をして、『わかりました?』と来たもんだ!!!!!
・
:10/04/11 21:07 :F01B :6Q6imcXo
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