こちら満腹堂【BL】
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#642 [◆S2mRWfM3VE]
>>400-700

⏰:10/04/14 21:18 📱:SH705i 🆔:y1p8TQvo


#643 [ひとり]
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「・・・・・」

無言で腕をひかれて、大人しく付いて来てしまった先は便所だった・・・・連れしょん?な訳ないか。

「なぁ根岸」

「はい」

「狭い」

「そうですね」

『そうですね』、じゃねぇよ。何が嬉しくて大の大人が二人仲良く同じ便所に入らなきゃならないんだ。

⏰:10/04/18 06:53 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


#644 [ひとり]
「『なんでこんな所連れてきたんだ』って思ってるんでしょ」

根岸はお見通しだと謂わんばかりに目を細めてこちらを伺ってくる。その表情から、完全にこの状況を楽しんでいやがるんだと容易く知れる。

「当たり前だ、用足したいなら一人でしろよ」

「んな訳ないでしょ、三田さん、俺が嘯いてるとか謂うから」

「だから何だよ」

ただでさえ密着してる狭いこの空間で、根岸は故意にその距離を縮めて来た。

俺は無意識に後ずさる。が、すぐ膝裏に便座が当たって、これ以上の退路はないぞと主張してくる。

⏰:10/04/18 07:06 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


#645 [ひとり]
「お前ねぇ」

俺は溜め息をついて言った。

「こんなとこ誰かに見られでもしたらどうするよ」

そうだ。俺はそれが気が気じゃなかった。まだ誰にも謂ってない俺達の関係を、もしこんな形で知られることになんかなったら。考えただけで白眼むきそうだ。

俺の言葉を聞いて相変わらずフォンデュなみにとろんとした眼で何事か考えたらしい根岸は

「・・・・待ってて」

そう謂って一人便所から出て行った。

⏰:10/04/18 07:16 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


#646 [ひとり]
突然取り残された俺。なんかよくわかんねぇけど、取り敢えず蓋の閉まった便座に腰掛けてみる。根岸の戻りは思う以上に早かった。

施錠してなかったドアをガチャと開ける。と、同時に謂った。

「三田さんは今吐いてます」

「・・は?」

「便所に籠もってゲーゲーやってます。だから皆こっちこないで下さい」

「おい」

⏰:10/04/18 07:32 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


#647 [ひとり]
低い位置の俺に焦点を合わせてそれだけ謂うと、今度は腰を折って顔をぐっと近づけてきた。俺は少し背を反らして距離を計る。

「近いって」

「これで安心、もう誰も来ない」

「誰もってこたぁねぇだろ」

「上のトイレ行ってくれって謂ったから、こっちにはこないよ」

そう、べぇやんちには便所が二つ完備されていたりする。つまり来るなと謂われて、意地でも一階で用を足そうなんて奴はいない・・て事だ。根岸の謂ってる事は正しい。

⏰:10/04/18 07:42 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


#648 [ひとり]
「ねぇ、三田さん、キスしたい」

根岸は恥ずかしげもなく謂うと、俺の頬にひたと手を当てる。酔ってさぞ火照ってるんだろうと思いきや、予想外にひやりと冷たい手だった。

「バカ、何謂って・・」

謂いかけた唇を、親指の腹でなぞられてしまえば、俺は黙るしかない。俺の全神経が、根岸の触れる箇所に集中していく。目が、離せない。

「見すぎ」

根岸は笑った。

「お前が見てくるからだろ」

⏰:10/04/18 10:53 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


#649 [ひとり]
謂い返すけど、内心は上の空だ。つっぱねた態度とは裏腹に、俺も・・・・

根岸が俺の髪に長い指を掻き入れた。頭皮を丁寧になぞられる感触に背筋が粟立ち、どうしようもなくて俺は目を瞑った。

それを見計らった絶妙のタイミングで、唇に当たる感触。否、当たるって表現はこの際相応しくない。

唇を、包まれた。

『ダチの家の便所で何してんだ!!』と自分を叱咤する俺と、『根岸にこうして欲しかったんだ』と待ち望んでいた俺が混在する。

⏰:10/04/18 11:04 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


#650 [ひとり]
ダメだダメだと思うほどに、もっと欲しいんだと求める自分も大きくなる。

後頭部を支える根岸の手が、優しく包み込んでくる根岸の唇が、嗚呼、やばいな、これ。

うっすらと目蓋を持ち上げると、視界一杯に根岸がいる。

目の前の首根っこに、しがみついてしまいたい衝動に駆られる。唇だけじゃ足りない。全身にキスを返して、鎖骨に歯をたててやりたいと羨望する。

俺って、こんなんだったっけ?自分が自分じゃないみたいだ。

⏰:10/04/18 11:13 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


#651 [ひとり]
付き合ってみて初めて解ったことなんだけど、根岸のキスは助走が長い。紳士的?て謂ってしまえるんだろうか。出だしっから息があがるほどにガツガツ来ることはまずなくて、いつも俺の様子を伺うように、スローでフラットなスタンスを崩さない。俺がそれに応える毎に、徐々に加速していく感じだ。

そうして優しく振る舞うことで、俺が焦れったい気持ちになってるなんて、きっとコイツは思いもしないんだろうが。俺は俺で、もっと求められたいなんて『恥ずくてとてもじゃないが謂える訳ねぇ』とプライドが邪魔をしている。

⏰:10/04/18 11:23 📱:F01B 🆔:Kn5n1jUU


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