こちら満腹堂【BL】
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#734 [ひとり]
「・・・・・」
「なんだ、当たりどころでも悪かったか?」
「うーぅん・・あ!スプラッシュスプラッシュ!!早く行かなきゃ!!」
そうしてまた小走りで先を急ぎだした。
俺は、その後を黙ってついて行くしかない。
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:10/09/21 08:42 :F01B :☆☆☆
#735 [ひとり]
本日、5月22日、晴れ。
根岸 アキ、19才の誕生日。
その思惑はなんなのか図りかねるところだが、俺は三田さんに言われるままにアキの誕生日を半ば強制的に祝わされている。
アキもアキだ。
大学にやれサークルだやれゼミだとたくさん仲間をこさえておきながら、何が楽しくて従兄弟の俺と誕生日にこんな所まできているんだろうか。
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:10/09/21 08:50 :F01B :☆☆☆
#736 [ひとり]
頭にふざけたデカいリボンと耳の被り物をつけて愉快そうにしているアキ。まぁ本人が楽しんでいるならよしとしよう。
人混みも遊園知的なスポットもぶっちゃけ得意ではない俺は、ネズミ王国から縁遠い人間として恐らく国内でも5本の指には入るんじゃなかろうか。
つまりわからない。
右も左も未知の場所なのである。
対してアキはホラこっち次はあっちと流石のフリーク、道を極めている。色んな意味で。
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:10/09/21 11:53 :F01B :☆☆☆
#737 [ひとり]
なんでも先に発券すると、時間帯で優先的に乗り物に乗れる優待券があるらしく、その約束の時間が迫っているらしかった。アキ曰く、"スプラッシュ"ってやつはバカ正直に並べば一時間以上は軽く並ばされるアトラクションなんだとか。
五月晴れが過ぎる今日の日にそんなマネはごめんだ。うん、使ってこう!使えるアイテムは惜しみ無く使ってこう!
:10/09/22 08:26 :PC :kJ6OecNk
#738 [ひとり]
言われるがままにアキの後ろを付いて行くと、なんか山っぽいでっかいアトラクションに到着した。
「よかったぁ間に合ったね!」
右腕にはめたピンクゴールドの時計で時間を確かめたアキ。間に合ったらしい。
「早く、中行こうゆうちゃん」
また性懲りもなく小走りを始めた。はいはい、どこまでもお供しましょう。
俺は大人しくその後に従うのだった。
:10/09/23 21:46 :PC :c5UNqKp.
#739 [ひとり]
暗がりの中を乗り物に運ばれてどんぶらこどんぶらこしていると、終わりは突然に訪れた。"うさがどん"がなんだか悪のキツネと熊に吊し上げられてんなぁー・・・と、思ったらそのままま急降下。
あぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁああ
と、俺は為す術もない。
その後どこからか隠し撮りされていた写真で確認すると、
三田さんには絶対見せられない。見せたら100笑い者にされる事請け合いな見事な白目の自分がいた。これを金を出して思い出にいかがですかと言うんだから、夢の国も考える事が鬼畜だ。
いるもんか、500円くれるって言われたって、いるもんか。バーロー。
:10/09/23 21:58 :PC :c5UNqKp.
#740 [ひとり]
その後も俺は言われるがままにアキに付き従った。スペースマウンテンなるものには合計3度も乗車を強要された。
何度もしつこく言わせてもらうが俺は遊園地的スポットが苦手だ。もっと言えば絶叫を目的にした乗り物なんてもっての他。誰が好き好んで内臓に過度なGをかけたいものか。
正直、とってもグロッキーだ。
:10/09/23 22:07 :PC :c5UNqKp.
#741 [ひとり]
それでも今日の主役が誰なのか、自分が何のためにこんな縁もゆかりもない場所にいるのか、それを心の中で反芻することで折れてしまいそうな己をどうにか保って時間は夜の8時。
ゴールが見えてきた。頑張れ、頑張れ俺。あとはお約束らしいパレードとやらを見たらコンプリートだ。
アキは終始バラエティー番組に引っ張り凧なタレント級のバイタリティーを見せ、大いに喋り、笑い、走り、飲み、食べ、また喋り、たまに人にぶつかったりした。
今はアキ持参の二人用の小さなレジャーシートを広げ、休憩がてらパレードに向けての場所とりを命じられている。
:10/09/23 22:25 :PC :c5UNqKp.
#742 [ひとり]
本人はおみやげを買うからと、これまた駆け足で人並みをかき分け消えて行った。ふぅ。ここへ来て本日はじめての自由時間。あぁー・・・煙草、吸いてえ。
店は、夜の営業も始まってる時間だ。あの人、今頃はホッピー片手に料理の腕を奮ってるんだろうな。前髪を鍋から立ち上る湯気にやられてまた斬新な外はねにさせながら。下らないバカ話にでも花を咲かせながら。
会いたい。声、聞きたい。
:10/09/23 22:44 :PC :c5UNqKp.
#743 [ひとり]
吸いたくとも吸えない煙草とあの人の事を考えながら、手持ちぶさたになってジッポを手元で弄ぶ。見渡せば、俺同様に場所とりをしている家族連れや女子のグループにカップル。疲れきった顔のお父さんに、眠ってしまったチビッ子。ガールズトークの止まらない子達もいれば、ピタリと寄り添い好き好きと囁き会う恋人達も。
俺とアキは、きっと端から見ればカップルのように見えるんだろうな。
手を繋がなくとも、寄り添い合わずとも、俺とアキの見てくれなら、自ずとそう見られる筈だ。
これがもし、三田さんとなら・・・
俺と三田さんが遊園地デート。お手て繋いでスキップステップ。うぇ、よさやい、柄でもない。
:10/09/23 23:13 :PC :c5UNqKp.
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