こちら満腹堂【BL】
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#771 [ひとり]
ここまでがワンセット。ここがゴール地点。そう信じて疑わなかった俺。浅はかだったのか。俺が浅はかだったのか。
「なんつーかホラあれだよ・・あのーアレだ。お前には話してなかったかも知れないが、実のところ俺にはパレードの後に園内に留まると出るという持病の発作が・・・」
アキの白けきった視線が痛くないと謂えば嘘になるがこの際そこは無視だ。帰りたい。もうぶっちゃけ帰りたいんです。
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:10/12/26 10:18 :F01B :sQ7DWHS.
#772 [ひとり]
「ゆうちゃん・・」
「いや、なんかもう、ゴホッ、ほら出始めtゲホッゴホッ」
「ゆうちゃんてば・・」
「く、苦し、ゴホゴホッ!ガヘッ!うぅ息がで「ゆうちゃん!!!」
俺の迫真の演技は、アキの一声で遮られた。嗚呼、駄目なのか。またあの無意味なGをかけて体力を消耗するだけ消耗する非生産的なマシーンに俺を乗せるのか。
「安心してよ、もう帰るから」
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:10/12/26 10:28 :F01B :sQ7DWHS.
#773 [ひとり]
それは思いがけない台詞だった。『もう帰る』?自分の耳を疑ってしまう。
「アキ、帰るってのはアレか。舞浜駅から東京駅まで乗り継いでそこから今度は中央線で・・」
「うん、帰る。明日一限あるし、それにこの荷物じゃちょっとね」
そう謂って、さっき買い込んで来た土産物のしこたま詰まった袋を持ち上げて笑ってみせる。
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:10/12/26 10:33 :F01B :sQ7DWHS.
#774 [ひとり]
「そっか。なら、よし。帰ろう」
「うん」
「荷物かして、持つ」
「ありがと」
長い、長い道のりだった。だがしかし、止まない雨はない。明けない夜はない。俺はミッションを完遂したんだ。そう、【アキの誕生日を祝う】というミッションを・・・・・
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:10/12/26 10:38 :F01B :sQ7DWHS.
#775 [ひとり]
・・・・祝う・・・祝う・・・・いわ・・・・ん?
俺はここへ来て、遅蒔きながら気付いてしまった。
【祝っていない】ことに。
確かに三田さんの命令で無理くりとらされた休みに、アキが行きたいと謂うネズミーランドに保護者として付いて来た。
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:10/12/26 10:42 :F01B :sQ7DWHS.
#776 [ひとり]
でもそれだけ。気の利いたプレゼントもなければ、一言の『おめでとう』もない。てか逆にプレゼントされちゃってるし。・・・・なんてことだ。
帰ろうと謂って歩き始めた途端に俺が立ち止まったもんだから、アキは不思議そうに俺を振り返った。
「ゆうちゃん?」
「アキ」
「なぁに?」
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:10/12/26 10:47 :F01B :sQ7DWHS.
#777 [ひとり]
「誕生日おめでとう」
「ゆうちゃん・・」
遅すぎるこのタイミング。でも謂わないよりは謂ったほうがいいに決まってる。
「プレゼントすれば、何がほしい?」
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:10/12/26 10:51 :F01B :sQ7DWHS.
#778 [ひとり]
>>777【訂正】
×プレゼントすれば、何がほしい?
○プレゼント、何がほしい?
失礼しましたm(_ _)m
:10/12/26 10:53 :F01B :sQ7DWHS.
#779 [ひとり]
「え?」
「何か欲しいもんあるだろ?デッカイねずみのぬいぐるみとかでもいいぞ。今日なら買ってやる」
俺の申し出にアキは逡巡している様子で、あーとかうーとか声に出して真剣な顔。
ほんの一時待つと、決心したのかぱっとこちらへ向き直った。
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:10/12/26 10:57 :F01B :sQ7DWHS.
#780 [ひとり]
そして右手をこちらに差し出してこう謂った。
「手、繋いで」
え、それだけ?
「今日ならなんでもお願い聞いてくれるんでしょ?」
いやいや、そこまでは謂ってない。けど、変な奴。もっと欲をかいたっていいだろうに。
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:10/12/26 11:24 :F01B :sQ7DWHS.
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