こちら満腹堂【BL】
最新 最初 全
#151 [ひとり]
まぁ、答えは想像してたんだけど
「え〜・・・俺の知ってるヤツ?」
やっぱそうきたか。
「めっちゃ知ってますよ」
「マヂでか!!?え、もしやノジコ!!??」
「違います」
「え〜ぢゃあぁぁぁ・・・あ!!!うちの常連の真由美ちゃんだっっ!!!!」
「違いますって」
・
:09/12/14 23:43 :F01B :KQGVxB5U
#152 [ひとり]
この人は考えもしないんだ。自分がそういう対象に観られてるなんて、万に一つも。そりゃそうか。三田さんは男で、俺も男なんだから。
仕方ない事だ。仕方ない事だ・・・・
言い聞かせるしかできない。でも、言い聞かせたってその側から不満が沸き上がってきてしまう。押さえられない、理不尽な感情が、後から後から。きりがなくてつい自嘲気味な笑いが零れた。
・
:09/12/15 00:38 :F01B :1/AKyjc2
#153 [ひとり]
「笑ってないで教えろよけちんぼ〜」
酔った三田さんは語尾を伸ばす癖が目立つ。
呑気そうなその調子にさえも、また理不尽な憤り。何でわかってくんねーんだろこの鈍チンは。
「あんただよ」
・
:09/12/15 00:43 :F01B :1/AKyjc2
#154 [ひとり]
「は?」
三田さんの表情が一瞬で素に戻った。お生憎様。今更んな顔したって遅いっす。
「だから、あんたなんだってば」
俺が惚れてるのは。
・
:09/12/15 00:48 :F01B :1/AKyjc2
#155 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
第七話はこれにて完結ですん。ついに言っちゃいました根岸!!!!
でも好きっては言わないんだね。惚れてるって言うんだね。照れ屋さんな根岸です。これからもよろしく←何
・
:09/12/15 00:54 :F01B :1/AKyjc2
#156 [ひとり]
【第八話/しめさば!!!!】
俺の聞いて「しまった」って表情(カオ)を見て、言って「しまった」って表情(カオ)になったアイツは、気まずくなってそのまま帰りだすのかと思いきや、
「あ、風呂かりますね」
風呂を借りると言い出した。それから歯ブラシねぇしと文句たれやがるから自分用の替えの歯ブラシを卸してやり、スクラブ洗顔は嫌だとゆうからそこは流石にねぇもんはしょーがねぇだろと一蹴して、
気付けば
「じゃ、おやすみなさい」
丁寧に挨拶して布団を被った根岸。
・
:09/12/16 12:30 :F01B :8bhMJjwU
#157 [ひとり]
「泊まんのかよ!!!!!」
とは流石に突っ込めない俺は、一セットしかない自分ちの布団を恨んだ。「お客様用」の備えをしておかなかった自分を恨んだ。
ほいで、すっぽり布団に収まった根岸の横に正座して、どうしたもんかと悩んでいた。
・
:09/12/16 12:31 :F01B :8bhMJjwU
#158 [ひとり]
実際今は十二月だし、マヂ寒みぃし。普段の俺なら布団よこせぐらいの事は言っていたと思う。ついでに無理やりもぐりこむぐらいしたと思う。
でも今それをやるにはあまりにも
「リスク高けってマヂ」
すっかり酔いも覚めたし、心臓バクついて当分寝れそうにないから、根岸が寝付いたら横からそっと潜り込もうか。
いや布団なしで寝るのだけはごめんだかんね。俺の風邪に対する免疫の弱さなめんなよ?生後1ヶ月の赤ん坊くらいの弱さと思ってくれたらいいから、うん。
・
:09/12/16 12:33 :F01B :8bhMJjwU
#159 [ひとり]
とかぐだぐだ考えていたら、こっちに背を向けてた根岸が反転したので、何気なく後頭部に視線を当てていた俺は目が合ってしまった。
「ねぇ」
「な・・んでしょうか」
「寝ないんすか?」
「あ、はい。僕まだ眠たくないんで、お構いなく」
「何で敬語なんだよ」
「え、あ、はい」
「答えになってねぇし」
・
:09/12/16 12:35 :F01B :8bhMJjwU
#160 [ひとり]
「いいからお前は早く寝てくれ!!!!!」
とはやっぱり言えずに、口ごもるしかない。だってしょうがねぇだろ。いきなり後輩の、しかも野郎が告ってきたらおじさんだって動揺ぐらいするさ。つぅか何で告っといてコイツこんなシレッとしてんだよ。
「三田さん、布団冷たい」
「あ?」
何で俺ばっか狼狽えてんだと考えていたら、何を言われたのか聞き逃した。
・
:09/12/16 12:37 :F01B :8bhMJjwU
#161 [ひとり]
「冷たいってば」
不機嫌そうな声と同時に布団から伸びたでかい手。避けるにはあまりに急過ぎて、まんまと掴まれた二の腕。引き寄せられて。
「やめろ酔っ払い!!!」
がなったところで、そこは既に根岸の懐の中だった。
・
:09/12/16 12:39 :F01B :8bhMJjwU
#162 [ひとり]
酒臭い。根岸は顔にでないタイプだけど、実は相当に酔っているらしい。その証拠に逃れようとして手を当てた根岸の胸は早鐘を打っている。普段生意気なその目でさえ、今はやや虚ろに潤んでる。
「温ったかいね」
「タメ口きくんじゃないよお前は」
「・・・・温ったかい」
「話しを聞け」
・
:09/12/16 12:40 :F01B :8bhMJjwU
#163 [ひとり]
つうかコイツ、悪酔いしただけなんじゃね?フッと浮かんだ考え。そうだよ、酔ってるだけだって。じゃなきゃおっさんの俺に告るとか、キチガイな事する訳ないって。なんだよそうかよそうだよマヂビビらせんなよコノヤロー。
納得したら、同時に眠気もやってきたみたいだ。
根岸じゃないけど、確かに温ったかい。ま、ちょっと骨ばった感触はいなめないけど。
・
:09/12/16 12:42 :F01B :8bhMJjwU
#164 [ひとり]
でもこんな風に誰かに守られるようにして寝るのなんていつぶりだろ?まだガキんちょで、お袋と一緒に寝てた時以来じゃね?
彼女がいた時だって、こんな風にされた事はなかったな。ホラ俺、女の前だとカッコつけちゃうし。
・・・・なんか、変な感じ。
「おやすみ、三田さん」
しょうがねぇから、お前の悪酔いにも目ぇ瞑ってやるよ。そんで
「おやすみ根岸」
・
:09/12/16 12:44 :F01B :8bhMJjwU
#165 [ひとり]
【休憩】
こんにちは、ひとりです。
第八話完結です。今回はまた三田目線にしてみましたが、いかがでしたでしょうか?
彼全然理解してませんね。根岸の決死の告白は、どうやら三田の中で「悪酔い」って事になったらしいです。ドンマイ!!!!
・
:09/12/16 12:49 :F01B :8bhMJjwU
#166 [ひとり]
【第九話/こちら熱くなっておりますのでお気をつけ下さい】
朝、目覚めると見慣れない天井があった。背に馴れたスプリングの感触はなく、もっと硬質でダイレクトな当たり。
・
:09/12/18 21:40 :F01B :KCoLFDYA
#167 [ひとり]
そうして、俺のズシッと痺れる左腕の上。頭を預けてこちら向きで眠りの淵についているこの家の主の顔を見つめた。夢をみているらしい。血管の透けた目蓋の下で、目玉が忙しなく動いている。細く長い睫毛たちも、それに合わせて震えてみせた。
今日もバイトだ。早番じゃないしまだもう少しここでこうしていてもいいんだが・・・
・
:09/12/18 21:41 :F01B :KCoLFDYA
#168 [ひとり]
考えた末、やっぱり今すぐ帰る事にする。例えばこのままもう少しここで微睡んだとして、横のこの人が目覚めたとして。俺は言葉が浮かばなかった。「おはようございます」とか「昨日は泊めてもらっちゃってありがとうございました」とか。それから───
想いを告げた事に後悔はない。寧ろ心は晴れ渡って、清々しい。
ただ、一瞬見せた三田さんの素で驚いた顔。それを考えるときっと帰るのが今は得策なのだと思えた。
・
:09/12/18 21:42 :F01B :KCoLFDYA
#169 [ひとり]
三田さんの規則正しい寝息のリズムに合わせて、少しずつ左腕を引き抜く。長いこと下敷きになっていたそれは痺れきって、ダランと垂れて俺のいう事をきかない。
おかげで服を着替えるのに少し戸惑ったがそれも初めだけの事で。血が問題なく巡りだせば、従順になるのはあっという間。
忍び足で三田さんに細心の注意を払いつつ外に出た頃にはさっきの痺れが嘘のように完全に、それは「俺の左腕」になっていた。
三田さんの丸い綺麗なシルエットを支えていた一晩。その感覚が消えてしまってもうここにない事が、酷く悲しいことに感じた。
・
:09/12/18 21:42 :F01B :KCoLFDYA
#170 [ひとり]
───
─────
それから二週間経った。
十二月の一大イベントであるクリスマスもあっさり終わって(イブも本番も、三田さんはメリークソスマス!!とヤケッパチで仕事をしていた。)そこかしこに過剰にくっつけられた電飾や「Xmas」っぽいあれやこれやが姿を消すと、世間はいよいよ年の瀬らしい雰囲気に包まれる。
そして遂に、今年が終わろうとしている今日、俺は思うところがある。
「避けられてる」
「ん?」
外に人の姿はまちまちで、それでも軒を連ねる家々の玄関先につけられた「お飾り」からは確かなお祭りムードが漂っている。
・
:09/12/18 21:43 :F01B :KCoLFDYA
#171 [ひとり]
そこを行く俺の呟きを、横を歩く津久井は聞き逃さなかった。
「誰に避けられちゃってんのよ」
丈の短いミルクティー色のダッフル。そのポケットに両手を突っ込みながら聞いてくるコイツは俺とタメで、今は大学の三回生だ。
「好きな奴」
「あぁ、例のね」
年が同じである事と、津久井が懐っこいオープンな性格である事で、俺達はプライベートでもよく連んだ。
・
:09/12/18 21:44 :F01B :KCoLFDYA
#172 [ひとり]
そして「好きな奴がいて最近告白した」と打ち明けもした。もちろん名前は伏せたし、津久井も特にそこに突っ込んではこなかった。そういう空気のよめるところも、俺が津久井と居る事を好む理由の一つだ。
「焦りなさんなよ」
と軽い調子で肩を叩かれる。焦りなさんなと言われてはいそうですねと一呑みにできる余裕なんて俺にはないんだが、そこは口には出さないでおく。
だって二週間だ。そして今日も何も言ってこないとしたら、俺は年を越してあの人の返事を待つ事になるんだ。挙げ句今日までの二週間、あからさまに避けられている。冗談じゃない。
・
:09/12/18 21:46 :F01B :KCoLFDYA
#173 [ひとり]
押し黙る俺に、津久井が気を使ってわざとらしく明るい声で言う。
「まぁまぁまぁ!今日は愛しのあの子の事はちょっと忘れて、ぱーっといこうよ、ね!!!!」
空気が読める男、津久井 真希であっても、流石にそこは読み切れなかいか。
「そうだな、ぱっといこう」
会話の終わりと同時に視界に捉えた長谷部さんち。
満腹堂の皆と、酒と、
愛しのあの子が待っている。
・
:09/12/18 21:46 :F01B :KCoLFDYA
#174 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
第九話完結。津久井をちょっと登場させてみました。根岸と津久井はタメなんです。津久井は本名を津久井真希といいます。女の子みたくな名前ですが、男の子です。よろしくです。
・
:09/12/19 00:01 :F01B :x8k3BwQQ
#175 [ひとり]
【第十話/カクテルのネーミングセンスてぶっちゃけどうなん?】
「「おじゃましますー」」
鍵がかかっていない事は百も承知な俺と津久井は、扉脇のチャイムは完全無視で玄関へ踏み込んだ。
長谷部さんちは青い瓦屋根、二階建ての小さな一軒家だ。まぁ言ってしまうと借家なんだけど。買ったものであれ借りたものであれ、やはり一軒家は一軒家。以前家賃は大変じゃないのかと尋ねた事があったが、驚くほどに安かった。まだ長谷部さんちに上がった事がない時分だ。でもその安さの理由はすぐに納得がいった。
・
:09/12/19 20:47 :F01B :x8k3BwQQ
#176 [ひとり]
「出る」のだ。
俺は今まで霊感なんてないと思っていて、実際そんなものなくて。だから知ったからといって何か目撃した訳じゃないんだが、いつも満腹呑みで使う一階の畳部屋(長谷部さんの寝室)の真上の部屋から、人が走り回る音やら、壁を殴る音やらがするのだ。そこは開かずの間になっていて、入り口の引き戸にはベタベタとミミズの這ったような字の書かれた札が貼ってある。
初めそれを知った時は流石に気味が悪かった。長谷部さんにも余計な事とはわかっていても、「家賃が破格だからっていかがなものか」と苦言を提したほどだ。
でもそんな俺に長谷部さんは笑って言ったんだ。
「人間は惰性と順応の生き物だよ」
・
:09/12/19 20:47 :F01B :x8k3BwQQ
#177 [ひとり]
そうして俺はその言葉通りになる。遊びにいく回数が増す毎に、物音がする都度ビクビクとリアクションするのがまず面倒になる。そうなるとリアクションは益々右肩下がりに薄くなり、いつしか音がしない方が逆に「今日アイツどうしちゃったの?」みたいなスタンスにすり替わっていったのだ。
まさに「惰性」と「順応」。それを知ってしまった瞬間こそが、霊体験よりも俺をゾッとさせた。
ちなみに長谷部さんの叔母さんが霊能者でカラーコーディネーターらしく(どんな組み合わせだ)、引っ越した当時調べてもらったらしいのだが、どうやらいるのはリーマンのオッサンの霊らしい。
・
:09/12/19 20:48 :F01B :x8k3BwQQ
#178 [ひとり]
オッサンの幽霊と同居してる長谷部さん。その長谷部さんちにいつも溜まる満腹堂の面々。玄関で津久井と順番に靴を脱ぐ間も聞こえてくるハシャいだ声。二階からの物音はそれに混じって微かにしか聞こえない。
──
────
「やってますねー」
津久井はリュックから持参したアルコールを畳の部屋にぶちまけながら言う。
「お前らも来たのかー今年の最後を一緒に過ごす相手他にいないのかよー寂しい奴らめ」
言って俺達をからかう滝さんはすでに出来上がっている。
「その言葉そっくりそのままバットで打ち返します」
「なにおぅ根岸め!!!!じゃー俺はそれを華麗な回転レシーブで打ち返すね!!!!」
「球技だけれども・・・」
・
:09/12/19 20:48 :F01B :x8k3BwQQ
#179 [ひとり]
呆れ半分に笑いながら部屋を見渡して気が付いた。いない。
「弘さん、三田さんは?」
自分から質問しておいてなんだが、こんな時咄嗟に聞く相手が弘さんである事に薄っすらとジェラシー。
「うん、今日くるっつってたんだけどまだ来ないんだわ」
その内ヒョッコリ来るだろよと軽く言った弘さん。
・
:09/12/20 21:00 :F01B :rtGpV4jQ
#180 [ひとり]
「そうですか」
「うん」
その時、時計の針はちょうど夕方の四時を指していて、確かに後から来るんだろうと俺は納得して、宴の輪に加わった。
それから五時になり──六時───七時───八時────
来ない。
・
:09/12/20 22:50 :F01B :rtGpV4jQ
#181 [ひとり]
「アイツ何やってんだ?」
流石に皆が三田さんの不在を気にしだした。
「ちょっと誰か連絡してみたの?」
ノジコさんが言うと
「電話しても出ないんだよ」
と弘さんが答えた。
・
:09/12/20 23:23 :F01B :rtGpV4jQ
#182 [ひとり]
「まったく何やってんだよアイツ」
何時もながら男勝りな口振りのノジコさん。
「あ、酒ねぇ・・・」
今の本題は三田さんの不在であって、まったく関係ない事なんだが、もう数時間前から出来上がっている滝さんは気にする風もなく思ったままを言う。
「ねぇ、酒ないんだけど」
横に座っていた俺の頬をグイグイと人差し指で押してくる。
・
:09/12/20 23:31 :F01B :rtGpV4jQ
#183 [ひとり]
「根岸ー酒たんねぇー」
これは完全な悪酔いだ。今日の年越しという一大イベントに浮き足立って、開放的になりすぎているらしい。
「はいはい、分かりましたから」
俺は滝さんをなだめすかして
「ちょっと酒買ってきます」
と腰を上げた。
・
:09/12/20 23:48 :F01B :rtGpV4jQ
#184 [ひとり]
津久井が「俺も行こうか」と声をかけてくれたが、そこはやんわりと断って、一人寒空の下へ。
東京の空は狭い。
31日のこんな時間までやってる店なんてデカいスーパーかコンビニくらいで、いつも行き着けの倉本(個人経営の酒屋だ)は蟻一匹の侵入たりとも許さないといった感じにシャッターをぴったり下げきっている。
・
:09/12/21 18:39 :F01B :Sipkur5Y
#185 [ひとり]
そうなるとやはり国道を挟んだ向こう側のコンビニまで行くしかない。
俺はマフラーを持ってこなかった事を遅蒔きながら後悔した。
国道沿いにでると思いの外車が走っていて、向こう側へ行くために昇った歩道橋から見下ろしたそれらのテールランプが、時期外れのイルミネーションみたいだった。
もうクリスマスは終わったんだよ。
そのままじっと観察していると、だんだんと行列する虫の目玉みたいにも、血管をながれる赤血球みたいにも見えてきた。
・
:09/12/21 18:46 :F01B :Sipkur5Y
#186 [ひとり]
「なんか、気持ち悪り・・・」
どうやら軽く酔ったようだ。視線を下から上へ。さっき長谷部さんちのそばで見上げた時より、空が近い。
あの人、どこで何やってんだろ──
bbb・・・・bbb・・・・
・
:09/12/21 18:51 :F01B :Sipkur5Y
#187 [ひとり]
寒さを凌ぐため上着のポケットに突っ込んでいた右手に携帯のバイブが当たった。
大方滝さん辺りが酒の催促か、ついでにつまみも買ってこいかのメールでもよこしたんだろう。
緩い動作でポケットから携帯を引き抜き折りたたみ式の携帯を開く。ディスプレイ画面にはメールの着信が一件。
・
:09/12/21 19:22 :F01B :Sipkur5Y
#188 [ひとり]
受信ボックスに入った状態で俺は一瞬固まった。
from 三田さん
Re:根岸よ、
─────────
家来て
────end─────
・
:09/12/21 19:26 :F01B :Sipkur5Y
#189 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
第十話も完結。クリスマスとかイベント性がもりもりな行事は完全スルーで年越しのお話をお送りしました。そして次話に続きます。
ちょっと補足しますと、滝と長谷部は、弘や三田と同高です。して弘、滝、長谷部はタメです。三田だけが学年違います。え、どうでもいい?んなこと言わないで下さいな〜´∀`誰
・
:09/12/21 19:32 :F01B :Sipkur5Y
#190 [ひとり]
【第十一話/お前片手でジョッキいくつ持てる?】
駆け足で向かった。三田さんちのドアの前に立って、チャイムを押そうとしている。
メールを見て何事かと電話をかけたが、三田さんは出なかった。そんな事されたら、行かない訳にいかないじゃないか。
・
:09/12/21 20:42 :F01B :Sipkur5Y
#191 [ひとり]
ピンポーン
間の抜けた音が廊下に恥ずかしく反響した。
「・・・・・・・・・」
出ない。
もう一度、
ピンポーン
・
:09/12/21 20:48 :F01B :Sipkur5Y
#192 [ひとり]
「・・・・・・・・・・・・」
やはり反応がない。
連打してみようか、
ピンポーン・・・・ピンポーン・・・・ピポピポピポピポン
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ここまで無視だとこっちも意地になってくるな。
・
:09/12/21 20:54 :F01B :Sipkur5Y
#193 [ひとり]
そうして再びどっかのケンシロウのごとく連打を繰り出そうと指を構えたところで、ノブが内側から回されるのが見えた。
外開きのドアにぶつからないように一歩身を引いて待つと、中から小さく背中を丸めた三田さんが現れた。
グレーのスウェット上下の上にパーカーとチェックのチャンチャンコというしゃれた出で立ち。
・
:09/12/21 21:01 :F01B :Sipkur5Y
#194 [ひとり]
「ちゃ、チャンチャンコ・・・」
「よう、根岸」
「なんなんすか、いきなり家来いって」
「まぁ、上がれ」
三田さんは俺の返事を待たずに中に引っ込もうとする。
「ちょ、何なんすか」
・
:09/12/21 21:31 :F01B :Sipkur5Y
#195 [ひとり]
再度繰り返した俺の問い掛けに、緩慢な動作でこちらへ振り返った三田さん。
「いいから、取り敢えず中入れって、寒みぃ」
よく見たら、小刻みに震えていた。
「わかりました」
唇も、なんかガサガサして青っぽい。
・
:09/12/23 09:05 :F01B :SdPnyTWc
#196 [ひとり]
リビングに通されると、そこは暖房の効き過ぎたティッシュ王国だった。
「・・・・思春期なんすか」
「違うわアホタレ」
散乱するティッシュティッシュティッシュ・・・
確定だ。
「じゃあ、風邪なんすか」
「そうだアホタレ」
「合ってても間違っててもアホタレなんですね」
・
:09/12/23 09:06 :F01B :SdPnyTWc
#197 [ひとり]
不満そうな口振りを装ってみても、内心では久々に口を利いて貰えた事を素直に喜んでいる俺がいる。なんて健気なんだろう。おしんにも勝る健気さじゃないかと思う。
「熱は?」
「熱なんて計ってもあ〜俺こんなに熱ある〜って余計凹むだけだから計らない」
ガラガラな声して
「何屁理屈こねてんですか、ちゃんと計って下さい」
・
:09/12/23 09:06 :F01B :SdPnyTWc
#198 [ひとり]
「引き出しの二番目」
「・・・・・はいはい」
「体温計取ってこい」って事らしい。自分は肩まですっぽり布団にくるまって、ティッシュ王国開拓のため未開封のティッシュ箱を新たに引き寄せた。
「引き出しってこっち?」
「うん」
二つ並びで置かれた高さの違う渋い茶の棚。その低いほうの二番目の引き出しを漁りながら、背で三田さんが豪快に鼻をかむ音を聞く。
・
:09/12/23 09:07 :F01B :SdPnyTWc
#199 [ひとり]
「あった」
目当てのものを手に布団の脇にしゃがみ、三田さんの前に差し出した。
「根岸〜鼻かみすぎで切れたしコレ」
俺の差し出した体温計より、今鼻をかんだことで切れた鼻の下が気になるらしい。
「いいからまず計ってみて下さい」
「痛てんだよ地味にー」
「赤チン塗っときな、赤チン塗れば何でも治してくれるから」
「何お前その保健室のババァ的発想」
・
:09/12/23 09:13 :F01B :SdPnyTWc
#200 [ひとり]
「俺の学校の保険医は若いお姉さんでしたよ」
「やめてその"へ〜お前の学校の保険医オバチャンだったんだ〜"顔、マヂムカつくから」
「白衣の下のボディーラインがまさにサンクチュアリっつーかなんつーか・・・・何?」
気が付くと、三田さんが何とも言えない顔でこちらを見ていた。
・
:09/12/23 20:28 :F01B :SdPnyTWc
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194