こちら満腹堂【BL】
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#197 [ひとり]
不満そうな口振りを装ってみても、内心では久々に口を利いて貰えた事を素直に喜んでいる俺がいる。なんて健気なんだろう。おしんにも勝る健気さじゃないかと思う。
「熱は?」
「熱なんて計ってもあ〜俺こんなに熱ある〜って余計凹むだけだから計らない」
ガラガラな声して
「何屁理屈こねてんですか、ちゃんと計って下さい」
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:09/12/23 09:06 :F01B :SdPnyTWc
#198 [ひとり]
「引き出しの二番目」
「・・・・・はいはい」
「体温計取ってこい」って事らしい。自分は肩まですっぽり布団にくるまって、ティッシュ王国開拓のため未開封のティッシュ箱を新たに引き寄せた。
「引き出しってこっち?」
「うん」
二つ並びで置かれた高さの違う渋い茶の棚。その低いほうの二番目の引き出しを漁りながら、背で三田さんが豪快に鼻をかむ音を聞く。
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:09/12/23 09:07 :F01B :SdPnyTWc
#199 [ひとり]
「あった」
目当てのものを手に布団の脇にしゃがみ、三田さんの前に差し出した。
「根岸〜鼻かみすぎで切れたしコレ」
俺の差し出した体温計より、今鼻をかんだことで切れた鼻の下が気になるらしい。
「いいからまず計ってみて下さい」
「痛てんだよ地味にー」
「赤チン塗っときな、赤チン塗れば何でも治してくれるから」
「何お前その保健室のババァ的発想」
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:09/12/23 09:13 :F01B :SdPnyTWc
#200 [ひとり]
「俺の学校の保険医は若いお姉さんでしたよ」
「やめてその"へ〜お前の学校の保険医オバチャンだったんだ〜"顔、マヂムカつくから」
「白衣の下のボディーラインがまさにサンクチュアリっつーかなんつーか・・・・何?」
気が付くと、三田さんが何とも言えない顔でこちらを見ていた。
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:09/12/23 20:28 :F01B :SdPnyTWc
#201 [ひとり]
なんだろう、敢えてその顔に台詞を当てるなら
「は?」
だろうか。または
「え?」
が近いか。
それから体調が優れない身でありながら、満面のスマイル。
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:09/12/23 20:34 :F01B :SdPnyTWc
#202 [ひとり]
「病人の全開スマイルってなんか凄みありますね」
よくわからないので、取り敢えず礼儀としてちゃかしてみた。でも三田さんは聞こえてるんだかいないんだか。何かを噛み締めるように二三度ゆっくり頷いて口を開いた。
「やっぱ根岸はちゃんと女が好きなんだな」
ファック
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:09/12/23 20:42 :F01B :SdPnyTWc
#203 [ひとり]
瞬間、頭の中で毒づいた。そういう事かよ。
「やっぱこの前のは只の悪酔いだよな、うん。」
うんとか勝手に納得してんじゃねー
「いやさ、じゃないかと思ったんだけどなんか遂ね、ガチだったらどうしよーとか思っててさぁ」
ガチガチのガチだよ文句あるかよ
「悪りぃ、実はさり気なく避けてた」
さり気なくねんだよバレバレだこの大根が
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:09/12/23 20:48 :F01B :SdPnyTWc
#204 [ひとり]
「・・・・・・・・・・」
「え?何聞こえんし」
「三田さんです」
「へ?」
「俺が今好きなのは三田さんです。」
言い切ったら、暖房が効き過ぎているはずのこの部屋の温度が、ぐんと下がった気がした。
引き潮の音が聞こえてきそうな程に、三田さんが引いているのがわかる。
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:09/12/23 20:52 :F01B :SdPnyTWc
#205 [ひとり]
でも今言わなきゃ、一生言えない気がして、俺は病人相手に喋り倒した。
「確かに俺は女が好きだし乳とか尻とか丸んてしてフニャンてするのが好きだし三田さんにそんな要素一っっっつもないのもまして男だって事も分かってますけどでもそれでも好きってのは事実だしリアルだし酒のせいとか悪酔いだとか都合のいい解釈つけてねじ曲げてなかったみたいにされるのはマヂムカつく。てかうぜぇ。」
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:09/12/23 20:58 :F01B :SdPnyTWc
#206 [ひとり]
あんまり一気に喋ったもんだから若干息が上がった。そのまま立ち上がり
「おじゃましました」
俺は一目散、逃げるように玄関へ向かうと、スニーカーをつっかけるだけつっかけて外へ出た。
途中三田さんが俺を呼ぶガラガラ声がしたけど、聞こえないふり。
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:09/12/23 21:19 :F01B :SdPnyTWc
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