こちら満腹堂【BL】
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#201 [ひとり]
なんだろう、敢えてその顔に台詞を当てるなら
「は?」
だろうか。または
「え?」
が近いか。
それから体調が優れない身でありながら、満面のスマイル。
・
:09/12/23 20:34 :F01B :SdPnyTWc
#202 [ひとり]
「病人の全開スマイルってなんか凄みありますね」
よくわからないので、取り敢えず礼儀としてちゃかしてみた。でも三田さんは聞こえてるんだかいないんだか。何かを噛み締めるように二三度ゆっくり頷いて口を開いた。
「やっぱ根岸はちゃんと女が好きなんだな」
ファック
・
:09/12/23 20:42 :F01B :SdPnyTWc
#203 [ひとり]
瞬間、頭の中で毒づいた。そういう事かよ。
「やっぱこの前のは只の悪酔いだよな、うん。」
うんとか勝手に納得してんじゃねー
「いやさ、じゃないかと思ったんだけどなんか遂ね、ガチだったらどうしよーとか思っててさぁ」
ガチガチのガチだよ文句あるかよ
「悪りぃ、実はさり気なく避けてた」
さり気なくねんだよバレバレだこの大根が
・
:09/12/23 20:48 :F01B :SdPnyTWc
#204 [ひとり]
「・・・・・・・・・・」
「え?何聞こえんし」
「三田さんです」
「へ?」
「俺が今好きなのは三田さんです。」
言い切ったら、暖房が効き過ぎているはずのこの部屋の温度が、ぐんと下がった気がした。
引き潮の音が聞こえてきそうな程に、三田さんが引いているのがわかる。
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:09/12/23 20:52 :F01B :SdPnyTWc
#205 [ひとり]
でも今言わなきゃ、一生言えない気がして、俺は病人相手に喋り倒した。
「確かに俺は女が好きだし乳とか尻とか丸んてしてフニャンてするのが好きだし三田さんにそんな要素一っっっつもないのもまして男だって事も分かってますけどでもそれでも好きってのは事実だしリアルだし酒のせいとか悪酔いだとか都合のいい解釈つけてねじ曲げてなかったみたいにされるのはマヂムカつく。てかうぜぇ。」
・
:09/12/23 20:58 :F01B :SdPnyTWc
#206 [ひとり]
あんまり一気に喋ったもんだから若干息が上がった。そのまま立ち上がり
「おじゃましました」
俺は一目散、逃げるように玄関へ向かうと、スニーカーをつっかけるだけつっかけて外へ出た。
途中三田さんが俺を呼ぶガラガラ声がしたけど、聞こえないふり。
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:09/12/23 21:19 :F01B :SdPnyTWc
#207 [ひとり]
風邪で弱っているのに息なり攻め立てて、挙げ句何もしないで(まぁ体温計は渡したけど)出てきた事に少し罪悪感を感じもしたが、それを差し引いてもやはり許せなかった。
「マヂ餓鬼・・・」
一つ溜め息。白い息が暗闇に溶けた。
携帯を取り出し画面を開くと、着信ありのマーク。予想通り満腹堂の皆からの電話だったので、取り敢えず弘さんに折り返す。
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:09/12/23 21:29 :F01B :SdPnyTWc
#208 [ひとり]
「もしもし、あ、すんません・・・・・はい・・・・・はい・・・いや、三田さんとこに・・・・・はい、風邪らしくて・・・・・はい、あ、酒は・・・・・・そうすか、わかりました。すいません連絡しなくて・・・・えぇ、はい・・・・・はい、わかりました・・・・・・・あ、迷惑じゃなかったら弘さん、三田さんとこ行ってあげて下さい。結構辛そうだったんで・・・・・・・・・・いや、俺はそっち戻ります。はい・・・・・はい、お願いします、失礼しまーす」
電話を切って、長谷部さんちに向かう。今日はもう、呑みまくってやろう。ゲロ吐くまで呑んでやろう。
そう決意して、腕をぶんと回した。
・
:09/12/23 21:56 :F01B :SdPnyTWc
#209 [ひとり]
【休憩】
おはようございます、ひとりです。
第十一話完結です。今度は素面でちゃんと告白できました根岸ですが、怒って逃げちゃいました。いかんですね、おこちゃまですね。でも彼は今まで受け身の生ぬるい恋愛しかしてこなかったんで、戸惑ってるんです。はい。と、フォローしてみるこすいひとりでした〜
・
:09/12/24 10:49 :F01B :dVoX7R3g
#210 [我輩は匿名である]
おもしろいです★
:09/12/24 14:58 :SH01A :uZWH5u4k
#211 [ホシ]
この小説すきです・ω・ひとりたむがんばってくださいx
:09/12/24 16:50 :Sportio :0xEeDAsw
#212 [我輩は匿名である]
キャラのしゃべり方が銀魂ぽくて何か好きですw
頑張ってください
:09/12/25 16:14 :PC :lmIIc1gs
#213 [ひとり]
>>211ホシさん
好きだなんて、照れるやい(⊃∀//)←
ありがとございます^^総合に感想板もあるんで、是非また遊び来て下さいませ(´ω`)
・
:09/12/26 20:53 :F01B :NBa4Z6xA
#214 [ひとり]
>>212匿名さん
マヂでか←
ひとり銀魂好きですよ^^酢昆布も好きですよ(´∀`)←黙
・
:09/12/26 20:55 :F01B :NBa4Z6xA
#215 [ひとり]
>>210匿名さん
ありがとっす(`∀´)ひとりはその言葉だけで元気百倍です!!僕のかおをお食べよ!!!!です←意味不
・
:09/12/26 20:57 :F01B :NBa4Z6xA
#216 [ひとり]
【第十二話/『はい喜んで』】
年が明けた。
テレビを付ければ各局が『あけましておめでとう』を連呼して、間に挟まれるフジカラーのCMの樹○希林までもが着物に身を包み『正月』な雰囲気を盛り上げている。
でも俺は、ちっともめでたくなんかなかった。
・
:09/12/26 20:58 :F01B :NBa4Z6xA
#217 [ひとり]
「あんたおもち何個?」
「一個でいい」
1月2日。都内にある実家に帰省した俺に、早速根岸家特製雑煮に入れる餅の数を聞いてくる母親。
「一個でいいなんてゆうちゃん風邪でもひいてんの?」
「・・・風邪は今NGワードだから二度と言うなよ」
「意味わかんない、何でよ」
俺を『ゆうちゃん』と呼んでくるのは従兄弟のアキ。
「聞くな、大人の事情だから」
「どうせ禄でもない事情なんでしょ」
「お前なんか浪人しちまえ」
「お生憎様〜もう四月から花の女子大生確定で〜す」
「よし、俺が行ってその合格辞退しますって言って来てやる」
「やめてよバカ」
・
:09/12/26 20:58 :F01B :NBa4Z6xA
#218 [ひとり]
根岸家では毎年、長男である親父のもとに次男三男が家族を連れて新年の挨拶に来る。というのが恒例行事になっている。三家族が一つのテーブル(正確に言えば二つの長いテーブルをくっつけたものなんだが)を囲んで酒を呑み御節をつつく様は圧巻だ。
大抵上座で親父達三兄弟が酒を酌み交わし、母親達は母親達でこれまた固まり去年一年間の労をねぎらい、近況を報告し合ったりする。すると自然に下座に子供達が固まる、という案配だ。
・
:09/12/26 20:59 :F01B :NBa4Z6xA
#219 [ひとり]
従兄弟は全部で七人。その中でも年の近い者同士が自然と固まるのだが、毎年俺の横を陣取るのはアキだ。
「ねぇ、後で初詣行こうよ」
皿の上に御節の具で何やら不細工な顔を作って遊びながらアキが言う。
「嫌だよ寒みぃ」
「そんなん理由になんないよ、断るならもっとマシな理由考えるんだね」
「・・・嫌だよ面倒い」
「よし、行くのね」
「・・・・・・」
コイツは昔からこうと決めるとテコでも動かないという融通の効かなさ、よく言えば芯の強さがある。どうやら初詣は決定事項のようで、俺に断る術はないらしい。
・
:09/12/26 20:59 :F01B :NBa4Z6xA
#220 [ひとり]
それから暫くゴロゴロと食っちゃ寝起きちゃ呑みを繰り返して、嫌々ながらアキに付き合って外へ出たのは午後三時。酒で体が大分温まっていたので助かった。
初詣へ向かう途中もアキはよく笑い、よく喋った。
「お前本当よくしゃべるな」
「だってゆうちゃんと会えるのってお正月くらいじゃん、メールしても返事遅いし」
「でもちゃんと返すだろ」
「結果論でしょ、いくら返してくれても、一週間後じゃ意味ないんだよね」
「なら電話すりゃいい」
「いつも留守電のくせによく言うよ」
「お前のタイミングが悪い」
・
:09/12/26 21:00 :F01B :NBa4Z6xA
#221 [ひとり]
「でもま、許してやるか」
アキが悪ガキがうまい悪戯を思い付いた時のようにニヤリと笑った。
「すげぇ嫌な予感すんだけど」
「そんな事ないんじゃない?何か素敵な事が起こる予感ならしてるけど」
笑みが深まったその顔で、アキは嬉しそうに言った
「私、春からゆうちゃんちの近くに一人暮らしするの!!!!」
俺の嫌な予感は大体いつも当たるんだ。
・
:09/12/26 21:00 :F01B :NBa4Z6xA
#222 [ひとり]
別にアキが嫌いな訳じゃない。寧ろ、俺によく懐いているし、可愛い奴だと思う。ただ一つ問題があるとするならそれは、懐き過ぎているという事だ。
今まで会うのは一年で正月と、夏に帰省すればその時、つまり多くて二回。それならまぁわかる。まぁ甘やかそう。だけどそれが毎日となれば話は別だ。
「お前さ、毎日俺んちこようとか思ってないよな?」
「えー思ってるよ」
「やめて」
「何でよー」
・
:09/12/26 21:01 :F01B :NBa4Z6xA
#223 [ひとり]
「なんでもへったくれもないの!!」
「誰もへったくれてないしー」
「語尾伸ばすな、女子か」
「女子だし」
リアルに毎日うちに来られたらどうしよう。ていうかリアルに来る感じのテンションだよコレ、寧ろこのテンションで毎日来る気だよコイツ。俺は元々根暗な質で、一人の時間や空間をこよなく愛していたりする。俺の平穏。サンクチュアリ。
それがここ最近じゃどっかの小っさいオッサンのせいで心を乱されまくって平穏て何語?みたいな状態なのに、この上アキまで毎日来やがるようになったら・・・・
「今年俺、厄年だっけ」
「え、何?」
・
:09/12/26 21:02 :F01B :NBa4Z6xA
#224 [ひとり]
「何でもない。いいから早く木箱にジャラ銭ぶちこんでアホみたいに上の鐘ジャランジャランさせてうさんくさい紙切れ引き抜いてワーイ凶がでたぁーかなんか言って帰ろうぜ」
「どしたのゆうちゃん、何かいきなりネガティブな感じでひくんだけど」
「引いとけ引いとけ、ついでにおみくじも引いとけよ三百円やるから」
「ゆうちゃん・・・・・・・・・・二百円足んない」
おみくじが予想外にぼったくっていて、俺のテンションは更に急降下を続けたのだった。
・
:09/12/26 21:03 :F01B :NBa4Z6xA
#225 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
今回は根岸家からお届けしました。遂に登場した新キャラのアキ、皆さんよろしくお願いします(何が)まだひとり自身アキのキャラを掴みきれていませんので、読みづらいかもですがそこはぬるい気持ちでスルーよろしく。シュワッチ!!!!
・
:09/12/26 21:06 :F01B :NBa4Z6xA
#226 [我輩は匿名である]
更新されてる
毎日楽しみに覗かさせて頂いてます
根岸頑張れ
ひとりさん頑張れ
:09/12/26 23:01 :N04A :qzgqZ4Ts
#227 [ひとり]
>>226匿名さん
ありがとうです^^
根岸共々がんばります(`∀´)ゞ!!!!よければ総合の掲示板にも遊びきてください〜
・
:09/12/27 12:46 :F01B :Hmc8sEFw
#228 [ひとり]
【第十三話/トイレに貼られている挨拶書き『こんな所まで失礼します』って・・・本当にな!!!!】
風邪をひいた。三十一日。皆が年越しカウントダウンとかしちゃってお祭り騒ぎのその日。俺は一人体温がお祭り騒ぎに急上昇。今年最後の時を、うなされ寝汗かきまくりながら布団の中で越した。年越し蕎麦ならぬ、年越しがゆも食べた。味気ねぇ。
あと、職場の後輩に怒られた。怒られたというか、怒らせた。だけじゃなく、嫌われたかもしれない。
まぁ、俺が悪い。
・
:09/12/27 21:19 :F01B :Hmc8sEFw
#229 [ひとり]
アイツが帰った後、しばらくしてひろむが来た。風邪薬とみかんゼリーを持って。
「お前も随分といいタイミングで風邪ひいたもんだね」
「悪りぃ」
「気にすんな、心の友よ」
「ジャイアン・・・」
俺が弱っている時、ひろむは優しい。映画の時のジャイアンくらい優しい。それは今みたいに単に風邪ひいた時だけじゃなくて、気持ちが弱って折れそうな時も含めて。どっかの誰かさんみたいに、床に伏せっている俺を叱りつけて逃げたりなんか絶対にしない。
・
:09/12/27 21:19 :F01B :Hmc8sEFw
#230 [ひとり]
きっとひろむにはレーダーがついてるんだと思う。いくら隠そうとしても、ひろむは真っ先に気付くし、側にいてくれる。それがわかってるから俺も隠す事はしないし、素直でいられるんだと思う。ひろむにはその素直さが、どうも伝わりきってないようだけど。
「根岸いたんだろ?」
「あぁ、いたね」
実は根岸に『うぜぇ』とか言われて内心ショック受けてた俺。だってあれは本気の『うぜぇ』だった。
・
:09/12/27 21:20 :F01B :Hmc8sEFw
#231 [ひとり]
ひろむはそんな事あったなんてもちろん知らないし、『ひろむの前だと素直な俺です』アピールしたばっかだけど、何故かそこは『は?ショックじゃねぇし』みたいな、ショックがってる自分を否定したい俺がいて。台詞棒読みしたみたいな気持ち悪い口振りになる。
「アイツ滝に酒買って来い言われて出てったのにいい加減帰って来ないからさ、事故ったりしてねぇかって若干焦った」
「そっか」
一方的なメールを送りつけた。あん時は熱の波がピークに来ていて、メール送るだけで精一杯だったんだ。
そこまで気が回らなかった。
:09/12/27 21:21 :F01B :Hmc8sEFw
#232 [ひとり]
「俺がメールで呼び出したんだわ、ごめん」
「みたいね、やっと連絡ついたと思ったら『今三田さんちで風邪みたいだから来てあげて下さい』だもんよ」
近所迷惑も考えないで、性急にチャイムを鳴らしまくっていた根岸。扉一枚隔てた先で、あん時どんな顔してたのかってふと思った。
・
:09/12/27 21:22 :F01B :Hmc8sEFw
#233 [ひとり]
「でもお前も珍しいな、俺じゃなくて、根岸呼ぶってのは」
「・・こないだ、ホラ、髭そられた事であの野郎は俺に借りがあったかんね」
嘘だ。根岸を家に泊めたあの日、確かにチャーハン食ってチャラにしたのに。頭で思っても、口が勝手に嘘を並べ立てる。
「まだんな事言ってんのかよ」
ひろむは『小学生か』って言って笑った。俺も『うっせほっとけ』と言って笑ったけど。
・
:09/12/27 21:23 :F01B :Hmc8sEFw
#234 [ひとり]
考えてみれば、何で根岸を呼んだんだろう?
────
年が明けて、三ヶ日と一日経った今日、俺は気付いた。いや、気付いてはいたんだ。ただその事実を認めたくないから、気付かないふりをしていただけ。
・
:09/12/27 21:25 :F01B :Hmc8sEFw
#235 [ひとり]
ぶっちゃければそれは
『甘え』
根岸がまさか本気で俺に気があるなんて・・・そう否定しながら、心のどっかじゃ俺を好いてるかもしれない根岸なら、風邪っぴきの自分のもとに駆けつけるに違いないって考えがあったんだ。例えそれが大晦日の、夜八時を軽く超えた時分でも。
・
:09/12/27 21:29 :F01B :Hmc8sEFw
#236 [ひとり]
身体が弱ってたからとか、あの時は無意識だったからとか、そんなんは言い訳にしかならない。俺は俺の都合で根岸の気持ちを利用して、その上否定したんだから。
自分で自分に吐き気がする。最低だ。
もう嫌われて、口聞いてくんねぇかもしんないけど。やっぱここは一回ちゃんと謝っとかないと、俺の気が済まない。
「って結局また自分かよ」
自分本位な考えしかできないなんて、つくずくうんざりしてしまう。
「とにかく明後日・・・」
コタツの中、テーブルの上に顎を載せて、一月のシフトが書かれた用紙に目を走らせる。『根岸』の欄、六日の枠内には『遅』と印刷されていた。
・
:09/12/27 21:32 :F01B :Hmc8sEFw
#237 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
十三話完結致しました。反省する三田でしたね、うん。悪いことは悪いって認められる人は、人間としての伸びしろがまだあるんだって先生思うよ!!!!アレ?こんな台詞前にどっかで聞いたような・・・・・(゚ω゚)←
・
:09/12/27 21:41 :F01B :Hmc8sEFw
#238 [ひとり]
【第十四話/すいません、お絞りもう一つ下さいって言う女子は世話好き】
一月六日。今年初出勤の満腹堂に到着したのは午後四時半過ぎ。早番のスタッフと新年の挨拶を交わす。
「あけおめことよろー」
こんな程度の軽い感じで。その中には三田さんもいて、俺はなるべくそっちを見ないように意識した。
・
:09/12/28 15:52 :F01B :rkwSdkYA
#239 [ひとり]
気持ちを否定されてショックだった。でも間が空いて冷静になれた・・・・・気でいた。なのに
「やっぱうぜ」
可愛さ余ってなんとやら。視界の隅にチラつく三田さんに苛立つ。その事で、思ってる以上に自分が傷ついてるんだと知らされた。
「俺ってナイーブ」
「何ブツクサ言って、気味悪いよ」
・
:09/12/28 15:52 :F01B :rkwSdkYA
#240 [ひとり]
振り返ると、俺と同じ遅番出勤の津久井がいた。
「あけおめ」
「おめ」
気心の知れてる者同士であればある程、形式ばった挨拶は照れ臭い。
「で、なに根岸って独り言キャラだっけか?」
「いやまぁ、色々とあったんだわ」
・
:09/12/28 15:53 :F01B :rkwSdkYA
#241 [ひとり]
「例のあの子?」
「まぁ」
「まだ避けられてんの?」
「いや、逆」
「逆って・・避けてんの?」
「うん」
「『うん』って、何やってんの君達は」
「何やってんだろうね」
「俺が聞いてるんだけど」
「自分でもよくわかんね」
・
:09/12/28 15:53 :F01B :rkwSdkYA
#242 [ひとり]
「返事まだ貰ってないってこと?」
「貰うもなにも、否定されたし」
「・・・・・何それ」
「俺が酔って言った冗談だって、なかった事みたいにされてた」
「うわ〜・・・んでどしたん」
「んなのもっ回告るに決まってんじゃん」
「なのにまた答えは貰えなかったのかよ」
「うん、俺逃げたしね」
「はぁ?」
・
:09/12/28 15:54 :F01B :rkwSdkYA
#243 [ひとり]
「だってムカつくじゃん、せっかく勇気だして告ったのに、その気持ち否定されるとか」
「一応聞くけどさ、二回目ん時何て告ったん?」
「カッとなってよく覚えてないけど、好きだっつってんだろ的な・・・・あ、あとムカつくとか・・うぜぇって言ったかも」
それを聞いて津久井は顔をしかめた。
「最悪・・・・それ告ったんじゃなくて怒ったんじゃん」
「怒らせたのはあっちだし」
「同じ事だよ」
・
:09/12/28 15:55 :F01B :rkwSdkYA
#244 [ひとり]
「・・・・・・・」
そのまま中途半端に会話が途切れたロッカールームは静まりかえる。俺と津久井が立てる、布の擦れる音だけ。
着替えが済んだ俺が先に出ようとすると、まだボタンを留めてる途中の津久井が口を開いた。
「とにかくさ、いい加減楽になったら?」
「・・ありがと」
「おう」
・
:09/12/28 15:55 :F01B :rkwSdkYA
#245 [ひとり]
そうだ、いい加減楽になりたい。否定する程ありえないってんなら、それはもう絶望的なんだろうが、それでも俺は三田さんの口からちゃんと聞きたいんだ。ちゃんと、振ってほしい。
俺は決心して、厨房で寸胴を掻き回す三田さんの背中に話しかけた。
「三田さん」
「ん?うおっっっ!!!!びっくしたぁー!!!!」
振り向いた先にあったのが俺の顔だったのがいけないらしい。
・
:09/12/28 16:02 :F01B :rkwSdkYA
#246 [ひとり]
「断りなく俺の後ろに立つんじゃねーよ!!」
「ゴルゴ13かよ、とかツッコんだほがいいですか」
「いや・・・いいです」
「そうすか」
一瞬俺達の間に気まずい沈黙が流れたけど、そんなん周りは気付かない。
「実は」
『今日残って下さい』って言おうとしたら
・
:09/12/28 16:08 :F01B :rkwSdkYA
#247 [ひとり]
「根岸悪いけど今日話しあっから残って」
思いがけない一言に俺の言葉は阻まれた。
「あ、はい」
「後ついでにお前コレ変わって!!!」
「そんなドサクサ紛れに言ってもダメですよ、今日三田さんの当番でしょ」
「いいだろケチ!!これ疲れるから嫌いなんだよ、筋肉つきそうだし」
「女子かって」
・
:09/12/28 16:15 :F01B :rkwSdkYA
#248 [ひとり]
「髪に匂いついちゃうし〜」
「・・・・・・・」
「おいぃぃぃ!!!!!ツッコミ面倒くさがんないの!!!!そこは被せるでしょ!?基本でしょ!?!?」
「あ、俺テーブル拭いてきます」
「俺が滑ったちゃんみたあになってんですけどぉぉぉ!!!!ちょっとぉぉぉぉ!!!!!」
とにかく、ようやく答えがもらえそうだ。
・
:09/12/28 16:20 :F01B :rkwSdkYA
#249 [ひとり]
────
───────
今日の仕事も無事終了して、皆それぞれ片付けの目処もたった頃、カウンターで電卓を叩いてた三田さんが言った。
「今日の鍵誰だっけかー」
「確か長谷部さんとノジコさんですよ」
側ではき掃除をしていた津久井が答えると、今度はカウンターに身を乗り出して、キッチンにいる二人にデカめの声をかけた。
「べぇやんとノジコはもう終わりそ?」
すると姿は見えないが奥から二人の『あー』とも『うぃー』ともつかない声が返ってくる。
・
:09/12/29 22:10 :F01B :7w8DO9h.
#250 [ひとり]
「オッケしたら今日俺閉めてくからどっちかよこせー」
「何あんた残んの?」
ここでようやく姿を見せたノジコさん。利き手の人差し指にホルダをひっかけてくるくると鍵を回しながら三田さんの横につけた。
「残るよ」
「何急に?いつも早く帰りてぇとかうっさいやつが」
言いながら探るような目で三田さんを見つめるノジコさんの顔は、クラスの悪ガキを叱る学級委員長のようにみえてちょっと笑える。
・
:09/12/29 22:10 :F01B :7w8DO9h.
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