こちら満腹堂【BL】
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#34 [ひとり]
「送るってあんた、俺チャリなんだってば」
「だからその辺までだよ、俺も風に当たりてぇし、付き合え」
そして俺より先に部屋を出ていってしまった。
「・・・・・・勝手だなぁ」
仕方なしに後に続く。
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:09/12/09 09:42 :F01B :vju6tYo2
#35 [ひとり]
「ちべ(冷)てぇー」
「もう12月っすからね」
「12月かよー1年早えーなオイ」
「その発言、かなりおっさんじみてますよ」
「ほっとけ!!」
俺達はチャリを挟んで横並びで歩いた。
二人分の白い息が、尖った冬の空気に溶けて消える。
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:09/12/09 09:48 :F01B :vju6tYo2
#36 [ひとり]
「今年のクリスマスも、このままじゃクソスマスで終わりそうだなー」
「三田さん彼女作んないんすか?」
「お前はっ倒されたいの?作んないんじゃねーよできねんだよ!!」
「ふーん」
「はい出た!!根岸の"ふーん"返し!!!!」
「あんた声デカいって」
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:09/12/09 09:55 :F01B :vju6tYo2
#37 [ひとり]
もう既に三時になろうかというところ、寝静まった家々。俺達以外誰もいない道に三田さんの声はよく響いた。
「つぅかあんたそろそろ戻らないと」
「え?」
「いやだって、あんま行くと帰り面倒いでしょ」
「あ〜〜〜・・・・うん」
「・・・・・・・あんた」
「そうだね、帰り道がね、うん」
そっかそっかと頷く姿に、嫌な予感がよぎる。
「あんた俺を"送ってる"ってこと忘れてたでしょ」
現にもう一駅分は歩いてきてしまっている。
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:09/12/09 10:17 :F01B :vju6tYo2
#38 [ひとり]
「店長にあんたとか言わないのー」
「話し逸らさないで下さい」
「んー・・・・うん、まぁアレだよ、つまり」
目が右へ左へ泳ぎに泳ぎまくっている。
俺の予感は確信に変わった。
「根岸んち泊め「嫌です」
最後まで言わせずに遮ると、口をものっそい勢いでへの字に曲げた。
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:09/12/09 15:06 :F01B :vju6tYo2
#39 [ひとり]
「お前言わせろよそこは」
「だって嫌っすもん」
「送ってやった俺の優しさをそんなぞんざいに蹴っていいのか」
「"やった"っつーかムリと付いてきただけでしょーが」
「んなッッ!!!!元も子もない事言うなよ!!!!」
「事実でしょーが!!!!」
立ち止まり、向き合った俺達は言い合いになる。正面から見た三田さんの顔はもう酔いが引いたようで白っぽく、闇にぼんやり浮かび上がっている。その中にあって、鼻の頭と少し覗いた耳だけが赤い。
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:09/12/09 19:43 :F01B :vju6tYo2
#40 [ひとり]
「泊めろ!!」
「嫌です!!」
「泊めろって!!」
「嫌ですってば!!」
頼むから大人しく帰ってくれ。俺はこのもやもやを、密室に二人きりで隠し通せる自信がなかった。
「頑なかっっ!!!!」
「そりゃあんたでしょ!!!!」
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:09/12/09 19:51 :F01B :vju6tYo2
#41 [ひとり]
「うるせぇな!!!!!」
「「!!!???」」
突然頭上から浴びせられた怒鳴り声に、ハッとそちらを仰ぎ見れば
「テメェら今何時だと思ってんだっっ!!!!とっとと帰ってクソして寝ろっっっ!!!!」
道路沿いのボロなアパートの一室から、冬場にも関わらずランニングシャツ一丁のおっさんが俺達を睨み下ろしている。
「「すんませーん」」
俺達は駆け足でその場を後にした。
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:09/12/09 19:58 :F01B :vju6tYo2
#42 [ひとり]
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「おじゃましまーすよっ」
「・・・・・・」
結局、三田さんは俺んちまで付いて来た。
鼻歌まじりに履き潰したティンバーのブーツを脱ぎ捨てる三田さん。
「お前んち何かいい匂いすんな」
「・・・・あぁ、アロマたいてるんで」
「うっわ〜恥ずかしいヤツだな〜」
「意味わかんねぇし」
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:09/12/09 20:04 :F01B :vju6tYo2
#43 [ひとり]
今だ赤みを帯びた鼻をひくひくさせて部屋の匂いを無遠慮に嗅ぎまくっている。
「いいから早く中入って下さい」
「へいへい、あ、便所貸して〜」
「・・・・嫌です」
「よし、じゃーここで「そこ、左側です」
「あいよー」
言ってトイレに駆け込んだ。
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:09/12/09 20:11 :F01B :vju6tYo2
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