こちら満腹堂【BL】
最新 最初 🆕
#381 [ひとり]
「本当にもう大丈夫だから、滝、悪りんだけど」

「あいよー」

『消毒したい』って言おうとしたら、滝は察して足早に店の中へ消えて行った。やっぱこういう時は気が回る。さっき心の中で主張した前言は、撤回してやろう、うん。それから

「根岸、もういいって」

まだ横でこちらの様子を伺っている根岸の顔が何か言いたげだから、心からの『もういい』でそれを止めた。

そんなに謝られたって逆にこっちが気ィ使うっつーか。相変わらず位置が近いっつーか。

俺はじりじりっと微妙に根岸と距離をとる。

⏰:10/01/10 16:36 📱:F01B 🆔:8Q25XGmU


#382 [ひとり]
「じゃなくて三田さん、俺」

「なに?」

どうしよう。今更だけど、昨日あれだけツンケンした態度で避けていた相手とまともに会話してる自分に気付いて、なんかバツが悪い。そんな俺の胸中なんか知る筈もない根岸は、いけしゃあしゃあとこう言った。

「しつこいって思うかもしれませんけど、やっぱ俺納得いかないんで、今日残って下さい」

納得いかないって・・いやいや待てよ。何が納得いかないって?テメェは彼女できてウハウハなんだろ何ほざいてんだマヂで。意味わかんね。

今の俺、エベレストと張れるくらい沸点低いみたいだわ。

⏰:10/01/10 16:36 📱:F01B 🆔:8Q25XGmU


#383 [ひとり]
「しつこいって言われんのわかってんなら、そゆこと言うのやめたら?」

「・・・・・」

黙った根岸をその場に放置して、俺は逃げるように店に入った。ぶつけた鼻と、あとなんか左胸に圧がかかったみたいにぐぅっと痛い。

早くこの鼻、滝にマキロンで消毒してもらお。完全皮剥けてんだろコレ。でもこっちの痛みは・・・

黒いスタッフTシャツの胸の辺りを、乱暴に鷲掴んでごまかすのが精一杯だ。

⏰:10/01/10 16:40 📱:F01B 🆔:8Q25XGmU


#384 [ひとり]
【休憩】

今日は、ひとりです。

第二十一話、完結。
鼻を強打した三田と、させた根岸。空気読めてんだかいないんだかの滝でしたぁー。

滝はマイペースなチャランポランで、いつも隙あらば三田をからかってあそんでいます。

⏰:10/01/10 16:43 📱:F01B 🆔:8Q25XGmU


#385 [ひとり]
【第二十二話/お冷やだけ注文してきた時は後回しが鉄則】


また逃げられてしまった。

「・・・・はぁ」

ため息しかでてこない。せっかく思いを伝えたのに、少し距離が近くなった気がしたのに。

近づいたと思った次の瞬間にはまた遠のいている。

気付かない程無意識のうちに。

「俺、何やらかしたんだよ・・・」

⏰:10/01/12 01:16 📱:F01B 🆔:sF.a5tXc


#386 [ひとり]
見当も付かないが、昨日弘さんの二者面談(?)で半端はしないと宣言した手前、引くわけにはいかないし、もちろんそんな気毛頭なかった。


────
──────


今日一日もまた無事に終わろうとしている。深夜一時。常連の客がなかなか帰らなかったから、まだ暫くは締めに時間がかかりそうだ。

⏰:10/01/12 01:17 📱:F01B 🆔:sF.a5tXc


#387 [ひとり]
三田さんが先に帰ってしまわないように、動きをちょこちょこ目で追いながらの作業。ちょうど床を掃いている時、ケツポケに突っ込んでいた携帯がバイブした。

こんな時間にメールをよこす相手なんて、限られてくる。仲良いダチか、或いは───


from:アキ
─────────

まだ仕事〜?

──end─────


「だと思った」

⏰:10/01/12 01:18 📱:F01B 🆔:sF.a5tXc


#388 [ひとり]
思わず零れた独り言。

おそらく、毎度のことながら勝手に作った合い鍵で勝手に俺んちに上がり込み、いつの間にか勝手に持ち込んでいた部屋着にでも着替えて待っていたが、帰ってこない事にしびれを切らせて連絡をしてきたんだろう。

俺は素早く返事を返した。


──今日はまだ当分かかる。自分ち帰れ。──


送信。

⏰:10/01/12 01:19 📱:F01B 🆔:sF.a5tXc


#389 [ひとり]
するとまた、間髪入れずに返信が。


──はぁ〜い──


内容はそれだけ。絶対にごねて意地でも待ってるとか言われると覚悟していたので、少し拍子抜けだが、これならこれでありがたい。

もう返事は返さずに、そのまま携帯をしまう。残りぶんの掃き掃除に戻ろうと顔を上げたら、思いがけず三田さんと目が合った。が、直ぐにそらされて

「・・・・・・・・」

今日は逃がさない。必ず話をつけてやる。必ず。

俺は強い決意と共に箒の柄を握り直した。

⏰:10/01/12 01:20 📱:F01B 🆔:sF.a5tXc


#390 [ひとり]
─────
───

それから実際締め作業が完了したのは深夜二時。売上が合わないと三田さんが言い出した事で、幾分か余計に時間をくったが、そのお陰というか、自然な感じで一緒に残る事ができた。

今いるのは、三田さん、弘さんと俺。これなら何の遠慮もなく、三田さんを引き止められる。

「ひゃー合った合った、とっとと閉めるべ」

弘さんの一声を合図に、三人三様鞄を手に出口へ向かった。

「今何時根岸?」

「っと・・・二時半過ぎですね」

「マヂで?うっわ勘弁しろよ三田」

「俺じゃねーよ!誰だか知んないけど釣り銭間違えたソイツが悪い」

「店長のくせに無責任だなお前・・そう思うよな根岸」

「いや・・」

「ひろむこそ自分の肩書き棚に上げてんじゃねぇよ経営"責任者"が聞いてあきれるわ」

「わかってないねお前は、責任者として俺はお前に一任してる訳だからさ」

「一任つぅか、転嫁じゃね?」

⏰:10/01/12 01:22 📱:F01B 🆔:sF.a5tXc


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194