こちら満腹堂【BL】
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#401 [ひとり]
【第二十三話/エイヒレは長くしゃぶったもん勝ち】


ハァ──ハァ──ハァ──

「どんだけ足速いんだよ」


慣れない立ち漕ぎに上がった息で呟いた。いっても相手は生身でこっちはチャリだ。全力で漕げばすぐに追い付くだろうと践んでいたのに。

「見つけた」

煙草ばっかぱかぱか吸って体力なさげな三田さんは、予想以上の健闘を見せて。その後ろ姿を視界に捉えることができた頃には、こっちの体力が尽きかけていた。

⏰:10/01/14 01:17 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#402 [ひとり]
煙草ばっか吸ってるのは三田さんばかりじゃないって事か。

『もうここまで来れば─』とでも思ったのだろう。呑気にテクテク歩くその後ろ姿に向けて、俺はラストスパートをかけた。


「三田さん!」

あぁ、漕ぎながら大声出すと脇腹が痛い。

呼び掛けに振り向いた三田さんは俺の姿を認めると、口が『げ!!』という形に動いた。

『げ』じゃねんだよもう逃がさねぇぞ。

⏰:10/01/14 01:19 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#403 [ひとり]
ところが三田さんも粘り強いというか往生際が悪いというか・・

「あ、ちょっと!!!!」

今まで通って来たやや幅の広い道から、前動作もなくいきなり横道に入った。しかもまたダッシュで。

なんなんだあの人は。

昔はやんちゃしてましたとか言いながら、実は真面目な陸上部員だったんじゃないかと疑ってしまう。

もちろん自分も後を追うべくすぐその脇道に入ろうとした。したのだが。

⏰:10/01/14 01:22 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#404 [ひとり]
「うおっ!!!」

咄嗟にかけたブレーキで直撃は避けたけど。

「っぶねー。」

前輪からやや強い衝撃が、ハンドルを握る両手を始めとして全身に伝わってくる。三田さんが何の考えもなしに飛び込んだと思ったそこには"自転車・バイク進入禁止"と掛かれたポールが、道のど真ん中に鎮座していたのだ。

⏰:10/01/14 01:24 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#405 [ひとり]
「あぁ!!もう!!!!」

俺はヤケクソ気味に自転車をその場に捨て置いて、ポールを飛び越え三田さんの後を追った。

そこは細く長く、道と呼ぶにはあまりにお粗末で、民家と民家の間に辛うじてできた"隙間"と言ったほうが正しいような、碌に舗装もされていない道だった。

⏰:10/01/14 01:28 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#406 [ひとり]
塀に囲まれて日の当たらないそこは所々ぬかるんでいる。足を捕られながらそれでも俺は、前へ前へと足を動かした。

随分長い。

ひたすら続く一本道に、このままどこまで続くのだろうと思った矢先。俺の視界の真ん中に、白っぽい点が現れた。


出口だ。

おそらくあの白いものは街灯の光。その点めがけて走った結果。やはり新しい道にでた。

ちゃんと街灯で照らされて、舗装された道らしい道。

⏰:10/01/14 01:36 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#407 [ひとり]
そこは正面がどん詰まりで、左右ニ岐に別れたT字路になっている。

三田さんが行ったのは、右か。それとも左か。

左右に忙しなく視線をさ迷わせていると、右側の道。ここからじゃ死角になっている曲がり角の先から、『ゴッ』と物体と物体がぶつかり合う硬質な音が、俺の鼓膜に届いた。

真夜中で、辺りになんの物音もしないこのコンディションだからこそ聞き取れた。それくらいに地味な音でもあった。

⏰:10/01/14 01:39 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#408 [ひとり]
俺は反射的に音のした右道を選び、一つ目のコーナーを直角に曲がった。

そうしてようやく。

「・・・・・あの・・三田さん?」

ようやく捕まえた目当ての人物は、何故か曲がって直ぐに突っ立っている電柱の前に小さくうずくまっていて、声をかけると丸めた背中がビクッと反応した。

「大丈夫なわけねぇだろ!」

振り向いた顔。初見のポジショニングからして想像はできていたんだけど。

⏰:10/01/14 01:41 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#409 [ひとり]
「今日は顔、よくぶつけますね」

ちゃんと"今日の占いカウントダウン☆"見てきたんですか?

場を和ませようと続けた台詞が、今の三田さんには相応しくなかったらしい。

しゃがみ込んだまま上目使いで睨まれた。丁度いい角度で街灯に照らされているその目尻には痛さのせいか、もしくはついていない今日の自分に嫌気がさしてか、やや涙が滲んでいた。

⏰:10/01/14 01:43 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#410 [ひとり]
ついでに言えば、満腹堂の裏口で俺が勢いよく開け放った扉に鼻をぶつけた時、"応急処置"にかこつけておもしろ半分で滝さんが無理やり三田さんの鼻頭に貼り付けた絆創膏も(貼った本人はその姿を指差して『昭和のガキ大将』だと笑った)、電柱に再度ぶつけた衝撃でなんだか微妙にポイントからずれていて。やや右上がりにくしゃりと皺がよってしまったその下からは、薄ピンクのちょっと痛々しい傷口が覗いていた。

三田さん自身、己の鼻の上にへ貼りついている絆創膏が、もう何の役割も果たしていない事がわかったようで。俺を睨む目の強さは保ちながら、ペリとそいつを剥がしてお役御免だと地べたに投げ捨てた。

⏰:10/01/14 21:14 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#411 [ひとり]
「お前が追っかけるからまた顔ぶつけただろ」

いつもよりも低くかすれた声で三田さんがボソッと不満を漏らす。

そんなん言ったって

「今のはただ単に三田さんがセルフで起こしたアクシデントでしょ、俺関係ないですよ」

「関係ある、大あり」

「てか本を正せば、三田さんが俺から逃げるのがいけないんじゃないですか」

⏰:10/01/14 21:15 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#412 [ひとり]
「な・・・・テメェが・・」

話の流れとして返したその一言に、なにやら今までとはちょっと違う反応が返ってきた。が、よく聞き取れない。

「はい?」

散々避けられていた鬱憤から苛立ちを含んだ声で聞き返すと、三田さんは突然凄い怒気を放ちながら、俺を怒鳴りつけた。

「先に逃げたのはテメェだろ!!!!!!」

意表を突いたその怒声に、俺の体は自然現象として一気に粟だった。

こんな風に怒鳴る三田さんを見るのは、初めてだ。

⏰:10/01/14 21:15 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#413 [ひとり]
「・・・・・・・・俺が?」

怒鳴られた事に対しては正直驚きを隠せない俺だったが、それより何より聞き捨てならない台詞だ。

逃げた?先に?何から?

「あんた何言って・・・」

「っるせぇ!!先に背中向けたのはテメェだ!!!!それを今更とやかく言われる筋合いはねぇっつってんだ!!!!」

今は一体何時なんだろう。目の前のこの人の怒鳴り声は、騒音被害だって警察に届けられても文句は言えないぞっていうボリュームだ。

そしてそれだけに留まらず、三田さんはまた信じられない行動に出た。

⏰:10/01/14 21:16 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#414 [ひとり]
「もう今更俺に構うな!!」

捨て台詞としてそれだけ言うと、脱兎のごとくまた駆けだしたのだ。

「ちょ、三田さん!!!」

当然俺はその後を追った。ここまで来て、あんな意味のわからない事言われて、『はいそうですか』なんて引き下がれるか。

にしても俺達こんな事ばかり、もう何回繰り返してるんだ。

こんなに好きなのに。

逃げないでよ。

俺はなりふり構わず全力で走った。

⏰:10/01/14 21:17 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#415 [ひとり]
今まで通ったこともないような場所を道から道へ。右へ左へ。

多分三田さん、俺をまくために自分でもわからないで滅茶苦茶に走ってるんだと思う。

にしても速いな。なんなんだよその脚力は。

少しでも気を抜けば、見失ってしまうだろう。


「三田さ・・・・待って!!!!」

「待たない!!!!」

⏰:10/01/14 21:17 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#416 [ひとり]
「ちょ・・・マヂで・・・話聞けって!!!!」

「タメ口きくな!!!」

距離を詰められず、一定距離を保ったまま走り続ける。

「お願いだから!!!!」

「来るな!!!!」

クソっ脇腹痛ってぇ。

「逃げんな三田コラァ!!!!」

「テッメ・・・!!呼び捨てしてんじゃねぇ!!殴られてぇのかコラァ!!!!」

大声上げながら全力疾走する俺達は、きっと端から見たら異様な二人なんだと思う。

⏰:10/01/14 21:18 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#417 [ひとり]
「上等だ・・こいよ三田ぁぁあ!!!!」

売り言葉に買い言葉。
すると三田さんはピタッと足を止め瞬間こちらに振り向いた。

「え?」

まさか止まるなんて思ってなかったから。"車は急に止まれない"。"根岸も急には止まれない"。勢いのついている俺は、立ち止まった三田さん目掛けてグングン距離を縮めた。そして遂に───



「ぐっ───!!!!?」

⏰:10/01/14 21:19 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#418 [ひとり]
浮遊感。

スローモーションで展開する視界。

脳みそを直接掴まれて揺さぶられたような衝撃。



あ、俺殴られた。



それに気付いた時、俺の体は冷たいコンクリの道路と仲良しになっていた。

⏰:10/01/14 21:19 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#419 [ひとり]
それから遅れて、左頬にぐっと熱が集まるのを感じた。

うわぁ〜口ん中絶対切れてるってコレ。

横っ飛びに倒れ込んだ地面に唾を吐けば、予想通り。街灯の光を受けた唾液に混ざって、赤いものが目について。

⏰:10/01/14 21:53 📱:F01B 🆔:eoTDsMHM


#420 [ひとり]
カッとなった俺はゆっくり立ち上がると、対峙した三田さんの右頬へ、めり込む程のパンチを見舞った。

ゴッ

骨と骨のぶつかり合う音。


「っ──痛てぇだろコラ」

流石と言うか何というか。体格差からみたら俺が断然優位な筈なのに、三田さんは拳の衝撃をまともに喰らっておきながら、ぐらつくだけに留まった。

⏰:10/01/15 09:09 📱:F01B 🆔:ShyQlI2A


#421 [ひとり]
そして

「しつけんだって!」

ゴッ

また喰らわされた。三田さんの一発は重い。

だから俺も

「話し聞けっていってんだろ!!」

ゴッ

同じ箇所を続けざまに殴ったら、さっきよりやや応えたようだ。

「だから今更逃げた奴が調子いんだよ!」

ボッ

脇腹をいかれて、少しむせた。

「ゲホ・・いつ俺が逃げたんだ!」

⏰:10/01/15 09:10 📱:F01B 🆔:ShyQlI2A


#422 [ひとり]
ボッ

俺も正面からボディーに一発ぶち込んだ。

「ゴホッ、ゲホ・・お前さ」

痛みやり過ごすように中腰姿勢で両膝に手をついた三田さんは、真下に視線をやったまま言った。

「彼女できたんだろ?」

「は?」

いつ俺に彼女が?"明太にぎりだと思ったら中身がツナマヨだった"ってくらい予想外で、俺は構えていたガードを下ろした。

そこへ

「隠したってもう知ってんだよ!」

ゴッ

また一発。
油断したせいで、簡単によろけた俺は、尻餅ついて尾てい骨を強か打った。

⏰:10/01/15 09:11 📱:F01B 🆔:ShyQlI2A


#423 [ひとり]
「っ───」

痛すぎて声がでない俺の腹の上に、乱暴な動作で馬乗りになった三田さん。

「お前が!!」

「好きだって!!」

「言った!!」

「くせに!!」

「やっぱ!!」

「女が!!」

「いいん!!」

「だろ!!」

言葉と言葉の間に飛んでくるパンチを、左右の頬にモロに喰らいながら、


やべぇ、殴り殺されるかも。


とかリアルに思った。
それから


三田さんになら、それもありかも。


とも思った。

⏰:10/01/15 21:54 📱:F01B 🆔:ShyQlI2A


#424 [ひとり]
それから

でもやっぱり殺されるんなら、その前にちゃんと伝えたいって、思い直して。



「好きだよ」



殴られながら言ったその台詞は酷く弱々しくて、不格好で、なんか薄っぺらに聞こえた。

それでも、それは三田さんの耳にも届いたようで。順番に振り下ろされていた両腕は、ぴたりと動きを止めたんだ。

⏰:10/01/15 21:55 📱:F01B 🆔:ShyQlI2A


#425 [ひとり]
「殴られすぎて幻覚でも見えてんの?」

鼻から息を抜くようにして、三田さんは『はん』と俺を嘲笑った。

「違う、幻覚なんか見てない」

「俺は茶髪の巻き髪した覚えも、白いブリブリなコート着た覚えもねぇ」

「え、何それ?」

「白々しい、さっき店に来ただろ!!」

「さっき・・・・え、何が?」

ゴッ

また殴られた。

「だから彼女が来てただろ!!!!」

⏰:10/01/15 21:55 📱:F01B 🆔:ShyQlI2A


#426 [ひとり]
さっき来た───

茶髪の巻き髪────

白─────

ブリブリなコート───



頭の中で少しずつ言葉のパーツを集めて。



彼女─────


組み立てて。


彼女──────


組み立てて。


かの・・───────え?




「えぇぇぇぇぇえ!?!?!?」

⏰:10/01/15 21:57 📱:F01B 🆔:ShyQlI2A


#427 [ひとり]
「うっせぇな!何だよ急に!!」

「え、ちょ、マヂえ?彼女?アイツが・・ちょ、ムリムリムリだよマヂ冗談キツいって、っていうかなんでアキ・・え、本当に、え、えぇぇぇぇぇぇえ!!!???」

突然雄弁になった俺に、やや怯む三田さん。

「何だよマヂ意味わかんねぇよ!彼女なら潔く彼女だって認めろ!!!!」

「いや、それはできません」

俺はノーの意思表示に片手を胸の高さに挙げた。

⏰:10/01/16 08:34 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#428 [ひとり]
「どこまでも往生際が悪・・・」

「従兄弟だから」







「は?」


再び振り上げにかかっていた三田さんの腕の動きが、中途半端な位置で止まった。

「何、言って・・・」

「アキは従兄弟だから、彼女にはできないです。てかその冗談キツいです」

⏰:10/01/16 08:34 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#429 [ひとり]
何だ、そっか。
そういう事なのか。

だから俺が"逃げた"って。


頭にかかっていた靄が、一気に晴れていく感覚。


「だから幻覚じゃないです。ちゃんと見えてますよ、三田さんが。ちゃんと・・・・俺の好きな人が」

「根岸・・・」


やべ、ちょっと今のは臭かったかな。


でもこの雰囲気は言っとくべきだろ。

だってつまりアレでしょ?
これ、ヤキモチでしょ?


そう気付いた途端に。口に広がる血の味も、腹の痛みも、殴られすぎてつっぱる顔の感覚も、その一つ一つが"証"みたいで。

ヤバい、凄げぇ嬉しい。

⏰:10/01/16 08:35 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#430 [ひとり]
もう感情が止めどなくて、喉がムズムズする。

「ごめん、誤解させて。俺マヂ三田さんだけだから。あんたしか見えてないから、だから・・・ごめんね」

アキが彼女じゃなかった事が余程信じられないのか、三田さんは口を半開きにしてキョトンとしていた。

「三田さん?」

名前を呼びながら、さっき殴ってしまった右の頬にそっと触れた。

⏰:10/01/16 08:36 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#431 [ひとり]
三田さんは俺の手の感触で我に返ったようで、馬乗りのまま俺を見つめた。その瞳にみるみる水の膜がはって、ゆらゆらと揺れる。決壊は近い。

「・・・・・俺・・・ごめ・・・」

喉を震わせながら。真っ赤になった顔で俯けば、前髪の隙間から大粒の雫がポタポタと俺のカットソーに染み込んでいく。

「・・ごめん・・・ごめ、根岸・・・・ごめ」

⏰:10/01/16 08:46 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#432 [ひとり]
さっきまでの猛々しい姿が嘘のように、小さくなってしまった三田さんは、さながら借りてきた猫。

声は出さずに、静かに肩を震わせて泣いた。

「ごめん・・・ごめんなさ・・・・」

「三田さん」

「俺・・・・ごめ・・・・ん・・」

「三田さん」

俯いて、謝るばかりの三田さんの顔を両手で包んで上げさせた。

⏰:10/01/16 08:51 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#433 [ひとり]
「俺こそごめんなさい」

目を見て言うと、真っ赤な顔がくしゃっと歪んだ。

なんだよコレ反則だろ。毎度毎度の反則技は心得ていたけど、こんな風に泣かれたら。

「・・岸、くるし・・・」

俺は力任せに三田さんの身体を抱き締めた。

モコモコしたダウン越しにも、三田さんの姿形を感じて。その華奢な形を、もっと感じたくて、更に力を込めた。

初めての抱擁。

⏰:10/01/16 09:02 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#434 [ひとり]
初めはぎゅうぎゅうと俺が締め上げているような一方的なものだったが、気付けば自分の背にも同じように腕が回されていて。無言で込められる力に、抱きしめ返されてるんだとまた嬉しくなる。

互いの肩上に顎をのせるように抱き合ったまま、俺は少し調子に乗ってみた。

「三田さん」

⏰:10/01/16 20:50 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#435 [ひとり]
「ん?」

泣いたせいで『ん?』が若干鼻声なのがいい。

「言って下さい」

「え?」

『何を』って顔に書いてある。そういう分かり易いところもいい。

「俺はもう、何度も言ったよ」

「・・・・・・」

あと、赤面症だったんだ。って新しい発見もあった。

「三田さんも同じなら、言って下さい」

何を言われてるのか、飲み込んだようで。

⏰:10/01/16 20:53 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#436 [ひとり]
「お〜・・・お、お前が・・・」

「・・・・・うん」

「俺はその〜つまり〜・・・・・なんだ」

「・・・・・うん」

「〜〜〜〜だぁぁぁあ!!!!恥ずい!!!根岸ヤバい!!!!俺今中三でオネショした時以上に恥ずいんですけど!!!!」

「・・・・・うん、そういうもんだと思います」

⏰:10/01/16 20:59 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#437 [ひとり]
「へ?」

「恋愛って、そういうもんだと思います。恥ずかしくって、みっともなくって、それでいいんですよ、きっと」

「・・・お前今日、よく喋んのな」

「はい、殴り合いと抱擁で今、アドレナリンどっぱんどっぱん出てますから」

「どっぱんどっぱんてか、ザッパンザッパンじゃね?」

「いや寧ろ、ズッキュンバッキュンて感じですね」

⏰:10/01/16 21:06 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#438 [ひとり]
「マヂでか」

「はい、マヂっす」

「俺もだわ、さっきの殴り合いと・・・あと、お前が好きすぎて、ズッキュンバッキュン」

「今・・・・」

今言った。確かに聞こえた。"好きすぎ"だって。

三田さんは照れ隠しのためか『つぅかズッキュンバッキュンてなんだし!!』とデカい声で一人ツッコミ。

あぁどうしよ。

⏰:10/01/16 21:11 📱:F01B 🆔:S6jD0iTs


#439 [ひとり]
三田さんが俺のために赤面している。俺のために、いい年こいて、なんかもじもじしている。

オッサンのくせに、オッサンのくせに・・・・

「あぁぁぁあ!!!もうダメだあんた可愛いすぎなんだよチキショォォオ!!!!」

「うおっ!!!何だよデカい声だして」

「うん、気持ちが振り切っちゃいました、キスしていいですか」

「お前、ムードもへったくれもねぇな」

三田さんは、俺の突然の申し出に呆れ半分に笑った。

⏰:10/01/17 16:16 📱:F01B 🆔:7F/S0ukA


#440 [ひとり]
「男同士なんだから、遠慮してるだけ損でしょ」

「違いねぇ」

そして二人で笑った。

「じゃ、しますよ」

「ちょ、バカやめろ"しますよ"とか、中坊のファーストキスじゃあるまいし」

近付けようとした顔の左頬をぐんと手のひらで押し退けられて、上体がダイナミックに後ろへ反った。

「痛い痛い痛い腰きてるから!腰にヤバい影響が及んでるからコレ!!」

「あ、悪り」

⏰:10/01/17 16:16 📱:F01B 🆔:7F/S0ukA


#441 [ひとり]
三田さんは慌てて手のひらを引っ込めた。

「だってお前が恥ずかしいこと言うからだろ」

眉を少しつり上げて怒ってみせるけど、それがただの照れ隠しってことは、容易に見て取れた。

「さっきも言いましたよね、恋愛はそういうもんだって」

「そうだけど・・・」

⏰:10/01/17 16:20 📱:F01B 🆔:7F/S0ukA


#442 [ひとり]
「恥ずかしい今の状況を楽しんで下さい」

「・・お前って、よくわかんない奴だな」

「そうですか?俺は今最高に楽しんでますけど、てかファーストキスなんて目じゃないくらい、今のほうが恥ずかしいし、ドキドキしてますよ」

これは本音。実際中一の時一個上の先輩としたファーストキスは、彼女がして欲しそうだったからしてやったぐらいの感覚だったし。

⏰:10/01/17 16:21 📱:F01B 🆔:7F/S0ukA


#443 [ひとり]
こんな風に自分の感情が動かされるなんて、一度だってなかったんだから。

「「・・・・・・・・」」

三田さんは俺の言葉を聞いて、静かになった。嫌じゃない沈黙。それから

「よしこい!」

『よしこい』って。ちょっと吹き出しそうになったけど、そこはぐっと堪えた。

「失礼します」

「・・・・・・・」

「あの、できれば目」

「・・・・あ、そっか」

⏰:10/01/17 16:23 📱:F01B 🆔:7F/S0ukA


#444 [ひとり]
力一杯に目を瞑る三田さんと、徐々に距離がなくなっていく。


30p・・・・15p・・・・10p・・・・5p

















⏰:10/01/17 16:30 📱:F01B 🆔:7F/S0ukA


#445 [ひとり]
【休憩】

今晩は、ひとりです。

ついにくっつきましたお待たせしました!!

初めての抱擁と初めての接吻。まぁチューの辺りはご想像にお任せします←

恋愛はこうでなければ!恥ずかしくみっともなく必死なんです!!と、自分の勝手な意見を全面に出させていただきました。

チューもっと詳しく見せろよってご意見あれば、感想番にリクも受け付けます。が、基本こんな感じです。ぴーや

⏰:10/01/17 21:31 📱:F01B 🆔:7F/S0ukA


#446 [しら☆たま]
やっとくっつきましたね!わくわくどきどきしました(*^ω^*)
これからどうなるのか楽しみです!
頑張って下さい!

⏰:10/01/17 22:27 📱:P03A 🆔:Yn1CqGvg


#447 [ひとり]
>>446

しらたまさん

初めまして、コメありがとうございます(^ω^)

本当にやっとって感じで、お待たせしました(笑)

よければ総合の感想板にも遊びきて下さい\(^Д^)/これからも根岸と三田をよろしくです

⏰:10/01/18 09:15 📱:F01B 🆔:gE0ZDug6


#448 [ひとり]
【第二十四話/ホール回しはおてのもの】


根岸が女の子と腕を組んで登場したあの日、目撃してしまった俺はむしゃくしゃして。むしゃくしゃしてる自分に気付いてそれが益々俺のむしゃくしゃっぷりを増長させた。

だから夜、暇だったし機嫌悪かったし、早めの店仕舞いを主張した。もちろんひろむにダメって言われると思っていたら、すんなり快諾されて正直驚いたけど、それならしめたもんだ。

⏰:10/01/18 10:09 📱:F01B 🆔:gE0ZDug6


#449 [ひとり]
きっとこのむしゃくしゃは嫉妬だ。確信していた。何に対してってんなもん決まってんだろーが。俺を好きだなんてほざいてフェイントかけた隙に、一人ちゃっかり彼女ができた根岸に対してだ。

俺なんか女っ気0なのに、毎日男子校みてぇな満腹堂で仕事して、休みは仲間と草野球。それもなければパチかスロット。なにこのカサついた日々・・・・思い返しても切なくなってくるわ。

⏰:10/01/18 10:09 📱:F01B 🆔:gE0ZDug6


#450 [ひとり]
おかげでうちのジュニアも寂しがってますよ。どうしてくれるんですかコレ。考えてみれば去年の秋ぐらいから俺、一人でしか・・・あ、ダメダメダメ、マヂで泣けてくる。

となればもう、早く店を締めたそんな日に向かう先なんて一つだろぅが。

「お疲れさーん」

「おつー」

皆口々に言って、それから『どうする?』『べぇやんち?』なんてアフター10のご相談。

⏰:10/01/18 10:10 📱:F01B 🆔:gE0ZDug6


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