こちら満腹堂【BL】
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#422 [ひとり]
ボッ
俺も正面からボディーに一発ぶち込んだ。
「ゴホッ、ゲホ・・お前さ」
痛みやり過ごすように中腰姿勢で両膝に手をついた三田さんは、真下に視線をやったまま言った。
「彼女できたんだろ?」
「は?」
いつ俺に彼女が?"明太にぎりだと思ったら中身がツナマヨだった"ってくらい予想外で、俺は構えていたガードを下ろした。
そこへ
「隠したってもう知ってんだよ!」
ゴッ
また一発。
油断したせいで、簡単によろけた俺は、尻餅ついて尾てい骨を強か打った。
・
:10/01/15 09:11 :F01B :ShyQlI2A
#423 [ひとり]
「っ───」
痛すぎて声がでない俺の腹の上に、乱暴な動作で馬乗りになった三田さん。
「お前が!!」
「好きだって!!」
「言った!!」
「くせに!!」
「やっぱ!!」
「女が!!」
「いいん!!」
「だろ!!」
言葉と言葉の間に飛んでくるパンチを、左右の頬にモロに喰らいながら、
やべぇ、殴り殺されるかも。
とかリアルに思った。
それから
三田さんになら、それもありかも。
とも思った。
・
:10/01/15 21:54 :F01B :ShyQlI2A
#424 [ひとり]
それから
でもやっぱり殺されるんなら、その前にちゃんと伝えたいって、思い直して。
「好きだよ」
殴られながら言ったその台詞は酷く弱々しくて、不格好で、なんか薄っぺらに聞こえた。
それでも、それは三田さんの耳にも届いたようで。順番に振り下ろされていた両腕は、ぴたりと動きを止めたんだ。
・
:10/01/15 21:55 :F01B :ShyQlI2A
#425 [ひとり]
「殴られすぎて幻覚でも見えてんの?」
鼻から息を抜くようにして、三田さんは『はん』と俺を嘲笑った。
「違う、幻覚なんか見てない」
「俺は茶髪の巻き髪した覚えも、白いブリブリなコート着た覚えもねぇ」
「え、何それ?」
「白々しい、さっき店に来ただろ!!」
「さっき・・・・え、何が?」
ゴッ
また殴られた。
「だから彼女が来てただろ!!!!」
・
:10/01/15 21:55 :F01B :ShyQlI2A
#426 [ひとり]
さっき来た───
茶髪の巻き髪────
白─────
ブリブリなコート───
頭の中で少しずつ言葉のパーツを集めて。
彼女─────
組み立てて。
彼女──────
組み立てて。
かの・・───────え?
「えぇぇぇぇぇえ!?!?!?」
・
:10/01/15 21:57 :F01B :ShyQlI2A
#427 [ひとり]
「うっせぇな!何だよ急に!!」
「え、ちょ、マヂえ?彼女?アイツが・・ちょ、ムリムリムリだよマヂ冗談キツいって、っていうかなんでアキ・・え、本当に、え、えぇぇぇぇぇぇえ!!!???」
突然雄弁になった俺に、やや怯む三田さん。
「何だよマヂ意味わかんねぇよ!彼女なら潔く彼女だって認めろ!!!!」
「いや、それはできません」
俺はノーの意思表示に片手を胸の高さに挙げた。
・
:10/01/16 08:34 :F01B :S6jD0iTs
#428 [ひとり]
「どこまでも往生際が悪・・・」
「従兄弟だから」
「は?」
再び振り上げにかかっていた三田さんの腕の動きが、中途半端な位置で止まった。
「何、言って・・・」
「アキは従兄弟だから、彼女にはできないです。てかその冗談キツいです」
・
:10/01/16 08:34 :F01B :S6jD0iTs
#429 [ひとり]
何だ、そっか。
そういう事なのか。
だから俺が"逃げた"って。
頭にかかっていた靄が、一気に晴れていく感覚。
「だから幻覚じゃないです。ちゃんと見えてますよ、三田さんが。ちゃんと・・・・俺の好きな人が」
「根岸・・・」
やべ、ちょっと今のは臭かったかな。
でもこの雰囲気は言っとくべきだろ。
だってつまりアレでしょ?
これ、ヤキモチでしょ?
そう気付いた途端に。口に広がる血の味も、腹の痛みも、殴られすぎてつっぱる顔の感覚も、その一つ一つが"証"みたいで。
ヤバい、凄げぇ嬉しい。
・
:10/01/16 08:35 :F01B :S6jD0iTs
#430 [ひとり]
もう感情が止めどなくて、喉がムズムズする。
「ごめん、誤解させて。俺マヂ三田さんだけだから。あんたしか見えてないから、だから・・・ごめんね」
アキが彼女じゃなかった事が余程信じられないのか、三田さんは口を半開きにしてキョトンとしていた。
「三田さん?」
名前を呼びながら、さっき殴ってしまった右の頬にそっと触れた。
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:10/01/16 08:36 :F01B :S6jD0iTs
#431 [ひとり]
三田さんは俺の手の感触で我に返ったようで、馬乗りのまま俺を見つめた。その瞳にみるみる水の膜がはって、ゆらゆらと揺れる。決壊は近い。
「・・・・・俺・・・ごめ・・・」
喉を震わせながら。真っ赤になった顔で俯けば、前髪の隙間から大粒の雫がポタポタと俺のカットソーに染み込んでいく。
「・・ごめん・・・ごめ、根岸・・・・ごめ」
・
:10/01/16 08:46 :F01B :S6jD0iTs
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