こちら満腹堂【BL】
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#511 [りんご]
あたしも
あげちゃうー(^ω^)ノ

⏰:10/02/04 20:11 📱:SH903i 🆔:hg1EVxs6


#512 [ホシ]
おやおやbげとこ・ω・

⏰:10/02/07 20:04 📱:Sportio 🆔:r2TOxY3.


#513 [ひとり]
今残ってるのは俺達三人。津久井はバイクで帰るし俺はチャリだ。そう言えば、アキは何で此処まで来たんだ?


「そういえばアキちゃんて帰り何で帰るの?」

俺が聞く前に、津久井がいいタイミングで質問してくれる。

「今日は電車で取り敢えず来てみたんですけど、終電ヤバいですかね」

「ヤバいっつーか、完全にアウトだよ」

「ですよね」

「なんなら俺乗っけてこうか?」

おいおい津久井、それは凄い素晴らしい提案じゃないか。俺は思わぬ天の助けに気付かれないほど小さい、しかし渾身のガッツポーズをした。

⏰:10/02/09 00:39 📱:F01B 🆔:gfb29CHM


#514 [ひとり]
「え、そんなの悪いですよ、それに私ゆうちゃ・・」

「悪いな津久井」

断りかけたアキの変わりに賺さず礼を言うと、津久井は屈託なく応えた。

「いいって、根岸んちの近くなら途中なんだし、ついでついで」

「え、津久井さん私本当に・・・」

「メット二個ある?」

「もち」

「んじゃ頼んだわ」

「おう」

口を再び開きかけたアキの先制をついて、どんどん話しを進めた俺は

「津久井の運転意外に荒いから、振り落とされんなよ」

⏰:10/02/09 00:40 📱:F01B 🆔:gfb29CHM


#515 [ひとり]
言い添えて先に店を出た。

後から続いて津久井と、不満だらけな顔でしかし何も言えないアキが出てくる。

「後俺しめとくから、根岸は帰っていいよ」

キーケースをじゃらつかせながら言われて、

「おう悪り、おつかれ」

「おつかれ〜」

にこやかな津久井とは対局の、恨めしそうなアキの瞳に、流石にちょっと申し訳なくなる。

「・・・・・」

「アキも、おつかれ」

「・・・・うん」

⏰:10/02/09 00:40 📱:F01B 🆔:gfb29CHM


#516 [ひとり]
答える声も、酷くぶっきらぼうだ。

「よく頑張ったな」

機嫌をとるように初日の働きぶりを労って軽く頭を叩くように撫でてやる。

するとどうだろう、急に顔を上げて嬉しそうに笑いかけられた。ゲンキンな奴。見てくれをどんなに変えても、こういう所は昔っから変わらない。可愛い従兄弟のアキ。

「明日は一緒に帰ろうな」

なんて、思わず甘やかしてしまった。確かに最近三田さんちに入り浸ってばかりで、アキに構ってやれなかった、寂しい思いをさせてたんだろう。だからこそアキはバイト先までこうして乗り込んできたわけで。アキの事はもちろん知っている三田さんは、もしかしたらあの人なりにアキに気を使ってバイトに雇ってくれたんじゃないか、なんて考えが浮かんだ。

公私混同は否めないし、それに第一俺に内緒にする必要性は微塵も感じられないんだが。

⏰:10/02/09 00:41 📱:F01B 🆔:gfb29CHM


#517 [ひとり]
「絶対だからね」

「あぁ、絶対だ」

「ゆびきり」

「はいはい」

目の前に差し伸べられたら細っこいアキの小指に自分のを絡める。

「嘘ついたら針万本飲〜ます」

軽やかに歌ってみせたアキに、津久井が笑った。

「アキちゃんアキちゃん、それ千本だと思うよ」

「千本なんかじゃぬるいから、万本にしました」

ちょっと子供っぽいですかねと照れ臭そうに笑い返すアキと、そっかと軽く請け合った津久井だったが、俺はこの約束だけは破るまいと一人誓った。だって、アキの笑った顔の中でその目だけは本気の色を帯びていたから。こりゃ破りでもしたらその日のうちに裁縫屋の梯子もしかねないって確信があった。

⏰:10/02/09 00:42 📱:F01B 🆔:gfb29CHM


#518 [ひとり]
「したらまた明日」

「うん、明日ねぇ」

「おつかれー」

俺は今度こそサドルに跨ると、地面を蹴って三田さんのもとへ向け走り出した。



チャイムを鳴らすと間もなく怠そうな応答があって扉が開かれ、現れた三田さんはスウェットの上下に邪魔な前髪をゴムで結んだ姿で俺を迎え入れた。

「お疲れさん」

「お疲れさまです」

靴紐を緩めようと玄関に腰掛けた俺が無造作に置いた荷物を、当たり前のように持ってリビングへと先に消える後ろ姿を振り返り見た。甲斐甲斐しい新妻みたいじゃないか。三田さんの一挙手一投足にこうして一々反応するのは気持ちが片道だった頃から何ら変わらないところだが、それに相手からの好意を汲み取れるようになったというのが最大の異点であり、それがどんなに俺を幸福の高みへと昇らせているのか、きっと当の本人は無意識無自覚なんだろう。

⏰:10/02/09 00:42 📱:F01B 🆔:gfb29CHM


#519 [ひとり]
あの人が往復した際に開閉したドア。その気流に乗っかって、胃をいい感じに刺激する匂いが漂ってきた。それを一粒の粒子も逃さぬように思い切り吸い込むと、うん、これはどうやらカレーみたいだ。三田さんの好物はカレーにハンバーグにミートスパゲティー、オムライスとお子さまランチのスタメンで構成されている。ただその中でカレーだけは厄介な奴なんだと以前愚痴られた事がある。何故かと聞き返すととんだ愚問だと呆れられた。要するに、その量が問題なのだと言う。

『考えてもみろ、一人暮らしってことは"独り"ってことだ』

俺は普段カレーなんてインスタントか外食でしか食べないからわからなかったが、何でも自炊派の三田さんにするとカレーは作れば毎回多すぎて後が困るんだそうだ。ならば初めから考えて少なめに作ってはどうかと提案したら

『それじゃやっぱり物足りない』

と一蹴されておしまい。普通に作れば多すぎて、控えて作れば物足りない。俺の中でカレーは、二人以上で食べてこそのカレーなのだと、何故か誇らしげに熱弁する姿がフラッシュバックした。

⏰:10/02/09 00:43 📱:F01B 🆔:gfb29CHM


#520 [ひとり]
「お前遅せぇよ」

三田さんの声でいつの間にか思い出に浸かっていた意識が浮上する。見れば手に皿とおたまを持って仁王立ちしていた。

「カレー冷める」

「はいはい」

踵をきちんと揃えて玄関の隅に靴を置くと、俺はカレーの匂いでいっぱいになった暖かいリビングへと向かった。



「「いただきます」」

コタツに入って俺達は手をあわせる。三田さんの作るカレーは煮崩れない綺麗なジャガイモがゴロゴロ入っていて、玉ねぎの甘さがたまらない。まさに絶品だ。

デカすぎるほどにデカいジャガイモをスプーンで割開くと、中から白く湯気が立ち上る。舌を火傷しないよう慎重に口に運び、はふはふと少しずつ熱を逃がしながら食べる。美味い。

俺同様に先ずジャガイモに手を着けたらしい三田さんも、はふはふやっている。そして全て飲み下すと、うんめーと顔全体で笑ってみせた。俺が美味いですねと同調すれば、更にその表情を綻ばせる。嗚呼またそんな顔して、抱きついてやろうかなコンチクショー。

⏰:10/02/10 09:13 📱:F01B 🆔:FBG14ABw


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