こちら満腹堂【BL】
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#673 [ひとり]
【第三十一話/マグロのカマって、なんか盛りだくさん】
長谷部さんちで飲みをしてからもう一週間が経とうとしている。忙殺されそうな日々が続いていた。来月、またライブに出て欲しいと助っ人の依頼が入ったのだ。学生時代に組んでいたメンバーからの誘いとあっては断るわけにもいかない。
満腹堂と家とスタジオを行き来する日々で、気付けば辺りの景色はすっかり葉桜が目立つようになっている。
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:10/04/20 09:09 :F01B :X3tyuUEE
#674 [ひとり]
五月がすぐそこまで来ている。
満腹堂の裏口に置かれたベンチにかけて、紙切れを広げた。
五月の確定シフト。
三田さんに渡された時、こう謂われた。
『アキの誕生日、お前の休みにしといたから、祝ってやれ』
その言葉通り、二十二日の欄には根岸、休、と印刷されていた。
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:10/04/20 09:14 :F01B :X3tyuUEE
#675 [ひとり]
こんなん謂ったら確実に怒るだろうが、ぶっちゃけ忘れていた。アキの誕生日。
でも三田さん、何でわざわざ俺が休みとってまで祝ってやらなきゃなんないんすか?
謂われた時俺は素直に返した。
だってそうだろ。大学の友達だって少なくないアキの誕生日を、従兄弟がしゃしゃりでてわざわざ祝うってのは妙な話だ。
俺の疑問に、三田さんは何事かもごもご謂っていたけれど、よく聞き取れなかった。聞き返そうとしたら『この話はしまいだ』と請け合ってくれなかった。
何なんだ、まったく。
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:10/04/20 09:20 :F01B :X3tyuUEE
#676 [我輩は匿名である]
あげます
:10/04/20 19:17 :SH03A :☆☆☆
#677 [ひとり]
>>676匿名さん
あげありがとうございます(´_ゝ`)
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:10/04/21 00:24 :F01B :pGKtM.9w
#678 [ひとり]
「火、貰える?」
不意に差した影と頭上から降る声に顔を上げれば、目の前にノジコさんがいた。
「どうぞ」
俺はケツ一つ分横にずれながら、パンツのポケットから取り出したジッポをカチンと開けて着火した。
ベンチの開けたスペースに腰を落ち着けて、ノジコさんは灯したライターから火をとると、真上に向けて煙を吐いた。
「邪魔した?」
「いえ、全然」
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:10/04/21 00:32 :F01B :pGKtM.9w
#679 [ひとり]
「そう、なんかやたら難しい顔してたから」
「基がサスペンス顔なんで」
「あぁ、確かに"崖"、"二時間スペシャル"で検索したらヒットしそうな顔してる」
「それ、船越○一郎ですよね?」
「わかった?」
どうでもいい会話をしながら旨そうに煙草を吸うノジコさんを横目で見てたら、俺も吸いたくなってきて一本取り出す。
実際それは旨かった。
空は、よく晴れている。
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:10/04/21 00:39 :F01B :pGKtM.9w
#680 [ひとり]
「シフト?」
ノジコさんの視線は、俺の左手にあるシフト表を捉えていた。
「はい、来月の確定です」
「あたしも早く貰わにゃ」
「ノジコさん、来月連勤やばいっすね」
「え、マヂで?」
「はい、普通に週休二日制のリーマンみたいっすよ」
「うわ、萎えるわー」
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:10/04/21 00:44 :F01B :pGKtM.9w
#681 [ひとり]
言って嫌そうに顔をしかめたノジコさん。
それから俺達は互いに無言で煙草を楽しんだ。
吸い終わってしまえば、またノジコさんから話しかけてくる。
「そういや最近恋人とは上手くいってんのかよ」
寄越された話題は唐突過ぎて、一瞬反応が遅れた。
「俺恋人いるなんて話しましたっけ」
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:10/04/22 01:17 :F01B :5eZMuM6U
#682 [ひとり]
そうだ、謂った覚えがないのだ。なのに彼女はさも以前から知っていたかのような口振り。驚く俺の顔がおもしろいのか、横目でにやりと笑われた。
「今更すぎだな、いるんだろ?わかるよ」
喋ったその流れから自然と口元に二本目の煙草をくわえた。満腹堂は時代錯誤のヘビースモーカーが犇めいている。
「いつから」
「前、お前にここで質問された時から」
「ここで・・あぁ」
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:10/04/22 21:15 :F01B :5eZMuM6U
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