太陽と夏の空
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#251 [ラビ]
…でも、開けなければいけない…。


震える手を握り、ノックする。


…コンコン…


そして次に冷たいドアノブに手をかけた。



…ガラガラガラ…



俺はゆっくりとドアを開けた。

⏰:06/09/05 19:29 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#252 [ラビ]
静かに病室に入る…。


達矢「…………」


俺は言葉を失った。


…何で?



深く深呼吸をして


ベッドに近付いた。

⏰:06/09/05 19:40 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#253 [ラビ]
俺は…目の前の真実を受け入れられなかった…。



ベッドの中では…








ヒロキが眠っていた。

⏰:06/09/05 19:43 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#254 [ラビ]
達矢「おい…?」


俺はゆっくり手を伸ばし、ヒロキの体に触れた。



…氷のように冷たい。


父さんのときと同じ冷たさだ。



…嘘だろ?


誰か嘘だって言えよ…。

⏰:06/09/05 19:46 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#255 [ラビ]
ヒロキ…


ホントは寝てるだけだろ…?


だって…今にも目ぇ覚ましそうな顔してんじゃん。


俺は何がなんだかわからなくなって、ヒロキの体を起こしてゆすった。

⏰:06/09/05 19:49 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#256 [ラビ]
達矢「おい!起きろ!!これから練習だぞ!!あと3日で甲子園だ!!寝てるヒマなんてねぇよ!!」


いくら揺すっても揺すっても起きない。


それに…


ヒロキの体は本当に冷たくて



人間の温かさなんてモンはなかった。

⏰:06/09/05 19:51 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#257 [ラビ]
…死んだのか…?


頭をよぎった言葉…。


そして目からは


涙がポロポロとこぼれ落ちた。

⏰:06/09/05 19:58 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#258 [ラビ]
達矢「ちくしょう!!」


俺はベッドの横にうずくまり、大声で泣いた。


達矢「何でだよ?!お前…俺を日本一のショートにしてくれるんじゃなかったのかよ?!
やっと甲子園が決まったのに…。もうちょっとすりぁ甲子園だったのに…。
お前が一番楽しみにしてたじゃねぇかよ!!
勝手にいなくなってんじゃねぇよ…。

⏰:06/09/05 20:03 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#259 []
どーなッちゃぅの

⏰:06/09/05 20:08 📱:SH902i 🆔:Rz/56dwY


#260 [ラビ]
誰がマウンドに立つんだよ…。お前の変わりなんていやしねぇのに!愛川を甲子園に行かせたのも…お前だろうがぁ…。
死んでんじゃねぇよ…ヒロキ…。」


俺は悔しくて悔しくてたまらなかった。


誰よりも甲子園を楽しみにしている奴が…

甲子園を目の前にしていなくなった。


俺には泣くことしか出来なかった。

⏰:06/09/05 20:08 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#261 [ラビ]
ヒロキは、毎日朝早くに起きてランニングをしているらしかった。

そして今日も朝早くにランニングに出かけた。


家を出て30分後…





道路で倒れた。

⏰:06/09/05 20:12 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#262 [ラビ]
犬の散歩をしていた人が偶然通りかかり、すぐに救急車で運ばれたが…


目を覚ますことはなかった。





“心不全”



それがヒロキの死因だった。

⏰:06/09/05 20:15 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#263 [ラビ]
ヒロキの母さんは、ランニングなんか行かせなければ良かったと自分を責めているらしい。


…ヒロキ…。



悔しいよ…。


悔しくて悔しくてたまんねぇ。



でもさ…


お前はもっと悔しいよな。


ずっと夢見てた甲子園…


お前は…

立てないで終わったんだ…。

⏰:06/09/05 20:18 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#264 [ラビ]
なんで神様は…


こんなヒドイことするんだろう…。


ヒロキ…


お前…

悔しくて死にきれねぇよな…。



達矢「…っくしょう!!ちくしょう!!」


俺は床を殴った。


悔しくて悔しくて…



バカみたいに床を殴った。

⏰:06/09/05 20:22 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#265 [ラビ]
達矢「ヒロキ…戻ってこいよ…ヒロキぃぃ…」


床を殴り続ける俺を母さんが止めた。


「達矢ぁ!止めなさい!」


母さんも涙で顔がぐしゃぐしゃだった。



俺はとりあえず病室を出ることにした。

⏰:06/09/05 22:02 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#266 [ラビ]
病室を出て、待合室の椅子に座る。


俺は下を向いてボーっといていた。


とゆうか、ボーっとすることしか出来なかった…。





『甲子園行こうぜ』


『お前を日本一のショートにしてやんなきゃな!』


『達矢がいてくれて本当に良かった』

⏰:06/09/05 22:06 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#267 [ラビ]
次々に出てきては消える、ヒロキの言葉…。


あんなに笑ってたのに…


ずっと一緒に戦ってきたのに…。


そのヒロキはもういないんだ…。




『ありがとう』



これもヒロキが残した言葉…。

⏰:06/09/05 22:08 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#268 [ラビ]
この言葉は…


俺もヒロキに言わなきゃならない言葉だ。


ヒロキのおかげで…


もっと野球が楽しくなった。



また涙がポロポロと流れ落ちる。

本当に…悪夢だ。

⏰:06/09/05 22:11 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#269 [ラビ]
いや、違う…。


悪夢…“夢”であるならまだマシだ…。


とゆうより、夢であって欲しい。


明日の朝、目が覚めて学校に行ったら…


ヒロキが朝練してて…

「おはよう」

っていつものように笑ってる。



…そうなればいいと何度も何度も思っていた。

⏰:06/09/05 22:15 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#270 [ラビ]
達矢「はぁ…くそっ…」


…とその時、隣に誰かが座った。

俺は驚いて横を見る。



「…おっす」


…隣には監督が座っていた。


達矢「…監督…」



監督は俺の頭をポンポンと叩いた。

⏰:06/09/05 22:25 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#271 [ラビ]
監督「あんまり泣いたら宮本が心配するぞ」


達矢「そうですけど…泣かないなんて…無理っすよ」


監督「そうだな。悪い悪い。お前はずっと宮本を見てきたんだもんな…。」


監督の言葉に、俺はまた涙を流した。

達矢「俺…悔しいです…。ヒロキが甲子園前に死ぬなんて…有り得ない…」

⏰:06/09/05 22:31 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#272 [ラビ]
泣く俺の頭をまたポンポンと叩き、監督は優しく言った。


監督「俺も本当に無念でならない…。悔しいな。神様もずいぶんヒドイことするモンだ」

監督も泣いているようだった。


静かな待合室で、鼻をすする音が響く。

⏰:06/09/05 22:35 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#273 [ラビ]
しばらくすると、監督がゆっくりと口を開いた。


監督「なぁ…お前、1番着ないか?」


達矢「…え?」


監督「ヒロキがいなくても甲子園出ないわけにはいかないだろう?大会ではお前をピッチャーで戦おうと思ってる…。どうだ?」


俺がピッチャー…。


俺が…ヒロキの変わり…?

⏰:06/09/05 22:42 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#274 [ラビ]
背番号1番はヒロキの番号だ。


俺はショートだから6番…。


監督「ショートには他の奴を入れるよ。ヒロキも変わりに1番を着てもらうとしたら、親友であるお前に着て欲しいと思うだろう」


俺は困った。

確かに…ヒロキも俺に着ろと言いそうだ…。

だが俺は…。


俺は答えを決めた。

⏰:06/09/05 22:45 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#275 [ラビ]
達矢「…着ないです。」


監督は意外な返答に驚いていた。

監督「どうしてだ?ピッチャーは嫌か?どう考えたってピッチャーはお前しか…」


達矢「そうじゃないんです」


俺は監督の言葉を止めた。

⏰:06/09/05 22:49 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#276 [ラビ]
達矢「ピッチャーをやるとか、やらないとかじゃなくて…。背番号1はヒロキのものです。他の誰のものでもありません。」


俺はまっすぐ監督を見て訴えた。

達矢「ウチのエースはヒロキです。だから…ヒロキ以外の奴が着る資格は…ないっ…です…」


話してる途中でまた涙が溢れてきた。

背番号1はヒロキの番号。

それ以外何でもないんだ…。

⏰:06/09/05 22:54 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#277 [ラビ]
達矢「ヒロキは…愛川高校の…ピッチャーですよ…」


俺が涙ながらに話すと、監督はニコっと笑ってそうだな、と言った。


監督「そうだな。宮本はウチのエースだもんな…。よし、そのままで行くか」

そう言うと、監督は立ち上がった。


監督「チームの皆からは俺が報告しておく。今日の練習は中止だな…。お前は学校来なくていいからゆっくり気持ちを落ち着かせておけよ。」

⏰:06/09/05 23:02 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#278 [ラビ]
俺はハイと返事をして、また下を向いた。


監督「じゃあな」


そう言って監督は病院を後にした。





…こんな日でも空はあの時のように青くてキレイだ。


ゆっくりと雲が流れ、いい野球日和。


甲子園まであと3日…。

俺は立ち上がり、また病室へ戻った。

ヒロキに…

別れの言葉と感謝の言葉を伝えに。

⏰:06/09/05 23:08 📱:W32SA 🆔:pFuM3zxU


#279 [ラビ]
【8章―先発投手は背番号6】

チュンチュン…


スズメが鳴いている。


…朝だ。


俺は昨日、あのあと家に戻ってひたすら寝た。


起きていたら涙が止まらないし、ツラくなるだけだった。


「うぅ〜ん…」

⏰:06/09/06 15:54 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#280 [ラビ]
俺は重たい体を起こした。



昨日、ヒロキが死んだっていうのに


何ひとつ変わりない朝だった。



「着替えなきゃ…」


今日は練習だ…。


俺は練習なんて気分じゃなかった。

⏰:06/09/06 16:08 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#281 [カズ]
アゲアゲ

⏰:06/09/06 18:06 📱:W41CA 🆔:ICArSa4w


#282 [ナナ]
>>200->>250
>>250->>300

⏰:06/09/06 18:58 📱:N900iS 🆔:oJfmBvK2


#283 [ラビ]
カズさん~アゲありがとうございます

ナナさん☆アンカーありがとうございます♪(≧∪≦*)

ちょっと更新します((φ( ̄ー ̄ )

⏰:06/09/06 22:34 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#284 [ラビ]
こんなにも

野球がユウウツなのは始めてだ。


「達矢ぁ?起きたぁ?」


下では母さんが俺を呼ぶ。



「あぁ。起きてる」


俺は眠たい目をこすり、部屋を出た。

⏰:06/09/06 23:04 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#285 [ラビ]
「行ってきます」


朝食も済ませ、俺は家を出た。


気持ちのいい風が吹き抜ける。


俺は自転車に乗り、学校に向かった。

⏰:06/09/06 23:09 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#286 [ラビ]
それから20分後…学校に到着。


グランドには誰もいなかった。


達矢「1番に来たのは初めてだな。」

そう…俺は1番最初にグランドに来たことはなかった。


いつも学校に来ると…



ヒロキがいたから。



ヒロキはいつも早く学校に来て、朝練をしていた。

⏰:06/09/06 23:14 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#287 [ラビ]
そして、俺の顔を見るなり、汗だくの顔でニコッと笑い、


“おはよう”


って言うんだ。


学校に来て、最初に聞く言葉…。


「…おはよう」


俺は誰もいないシーンとしたグランドで、ポツリとつぶやいた。

⏰:06/09/06 23:19 📱:W32SA 🆔:OSoUVjEk


#288 [ラビ]
もちろん、返答はない。


つき抜ける風の音だけが

むなしく聞こえた。



俺は部室にカバンを置き、練習の支度をした。



『達矢、帰ろうぜ☆』


いつもここでは、ヒロキは笑って俺に“帰ろう”と誘ってくれた。

⏰:06/09/07 07:08 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#289 [ラビ]
…ダメだ。


グランドにも…


部室にも…



ヒロキの思い出はありすぎる…。


どこに行ってもヒロキの声が聞こえてきそうでツラい…。


そして俺の目から


一筋の涙がこぼれた。

⏰:06/09/07 07:14 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#290 [ラビ]
支度を済ませ、グランドに戻り、何かするのでもなく


ただボーっとしていた。


…天気は晴れ。


穏やかに雲は流れ、


空はただ青く、


太陽は優しく照らす。


俺は、前にこんな空を見上げながら、


ヒロキと交した約束を思い出した。

⏰:06/09/07 07:31 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#291 [ラビ]
『お前を日本一のピッチャーにしてやるよ』


『じゃあオレはお前を日本一のショートにしてやんなきゃな』



…甲子園が始まる前から

この約束は果たせないものになってしまった。

⏰:06/09/07 07:49 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#292 [ラビ]
ぼんやりとそんなことを考えていると、部員たちが集まってきた。


そろそろ練習が始まる。


俺は重たい体を無理に動かして立ち上がった。



「よ〜し、集合!」


監督が号令をかける。


俺は帽子をかぶりなおして走った。

⏰:06/09/07 13:16 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#293 [カズ]
上げます

⏰:06/09/07 14:14 📱:W41CA 🆔:Dhucym1Q


#294 [ラビ]
カズさんアゲありがとうございます~~いつもA感謝です@
今日もバイトなんでまた夜更新しますねc

⏰:06/09/07 16:19 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#295 [ゅぅ]
ここに書き込んですいませんこの話1番すきですまじ泣けます主サン頑張ってください

⏰:06/09/07 16:38 📱:D901iS 🆔:5apinD3Q


#296 [ラビ]
ゅぅサン☆ありがとうございます♪(*´エ`*)ここに書き込んでくださって結構ですよ♪感想板立ててない主が悪いので↓(笑)読んでいただけて本当に嬉しいです(T_T)☆頑張って書くので最後までお付きあいくださぃm(__)m

⏰:06/09/07 22:33 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#297 [ラビ]
全員が集まると、練習前のミーティングが始まった。


『ヒロキの分まで野球をやろう』


監督はそう言った。



そして黙祷(モクトウ)…。


俺たちは帽子を取り


全員が目をつぶり


ヒロキの冥福を祈った。

⏰:06/09/07 22:37 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#298 [ラビ]
黙祷が終わって、すぐ練習に入った。


甲子園も近いので、チーム練習が中心だった。



…そこで、俺はチームの雰囲気の変化に気が付いた。


今まで後輩に冷たく当たっていた3年生が元に戻っている…。


というか、冷たくなる前よりも声をかけている。

⏰:06/09/07 22:43 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#299 [ラビ]
3年「お前、今のナイスプレーだったな☆」


後輩「あ…ありがとうございます!」


そんな場面があっちこっちで見受けられた。


そんなこともあってか、チームの雰囲気はバッチリ。


試合の流れを想定した練習では


驚くほどのチームプレーが連発した。

⏰:06/09/07 22:47 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#300 [ラビ]
…きっと、ヒロキの死が影響しているのだろう…。


俺はといえば、ひたすらピッチング練習に励んでいた。


ヒロキに劣らないピッチャーにならないと…。


その思いでいっぱいだった。


悲しいのは俺だけじゃない。


チームみんな悲しいハズだ。

⏰:06/09/07 22:50 📱:W32SA 🆔:C7kHwruI


#301 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300

⏰:06/09/07 23:17 📱:N901iC 🆔:EiI6Xzio


#302 [ゅぅ]
主は♂♀どっちですかスポーツもの初めてとは思えないです最後まで応援しつづけます

⏰:06/09/08 00:54 📱:D901iS 🆔:yqkdgcyk


#303 [ラビ]
匿名さん☆アンカーありがとうございます♪♪(*^ー^)ノ♪

⏰:06/09/08 06:55 📱:W32SA 🆔:7EhxBMWw


#304 [ラビ]
ゅぅさん☆主は♀です('-'*)野球ではないですが運動部に入ってました♪
野球は弟がやっていて、私もそれなりに知識があったので書いてみました☆たまに変なとこがあると思いますが頑張るので許してやって下さい(T_T)
小説自体を書くのは2回目です(>_<;)

長々と失礼しました↓↓

⏰:06/09/08 07:01 📱:W32SA 🆔:7EhxBMWw


#305 [ラビ]
俺だけクヨクヨしているワケにもいかない。


それに、甲子園であっさり負けたら

それこそヒロキに申し訳ないと思った。




気が付けばだんだんと日も暮れ始め、練習は終わった。


今日が終われば


甲子園まであと明日しかない。

⏰:06/09/08 07:09 📱:W32SA 🆔:7EhxBMWw


#306 [ラビ]
監督「今日もお疲れさん。明日は軽く調整する程度にするからな。あと、出発の準備もしておくように。解散!」


…初めてのヒロキがいない練習は終わった。


こんなにもあっさりと終わってしまうのがちょっと悔しい。

⏰:06/09/08 07:18 📱:W32SA 🆔:7EhxBMWw


#307 [ラビ]
俺は部室に戻り着替えをする。


部室の中はにぎやかだがどこか寂しい。





…あぁ。



ヒロキがいないからか…。


今日は俺は一人で部室を出る。

⏰:06/09/08 10:32 📱:W32SA 🆔:7EhxBMWw


#308 [カズ]
アゲアゲ

⏰:06/09/08 15:42 📱:W41CA 🆔:x97go3wE


#309 [成]
ぉもしろすぎます(´ω`)頑張ってください

⏰:06/09/08 20:42 📱:SH700i 🆔:iApBFxxQ


#310 [ラビ]
カズさん~アゲアゲありがとうございます~

成さん☆そう言っていただけて本当に嬉しいです(T_T)☆めちゃめちゃ頑張ります(≧∪≦*)♪

⏰:06/09/08 22:13 📱:W32SA 🆔:7EhxBMWw


#311 [ラビ]
…甲子園まで…あと1日。


ヒロキがいなくても


甲子園の日は近付いてくる。


俺は家に帰ってから

甲子園へ行く準備をした。

⏰:06/09/08 22:20 📱:W32SA 🆔:7EhxBMWw


#312 [ラビ]
―次の日の朝。

サァァァァァァ…



鳥の鳴き声の変わりに


水の音で目を覚ました。


…今日は雨だ。


セットした目覚ましよりも15分早く目覚めた俺は


カーテンを開け、外を見た。


そんなに激しくなく

優しく降る雨。

⏰:06/09/08 22:24 📱:W32SA 🆔:7EhxBMWw


#313 [ラビ]
その雨はまるで


ヒロキの涙のようだった。


“オレも甲子園に出たい…。”


そんな声が今にも聞こえてきそうで…


胸が苦しかった。




ピピピ…ピピピ…ピピピ…

⏰:06/09/09 09:34 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#314 [ラビ]
ぼんやりとしていると

目覚ましがなった。

ピ…


俺は目覚ましを止めてベッドを出る。


…また一日が始まる…。

⏰:06/09/09 09:39 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#315 [ラビ]
学校に着いてみると

部員がほとんど集まっていた。


甲子園前最後の練習。


みんな相当気合いが入っているようだった。


今日は雨なので外での練習は出来ず

室内練習場でのバッティング練習だった。

⏰:06/09/09 09:45 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#316 [ラビ]
俺は隅に作られたピッチングのスペースで


ひたすらボールを投げた。


全国の奴らに通用するように

全ての変化球、ストレートに磨きをかけた。




「あんまり投げたら試合前に肩壊すぞ」

⏰:06/09/09 09:55 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#317 [ラビ]
そう言われて振り向くと


そこには淳平がいた。


淳平は俺とヒロキが入学してから初めて愛川高校の練習に来たとき


初めて部室で会った奴だ。


淳平はキャッチャーをやっていて

ヒロキがいたときからレギュラーで


ヒロキが投げるボールを

いつも受けていた。

⏰:06/09/09 10:03 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#318 [ラビ]
淳平「お前の球もヒロキの球も対して変わんねぇよ。」


達矢「でも…ピッチャー経験はヒロキのほうが豊富だぜ」


ピッチング練習を続ける俺に

淳平はなぐさめるように言った。

淳平「経験も大事だけどよ…そんだけ投げれたら誰も文句言わんだろ」

⏰:06/09/09 10:11 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#319 [ラビ]
達矢「まぁ、文句言われるのは困るな。」

俺はハハッと笑って答えた。


達矢「でもよ、俺の肩には2人分の期待がかかってんだ」


淳平「2人分?」


淳平は首をかしげて尋ねる。


俺は手を止めて

不思議そうに見つめる淳平に言った。


達矢「父さんとヒロキ…。」

⏰:06/09/09 12:36 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#320 [ラビ]
…そうだ。

俺の肩には


俺が甲子園で投げる姿を楽しみにしていた父さんと…


一緒に甲子園に行き…お互いに日本一になること誓ったヒロキ…。


2人の期待がかかっているんだ。



淳平「そうか…。」


淳平はそれ以上は言わなかった。

⏰:06/09/09 12:41 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#321 [ラビ]
淳平「無理はすんなよ」


それだけ言って立ち去って行った。



達矢「2人分の期待かぁ〜…」


投げ込みをしながらポツリとつぶやいた。


達矢「…重いな…。」


よく考えてみると、あの2人の期待を背負っているなんて


…正直重い。

⏰:06/09/09 21:33 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#322 [ラビ]
期待にこたえられる自信は


ハッキリ言ってない。


でも


やらないワケにはいかないんだ。

ヒロキが立てなかったマウンドで


俺がヒロキの分まで投げきるんだ。

⏰:06/09/09 22:00 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#323 [カズ]
達也がんばれ

⏰:06/09/09 22:03 📱:W41CA 🆔:k9/b9mgU


#324 [ラビ]
「よーし、練習終わるぞー!」


監督が全員に声をかける。


甲子園前最後の練習が終わった。


今思えば…


もう学校で練習することはないんだな…。


そう考えると寂しい思いでいっぱいだった。

⏰:06/09/09 22:06 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#325 [ラビ]
部室に戻り、全員が一斉に着替えを始める。


今日の着替えはジャージじゃなくて…


制服だ。


これから全員…



ヒロキのお通夜に出席するからだ。


俺も夏休み中で着ることのなかった制服に

久しぶりに袖を通す。

⏰:06/09/09 22:10 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#326 [ラビ]
さすがにこれからお通夜とのことだけあって


部室は静かだ。


特に目立って話声は聞こえない。


監督「着替えたかぁ?行くぞー!」


監督の声が沈黙を破る。


『おっす』


着替えを済ませた奴からゾロゾロと部室を後にする。

⏰:06/09/09 22:15 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#327 [ラビ]
野球部のバスに乗って

会場へ向かう。


着いた会場はスゴく広くて


俺達野球部員が全員出席しても

席は全然埋まらないほどだった。


俺は代理キャプテンとして


監督・コーチの隣に座った。


前を向くと


花に囲まれてヒロキが写真の中で笑っている。

⏰:06/09/09 22:20 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#328 [ラビ]
つい最近まで


あの笑顔はすぐ側で見れていたのに…


もう何年も前が見ていないような感じがした。






…しばらくすると、お坊さんが入ってきて

お通夜は始まった。

⏰:06/09/09 22:22 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#329 [ラビ]
↑すいません、訂正で

『何年も前から見ていないような感じがした』

です↓↓ごめんなさい(T_T)

⏰:06/09/09 22:23 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#330 [ラビ]
周りを見渡すと、野球関係者が多く集まっていた。


白石学園の監督とキャプテンもいる…。


地元の高校で来ていない学校はたぶん無いだろう。


それに…


小学のときの監督も…


中学のときの監督も


みんな会場に来て手を合わせていた。

⏰:06/09/09 22:27 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#331 [ラビ]
お通夜が終わり、俺達は席を立った。


部員は全員涙を流していた。


もちろん、俺も。


俺は代表として最後に

写真の前で線香を上げてヒロキに別れをつげた。


写真の中のヒロキは

いつもの顔で笑ってやがる。

⏰:06/09/09 22:37 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#332 [ラビ]
達矢「頑張って来るからな…。」

俺は写真に向かってつぶやいた。

…空から


見ててくれよ。



俺…



頑張るから…。


そして俺は監督の後について会場を出た。

⏰:06/09/09 22:52 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#333 [ラビ]
家に帰ると、母さんもちょうどお通夜から帰って来ていた。


母「あら、おかえりなさい。今ご飯作るね」


達矢「うん…」


母さんの背中を見送り、俺は部屋に入った。


明日…甲子園に向けて出発する。


不思議と緊張はしなかった。

⏰:06/09/09 23:06 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#334 [ラビ]
…今日ヒロキの顔を見てきたからかな…?


ぼんやりとそんなこと考えながら、俺は夕飯までの間眠った。

⏰:06/09/09 23:11 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#335 [ラビ]
―次の日の朝。

…今日はいよいよ出発だ。


俺はいつもより早く起きて支度をしていた。


天気は快晴。


スズメも元気に鳴いているし、


風も気持ちがいい。



今日は暑くなりそうだ。

⏰:06/09/09 23:21 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#336 [ラビ]
部屋を出て下に降りると、


母さんが朝ご飯を作っていた。


母「あら、おはよう。今日は早いね。よく寝れたの?」


達矢「あぁ。おはよう」


俺は母さんに返事をして、和室へ向かった。

⏰:06/09/09 23:30 📱:W32SA 🆔:/ARMUmII


#337 [ラビ]
和室に入ると、一気に線香の匂いが漂った。


俺は仏壇の前に座り、ロウソクに火をつけた。


ゆらゆらと燃える火…。


さらにその火で線香にも火をつけた。





チー…ン…



俺は仏壇に向かって手を合わせた。

⏰:06/09/10 09:19 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#338 [ラビ]
立ちのぼる線香の煙は


父さんの遺影をおおった。


写真の父さんは


『頑張ってこいよ』


と言ってくれたような気がした。


「達矢ぁ〜ご飯出来たよ〜!」

母さんが俺を呼ぶ。


達矢「今行く〜!」

俺は返事をして

もう一度遺影を見上げた。

⏰:06/09/10 09:26 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#339 [ラビ]
達矢「父さん…俺…頑張ってくるから。」


そう言って俺は和室を後にした。


母さん「父さんがいなくなってからもう4年経つのね…早いもんだわ」


俺の顔を見てしみじみと母さんは言った。


達矢「まだ4年しか経ってないよ」

俺はまだ母さんのように

父さんの死を軽々しくは言えなかった。

⏰:06/09/10 09:36 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#340 [ラビ]
すると母さんはフフフと笑って俺に言った。


母「きっと父さんも見ててくれるから、頑張りなさいね」

そう言われた瞬間、さっきの遺影の父さんが浮かんだ。


達矢「言われなくても頑張るよ」

笑う母さんに俺も笑って答えた。

⏰:06/09/10 09:47 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#341 [ラビ]
…「ごちそうさま」


朝食を済ませて、もう一度荷物の確認をする。


…よし。忘れ物はない。


時間も丁度いいので、家を出ることにした。


母「気を付けてね」


達矢「わかってる」


荷物を持って玄関に立つ。


達矢「行ってきます」


微笑む母さんに向かって、俺は笑顔で家を出た。

⏰:06/09/10 09:52 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#342 [ラビ]
ドアを閉めて前を見る。


いよいよ甲子園だ…。


高鳴る胸を抑えながら門を出る。

…その時だった。


「…達矢君…」


…?


誰かに名前を呼ばれ、驚いて辺りを見回す。


達矢「…お…おばさん…」

⏰:06/09/10 10:00 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#343 [ラビ]
そこには、ヒロキのお母さんが立っていた。


達矢「ど…どうしたんですか?」

俺は驚きを隠せなかった。


…なんでヒロキのお母さんがいるんだ?


するとヒロキのお母さんは、持っていた一つの紙袋を俺に差し出した。

⏰:06/09/10 10:04 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#344 [ラビ]
紙袋の中身は、

グローブ・スパイク・帽子…

そして…


背中に1と書かれたユニフォームが入っていた。



ヒロキ母「これ…ヒロキのなの…。」


涙を流しながら話すヒロキのお母さん。


俺は胸がいっぱいになって何も言えなかった。

⏰:06/09/10 10:15 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#345 [ラビ]
ヒロキ母「ごめんね…本当に勝手な話なんだけど…。ヒロキも…一緒に甲子園に連れて行ってあげて欲しいの…」


泣き続けるお母さんを見て、俺は紙袋をぎゅっと握りしめた。


達矢「大丈夫です。ヒロキは愛川高校のエースですよ。エースが甲子園に行けないわけないじゃないですか…。」

⏰:06/09/10 10:20 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#346 [(^_-)-☆]
アゲッ頑張ってね

⏰:06/09/10 12:21 📱:SH902i 🆔:iSp8Hat2


#347 [ラビ]
(^_-)-☆さん♪ありがとうございます☆(*^^*)頑張ります↑(*≧m≦*)

⏰:06/09/10 18:23 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#348 [ラビ]
達矢「…ヒロキが連れて行ってくれた甲子園ですから…。ヒロキも連れて行きます。」


そこまで言って、俺は涙をこらえるのが限界だった。


ヒロキ母「ありがとう…。ありがとう…。」


達矢「じゃあ、俺行きます。ヒロキの分も投げてきますから。見てて下さい…。」

⏰:06/09/10 18:33 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#349 [ラビ]
そう言って俺は、ヒロキのお母さんに背を向けた。


ヒロキ母「気を付けてね…」


ヒロキのお母さんに見送られながら、俺は歩きだした。



…本当は、自分の息子に言いたかっただろう…。


「気を付けてね」…

「頑張ってね」…

…って…。

⏰:06/09/10 19:02 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#350 [ラビ]
きっと…甲子園を決めた日から…


ヒロキのお母さんは、この日…


ヒロキを送り出すことを…

楽しみにしていたと思う。


俺は…


そんなヒロキの母さんの気持ちを思うと


胸が苦しくて苦しくて仕方がなかった。

⏰:06/09/10 19:09 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#351 [ラビ]
達矢「…ッ…行ってきます!!」


俺は目に涙をため、大空に向かって叫んだ。


ぎゅっとつぶった目から


涙がポロポロと流れ出る。



達矢「…ヒロキの…バカヤロー…ッ…」


俺は片手で目を抑えながらつぶやいた。


今日この日…


ヒロキがいないことが

ツラくて死にたいくらいだった。

⏰:06/09/10 19:18 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#352 [ナナ]
失礼します
>>320-380

⏰:06/09/10 19:59 📱:N900iS 🆔:87hWeA4g


#353 [ラビ]
ナナさん☆アンカーありがとうございます(*^_^*)

⏰:06/09/10 20:11 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#354 [ラビ]
学校に着くと、ほとんどの部員が集まっていた。


俺はさっきまで泣いていたのがバレないように

帽子を深くかぶり直す。


しばらくして、監督が現れた。



監督「全員いるなー?荷物積めー」


ゾロゾロと荷物を積み込み、バスに乗っていく。

⏰:06/09/10 20:36 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#355 [ラビ]
達矢「…あ…」


俺は、ボストンを積もうとしたとき、手に握られた紙袋に気が付いた。


…ヒロキ…。


お前も一緒にバスに乗るよな?



俺はボストンだけ積んだあと、

紙袋を丁寧に抱きかかえてバスに乗り込んだ。

⏰:06/09/10 20:44 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#356 [ラビ]
俺が座る座席の隣には淳平がいた。


淳平「おっす」

達矢「おっす」

俺は挨拶を返して座席に座る。



淳平「なんだ?それ?」

早速、淳平は紙袋を指差して聞いてきた。


達矢「…ヒロキだよ」


俺は堂々と答えた。

⏰:06/09/10 20:49 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#357 [ラビ]
淳平「ヒロキ?!」


淳平は目を見開いて驚いていた。

…まぁ普通は驚くだろう。無理もない。


恐る恐る紙袋をのぞこうとする淳平に

俺は紙袋を開いて見せた。




…少し土がついていて、使い古したような茶色のグローブ。



…甲子園のマウンドを踏みしめることを楽しみにしていたであろう、黒いスパイク。

⏰:06/09/10 20:55 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#358 [ラビ]
…少し色がハゲてきた帽子。


そして…



愛川高校のユニフォーム。



背中に輝く番号は


『1』



紛れもない、ヒロキの番号。

⏰:06/09/10 21:02 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#359 [ラビ]
淳平はそれを見て表情を少し曇らせた。


…淳平も俺と同じで

ヒロキがこのユニフォームを着てマウンドに立てなかったのが

悔しくて仕方がないんだろう…。




達矢「なぁ、ヒロキも連れてってやっていいよな?」


俺は黙ってユニフォームを見つめる淳平に問いかけた。

⏰:06/09/10 21:18 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#360 [ラビ]
淳平「当たり前だろ!!」


淳平はバスの中であるのを忘れて叫んだ。


淳平「あ…コホン。」


淳平は我にかえって恥ずかしそうにしていた。


淳平「ヒロキは俺達のキャプテンだぜ。キャプテン不在で試合が出来るかよ」

⏰:06/09/10 21:47 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#361 [ラビ]
淳平は当たり前のことのように言ってくれた。


達矢「ありがとう…。」


俺達はそれ以上の会話をせず、バスの中で寝た。


…甲子園は


もう目の前だ。

⏰:06/09/10 22:16 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#362 [ラビ]
「もう着くから起きろよー!!」


監督の声で目が覚める。


長かった旅路の果てに…


見えるのは甲子園球場。



「うわぁ〜!!」

「すげぇー!!」



バスの中は興奮と感動でいっぱいだ。


達矢「…すげぇ…」

俺も感動してそれ以上の言葉は出なかった。

⏰:06/09/10 22:20 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#363 [ラビ]
長い間ずっと夢見ていた甲子園。

その甲子園が、すぐ目の前にある。


淳平「今年はテレビを通さないで生で見れるんだな」


隣で淳平がつぶやく。


達矢「そうだな…。」


バスは甲子園の近くに止まり、部員はバスを降りる。


とりあえず、球場内を見学するようだ。

⏰:06/09/10 22:28 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#364 [ラビ]
「うぉぉぉ!!!」


球場の中に入ると、興奮は倍以上だ。


なんと言っても広い。


俺は球場を見ただけで涙が出そうなくらい感動した。




ガサッ



俺はとっさに一緒に持ってきた紙袋を思い出した。

⏰:06/09/10 22:34 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#365 [ラビ]
…ヒロキ…。


お前にも見せてやりたいよ。


めちゃくちゃ感動するぜ…?


お前…


あのマウンドで投げれるなんて


これほどない幸せだろ…?


投げたかったよなぁ…?


ヒロキ…。

⏰:06/09/10 22:36 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#366 [ラビ]
ずっとそんなことを考えながら

球場を見回していた。


監督「バスに戻るぞぉ〜」


監督の指示に従いバスに戻る。


これから泊まるホテルへ向かうようだ。



開会式は明日…。


いよいよ“夏の甲子園”が始まる。

⏰:06/09/10 22:45 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#367 [ラビ]
―次の日

ホテルで一夜を過ごし、甲子園に戻って来た。


俺達が着く頃には、すでにたくさんの学校が来ていた。


ハンパないバスの数。



バスを飾る文字たちは


“北澤学園”


“西ノ宮高校”


“田島商業”


などなど…全国に知れ渡る名門ばかりだ。

⏰:06/09/10 22:52 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#368 [ラビ]
もちろん、TV局も来ている。


俺は今までにないほど緊張していた。


バスを降り、球場へ入って行く。


昨日とは違って、観客席も満員。


すでに会場の雰囲気に押しつぶされそうだ。

⏰:06/09/10 22:56 📱:W32SA 🆔:hksmURtU


#369 [カズ]
アゲアゲ

⏰:06/09/11 11:56 📱:W41CA 🆔:Z95XGhJ.


#370 [ラビ]
カズさん~アゲありがとうございます咐~

⏰:06/09/11 22:32 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#371 [ラビ]
「出場校の選手は整列して下さーい」


係員の声が響く。


俺達は“愛川高校”と書かれたプレートの前に並ぶ。



どんどん鼓動が早くなる…。


緊張する…。


その時。



「おい、坂本」


監督が俺の名前を呼ぶ。

⏰:06/09/11 22:43 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#372 [ラビ]
達矢「はい?」


振り向くと、監督は俺に何かを手渡した。


監督「これ、持って歩け。」


そう言って渡されたのは…


ヒロキの遺影だった。



監督「緊張してコケんなよ」



それだけ言って監督は立ち去って行った。

⏰:06/09/11 22:47 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#373 [ラビ]
わぁぁぁぁぁぁぁぁ…


急に会場が沸く。


開会式が始まったようだ。



俺はヒロキの遺影をぎゅっと抱き締め、愛川高校の先頭を歩いた。

⏰:06/09/11 22:49 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#374 [ラビ]
…開会式が終わり、監督の元へ戻る。


監督「これから地元の高校のグランドを借りて調整程度に練習する。いよいよ本番だからケガはするなよ。」


部員『おっす』



全員バスに乗り込み目的地へと向かう。

⏰:06/09/11 22:53 📱:W32SA 🆔:8KaupdBM


#375 [ラビ]
学校に着くと、軽いウォーミングアップから始まり、

すぐに実戦に備えた練習が始まった。


打たれてからの切り返しや、守備の確認などを中心にやった。



俺達の試合は明日。


対戦相手は“高井高校”。


高井高校は甲子園初出場だが、

182センチの長身エースを軸に粘り強く戦ってくるチームだ。

⏰:06/09/12 23:39 📱:W32SA 🆔:gzgnq7RE


#376 [ラビ]
高井高校の長所は守備の良さ。


全くと言っていいほど、弱い場所が見つからない。



さすが全国。


当たり前だが、余裕があるチームなんて、これっぽっちもない。



それに、守備のいいチームに対しては、こちらもしっかり守らなければ勝ち目はない。

⏰:06/09/13 07:05 📱:W32SA 🆔:AJ9B/YDw


#377 [ラビ]
「よーし、クールダウンしろぉ〜」


試合前の調整練習が終わった。


あとは明日…


全力を出すだけだ。

⏰:06/09/13 22:10 📱:W32SA 🆔:AJ9B/YDw


#378 [ラビ]
ホテルに戻り、部屋での自由時間。


ふと空を見上げると、キラキラと輝く夜空があった。


達矢「負けたら最後かぁ〜…」


…高校最後の大会。


これで負けたら…


もうこの愛川の仲間達と野球をすることはない。


そう考えると胸がギューっと苦しかった。

⏰:06/09/14 06:57 📱:W32SA 🆔:n2AqFvfQ


#379 []
ぁげ
ぃつも読ンでるンで頑張ってくださぃ

⏰:06/09/14 19:18 📱:SH902i 🆔:A7a/CjGc


#380 [ラビ]
―次の日の朝。


わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…


球場内の歓声が外まで聞こえる。


今日の第2試合目の俺達は、軽いウォーミングアップを終えて球場に到着した。


「緊張するな…」


部員達も緊張した顔付きで球場に向かう。

⏰:06/09/14 19:33 📱:W32SA 🆔:n2AqFvfQ


#381 [ラビ]
イさん☆ありがとうございます(*^^*)♪♪最近更新が遅くてごめんなさい↓(T_T)頑張りますねッ(*≧m≦*)

⏰:06/09/14 22:58 📱:W32SA 🆔:n2AqFvfQ


#382 [ラビ]
そして、1試合目の試合が終わった。



「よし!行くぞ!」


『おう!!』



全員が気合いを入れ、グランドに足を踏み入れる。



…甲子園の砂。


ただの砂には変わりないのに


なんでこんなにも感動するんだろう。


砂に触れられるだけで…

涙が落ちそうだった。

⏰:06/09/14 23:19 📱:W32SA 🆔:n2AqFvfQ


#383 [ラビ]
しばらくすると、試合開始の合図が出た。


《両校、あいさつ》



アナウンスが響き渡り、俺達は全力で走って整列した。



『っします!!』


相手の高井高校と向かい合い、頭を下げる。


…いよいよプレイボール。


俺達の甲子園第1ゲーム目が幕を開けた。

⏰:06/09/15 06:55 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#384 [ラビ]
1回表…


先攻は高井高校。



愛川は歓声をあびながら守備位置についた。



俺は一人、マウンドに上がる。



トクン…トクン…



立っているだけでも胸が高鳴っているのがわかる。

⏰:06/09/15 21:12 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#385 [ラビ]
…ここが甲子園。



…ここが甲子園のマウンド。



いつもいつもテレビでしか見れなかった。


いつも誰かが投げてるのを見てるしかなかった。


でも…


今投げるのはこの俺だ。



甲子園のマウンドは


すごく居心地が良かった。

⏰:06/09/15 21:33 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#386 [ラビ]
父さんも



何年か前、ここに立っていたんだ…。


そう思うと同時に


ヒロキのことが頭に浮かんだ。



…ここは…



…本当はヒロキが立つ場所だった。

⏰:06/09/15 21:36 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#387 [ラビ]
…俺が立ってていいのか?



いつも後ろ向きに物事を考えてしまう俺の悪い癖。


でも、この日は違った。




達矢「俺じゃなきゃダメだろ」


ボソッとつぶやき、胸を押さえた。



…ヒロキに変わって投げれる奴は俺しかいねぇ。



そう自分にいい聞かせて白球を握りしめた。

⏰:06/09/15 21:44 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#388 [ラビ]
…5回の裏。


試合は両者一歩も引かず、0対0のまま5回を迎えた。


そして愛川高校の攻撃。



相手の長身ピッチャーから振り降ろされる速球に


愛川はなかなか手が出なかった。


それに、相手高校の守備はハンパなかった。

⏰:06/09/15 21:51 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#389 [ラビ]
さすが守備の上手さが有名なだけある。


いいとこに打ったと思っても


ファインプレーの連続。



あっというまにアウトにされてしまう。



「さすがだな…」



俺は全国のレベルの高さを改めて実感した。

⏰:06/09/15 21:54 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#390 [ラビ]
ツーアウト ランナー無し。


…この回も得点0で終わりそうだ。


そう思い守備の準備をしようとベンチ内を見回していると…


ヒロキのユニフォームが目に入った。



ヒロキのユニフォームはキレイにたたまれ、


ベンチの隅に置かれていた。

⏰:06/09/15 21:59 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#391 [ラビ]
グランドを見守るかのように遺影が置かれ、


スパイク、グローブ、帽子もキレイに置かれていた。




達矢「なぁヒロキ、お前だったらどう投げる?」



俺は思わず声をかける。

⏰:06/09/15 22:05 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#392 [ラビ]
当然、返答はあるわけないが、



“達矢は達矢の投げたいように投げればいいさ”



と、笑って言うヒロキの顔が浮かびあがる。



“達矢のやりたいように”



それは、ヒロキがいつも口癖のように言ってた言葉だ。

⏰:06/09/15 22:08 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#393 [ラビ]
俺が投球のことでヒロキに相談すると、


ヒロキはいつも決まってそう言った。



前までは『アドバイスになってねぇよ』ってコントみたいになってたけど…



今思えばこれ以上ない最高のアドバイスだった。

⏰:06/09/15 22:11 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#394 [ラビ]
達矢「お前に相談しても返ってくる返事は予想出来るからダメだな(笑)」


俺は笑ってヒロキの遺影につぶやいた。



達矢「俺は俺のやりたいように…か…」



俺はヒロキの顔を思い出しながらぼんやりと考えていた。

⏰:06/09/15 22:18 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#395 [ラビ]
こうしたらいいんじゃない?とか

下手に自分の感覚を押し付けて言うよりも


“やりたいようにやればいい”


と、自由な感じで言われると、困ったことは困ったが、


心の緊張は溶けていった。



確かに、「こうしたらいい」というアドバイスは大切だが


悩みやすい俺には、逆に「やりたいように」と言われたほうが良かったのかもしれない。

⏰:06/09/15 22:26 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#396 [ラビ]
きっとヒロキは、そんな俺の性格を知ってて


“やりたいように”と言ったんだ。



ホントに…



お前は俺の一番の理解者だったよ…。

⏰:06/09/15 22:32 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#397 [ラビ]
「バッターアウト!!」


審判の叫び声に俺はハッとした。


スリーアウト…チェンジだ。



俺は立ち上がってグローブをはめた。


達矢「やりたいようにやってくるぜ」


俺はヒロキの遺影に向かって笑い、ベンチを出た。

⏰:06/09/15 22:40 📱:W32SA 🆔:PHEXLJ0A


#398 [ラビ]
試合は進み、後半戦に突入。




7回の裏…


愛川が1点を先制し、そのまま流れをつかみ、もう1点を追加し2対0。



「残り2回を守りきれ」



監督はそうとだけ指示を出し、8回の表に入った。

⏰:06/09/16 14:27 📱:W32SA 🆔:il3exTVU


#399 [ラビ]
2点を追い掛ける高井高校。



「ストライク!!バッターアウト!!」


わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…



球場が揺れるような大歓声。



俺は高井の攻撃を抑え、またひとつ三振を奪った。


8回の表、高井の得点は0。


そして迎える最終回。


この回を守りきるだけ…。

⏰:06/09/16 15:08 📱:W32SA 🆔:il3exTVU


#400 [ラビ]
さすがに俺もこの回は緊張して体がガチガチだった。


マウンドで足がふるえる。



…情けねぇ…この場面で投げれなかったら



ここに立った意味がねぇ…。



力を入れ緊張をごまかす。



そしてキャッチャー目がけてボールを投げた。

⏰:06/09/16 22:12 📱:W32SA 🆔:il3exTVU


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