無題【BL】
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#61 [我輩は人間である]

【短編】

ハートは繋がって

⏰:10/03/14 00:56 📱:S001 🆔:☆☆☆


#62 [我輩は人間である]

それはバイトの帰りだった。

今日はレジもうまくいって僕を担当してくれてる品川さんも珍しく誉めてくれた。
晴れ晴れとした昼下がり、僕の心も晴れ晴れとしていてとても気分がよかった。

帰り道のルートにやや敷地が広い公園の前を通る。
そこは昼過ぎには近くの団地に住んでいる子供たちがよく遊びに来る場所なのだが、ふと見ると、わいわいと楽しそうに遊んでいる子供たちの風景に紛れて見慣れない一人の男の人がブランコに座っていた。

赤いパーカーにダボダボなデニム、黒髪に金のメッシュが入っている。端から見るとよく駅前にたむろしている不良みたいな人だった。

⏰:10/03/14 01:31 📱:S001 🆔:☆☆☆


#63 [我輩は人間である]

ブランコに座ったままボーッとどこか一点を見つめて動かない様子で、出来心か少し観察してみることにした。
ブランコから少し離れたベンチに座って携帯をいじるフリをして見ていると、
「ぁ………」

小さな女の子がその人の隣に座って話しかけているみたい。

そのまま二人の様子を見続けていると彼は笑いながらポケットから何かを出した。
握られたままの手をじっと女の子は見つめて僕も遠くから見つめる。
すると彼は手を数回軽く左右に振って、小さな花束を出して見せたのだ。
そしてその花束を女の子に差し出して、女の子は嬉しそうにそれを受け取った。

僕の他にも二人を見ていた子供たちは次々に彼に寄ってきた。

⏰:10/03/14 01:45 📱:S001 🆔:☆☆☆


#64 [我輩は人間である]

そこからは彼の一人舞台。
コインマジックや砂場にあった玩具の小さいバケツを使って中からまた花束を出したり。
彼の周りはいつの間にか公園で遊んでいた子供たち、そしてお母さんたち全員囲まれていた。

わあっ…という歓声やスゴーイ!という声に彼はだろ?と人当たり良く笑顔で答えてまたマジックで引き付ける。

柄の悪そうなイメージから一変、きっと優しい人なんだなあ、と思った。
目付きの悪そうな切れ長な目も、笑うと少し垂れて優しい表情へ変わる彼の笑顔に少し見とれてしまった。

⏰:10/03/14 02:12 📱:S001 🆔:☆☆☆


#65 [我輩は人間である]

それが彼との出会いだ。
それから次の日、またその次の日も彼は公園で子供たちにマジックを披露していた。

それは僕が春休みに入ってからも変わらなかった。
周りからもいつしかそれが“変わらぬ風景”となっていて、そして僕も彼のマジックを見に行く事が日課となっていた。


公園に入ってすぐ左にある低い鉄棒と高い鉄棒の斜め後ろにあるベンチ。そこが僕の特等席になりつつある。

二週間は経つのだろうか。あの日から僕は毎日この公園に足を運んでいる。

⏰:10/03/14 02:54 📱:S001 🆔:☆☆☆


#66 [我輩は人間である]

今日は何のマジックをするのかなとワクワクしながら腰を降ろす。
木陰のおかげで暑くもなく寒くもなく丁度いい気温だ。小春日和を思わせる暖かい風が僕の体をすり抜けるように吹いていく。

「早く来すぎたかな?」

鞄から携帯を出して時間を確認すると針は12時ちょい過ぎを指していた。彼の姿はおろか子供たちの姿も見当たらない。
何もする事がなさすぎて仕方なく鞄から一番中側にあった教科書を手に取って開いた。

化学式が書いてある。電子がどうだとかイオンがこうだとか……読んでて全然意味がわからない。
それでも待っている間だけだしと読みながら待っていると上からから

「勉強熱心なんだな」

聞き覚えのある声が降ってきた。

⏰:10/03/14 03:54 📱:S001 🆔:☆☆☆


#67 [我輩は人間である]

上からから…×
上から  …○

⏰:10/03/14 03:56 📱:S001 🆔:☆☆☆


#68 [我輩は人間である]

「隣座ってもいい?」
「あ、はいっ、どうぞ」

慌てて横にずれて教科書を閉じる。

「あ。勉強中ごめん。俺に構わず続けていいから」

少し掠れた声。遠くからしか聞こえなかったから間近で聞く彼の声はとても新鮮だ。
笑い声以外はあまり聞こえなかったので嬉しい。僕は静かに教科書を閉じた。

「いえ…た、たまたま読んでただけです」
「そっか。最近ずっといるよね?ココ」
「はい」

顔を見たいけど、見れない。緊張して話すのもぎこちないのに顔を向けるなんて滅相もない。
頑張ってチラッと横目で見てみると、少し猫背になって座っていた。初めて見た日と同じ格好だった。

⏰:10/03/14 04:25 📱:S001 🆔:☆☆☆


#69 [我輩は人間である]

服装から目線を上げていくと彼もこっちを見ていたらしく目が合って、その瞬間胸がドキッと高鳴って、思わず目を逸らしてしまった。
なんだか失礼かなと思って今度は顔を少し向けると。彼は口を開いた。

「名前は?高校生だよな?」
「うん、宮内優って言います」
「ミヤウチって普通に書いて…、」
「そう。それで優しいって書いて“すぐる”って読むんだ」

へぇ、と相づちを打ってから
「優しいで優か。なんかぽい」
「…そうかな?」

微笑んだ彼の目に笑い皺が出来る。柔らかい表情で笑う彼に、優しそうな人だと僕は改めて思った。

⏰:10/03/14 04:57 📱:S001 🆔:☆☆☆


#70 [我輩は人間である]

「俺は上木栄治。上の木に栄養の栄でさんずいの方の治る」
「上木さん…」
「上木さんてなんかムズムズすんなあ。高一…?」
「もうすぐ二年になります」
「んじゃ17?あれっ、16?」
「今年で17になります」
「そっか。俺19」

お互いの名前と年齢を教え合って、そこから色々話をした。

上木さんはマジックが大好きで将来はマジシャンになりたい事。
一人暮らし。今はバイトで生計を立ててるらしく、駅前のレンタルビデオ屋とファミレスの掛け持ちでアルバイトをしている事。(上木さん曰くボロアパートに住んでいるらしい)

⏰:10/03/14 05:22 📱:S001 🆔:☆☆☆


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