無題【BL】
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#48 [我輩は人間である]

なんだか自分が負けているような気がしていたたまれない気持ちに思えてきたのかもしれない。
渋みの出た畳へ柄にもなく鞄を投げてコップの中の水を一気に喉へ流し込む。冷静さが戻ってきて、さっきの悟の顔が頭に浮かんだ。
さっきから一向に荘二郎が帰ってこないのが心配になって、何より悟が何かされてるんじゃないかと玄関戸を少し開けたが門下に二人の姿はもうなかった。

「……………」

脳裏に嫌な予感が浮かぶ。もしかしたら荘二郎が………いやいや兄でもそれは……。

⏰:10/02/03 02:24 📱:S001 🆔:☆☆☆


#49 [我輩は人間である]

夏の暑さから、胸騒ぎが更に膨張してきて今にも破裂しそうである。

もしかして…と二人がいるであろう家をじっと見つめた。今行くべきだと直感が伝えているにも関わらず、なかなか踏み出せない自分と闘いながら。

⏰:10/03/11 20:49 📱:S001 🆔:☆☆☆


#50 [我輩は人間である]

半ば強制的に家へ入ってきた荘二郎を少し怪訝に思いながらもリビングに招き入れた。
ソファーに座ってもらって二人分の麦茶を入れる。机に置く。

「………」
「どうぞ」
「ありがとう」
「いえ、暑いッスね〜…」
「そうだけど、なんで立ちっぱなし? こっち座りなよ」

クスクスと笑われて苦笑いで返しながら、ポンと一回叩かれた荘二郎の隣へと悟は腰を降ろした。

「源治郎んとこ行かないんですか? きっとアイツ荘二郎さんに構って欲しいと思いますよ…?」
「いいんだよ。ほっとけば。それより悟君に話があってね」

話?と悟は首を傾けた。
カランと麦茶の中で小さくなった氷が音を立てた。荘二郎はコップを手に、うんと軽く頷く。

⏰:10/03/11 21:03 📱:S001 🆔:☆☆☆


#51 [我輩は人間である]

「源治郎の事どう思う?」
「源治郎?」

あっけらかんな質問に疑問符を頭に浮かべた。源治郎?

「大切な友達……、っていうか俺にとっては親友的な存在っていうか」

他に何があるのだろうと言う瞳で荘二郎を見た。
クイッとコップを傾けて麦茶を一口飲むと、荘二郎はどこか満足そうに笑みをこぼしてコップを机に戻した。

「それならいいや。じゃあさ、俺たち付き合おう」

⏰:10/03/11 21:11 📱:S001 🆔:☆☆☆


#52 [我輩は人間である]

一瞬相手の言ってる意味がわからず理解するまでに時間がかかった。
だが、理解した後にはもう遅かった。

男子高校生の中では比較的小柄な体はすっぽりとソファーに埋め込まれて、二つの華奢な手首は荘二郎の手によってソファーに縫い付けられている。

悟は数秒で自分自身にどんな事が起きたのか分かってハッと我に返った。

「そ、荘二郎さん?は、は…離してください」

荘二郎は悟の上に覆い被さるようにして動かない。

⏰:10/03/11 21:34 📱:S001 🆔:☆☆☆


#53 [我輩は人間である]

更に恐怖感を与えるように荘二郎は顔を近付ける。悟はそれに逃げるように首を左へと逸らして暴れる事もなく冷や汗を額からソファーへ垂らした。

「悟君がアイツの事そーゆー対象として見てないならいいじゃん。俺は悟君の事好きだし」

なんとも理不尽な事を言う。さっきまで優しいお兄さん位置にいた荘二郎の面影はない。

「今は悟君に嫌われそうだけど…。だんだん、ね?」

指先が首筋をかすめた。汗で濡れてワイシャツの下のTシャツが見える。チラリと見え隠れする鎖骨に荘二郎は生唾を飲んだ。

⏰:10/03/11 22:15 📱:S001 🆔:☆☆☆


#54 [我輩は人間である]

「…そっ、ッ…」

悟の開きかけた唇は荘二郎の唇に塞がれて、目を瞑ってただ受ける事しかできない悟は頭の隅で源治郎を思い出していた。

口の中に躊躇いもなく入ってくる荘二郎の舌に気持ち悪さを覚えながら源治郎の事ばかりが頭にちらついて。
ちらついてちらついて、離れなくなった。

されるがままの悟に荘二郎の手はシャツのボタンへと伸びていった。

「…………」

一個、二個とボタンを外していく手が急に止まる。

二回目の規則正しいインターホンがリビングに鳴り響いた。

⏰:10/03/11 23:00 📱:S001 🆔:☆☆☆


#55 [我輩は人間である]

源治郎だ。

「………?」

もう一度鳴らしてみるがやはり反応はない。
ドアに手をかけるとドラマのワンシーンのようにカチャッと簡単に開いた。
玄関に並んだ靴の中に兄がいつも履いている茶色の革靴が目に入って、
「おい荘二郎?悟?」
と声をかけるが二人の名前を呼んでも返事がない。その代わりにドン!と何の音がした。
どうやらリビングから音がするようだった。何回も同じような音が途切れて聞こえてくる。

「悟、いるのか?」

リビングのドアを開けると

「……チッ」
「………」

目の前には見たくない光景が広がっていた。

⏰:10/03/12 21:05 📱:S001 🆔:☆☆☆


#56 [我輩は人間である]

「悟」
「げんじろ……」

力のない声がより現実さを増させる。
目尻からはまた新しく水滴が溜まってしばらくすると肌を伝う。

最悪だ。一番見られたくない姿を見せてしまった事に悟は深く胸をえぐられた気分になった。
そんな気持ちとはおかまいなしに荘二郎は優越感たっぷりな表情で弟を見つめ

「お楽しみ中邪魔すんなよ。何?」

わざとらしく怪訝そうな顔で言った。

源治郎は暫く黙ってから二人のもとへ歩み寄って荘二郎を無理矢理引き剥がし床へと投げ倒した後、悟の腕を掴んだ。

⏰:10/03/12 21:15 📱:S001 🆔:☆☆☆


#57 [我輩は人間である]

「げんじろ、ッ」
「行くぞ」
「おいちょっと、待てよ!」

かけられている声を無視して震えている腕を起こすように引っ張って、悟をそのまま外に連れ出した。

手に力が入り掴まれたところがジンジンする。
源治郎は自分の部屋に連れていくなり壁に悟を押し付けた。

「、ッ……」
「どこまで行った」
「え…」
「どこまで行ったんだ。荘二郎と」

源治郎の何もかもを見透かされるような黒目はじっと悟を捉えて離さない。嫌がおうにも吸い込まれてしまいそうになるその瞳に目が離せなくなる。

⏰:10/03/12 23:43 📱:S001 🆔:☆☆☆


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