無題【BL】
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#95 [我輩は人間である]
【中編(予定)】
居場所は何処
W62S我輩は匿名である 様
リクエストThank You.
:10/04/13 19:14
:S001
:☆☆☆
#96 [我輩は人間である]
千鶴は部屋に響くインターホンに溜め息を漏らした。
今が午後7時半だということを携帯で確認してもう一度、今度はハッキリと深い溜め息を吐いた。
もう画面チェックする必要もなく誰が来たかは予想が着いている。親が雇った家庭教師、
「よっ!水野」
柯伽大政だ。
千鶴の父親は貿易会社の社長でお金には困らない生活を送っている。
おかげで高校に上がると共に一人暮らしもさせてもらっているし、県内でも金持ち組しか通えない有名私立校に入学した。
:10/04/13 20:18
:S001
:☆☆☆
#97 [我輩は人間である]
…そんな順風満帆とでも言える千鶴の生活に二つ程問題がある。
それは千鶴が勉強ができないこと、そして巷でも有名な不良だということ。
要するにバカなヤンキーなのだ。
「ふざけんな帰れ!来んなっつたろ!」
ドア向かいに千鶴は叫んだ。
大政は週3のペースで現れる。最初は友達が遊びに来たのかと思ってドアを開けたら笑顔の大政がスーツ姿で立っていた。
そのまま大政から話を聞けば自分の家庭教師で雇われたと言うではないか。
:10/04/13 20:52
:S001
:☆☆☆
#98 [我輩は人間である]
父親が冗談や嘘を吐く性格ではないし自分も勉強が得意ではない、寧ろ不得意だと自覚していた千鶴は目の前の男が言っている事が本当か嘘かすぐにわかった。
とにかく―――――
「そんな事言うなよ水野〜。前はすぐに開けてくれたじゃないか」
「てめえが誰だかわからなかったからだろーが!」
「まずはあがらせてくれよ。な?」
:10/04/13 21:55
:S001
:☆☆☆
#99 [我輩は人間である]
ドアに付いてある丸い覗き穴に目を近付けてみると、スーツ姿に革のカバンを持っている大政が見えた。
これじゃあどっかのサラリーマンみたいだ。
「気持ち悪ぃんだよ。何がよっ、だよ。なんで来たことわかんだよ」
「いやだってお前玄関まで来るとき足音半端ないぞ」
ドアの向こう側のリーマン風家庭教師は少し肩を揺らしながら笑っている。その姿に千鶴はカッとなってドアを勢い良く開けて胸ぐらに掴みかかった。
:10/04/14 00:10
:S001
:☆☆☆
#100 [我輩は人間である]
「ってめえ!さっきからイラつくんだよっ!お前が毎日毎日しつこく来るからだろ、あ゛?」
「ほらほら落ち着けって。んじゃ、始めるか」
「……………」
残念ながら身長差で負けている千鶴は胸ぐらを掴んでも、上にあげることはできない。
イコール、余程大政にダメージがないのだ。
大政は先ほどと変わらない柔らかな表情で千鶴に話しかけた。
掴まれたネクタイを手から解放させ、中に入って行く。
:10/04/14 00:25
:S001
:☆☆☆
#101 [我輩は人間である]
「………おいっ、勝手にあがんな!」
千鶴は少しポカンとした顔をしていたが、我に返って急いで大政の後を追った。
何故だか千鶴の叩きかけるような口調も今にも飛びかかってきそうな態度も、大政には全く効かない。
それどころか見事にかわされて千鶴はもう一つ頭に怒りのマークを浮かべた。
高校生の一人暮らしにしては少々広い2LDKの室内を見回しながら大政は声をあげた。
先ほどからちょこまかと中を見られて千鶴はその度飛びかかるが何も通じない。
天然なのかなんなのか。子供を相手にするかように接されてもう居てもたってもいられない気分だ。
:10/04/14 00:32
:S001
:☆☆☆
#102 [我輩は人間である]
「おーし…まずは、…何する?」
ソファに座りローテーブルに数学やら生物やら色々な教材を一通り積んで大政は顔を上げた。
千鶴の取ってわかる表情に何がなんだかわからない様子で、今度は何を勘違いしたのかあっと声を上げてカバンから英語の教材を出して見せてきたと思えば
「忘れてたこれやりたかったのな」
なんて。
頭がクラクラする。
「…………出てけ」
「………」
「……さっさと出てけ!!」
:10/04/14 00:42
:S001
:☆☆☆
#103 [我輩は人間である]
一層声を上げて怒鳴った。これでやっと帰るだろう。
千鶴はフーッフーッと息をあらげながら大政を見た。呆気に取られた顔で自分を見ていたが、それはみるみる困った表情に変わっていった。
「んな事言われてもなぁ…。俺は水野に勉強教えるために来たわけだし、お前が嫌でも俺だって仕事だし」
ポリポリとうなじの方に手を回して申し訳なさそうに千鶴を見る。
一体どこまでイラつかせるんだ、この男。
来るなと言ったのに来る。
帰れと言ったのにこの前なんか二時間位ドアの前で待っているし。そのお陰で周りからは更に変な目で見られる始末だ。
更に無理矢理あがり込んだ挙げ句、勝手に人の部屋を母親みたいにチェックし始めた。
:10/04/14 01:24
:S001
:☆☆☆
#104 [我輩は人間である]
そして今のこれ。
悪いが俺はこの上限りなく怒り狂ってるんだよ。そう言おうとしたが大政の表情にもうそれを言う気にもなれない。
なんで父親は家庭教師なんて雇ったんだろう。
そもそも自分に寄越しても意味がないとは思わなかったのだろうか?
茶髪にピアス。
それだけで周りの人間は千鶴を悪く見た。
千鶴の性格も合わせて完全に普通から外れた枠に入っていたし、高校に入った時もその視線は変わらなかった。
自分を見る目はみんな冷たくて居たたまれない気持ちになる。
中学から踏み外した道はもう引き返せなかった。後悔した時期だって何回もあったが、今はもうこれでいいのだ。
:10/04/14 01:36
:S001
:☆☆☆
#105 [我輩は人間である]
そのままがむしゃらに突っ走ってきた道のりは、そう悪くもなく良くもなくで、何回も警察にお世話になった。
それでも同じ境遇にいた人たちとつるんで、それだけが千鶴の居場所だったのだ。
しかし、それもあっけなく崩れた。
ただ金持ちというだけで僻まれて、金づるなんじゃないかと自分を追い込むようになってから、千鶴はたった一つの居場所にも居れなくなった。
千鶴は孤独だった。
:10/04/14 01:43
:S001
:☆☆☆
#106 [我輩は人間である]
実は家庭教師が家を訪ねてきたのは今回だけではない。
二人来て二人共千鶴を知るなりリタイアしていっている事を経験しているからこそ、大政もすぐに引き下がってくると思ったのだ。
つられるのは結局金に目が眩んだからで、他に理由はない。
俺じゃなくみんながみんな金なんだ。
大政は立ち上がった。
「そうだな…」
ゆっくり千鶴に近付いて、威嚇した猫のようにゴロゴロと鳴きそうな顔に思わず苦笑する。
:10/04/15 02:04
:S001
:☆☆☆
#107 [我輩は人間である]
「50点」
「…は?」
「来月の中間で一個でも50点取れたら辞める」
「…は?」
二週間位しかない期間の中で……?
バカじゃないのか。
千鶴は数秒固まってから吹き出して笑いながら手をヒラヒラと顔の前で振る。
冷蔵庫からコーラを出してキャップを捻りながらもまだ笑う千鶴に大政はム、と眉を寄せた。
「言っとくけど俺バカだから。50点なんて中学の期末……、期末。中二の期末の国語以来だからな?59」
:10/04/15 02:38
:S001
:☆☆☆
#108 [我輩は人間である]
フンと鼻を鳴らして千鶴は得意気に言う。
「じゃあ無理だ」
「は?」
「そんなんなら無理だ無理。やっぱ40に引き下げよう」
やっぱし50点はな…、とわざとらしく呟きながら額に手を当てる。両目を覆うように隠してチラリと指の隙間から千鶴を観察した。
さっきからコロコロと言葉が変わって動揺しているというより、大政から見下された感がさっきの言葉で強かったのか気にくわない反応を見せている。
黒目がこちらに向いた瞬間大政はかかったと確信した。
「50点で!!みくびんじゃねーぞコノヤロー」
まさか本当に引っかかるとは。
すぐにかかった目の前の獲物があっさりと捕まりすぎて、可笑しくて笑いを堪える大政であった。
:10/04/15 05:50
:S001
:☆☆☆
#109 [我輩は人間である]
「違う違う。ここ代入して、」
「……あ゛ーっ、もうっ」
リビングに千鶴の呻き声にも似た声が響いた。
まんまと大政の作戦にハマって五日目。
男二人、参考書や大政がまとめたノートを見ながら今は数学のお時間だ。
どんなに頭がクラクラして参考書に書いてあることが意味不明だったとしても、自分から話に乗ったので逃げ出すことは嫌だった。
売られた喧嘩は買うのが千鶴の考えで、逃げ出すなんてプライドが許さない。
喧嘩じゃ強いのに…、今にもパンクしそうな頭の中で千鶴は弱々しく呟いた。
:10/04/16 00:12
:S001
:☆☆☆
#110 [我輩は人間である]
この五日間で千鶴は数学が得意だと大政は気付いた。
因数分解なんかほんの一時間で公式を簡単に覚えるし、千鶴の父親から全く勉強ができないと聞いていたが思ったより手こずることはない。
本人も負けず嫌いなのか、詰まったりイライラし始めた時はちょいちょい挑発するような言葉をかけてやると、嫌嫌ながらもちゃんと問題に向き合っている。
この五日間で大政は千鶴をコントロールできるようになっていた。
警察沙汰も度々だと聞いていたがこれなら案外―――。
:10/04/16 01:43
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#111 [我輩は匿名である]
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:10/04/16 02:01
:SH904i
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#112 [我輩は人間である]
「おい、ここ教えろよ」
不機嫌丸出しな声で開いた参考書を大政に押し付けてシャーペンをカチカチと芯を新しく出す。
ぶっきらぼうな態度にも慣れたし何よりわからないところはちゃんと聞いてくる所がカワイイ奴だと思う。
ノートに数式を書いてポイントポイントを細かく言うと隣のヤンキーはふむふむと小刻みに顔を縦に動かした。
時計の針はもうすぐ9時を指そうとしていた。
:10/04/25 03:22
:S001
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#113 [我輩は人間である]
「よし。あと練習5解いたら終わりにしよう」
「マジで?、ってまだまだじゃん」
千鶴は問題に取りかかりながら喜びを含んだ声を出した。
もうそんな時間かあ…とニヤニヤしながら連動して時計に目を向けるとまだ10時になっていない。
いつも切り上げるのが10時ちょい過ぎのペースなのが、突然1時間近く早まって嬉しいやらなんだか寂しいやら。
…………寂しい?
悪いなと大政は教材を鞄に詰め出した。
「明日には実家に帰らなきゃいけないんだ」
「は?何それ。散々無理矢理勉強押し付けといて自分の用は最優先ってか」
:10/04/25 03:36
:S001
:☆☆☆
#114 [我輩は人間である]
申し訳なさそうな顔を尻目、千鶴は言った。口が勝手に動いたとでも言うのだろうか、
「結局お前だってどうせ俺から逃げてくんだろ。そういう魂胆見え見えなんだよ」
あれよあれよと
「また明日か明後日になったら出ていって、ちゃっかりいなくなってくんだろ」
口が動いていく。
「さっさと出てけよ!先生!!」
自分でも驚くほどの口振りだ。
何を思ってこんなことを言ったのかもわからない。
一気に頭に血が昇っていくのがわかってその瞬間むしゃくしゃした気持ちが千鶴の中に込み上げた。
:10/04/25 04:38
:S001
:☆☆☆
#115 [我輩は人間である]
さっきまでとは一変して様子が違う千鶴に大政は目を丸くした。
出ていけと言われ出ていくのもなんだか気にかかる。しかし都合上出なくてはならない。
考えているうちに千鶴は自ら出ていってしまった。
一人部屋に残された大政は携帯を開いた。
:10/04/26 01:17
:S001
:☆☆☆
#116 [我輩は人間である]
勢いよく階段を下り路地へ出た。
イライラが足に出て早歩きになっている事に気付いて歩みを遅めた。
コンビニで甘い物でも買ってこのどうしようもないイライラを落ち着かせようと千鶴はコンビニへ足を進めた。
「おーー。千鶴じゃねぇか」
コンビニの入り口周辺でたむろってたのが遠くからでもわかった。出来れば顔を合わせたくないので引き返そうと今来た道に戻ろうとした瞬間、目が合った。
千鶴は苦虫を噛んだような面持ちで昔の仲間をもう一度視界に入れた。
:10/04/26 01:36
:S001
:☆☆☆
#117 [我輩は人間である]
<font size=-3>
無視してそのまま歩くこともすぐに数人が千鶴を囲む。あの時大切だと思った仲間。今じゃ思い出したくもない他人。無理にでも肩を組んで千鶴を離さない。
「離せよ」
「うわ。友達になんて言いぐさだよ、千鶴ぅ〜」
リーダー格のわざとらしい言葉に周りの奴らは怪しく笑う。千鶴は眉を寄せた。もう一生顔を合わせたくない奴らとご対面なんて最悪だとしか言いようがない。このタチ悪い空気、相変わらずだ。
「ぱったり連絡なくなっちゃって寂しかったぜ?また一緒に青春しようよ」
「青春?笑っちまう。ま、確かに俺いい金ヅルだったし、お前らにはいい青春だったな」
「おい。口の聞き方に気を付けろよ」
「俺のおかげでいい思いできたわけだし。あん時はまさかこんな低レベルな青春ごっこに…っ」
付き合わされてるとはな。
</font>
:10/07/20 02:14
:S001
:cszaspo.
#118 [匿名]
:10/07/21 08:18
:K002
:.vhdimZo
#119 [我輩は人間である]
鈍い音とほぼ同時に頬に痛みが走る。ここまでいって殴られるとは想定したことで、案の定軽く構えててよかった。体勢が少し横に向いただけで倒れなくて済んだ。
「あ、ごめん。手がね」
ギリギリと左拳を固める。やられてそのまま大人しくなんてまだそれほど大人ではない。見下すような眼差しに刃向かうように千鶴は拳を振りかざした。
気付けば手は誰のだかわからない血がべっとり手の甲に付いていた。息が上がるのを落ち着かせて整え終わる頃にはパトカーに乗った警察官が二台、コンビニの駐車場にサイレンを鳴らしながら停まり千鶴とコンクリートにうずくまっている男たちに近付く。
:10/07/24 00:08
:S001
:☆☆☆
#120 [我輩は人間である]
ケンカを見たコンビニの店員が通報したらしい。警察官の一人は細身のメガネの男性に事情聴取をとっている。
逃げる理由もなかったのであっさり警察官に取り押さえられながら、その店員と目が合った。肩がすぼまって伏せ目がちにそらされて千鶴はどこか寂しさを覚えた。
学校の奴らと同じ。そんなに怖い存在じゃないのに皆が皆、目をそらして壁を作る。関わりたくないと雰囲気で言われているようで千鶴は正直ショックだった。
確かにケンカは強いけど、あれは裏切られた後ちょっとやんちゃしたら意外に自分自身ケンカが強いことがわかってしまって図に乗ってしまっただけ。
ケンカは好きな方ではないし手を出されたりしない限りしようとも思わない。目が合っただけでつっかかる程、血の気だって多くはない。
:10/07/24 00:22
:S001
:☆☆☆
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