浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#246 [笹]
「香夜さん‥朝です、よ」
貴方って人は
本当にいつもその調子
声に全く感情が漏れない
だから時々
その声があたしを突き刺すの
ねぇ‥壱助さん
貴方にとってあたしは‥
:10/01/31 19:17 :D905i :HYkp9PyY
#247 [笹]
「いったあぁああぁあい!!!」
縮こまった体が飛び起きる
腹部に走る激痛
:10/01/31 19:17 :D905i :HYkp9PyY
#248 [笹]
「狸寝入りなど無駄、ですよ」
お腹を抱えて縮こまるあたしに
壱助さんはそう吐き捨てた
思わずむせ返るほど
どうやら強く蹴られたらしい
:10/01/31 19:18 :D905i :HYkp9PyY
#249 [笹]
「最後くらい‥最後くらい
優しくしてくださいよ!!!」
顔を上げて泣きわめく
しかし目の前には壱助さんだけ
あのお婆さんはいない
しかも何か綺麗な色の
布を抱えている
:10/01/31 19:18 :D905i :HYkp9PyY
#250 [笹]
「最後‥なら、ね」
珍しく人らしい困った顔で
クスッと含み笑い
「‥?」
「最後なら、優しくします、よ
しかし‥
誰が最後と‥言いました?」
:10/01/31 19:19 :D905i :HYkp9PyY
#251 [笹]
その瞬間目の前が
山吹の鮮やかな色に染まった
「‥着物‥きれい」
息をのむほど綺麗な色の生地に
赤い花の刺繍がされていた
:10/01/31 19:19 :D905i :HYkp9PyY
#252 [笹]
「でも‥でも壱助さん
あたしを‥売るんでしょう?!」
そういい終わる前に
"馬、鹿"と口元を緩ませて
それをあたしに差し出した
「一ヶ月、経ったので‥
"所有物"から昇格、ですよ」
:10/01/31 19:20 :D905i :HYkp9PyY
#253 [笹]
「‥壱助さん
あたしのために‥?」
睫毛を伏せただけで
返事はなかった
だけどわかったよ
"早く着てくだせぇ"と
頭をぽんと撫でてくれた
一ヶ月たてば変わりますか?
壱助さんの声が
柔らかく感じたの
:10/01/31 19:21 :D905i :HYkp9PyY
#254 [笹]
:
:
「丁度良い‥ようですね」
その着物は袖の長さも
丈の長さも胸周りも腰周りも
全部がぴったりで
そこでやっと
"あぁそう言うことか"って
あのお婆さんを思い出す
と同時に
壱助さんを疑った自分を恥じる
:10/01/31 19:24 :D905i :HYkp9PyY
#255 [笹]
「壱助さん‥
あ、ありがとう‥ございます」
これでもかと言うくらい
頭を深く下げた
「本当に‥疑い深い人です、よ」
そしてまたお茶を啜る
いつもの壱助さん
:10/01/31 19:26 :D905i :HYkp9PyY
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