浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#1 []
 
「浮き世」とは
辛く儚い世の中または俗世間。

‥他にも意味がありますが、
説明するほどの物でも、



ないでしょう、ね

⏰:10/01/24 18:10 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#2 []
 
気が付いたら
生い茂った竹林の中

竹が風に揺れて
ミシミシ音を立ている


ぼやけた世界に
あたしは目をつむって‥

この世に別れを告げた。

⏰:10/01/24 18:12 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#3 []
『こっちに来るんじゃないよ!!
‥汚らわしい!!』

バチンッ

あたしは‥人間なのだろうか

『お前のせいで‥お前のせいで‥
父ちゃん死んじゃったじゃないか!

お前が殺したんだ!!化け物!!』

⏰:10/01/24 18:14 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#4 []
ドカッ ドカッ ‥


鈍い音と鋭い衝撃が体を伝った

あたしは何故生まれてきたのか‥


よく‥わからなかった

⏰:10/01/24 18:18 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#5 []
 
『いや‥やめてよお母さ‥』

『汚い声で呼ぶんじゃない!!
あたしはお前の母親じゃない!』


『‥ご‥めんなさい‥。』



幸せの意味を知らずに終わった
つまらない人生だったな‥

⏰:10/01/24 18:21 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#6 []
 





「‥ごめん‥なさいっ
ごめんなさい‥許し‥て」

‥あれ?
あぁ‥あたし死んだんだ

痛み無かったし‥

死ぬってそんな辛くないんだ‥

⏰:10/01/24 18:22 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#7 []
 
ぼうっと差し込む光に
思わず目を細めた

これから地獄行きか天国行きか
決めるんだろーなぁ‥

まぁ
あたしは地獄に決まってる‥


あたしは人殺しだもんね

⏰:10/01/24 18:23 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#8 []
 
ほら‥やってきたよ神様だ


神様って案外普通なんだなぁ‥
もっとこう‥何て言うか‥


あーでも‥綺麗な顔かも


神様ってこんな美形なんだぁ‥

⏰:10/01/24 18:25 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#9 []
 
「‥あぁ、やっと」

神様と目があった
なんだか胸が飛び跳ねた
恐怖じゃない何か別の‥


「本当に‥あんな所にいたら
今頃喰われてましたよ?貴女」


‥ん?

⏰:10/01/24 18:26 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#10 []
 
「運が良かったです‥ね」

ちょっと待てよ

「あのー‥」

恐る恐る声をかけてみた
起き上がろうとしたけど
体に力が入らなかった

「こら、病人‥動いたら死にますよ?」

もしかしたらあたし‥

⏰:10/01/24 18:27 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#11 []
 
「生きてます‥か?」

すると神様は切れ長の目で
こっちをじっーと見つめ
あたしの隣に腰をかけた


逆光でよくわからなかったけど
よく見ればかなり色白で鼻が高い

怪しい‥雰囲気

⏰:10/01/24 18:27 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#12 []
 
「あのまま‥置き去りにしても
よかったんですけど、ね」

クスっと鼻で笑い
これまた綺麗な手であたしの顔を撫でた

「助けて‥くれたんですか?
こんなあたしを?」

こんなボロボロの着物着て
髪もボサボサで化粧もしてない
こんな汚らしいあたしを‥

⏰:10/01/24 18:28 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#13 []
 
「拾っただけ、ですよ」

あぁ‥なんて優しい人なんだ
神様だ神様だ!!!

嬉しさのあまり涙を浮かべた
‥のもつかの間




神様はやっぱり存在しないのだ

⏰:10/01/24 18:29 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#14 []
 




「で?貴女、名前‥は?」

独特の語り口調の神様は
何とも落ち着いた様子で
お茶を入れている

あ‥睫毛すごい長い。
いーなー‥羨ましい
この人‥何才くらいなんだろう

⏰:10/01/24 18:35 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#15 []
 
「‥名前は、と聞いているんです
聞こえませんか?この耳、は」

ギュッ

「いぃいっっ!!!!
ちょっと何するんですかっ!!
は‥離してくださいっ」

神様はあたしの耳を右手で
それはもう思いっきり引っ張り
左手は全く別物かのように
湯呑みを口元に運んでいた

⏰:10/01/24 18:36 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#16 []
 
 
 
嫌な‥
   予感‥
      がします‥。

⏰:10/01/24 18:37 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#17 []
 
「うぅ‥っかや!!‥かやです!!」

涙をいっぱいに溜めて叫んだ


途端に神様のお仕置きは終わった

い‥痛い‥痛すぎる

⏰:10/01/24 18:38 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#18 []
 

「ほう、"かや"とは‥
どんな字を‥あてるのですか?」

ズズズーっと茶をすする音が
部屋中に響き渡った



「‥"香"る"夜"です」

⏰:10/01/24 18:39 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#19 []
 
「‥」

「‥香る‥よ‥」

「何とも‥、夜が期待できそうです、ね」


顔をゆっくりこちらに向けて
意味ありげに怪しく笑った

⏰:10/01/24 18:39 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#20 []
 
「な‥//
べべ‥別にそういう‥
ヤらしい名前じゃ‥」

「誰が‥
"ヤらしい"と言いました?」


あたし‥からかわれてる?
てか‥何なのこの人 !!

この余裕綽々なかんじ‥

⏰:10/01/24 18:40 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#21 []
 
「‥あ‥貴方のお名前は?」

話を切り替えるので
‥精一杯なほど

この人は話がうまいというか
川が流れていくように
するする進んで
いつの間にか自分もその流れに‥

「名前?‥何故言わなきゃいけないのですか?」

何故って‥この人

⏰:10/01/24 18:41 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#22 []
 
 
 
―‥ 一体、何なの ?


_

⏰:10/01/24 18:42 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#23 []
 




「あぁ‥そうだ」

「‥な、何ですか?」

「私が‥香夜を‥」

そう言いながら
ミシミシと近づいて

「拾った、わけですから‥」

遂には吐息がかかるくらいにまで
何故か高鳴る鼓動

⏰:10/01/24 19:06 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#24 []
 
「だ‥だから何ですか?」


飛び出した自分の声が
震えていたのがわかった


喰われそうな‥




気もしなくもなかった

⏰:10/01/24 19:08 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#25 []
 
「今日から貴女は‥








私の、所有物です」

⏰:10/01/24 19:08 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#26 []
 
しょ‥しょ‥

「所有物?!‥何ですかそれ!!」

ふ‥ふざけないでよ
あたし一応人間よ?

こんな訳の分からない人の
所有物になんかぁ‥

⏰:10/01/24 19:09 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#27 []
 
「所有物の意味も知らないんですか?」

なんとも悠長に
普通のことかのように
振る舞ってるけどこの人‥

「わかります!!
馬鹿にしないでください!!」

「ほう、
それならお分かりでしょう?
‥今日から貴女は私の‥」

誘拐よ!!監禁よ!!
犯罪だわ‥こんなの!!

⏰:10/01/24 19:10 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#28 []
 
「べ‥別に!!
誰も‥助けてなんて
言ってないじゃないですか!!」

さっきまでは
あんなに感謝してたのに‥はは


だけどこんなの納得いかない!!

⏰:10/01/24 19:11 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#29 []
 
 
「自分の立場‥
お分かりで、お出でで?




それなら‥死にます、か?」

⏰:10/01/24 19:12 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#30 []
 
人の言葉に
こんな凍り付いたことはない

この表情‥この目つき


本気‥だっ‥!!

思わず声を失った



あたし‥殺される‥?

⏰:10/01/24 19:13 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#31 []
 
「そうですねぇ‥
選ぶ権利を与えましょう、か

首絞めも結構
殴る蹴るその他も結構
刃物で刺すも結構‥

あぁ‥
切腹と言う手もありますねぇ

いや、しかし‥
私の着物が汚れるのは‥
ちょいと厄介ですからぁ‥ねぇ」

冷たい手があたしの首を這う
え‥苦しいの‥やだよ?

⏰:10/01/24 19:14 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#32 []
 
「何でもよいのなら‥
首をちょいと‥」

「やややややっ!!
やめて下さいぃいっ!!」

「それでは‥
所有物、と言うことで‥契約を」


ニコッと愛想良く笑ったが
なんと言うか‥心晴れず。

⏰:10/01/24 19:15 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#33 []
 
「‥って言うか!!
話逸らさないでくださいよ!!」

「さぁ‥」

むくっと立ち上がって
また壁にもたれかかり
‥ぼうっと空を眺めてた


無理矢理に体を起こしてみるが
やっぱり重い

⏰:10/01/24 19:16 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#34 []
 
「名前です!!貴方の!!」

「名前‥
何故"所有物"に教えな‥」

「名前無くちゃ‥
呼べないじゃないですか!!
ふ‥不便です!!」


なんかイライラしてきた‥
ほんとに何なのよ!!
もう‥嫌

⏰:10/01/24 19:18 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#35 []
 
「不便‥ねぇ
そうですね‥呼び名、か」

こうやってもったいぶるのも
あたしを馬鹿にしてるんだわ


逃げ出さなくちゃ‥!!



「逃げようなんて‥無駄、ですよ」

⏰:10/01/24 19:18 📱:D905i 🆔:ZJpO7xz6


#36 []
 
背筋がぞっとした
何かが不気味な冷たい物が
這い上がってくるような‥

「に、逃げようなんて‥!!」

「‥思っていらっしゃる」

鋭い眼差しが捉えて離さない

"イケない物に出くわした"
そんな気もしたけれど

美しすぎて、見とれてしまって

動けなくなっていた。

⏰:10/01/26 16:10 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#37 []
‥見透かされてる?
特別な力でも持ってるの?

「あの‥」

だらしなく開けたままの口から
間の抜けた声が出た

その人は表情を全く変えずに
ゆっくりとこちらに視線を落とす


「何か、」

捕まえておきながら
その関心なさそうな声‥

⏰:10/01/26 16:15 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#38 []
 
「どうするつもりですか?」

すると
やっと眉間がピクリと動いて
また同じ口調で"何を、"と言う

きっとこの人とあたしの性格は
正反対なのだと思う
ここまで白けてる人‥初めて

⏰:10/01/26 16:20 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#39 []
 
ムスッとして少し睨みつける

‥動じない。


もっと睨みつける

‥全く。



ここまで来ると‥
何故か芽生える、寂しさ

⏰:10/01/26 16:21 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#40 []
 
「どう、されたいんで?」

お茶をすすって放った声は
すごく低くて部屋中に響き渡った


「どうって‥
どうされたいも、こうされたいも
言わなくてもわかるでしょう?

所有物なんて嫌です!!絶対に」

つい声が大きくなってしまった
はっとして咄嗟に下を向く

⏰:10/01/26 16:26 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#41 []
 
―‥沈黙
何故か急に恥ずかしくなる



「では‥夫婦にでも、なりますか?」

「め‥め、おと?!
ふざけるのもいい加減に‥」



と、言い終わる前に
あの綺麗な手で塞がれた馬鹿でかい声は情けなく語尾を弱めた

⏰:10/01/26 16:32 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#42 []
 
「あまり大きな声を出されると‥」

ばつが悪そうに
眉を下げて小声で‥

初めて人らしい振る舞いを見た


「ほら‥、」

足音が近づいてきた襖に目をやる

⏰:10/01/26 16:37 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#43 []
 
「壱助さん?
如何なさいましたか?」

襖の向こうから
落ち着いた女の人の声が聞こえた

「あぁ‥いえ、
どうか、お気になさらず」

目に見えない向こうの人に
その人は律儀に頭を下げた


足音が遠ざかると
すっと口元から冷たい感覚が消え
妙な緊張と息苦しさに
深く息を付いた

⏰:10/01/26 16:42 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#44 []
 
あ‥なるほど、

「壱助‥さん?」

馴れ馴れしく、だけどぎこちなく

「‥」

興味なさそうな
冷たい目がこちらを向いたが

‥あたしは見逃さなかった。


"壱助さん"の口元が
少しだけ、ほんの少しだけ緩んだ

⏰:10/01/26 16:47 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#45 [笹]
 
第一章 【拾われて】完結 ?

*。*。*。*
思いつきで書いてしまいました
よくわからない話‥。笑

怪しい人の名前を
やっとの思いで知れた香夜ちゃん

さて、これから
逃亡するか、それとも‥。

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/26 16:55 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#46 []
 
浮き世、とは
辛く儚い世の中の事‥。


‥誰にでも
思い出したくない過去は

あるもの、ですよ


威勢の良い、この"捨て猫"も



また‥然り。

⏰:10/01/26 22:25 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#47 []




どうやって逃げ出そうか‥
取り敢えずここは宿みたい。

さっきの女の人は
ここの女将さんのようだ


壱助さん、とやらは
逃げようと企んでるのをわかって
あたしから目を逸らさないのか‥

⏰:10/01/26 22:29 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#48 []
 
「何か‥変ですか?」

様子を伺うように
恐る恐る目を合わせてみる

「いえ‥、何も」

真っ直ぐに伸びた長い睫
綺麗な首筋、透き通った肌

見れば見るほど美しくて、
ただ見てるだけで


惚れてしまいそう‥。

⏰:10/01/26 22:32 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#49 []
 
って、何考えてるのよ!!

はっと我に返って
"そうですか"とぶっきらぼうに
目を伏せながら呟いた。

「ただ‥」

あの綺麗な手が
今度はあたしの髪を撫でる


外がだんだんと橙色に染まる
窓からの光が
壱助さんの横顔を染める。

⏰:10/01/26 22:38 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#50 []
 
綺麗な夕日色に
壱助さんの美しさが
何とも、ぴたりと合っていて

女のあたしが嫉妬しそうなほど
色っぽく映し出した。


"ただ‥"の後に続く言葉を
あたしは黙って待った

普段はせっかちだから
こんなことは‥有り得ないのに

⏰:10/01/26 22:41 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#51 []
 
 
「可愛らしいな、と‥」


_

⏰:10/01/26 22:42 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#52 []
 
いや、まさかと思った。
‥お世辞に違いないのだ

こんな美しい人に
"可愛らしい"なんて言われても
正直、嫌味にしか聞こえない

そんなことを言って
あたしが油断したすきに
"喰ってしまおう"とか、
きっと考えているんだ‥。


そう疑わなければ、
自分を見失ってしまいそうで
急に忙しくなった鼓動に
気づかぬ振りをする

⏰:10/01/26 22:46 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#53 []
 
そんなあたしをよそに
クスッと鼻で笑って
ゆっくりと立ち上がった。

着物の裾や襟を整えて‥

「ちょいと、野暮用に」


畳が擦れる音
襖に手をかけゆっくり開ける音
ひとつひとつに
何故か奥ゆかしさを感じる

⏰:10/01/26 22:50 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#54 []
 
「野暮用‥?今から?」

「まぁ、‥はい」

"此処から出ないで下さい、よ"
相変わらずの口調で
そう言い残して去っていった。



まだ少しだけ落ち着かない胸に
手を当てて深く息を吐いた

⏰:10/01/26 22:53 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#55 []
 
畳の匂いが鼻の奥をくすぐる

こんなに安心して
畳の上に寝そべったのは
もう‥いつぶりだろう

ぼーっと天井を眺める



「あ‥今が狙い目‥だ」

⏰:10/01/26 22:56 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#56 []




だけど頭をよぎるのは
壱助さんの言い付け。

会ったばかりの人の言い付けを
何故守ろうとするのか‥

逃げてしまえばこっちの物


「此処から出ないで下さい、よ」

口調を真似して呟いた

⏰:10/01/26 22:59 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#57 []
 
何となく逃げられない気がした

逃げても捕まりそうな気がした
いや、
逃げたら捕まえてほしいのかも‥


わからない
大人なんて嫌いだ。

なのに‥誰かに心配されたい
誰かに求められたいと思う

⏰:10/01/26 23:01 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#58 []
 
と、言うより
恐らく‥いや絶対



逃げたら‥



殺される気がしたのだ。

⏰:10/01/26 23:03 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#59 []
 
死んでもいいと思ったくせに
死にたくないと今思うのは、

まだ人間らしい証拠なのかな‥


大の字になって
"所有物"は"所有物"なりに
いろいろと考えた


「‥はぁ」

ため息がいつの間にやら癖になった

⏰:10/01/26 23:05 📱:D905i 🆔:3fGEyA9k


#60 []




どれくらい経っただろう
急に寂しくなってきた‥。

『あんたのせいで‥!!』

独りになると、

『死んじまったじゃないか!!』

決まって甦る

『この人殺し!!化け物!!』

痛い思い出

⏰:10/01/27 00:42 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#61 []
 
もしもあの時‥
お父さんに助けを求めなかったら

『お父さん‥助けてぇ!!』

無事だったのかな。

『‥香夜!!』


あの時の‥
飛び散った父の生々しい血が
べたりと頬に付いたあの感触が

―‥未だに忘れられない

⏰:10/01/27 00:48 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#62 []
 
頬を伝う冷たいものを
恐る恐る手で拭い
涙だとわかって安堵した。


結局誰かに捕まるなら、
あの時連れ去られてしまえば
お父さんは生きていたのかも‥


「‥痛い、」

母親が残した体中の傷が疼いた

⏰:10/01/27 00:54 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#63 []
 
着物で隠せるのが唯一の幸い
背中だから、時々
寝返りをうつと痛むけど‥

ふぅっと息を吐いて
鏡越しに醜い背中を眺めた

‥痛々しい傷
爪を立てられたり
刃物を振り回されたり

今思えばあの時の母は、
何かに取り憑かれてたんじゃないかと疑ってしまうほどだ

⏰:10/01/27 01:02 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#64 []
 
「化け物は‥」

「母親の方‥ですか?」


振り返ると
いつ帰ってきたのか
‥壱助さんの姿が

足音くらい立ててよ‥
びっくりしたぁ


「お‥お帰りなさい」

「‥折角、良い隙をあげたのに」

⏰:10/01/27 13:12 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#65 []
 
壱助さん
あんた訳わかんないよ‥

捕まえて"所有物"だ"夫婦"だ
逃げられないと言っておきながら

あたしに逃げるための
時間を与えるなんて‥ねぇ。


「言い付けは守る主義ですから」

急いで腕を通した着物の胸元を
忙しなく直しながら言った

⏰:10/01/27 13:15 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#66 []
 
"それは、それは"と満足そうに
少し距離を置いて正座する、

壱助さんは無関心なのか
ただ口数が少ない方なのか
よくわからない


「勢いの良い、"猫娘"」

「へ?」

「かと、思いきや」

「や?」

「傷を負った"捨て猫"と、きた」

⏰:10/01/27 13:21 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#67 []
 
それでいて、
口を開いたかと思えば
訳のわからないことばかり

「‥何の話ですか?」

「幼き頃のその傷は、」

「だから何の‥」

「少々貴女には深すぎた」

「‥」

見透かされたのか、
独り言を聞かれたのか、
そんなことは気にならない

⏰:10/01/27 13:25 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#68 []
 
自然と口が開く

「でも、あたしには‥
この傷を背負う義務がある」

「義、務」

ぽつり、呟いた壱助さんの口が
少し歪んで見えた

「"生きたい"って思わなければ
何もかもが上手くいったんです。
あたしさえ犠牲になれば‥
死ななくて済んだ‥。」

情けない自分の声が憎らしい

⏰:10/01/27 13:30 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#69 []
 
「母を許そうとは思いません。
そこまで出来た人間ではないし

自分の事も‥許せないんです
だから‥仕方ない事です」

ぷつり、ぷつりと
出た言葉を紡ぎ合わせると


壱助さんは目を細めた。

⏰:10/01/27 13:34 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#70 []
 
「ほぅ‥興味深いです、ね」

本当に興味あるのかな‥
目をこちらに向けもせず
お茶を入れる姿は
どうも、そうは見えない‥。


「香夜さんが、助けを求めた時
代わりに父親が殺されると‥
予期していたなら、

貴女は確かに‥人殺しです」

胸が痛む。息が少し上がった
何故‥知ってるの?

⏰:10/01/27 16:56 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#71 []
 
「しかし‥その様なことは
貴女でなくても、考えませんぜ

よって、罪意識は無用です、よ」


わからない。
今まであんなに自分を攻めてきた
そう思って‥孤独に生きてきた
母の暴力にも耐えたのに‥


「貴女は、悪くない‥香夜さん」

⏰:10/01/27 17:01 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#72 []
 
いきなり救われてしまっても、
自分への対応の仕方がわからない

「忘れられない過去も、
思い出したくない過去も、
誰にでも有るじゃぁないですか

もっと‥肩の力、抜きましょう」

目の奥が痛いくらいに熱くなる
目の前の壱助さんが
‥一気にぼやけた

⏰:10/01/27 17:06 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#73 []
 
あぁ‥もう
人前で泣かないと決めたのに。


「一つだけ、忘れなければ‥」

懸命に涙を拭ってみても
指の隙間から溢れ出る

何が悲しいの‥?
何が辛いの‥?
どうして‥こんなに‥。

「父上に救われた、その命
無駄な物に‥してはいけない」

⏰:10/01/27 17:11 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#74 []
 
壱助さんは
今どんな顔をしてるのかな‥
どんな思いで、どんな表情で‥

「死のう、なんざぁ‥
もう‥これっきりに、」

壱助さんの冷たい手が
あたしの手首を掴む

「‥っ」

恥ずかしくて堪らない
お父さんに、申し訳ない

「‥しましょう、か」

⏰:10/01/27 17:16 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#75 []
 
手首の腫れ上がった傷口を
細い指が撫でる

お父さん‥お父さん
‥ごめんなさい

「う‥っ‥グズ」

必死に声を殺しても
ただただ辛いだけで、虚しくて
悔しいだけだった

⏰:10/01/27 17:20 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#76 []
 
「壱助‥ッさん‥グズ」

「‥何か、」

落ち着いた声がどこか懐かしくて

「死にた‥くな‥ッ‥で」

本当は死にたくなんかない。

あの時お父さんに
生を訴えた時と同じ

死にたくなんかないんだ‥

⏰:10/01/27 17:23 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#77 []
 
「よし、よし」

ぽん、とぎこちなく
あたしの頭を撫でた手に
救われた気がした。

その瞬間に
子供のように声を上げて泣いた


壱助さんの懐に顔を埋めて
何年分もの涙を流した。

⏰:10/01/27 17:26 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#78 []




「おや、おや」


窓から差し込む
満月の優しすぎる光が照らす


「子供です、ね‥香夜さんは」


泣き疲れたあたしを抱いて
壱助さんがクスッと笑った。

⏰:10/01/27 17:29 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#79 [笹]
第二章 【救われて】

威勢のいい
香夜ちゃんの辛い過去

普段は興味なんて無さそうなのに
いきなり饒舌になる壱助さん。
なんだ、喋れるんじゃない(笑)

出会ったばかりでも
誰かを救えてしまうんだから、
言葉の力は偉大ですね。
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/27 17:42 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#80 [笹]
 
一週間もすりゃぁ、
人の性格も良くわかるもので


"捨て猫"はと言うと
泣くは、喚くは‥
かと思えば、眠りにつき

何かと‥忙しない猫でして、ね

それに加えて、頑固ときた
"言うは易いが行うは難い"
頑固者には、身に滲みる言葉です

⏰:10/01/28 13:15 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#81 []




ある晴れた日の事である。

「あら、壱助さんじゃないかぁ
相変わらず‥色男だねぇ」

団子屋の腰掛けに座ろうとすると
そこの女将がやって来た。

「あぁ‥伊代さん
ご無沙汰しておりました、ね」

壱助は律儀に正座をして頭を下げた

⏰:10/01/28 13:20 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#82 []
 
「聞いたよー?壱助さんよぉ、
最近若い子‥、
連れて歩いてるそうじゃないか」

伊代はお茶を差し出し
興味深い様子で身を乗り出した

「只の‥"捨て猫"ですよ」

「そんなぁ、隠さなくたって‥」

クスクスと笑って
壱助の肩をポンと叩く

⏰:10/01/28 13:25 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#83 []
 
「紹介しておくれよー
今日は連れてないのかい?」

「えぇ‥、
自立するそうです、よ」

「自立?」

伊代は不思議そうに首を傾げる

話好きな伊代は
話に花を咲かせる"花咲女将"
愛想もいいもんだから
此処はいつでも大繁盛

⏰:10/01/28 13:30 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#84 []
 
「"遊女になる"‥と、ね」

うっすら笑って茶を啜り
壱助は団子を手に取った

「ゆ‥遊女って‥何でまた」


伊代は緩んだ顔を引き締め
唾をごくりと飲んだ

⏰:10/01/28 13:33 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#85 []




こうなったのも、つい今朝の事。

『もういいです!
‥あたし
花街に行って遊女になります!
それで沢山稼いで
壱助さん見返してやります!!』

「と、言うもんでねぇ」

今朝の出来事を坦々と語る姿を
伊代はそわそわしながら見つめた

⏰:10/01/28 14:09 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#86 []
 
「まさか壱助さん‥
止めなかったのかい?!」

つい大きくなってしまった声に
他の客も反応する

「止めましたよ、もちろん
"男を知らないくせに
良く言えたもんだ‥。
雇ってもらえませんぜ"、と」

「そんな言い方しちゃあ、
余計維持になるじゃないかぁ!」

他の客の視線も気にならないほど
慌てふためく伊代

⏰:10/01/28 14:14 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#87 []
 
手にした団子をじっと眺め
変わらぬ口調で壱助は続ける

『だ‥大丈夫ですっ!!
あたし、経験あぁ‥あります!』

「と、分かりやすい嘘まで付いて
維持を張るもんですから‥
"這っても黒豆、ですね"、と」

楽しそうな顔の壱助とは対照に
呆れたような顔の伊代

⏰:10/01/28 14:19 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#88 []
 
『く‥黒豆?!
一体何なんですか?
人を所有物、猫呼ばわりして
‥仕舞いには黒豆?
いい加減にしてくださいよ!!
あたしそんなに色黒くないし
背丈だって人並みです!!』

「‥と、色をなしてしまいまして」

"参った、参った"と微笑し
頭を軽く叩く壱助

⏰:10/01/28 14:24 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#89 []
 
伊代は深くため息を付いて
"全く‥"と頭を抱えた

「そんな言葉、
若い子が分かる訳ないだろう?
その子の反応は妥当だよ、全く」

「そうですか、ね」

無関心そうに団子を口に入れ
満足そうな顔をする

⏰:10/01/28 14:27 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#90 []
 
「ちょいと壱助さん!!
そんな純粋な子、
からかうのは程々にしなよぉ?
ましてや、維持っ張りの子を‥」

眉間に軽くしわを寄せた伊代を
横目でちらりと見つめる

「本当に‥"這っても黒豆"
素直に止めればいいものを、
維持を張って‥ねぇ

‥仕様がない"猫"です、ね」

⏰:10/01/28 14:32 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#91 []




――‥花街
そこは遊女屋が集まる町の事。

本来あたしみたいな生女が
足を運ぶような所じゃない。

「いや‥でも‥」

『宿代を‥
払ってあげてると言うのに、』

「引き下がるわけには‥」

『あぁ‥"所有物"には
宿代はかかりませんでした、ね』

「いかない‥!」

⏰:10/01/28 14:38 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#92 []
 
壱助さんの言葉が頭をよぎる
悔しい‥情けない。

唇を思い切り噛み締めて
一軒の遊女屋に足を踏み入れた


絶対‥ぜぇぇぇぇったい!!
稼いで、見返してやるんだから!!

⏰:10/01/28 14:41 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#93 []




団子の串を静かに皿に置いて
"ご馳走様でした"と手を合わせる

「でも、壱助さんよぉ‥
心配してなそうな素振りだけど
本当は
居ても立っても居られなくて
出てきたんじゃないのかい?」

ニヤニヤしながら
伊代は壱助の脇腹を肘で小突いた

⏰:10/01/28 14:45 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#94 []
 
「まさか、
心配するも何も‥
"産毛ばかりの捨て猫"ですから
誰でも良いって訳じゃ
ないでしょうから、ね」

すっと腰を上げて下駄を履く

「男の力にゃ、勝てないよぉ?
可愛い子なんだろうから‥
すぐに客が‥」

そう言い終わる前に
軽く頭を下げて去っていった

⏰:10/01/28 14:50 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#95 []
 
「意地っ張りなのは‥




"おあいこ"なんじゃないかねぇ」



伊代は、壱助の背中を見つめ
"やれやれ"と緩く微笑んだ

⏰:10/01/28 14:53 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#96 []




「で、あんた‥
経験はあるのかい?」

梅の花のような香りがする部屋で
此処の遊女屋を取り仕切る
"京さん"は煙管を蒸かして言う

「え?!あぁ‥えっとぉ」

全身にどっと汗をかき
後ろに隠した手が忙しなくなる

⏰:10/01/28 15:05 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#97 []
 
「‥悪いけど、生娘は雇えないよ」

冷たく言い放つ声の後ろで
男女の色がましい声が聞こえる

やっぱり‥
あたしの来る所じゃないかも

「ささ、産毛の子猫ちゃんは
お家に帰って
"おまんま"でも喰ってな」

煙を顔に吹きかけられて
しかも子供扱いされて‥

⏰:10/01/28 15:11 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#98 []
 
引き下がってたまるか‥!!



「経験‥あります!!」


色がましい声をかき消すように
顔にかかった煙を吹き飛ばす様に


大声で言ってしまった

⏰:10/01/28 15:13 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#99 []
 
"ほぉう"と言って
目を細めて赤い唇を吊り上げた

「それなら‥
今晩から早速、仕事だよ」




げ‥いきなり今晩から?

辺りはもう急かすかのように
夕日色に染まっていた

⏰:10/01/28 15:17 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#100 []




「んふ‥もう‥、
あぁん‥まだ駄目よぉ」

「まだ駄目なのかい?
此処はこんなに‥」



‥‥‥早くも、


消 え た い !!

⏰:10/01/28 15:20 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#101 []
 
襖の向こうから聞こえる声
耳を塞いでも聞こえてくる

「声で・か・す・ぎ!!」

小声なりに強めに
襖に向かって叫んでみた

「えーっと‥
まずは、お客さんにお酒注いで
それからー‥笑顔を忘れない
初めてのお客さんには
積極的に詰め寄る‥

って、
あたしも初めてなんだけど」

⏰:10/01/28 15:24 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#102 []
 
初めてって痛いって聞くけど‥
まぁ‥そうは言ってもねぇ?

そーんなに、
泣くほど痛いはず‥ない


「‥よね、」

ごくりと唾を飲み込み
手汗を着物で拭う

⏰:10/01/28 15:26 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#103 []
 
鏡に映る自分の姿

いつもとは違う
あたしじゃないみたい‥

真っ赤な着物に山吹色の帯
真っ赤な紅に綺麗なかんざし


「初めて抱かれるって‥
どんな感じ、なのかなぁ」

鏡の向こうの自分に投げかける

初めてくらい愛する人に‥
捧げたかったなぁ

⏰:10/01/28 15:29 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#104 []
 
「香夜、お客様がいらしたよ」

さっきとは打って変わって
商売様の笑顔の京さん

声は一段、いや二段くらい
高くなっている

"香夜は、今日からなんですよ
手加減してやってくださいな"

にやりと笑って襖を閉めた


ついに‥来てしまった

⏰:10/01/28 15:33 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#105 []
 
「い‥いらっしゃいまし」

思わず声が上擦った

正座をして深く頭を下げる
このまま‥頭を上げたくない
そんな気持ちに駆られる


「可愛らしい方です、ね
頭をお上げくださいな」


あぁ何か落ち着く声‥
この人なら何とか‥

⏰:10/01/28 15:37 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#106 []
 
「ひぃぃぃいいぃぃ!!!!」


頭を上げて驚いて腰を抜かした

なんで‥なんで‥

「い‥壱助さん?!」


紛れもなく
あたしの目の前にいる男は
今朝喧嘩した壱助さんである

「どうして‥こんな所に?!」

⏰:10/01/28 15:39 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#107 []
 
紛れもなく、紛れもなく
この美しさは壱助さん

「おや、おや
どうして‥名前をご存知で?」

この調子も壱助さん

「どうしてって‥香夜ですよ」

「あぁ‥香夜さん
お綺麗になられました、ね」

分かってたくせに‥わざとらしい

⏰:10/01/28 15:43 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#108 []
 
「‥あたしの事
様子、見にきたんですか?」

ふてくされ気味に一応酒を注ぐ

「様子‥
さぁ何の事、でしょうね」

あの怪しい笑みを浮かべて
酒を手に取る


お隣は‥
どうやら"行為"に至ったらしい
色がましい声が耳にへばりつく

⏰:10/01/28 15:47 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#109 []
 
沈黙‥と行きたいとこだけど
お隣の声の"おかげ"‥
"せい"で沈黙が破られる


―‥気まずい。


「香夜さん‥」

やっぱり素直に‥

「本当に‥」

謝ろうかな‥ぁ

⏰:10/01/28 15:50 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#110 []
 
「お綺麗です、ね」


頬に冷たい感覚
あの綺麗な手で頬を包み込まれた

壱助さんの目が
いつもとどこか違う‥


「い‥壱助さん?」

「お美しい‥」

「壱助さん‥?ちょっと‥」

⏰:10/01/28 15:52 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#111 []
 
あっという間に
壱助さんの顔がこちらに迫る
その向こうには天井が見える

壱助さん‥ちょっと待ってよ
たった一杯で酔ってるの?



「壱助さん‥
からかうのは止めてください」

引きつる笑顔を向けても


無駄だった

⏰:10/01/28 15:55 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#112 []
 
やだ‥

「こんなに‥胸元を開けて」

「や‥」

細くて白い指が胸元を這う

「積極的です、ね」

「壱助さん‥」

華奢な手でも力は強かった
上で捕らえられた両腕が
びくともしなかった

⏰:10/01/28 15:59 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#113 []
 
「まだ生娘となれば‥」

「いやぁ‥」

「こちらも力が入ります、ね」

「止めて‥壱助さん」

「そんな顔も、惹かれますねぇ」

首筋にねっとりと這う舌
思わず体が飛び跳ねる

⏰:10/01/28 16:02 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#114 []
 
最初から‥
このつもりだったの?

最初から‥
喰らうつもりだったの?


ねぇ壱助さん‥
あたし、わかんないよ

せっかく‥せっかく
心が開ける人ができたのに


壱助さん‥
そんな簡単に信じたあたしが
馬鹿だったのかな‥、

⏰:10/01/28 16:04 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#115 []
 
もう‥いいや、

もう‥


「今朝の威勢はどこ、に?」

首筋から感覚が消えた

「男とは‥こういう者、ですよ」

溢れ出した涙を
壱助さんの手が拭う

⏰:10/01/28 16:09 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#116 []
 
 
「言わんこっちゃ、ない」



そして‥笑った。

⏰:10/01/28 16:10 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#117 [笹]
第三章 【雇われて】

*。*。*。*。*
意地っ張りな香夜ちゃん
黒豆と言われて
さらにムキになる香夜ちゃん

それを楽しそうにからかう
ちょっとSな壱助さん

"産毛の子猫ちゃん"を
壱助さんは喰らってしまうのか?

「さぁ、どうでしょうね」
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/28 16:13 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#118 []
 
嗚呼‥
何て馬鹿なことを‥

本当にあたしは愚かだ。
今更、後悔しても及ばない

この前は優しく抱き締めてくれた
だけど、今は違う

壱助さん‥怖いだけです。

"呉牛、月に喘ぐ"

⏰:10/01/28 19:08 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#119 []




「どんな、お気持ちで?」

もう‥諦めました、か

「‥悔しい、だけです」

帯を緩めてみても無関心
触れてみれば、
怯えるようにぴくりと跳ねる

どうしたもんか‥。

⏰:10/01/28 19:09 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#120 []
「壱助さん‥」

あまりに情けない声で

「何か、ご要望がお有りで?」

蚊の泣くような声で

「こうして‥いつも?」

尋ねるものですから

「手加減、している方ですぜ」

悪者になったような気分ですよ

⏰:10/01/28 19:09 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#121 []
 
「‥悔しい」

やはり香夜さんは子供で

「何故、」

泣きじゃくって

「たった一週間で‥
貴方を知った気になってた」

焼き餅を焼いて

⏰:10/01/28 19:10 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#122 []
「それは、それは」

しかし、少しだけ‥

「壱助さん‥」

色めいて、‥全く

「‥」

香夜さん、貴女は私を‥

⏰:10/01/28 19:11 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#123 []
 
 
 
「抱いて‥下さい」



―‥どうしたいの、か
_

⏰:10/01/28 19:13 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#124 []
 
含み笑い、体を離せば
"どうして"と言うような顔をする

どうかしている、貴女は


「いたッ‥」

目を覚ませと額を叩いても
張り合いがありゃしない

⏰:10/01/28 19:14 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#125 []
 
「‥さぁ、帰りますよ」

「‥はい」


そんな顔されちゃぁ、
着物を直す手も躊躇います、ぜ

⏰:10/01/28 19:15 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#126 []
 
本当に‥貴女という人は


「壱助‥さん」




―‥本当に

⏰:10/01/28 19:16 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#127 []
 

「‥ごめんなさい。」




世話が焼ける"子猫"です、ね

⏰:10/01/28 19:16 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#128 [笹]
第四章 【誘われて】

*。*。*。*。*
初の壱助さん目線
が、しかし言葉数が少なすぎる

どうしたもんか、
いきなり大人びた香夜ちゃんに
流石の壱助さんも戸惑いの様子

そして案外
世話好きだった壱助さん
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/28 19:23 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#129 []
 
"矯めるなら若木のうち"

悪い癖や欠点などは
柔軟な"幼少"のうちに直さねば
成長してからでは直しにくい。



―‥そういう事、ですよ

⏰:10/01/28 20:25 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#130 []




穏やかな朝に

不釣り合いな‥


「いッ‥たぁああぁあいぃい!!」


激痛の目覚まし。

⏰:10/01/28 20:25 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#131 []
 
「朝から‥騒がしいです、ね」

人の顔面ひっぱたいといて‥
憎い‥憎すぎる


「朝くらい穏やかに‥」

起き上がり目線を上げると

「起きさせて‥」

⏰:10/01/28 20:26 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#132 []
 
異様な重い空気と
壱助さんの鋭い視線

「ください‥」

迫力に

「‥な、何でも‥ないです」



負けました。

⏰:10/01/28 20:27 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#133 []


「お金は‥稼げたんですかい?」

明らかにいつもより声質が鋭い
そして、正座‥辛い

「いえ‥全く」

ちゅんちゅん、と鳴く雀
こけこけ、と鳴く鶏
ぼろぼろ、と泣く私

‥惨めです本当に

⏰:10/01/28 20:28 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#134 []
 
「情けない」

「ご、ごもっとも‥です」

後悔先に立たずとは
このこと‥ですね

じりじり迫る壱助さんの視線
じりじり痺れる足

呆れたように深く息を吐き
いらいらしているのか
組んだ腕を片指で叩く壱助さん

⏰:10/01/28 20:28 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#135 []
 
「出来ないことは言わない事、
意地を張っても構いはしないが
分かりやすい嘘は無用。」


まるで子を叱る父である。

いつもより少し声を張って
語尾が乱暴だ。

⏰:10/01/28 20:29 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#136 []
 
「"私は愚かな雌猫です。
自らの体を安売りした上に、
情けないことに結果は皆無でした
このような事を以後繰り返さぬ様
壱助様には逆らわず
忠実である事をここに誓います"

はい、復唱」

「え‥?
そんないきなり言われても‥」

⏰:10/01/28 20:30 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#137 []
 
壱助さん=優しい

「人の話は、よく聞く事」

取り消したいと思います


「わ、私は‥愚かな雌猫です。
えーっと‥何だっけ‥?」

やっぱり鬼だと思います

⏰:10/01/28 20:31 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#138 []
 
「"自分の体を安売りした上に"」

だってこんな威圧感のある目
‥初めてですよ

「あぅ‥
自分の体を安売りした上に‥」

「‥」

「愚かな事‥」

⏰:10/01/28 20:32 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#139 []
 


「最初から、はいもう一度」




鬼‥鬼‥鬼!!!!

⏰:10/01/28 20:32 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#140 []
 
「壱助様は
鬼ではなく神様です、よ」



うわ‥読まれてる‥
貴方の笑顔は最恐です、よと

⏰:10/01/28 20:33 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#141 []
 
だけど‥、何でだろう


そんな思いとは裏腹に
壱助さんの傍はどこか落ち着く



居場所‥見つけました。

⏰:10/01/28 20:34 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#142 []
 
 

許される限り
あなたの傍に置いて頂きたい



_

⏰:10/01/28 20:35 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#143 []
 
 
「自分の事は、大切にして下さい


‥世話をかけますから、ね」

「‥は、はいっ!!」

思わず顔が緩みます

⏰:10/01/28 20:37 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#144 []
「では‥最初から、はいもう一度」

「えぇ‥まだやるんですかぁ?」

「"壱助様には逆らわず"です、よ」

「‥はぁーい」

やっぱり、
よく考えておきます‥

⏰:10/01/28 20:39 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#145 [笹]
第五章 【叱られて】

*。*。*。*。*
朝になればいつもの調子の2人
やっぱりこれがしっくり来る?

何となく、
居心地がよくなった気がする
雌猫、香夜ちゃん

壱助さんまさかのツンデレ

明るくなりましたかね?(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/28 20:44 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#146 [我輩は匿名である]
>>60-120
>>121-150

⏰:10/01/28 21:30 📱:W53H 🆔:4WiSLrw2


#147 []
 
まだ幼い雌猫が、
体を売ろうなんざぁ‥
馬鹿げた話です。

本当に危なっかしいもんです、よ

あれこれ口で言うよりも
心の中で考えてる事のほうが
ずっと痛切じゃありやせんか

私は、そういう気質なもんで‥

"鳴かぬ蛍が身を焦がす"って、か

⏰:10/01/29 00:39 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#148 []




「またですかぁ?」

まただ。
"ちょいと野暮用に"って
壱助さんは決まって夕方に
下駄を履いて出て行く

「すぐに‥戻ります、よ」

なんだかあれから
更に子供扱いされてる気がする

⏰:10/01/29 00:43 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#149 []
 
あたしの思い違いかもしれない
だけど‥、何となくあの日から
距離が‥遠くなった気がするの

距離って言うのは、
座った時とかの間隔のことだけど


「考えすぎかなぁー‥」

壱助さんの背中をぼうっと見つめ
あたしはただ
力なく手を振るだけだった

⏰:10/01/29 00:46 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#150 []
 
"野暮用"って何だろう‥

拗ねた子供のように
口をつんと尖らせて畳に寝転ぶ



『手加減、してる方ですぜ』



「‥まさかっ、」

⏰:10/01/29 00:50 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#151 [笹]




「壱助さんじゃないかぁ!!」

「あぁ‥伊代さん」

にこりと微笑む壱助の腕を
伊代がしっかりと捕まえた

「"あぁ‥"じゃないよぉ!!
どうなったんだい?!」

手に汗握るように
またそわそわしている

⏰:10/01/29 15:19 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#152 []
 


「どうなった、と言いますと?」



"惚けるんじゃないよ"と
伊代がせかす

⏰:10/01/29 15:20 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#153 []



「そうかそうかぁー
無事だったのかい」


見たこともない人間を
全く子供かのように心配するほど
伊代は人情味に溢れてる

⏰:10/01/29 15:21 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#154 []
 
「そんなに心配しなくても、
大丈夫でしたが、ね」

いつものように茶を啜り
団子を手に取り眺める


「壱助さん!あんたねぇ
女の子にとっちゃあ
事によっては死のうと思うくらい
大事になるんだからさぁ‥
ちゃんと面倒見てやんなよぅ?」

⏰:10/01/29 15:21 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#155 []
 
女は女の味方である。
そうは言っても
壱助の無関心さには
女じゃなくてもこう言うだろうと
伊代は思うのだ


「それでぇ‥"猫ちゃん"は
何ともなかったのかい?」

腕を組んで
まるでお説教をしてるようだ

⏰:10/01/29 15:22 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#156 []
 
「何とも、無かったんじゃあ‥」


『たった一週間で
貴方を知った気になってた‥』


‥どうした、もんかねぇ

⏰:10/01/29 15:23 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#157 []
 
「‥ないですか、ねぇ」

壱助は団子に口を付けず
そのまま皿に置いた


「連れて歩くなら、
もっとしっかりしなよぉ!!」

べしんっと一発
壱助の肩にお見舞い

⏰:10/01/29 15:24 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#158 []
 
「しかし‥少々」


『‥抱いて、ください』


―‥酒でも飲んだ、か
―‥空気に飲まれた、か


それとも‥

⏰:10/01/29 15:24 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#159 []
 
「飲まれちまったようで、」


―‥正気、か


あの時の目は虚ろではなかった

だとしたら、 やはり

⏰:10/01/29 15:25 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#160 []
 
「"酒でも飲ませて襲った"
なんて言わないだろうねぇ?」


‥否定はできません、ぜ


「まさか‥そうなのかい?」

驚くように伊代は口をはっと塞ぐ

⏰:10/01/29 15:26 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#161 []
 
「いえ、いえ

せめて‥人並みでないと、ね」


その言葉に
ぽかんとだらしなく口を開けた

"人並み?"と目で訴えられて

⏰:10/01/29 15:27 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#162 []
 

「中の‥下では、何とも」



壱助はそう言い残し
団子をそのままにして


去っていった

⏰:10/01/29 15:27 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#163 []




さて、どうしたもんか

「‥ニャァ」

珍しく思い耽って宿に戻る
入り口手前で
何故か躊躇していると
一匹の猫が足元にすり寄ってきた

⏰:10/01/29 15:28 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#164 []
 
"獣はあまり好かないんで、ね"と
少し冷たい視線を向けると

寂しそうにニャァと鳴いた


「‥"猫"はどうして、こうも」

その場にしゃがみこみ
喉元を撫でてやる

⏰:10/01/29 15:29 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#165 []
 
「‥気まぐれなのか、ねぇ」


普段は猫なんて
寄って来やしないんですが

「ミャァ‥ウ」



‥撫でてやると
可愛い声を出すもんで

⏰:10/01/29 15:30 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#166 []
 
「情けない‥奴です、よ」





目を細めて微笑した

⏰:10/01/29 15:30 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#167 []
 
すりすりと身を寄せて
何を、考えているんで?

人と猫は
分かり合えませんか、ね


「発情期です‥か」

猫の丸い目がパチクリする
惚けるんですかい?

⏰:10/01/29 15:31 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#168 []
 
"さて‥"と腰を上げようとすると

"嫌だ"と言うように身を乗り出す



「"飼い猫"が‥妬くんでね」

大きく一撫でして立ち上がる

⏰:10/01/29 15:31 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#169 []
 

「‥隠れても無駄、ですよ」



「ひぁぁああっ!!」


びくりと肩を持ち上げて
‥苦笑いする猫が一匹。

⏰:10/01/29 15:32 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#170 []
 
「いいいっ壱助さんっ
おかっ‥お帰りなさぁい」


「何してお出でで?」




‥どうしたもんか、ね

⏰:10/01/29 15:33 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#171 []
 
「‥心配で、‥壱助さんの事が」




馴れては、いるんですぜ?



しかし情けない‥男です、よ

⏰:10/01/29 15:34 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#172 []
第六章 【困らせて】

*。*。*。*。*
サブタイトル:色男の悩み w

またもや壱助さん目線
伊代さんと絡み熱いっす

猫と話しちゃう壱助さん
相当‥やられてるようで

とりあえず、
香夜ちゃん出番少なくて
ごめんなさい(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/29 15:38 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#173 []
 
"腹立てるより義理立てろ"

腹を立てて何になるんで?
どうにもなりや、しやせんよ





本当に、訳の分からない厄介者を
拾ってしまったもんです、ね

⏰:10/01/29 16:48 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#174 []



壱助さんが‥猫としゃべってた

有り得ない‥
あんなに動物嫌いなのに!!
熱でもあるのかなぁ

「何、か」

「い‥いえ、何も」

‥気のせいか。

⏰:10/01/29 16:48 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#175 []
 
「さっきから‥何か、」

ついついじっと見てしまう
意識はしてないんだけど‥


まぁ、壱助さん綺麗だし
普通は見とれるものよね



‥自問自答である。

⏰:10/01/29 16:49 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#176 []
 
「壱助さん‥もしかして‥」

無意識のうちに
あたしは口が開いてしまう

壱助さんにこんな事聞くなんて
虎の穴に手突っ込むようなもの


「もしかして、花街に‥」

・・・って、

⏰:10/01/29 16:50 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#177 []
 



「何で脱いでるんですかぁああ?!」


_

⏰:10/01/29 16:51 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#178 []
 
真珠みたいに白い肌
まるで歌舞伎の女形みたいに
綺麗な顔わしてるもんだから
体も華奢なのかと思ったら

案外‥と言うか
かなりしっかりしてて
搾られてるってかんじ‥。

腰の当たりがすごく色っぽくて
何て綺麗なんだろうこの人は‥

⏰:10/01/29 16:51 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#179 []
 
って‥
いちいち描写したくなるほど
美しかった


「ちょっ‥と
いきなり何してるんですか!!」

腰のあたりまで着物を下ろし
ぎろりと此方を睨み付けられる

⏰:10/01/29 16:52 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#180 []
 
「何とは‥
着替えの意味もご存知でない?」


またそうやって‥

「ご存知ですぅ!!
着替えるなら一言かけてから‥」

からかうんだから

⏰:10/01/29 16:53 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#181 []
 
"着替えます、よ"って
‥今更遅いですよぉ

熱くなる顔を抑えて
黙って背を向けた



するすると帯が解ける音
そんな音でさえ
壱助さんは色っぽくしてしまう

⏰:10/01/29 16:54 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#182 []
 
「終わりました、よ」

一呼吸置いて体の向きを返る
いちいちドキドキして
あたし馬鹿みたいだなぁ‥


おいおい壱助さん
時が止まってるじゃあ
ありませんか。

「ちゃんと腕通してくださいぃ!!」

⏰:10/01/29 16:54 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#183 []
 
また半裸状態
露出狂ですかあなた‥もう

「はい、はい」

くつくつと笑いながら袖を通す


着物が畳を擦る音に
壱助さんの呼吸が答える

「花街が‥どうかしやした、か」

⏰:10/01/29 16:55 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#184 []
 
目の前に正座して
長い睫を柔らかく揺らす

調子狂いますよ‥本当に


「壱助さん‥
いつもいつも野暮用って、
本当は、花街に
行ってるんじゃないですか?」

軽く唇を噛んで頬を膨らます

⏰:10/01/29 16:55 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#185 []
 
「そうだったら‥何、か」

動揺する様子もない
掴み所がない人ね


「やっぱり‥そうなんですか?」

語尾が弱くなる
聞かなきゃよかったって
これまた後悔先に立たず。

⏰:10/01/29 16:56 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#186 []
 
「さぁ‥ね」

妖しい笑みを浮かべた時は
あたしをからかってるのだ


「行くな、と?」

「当たり前です‥!
何か‥嫌なんですよぉ」

「ほぉう」

⏰:10/01/29 16:57 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#187 []
 
すると
壱助さんがぬっと身を乗り出し
じっと見つめてきたもんで
不意を付かれて倒れ込んだ



「それなら‥香夜さんが
お相手を、していただけるんで?」

⏰:10/01/29 16:57 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#188 []
 
急に体が重くなる
あたしを見下ろすその目が憎い
壱助さんは、ずるいよ

「‥嫌です」

「おや、この前は‥
色めいて抱けと言ったのに」

「‥あ、あれは」

自分でもよくわかりません
何て言えるはずもなく

⏰:10/01/29 16:58 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#189 []
 
「色んな遊女を抱いてる人に
‥抱かれたくはありません」

目を伏せて
のしかかる体を押し上げる


「こいつぁ‥手厳しい」

雪みたいな手が頬を撫でた

‥また喰らおうとするの?

⏰:10/01/29 16:59 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#190 []
 
「中の下では‥」

雪がするする首筋を流れ
胸元をするりと抜けた



「"目覚めない"もんで、ね」

胸にひんやりとした感覚
睨みつけるように
鋭い目であたしを突き刺す

⏰:10/01/29 16:59 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#191 []
 

「きゃああぁああぁあっ」



いざと言うときに
力は発揮されるようで

どんと壱助さんの体を突き飛ばし
目をむき出しにした

⏰:10/01/29 17:00 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#192 []
有り得ないっ有り得ない!!!

「壱助さんの‥




すけべぇええぇえぇ!!!!」



もう、お嫁にいけません。うぅ

⏰:10/01/29 17:00 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#193 []
 
「そんなに怒っていては‥
嫁に行けません、よ」



「壱助さんのせいですぅう!!!」


目一杯叫んでやった。

―‥壱助さんの馬鹿やろうっ!!

⏰:10/01/29 17:02 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#194 [笹]
第七章 【触れられて】

*。*。*。*。*。*
すみません
ただの私の息抜きです ←

壱助さんも美しいとはいえ
やはり男、助平なのもまた然り
だけど下品に聞こえないのが
また憎めない‥

さぁ香夜ちゃんは
無事お嫁に行けるのかっw?
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/29 17:06 📱:D905i 🆔:XWctwuXA


#195 [我輩は匿名である]
>>160-200

⏰:10/01/29 21:42 📱:W53H 🆔:CL/ESoxg


#196 [我輩は匿名である]
>>140-159

⏰:10/01/29 21:42 📱:W53H 🆔:CL/ESoxg


#197 []
 
死にそうな所を
拾ってやったと言うのに‥

疑い深い猫、ですよ


少しは恩でも返そうと
‥思わないんですかい?

"猫は三年の恩を三日で忘れる"
‥って、ね

⏰:10/01/30 19:50 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#198 []




何をするでもない
壱助さんはいつもこう。

正座してお茶を入れて啜って
少し間を置いてまた啜って‥
飲み終えたら
‥―立ち膝で窓際に座る


ぼうっと空ばかり眺めて
何が面白いのだろう。

⏰:10/01/30 19:50 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#199 []
 
立ち膝で座ってる時の
少しはだけた着物から見える
白い肌が何とも‥。

あー‥羨ましさを越えて憎らしい



‥ねぇ壱助さん
あたしが居ること忘れてる?
存在消されてる?

⏰:10/01/30 19:51 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#200 []
 
そういえば、壱助さんは何で‥





あたしを助けてくれたの?

⏰:10/01/30 19:52 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#201 []
 
しかも、それから
ずっと面倒見てくれてる。
扱いは‥まぁ考えないとして


お金だってないのに‥。



―‥ただの人助け?
あたしに対する同情かしら

⏰:10/01/30 19:52 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#202 []
 
「さて、」

壱助さんが珍しく
自分から口を開いた

そして立ち上がる。


また‥花街?
だけど、まだ午前中よ?

⏰:10/01/30 19:53 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#203 []
 
「‥行きます、か」

すっと腰を上げて
帯をきつく引っ張り整える


「何処‥行くんですか?」

不安そうに見つめると
ひんやりとした手が
あたしの腕をしっかり捕まえた

⏰:10/01/30 19:54 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#204 []
 
「なっ‥何処に?!」

「その内わかります、よ」




あたしと壱助さんの温度差は
一ヶ月経っても縮まらない

⏰:10/01/30 19:55 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#205 []



「壱助さぁんっ」

こちらの呼びかけに
一切振り返りもせずに
ただ腕を引いて街を歩く

そんな中でも
町娘の黄色い声が聞こえる

"あら、色男ーっ"
"見とれちゃうわぁー"

⏰:10/01/30 19:55 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#206 []
 
自然と眉間にしわが寄った

だけど当の本人は
ぴくりともしない
普段から持て余されてる色男は
もう馴れているのだろう



‥憎たらしい。

⏰:10/01/30 19:56 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#207 []




「あらぁああ!!壱助さんっ
紹介しに?」

うわ‥綺麗な人‥。

団子屋から出てきたその人は
壱助さんを見るやいなや
顔に花を咲かせた

⏰:10/01/30 19:57 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#208 []
 
「今日はちょいと、別件でして」

「あら‥そうなのかい
ちょいと時間があるならさぁ
紹介しておくれよぉっ!」


その人と壱助さんが話す姿は
何故かしっくりきて

‥お似合いだった

⏰:10/01/30 19:58 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#209 []
 
"では‥"と言うと
壱助さんはあたしに
横目で合図をする


「あ‥香夜です!!はじめまして」

ぺこりとぎこちなくお辞儀をした

⏰:10/01/30 19:58 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#210 []
 
「香夜ちゃん?
可愛いじゃないかぁーっ
やっぱり壱助さん、
お目が高いよぉーあんた!!」

ぽんっとあたしの肩を叩いく

その美しい手が
初めてとは思えないくらい
優しくて暖かかった

⏰:10/01/30 19:59 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#211 []
 
「伊代さんにゃあ、劣りますぜ」


あたしなんかと扱いが違う
優しい目で見つめてた
この色男め‥
そんな言葉がぽんと出るなんて

確かに綺麗だし、いい人そう
‥だけど、ちょいと悔しい

⏰:10/01/30 20:00 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#212 []
 
「馬鹿言うんじゃないよぉ!全く」

壱助さんを叩くのも
何となく馴れてる気がして‥


やっぱりあたしなんかは
まだ付き合いが浅いんだって
思い知らされるのだ。

⏰:10/01/30 20:01 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#213 []
 
"団子屋の女将の伊代です"と
笑顔で言われて
ついついつられて笑顔になる


大人の女と言えば
"あの母親"しか印象にないから
なんだか不思議な感じがするの

⏰:10/01/30 20:02 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#214 []
 
「‥では、これで」

息つく間もなく
またぐいっと手を引かれ
伊代さんに軽くお辞儀して
団子屋を後にした


「あれは‥仲いいのね、きっと」

クスっと笑いながら
伊代は二人の背中を眺めた

⏰:10/01/30 20:04 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#215 []




「‥此処ですか?」

壱助さんが足を止めたのは
怪しい雰囲気の
お店‥のような建物の前

手を引かれて入ってみると
これまた怪しいお婆さん

こ‥怖いじゃあありませんか

⏰:10/01/30 20:04 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#216 []
 
「お願いします、ね」

そう言うと今度は
お婆さんに手を引かれて
襖の奥へ


「ちょ‥壱助さん?!」

壱助さんは
こちらに来る様子もなく
側にあった椅子に腰を掛けた

⏰:10/01/30 20:05 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#217 []
 
次の瞬間壱助さんの姿が消え
ばんっと襖が現れた

‥な、何でぇえ?


「あの‥何を‥」


またこの人も
あたしの存在無視ですか‥?

⏰:10/01/30 20:05 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#218 []
 
お婆さんは物差し片手に
あたしを睨み付ける

それはもう‥殺されそうなくらい


「あんた‥年は?」

しゃがれ声が沈黙を破る

「じゅ‥十八‥です」

⏰:10/01/30 20:06 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#219 []
 
"へぇ"と無関心な声を出し
日焼けした黒い手が
こちらに物差しをあてがう

こっちが喋ろうもんなら
キッと睨み付けられる




一体何なんですか?

⏰:10/01/30 20:06 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#220 []
 
「きゃっ‥何するんですか?!」

突然胸を鷲掴みにする
小さな骨張った手

「‥中の下だね」

壱助さんと同じ捨て台詞。

反論する間もなく
お婆さんは何か書き留め
算盤をはじき出した

⏰:10/01/30 20:07 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#221 []
 
"こんなもんかねぇ"と呟くと

「壱助!!ちょっと来な!!」


壱助さんを呼び捨て‥
どんな関係‥?

すると壱助さんが
襖の向こうから現れ
あたしに目もくれずに
お婆さんの元へ

⏰:10/01/30 20:08 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#222 []
 
「こんなもんでどうかねぇ?」

さっきの紙を壱助さんに渡す
少し顔をしかめて
こしょこしょと耳打ち

「まぁ、色男の言うことにゃあ
聞かない訳には‥」


こしょこしょ

こしょこしょ

⏰:10/01/30 20:08 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#223 []
 
「これは、有り難い」

「2、3日したらまた来な」


話は終わったのか
あたしは一切事情を知ることなく


また手を引かれる

⏰:10/01/30 20:09 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#224 []
 
顔色一つ変えない壱助さんに
あたしは事情を聞かなかった





そうじゃない。

‥聞けなかったんだ

⏰:10/01/30 20:10 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#225 []
 

あの耳打ちから漏れた言葉
確かに聞こえたのは





"お金"のやり取り

⏰:10/01/30 20:11 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#226 []
 


ねぇ‥壱助さん




あたしを売るんでしょう?


_

⏰:10/01/30 20:11 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#227 [笹]
第八章 【捨てられて】

*。*。*。*。*
壱助が自分を助けた理由を
考え出した香夜ちゃん
そして何故か
色んな人に嫉妬してしまう

相変わらずな壱助さん

香夜ちゃんを拾った理由は
"売る為"なのか‥否や
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/30 20:15 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#228 [我輩は匿名である]
>>196-230

⏰:10/01/30 21:47 📱:W53H 🆔:QSzgxyWw


#229 []
>>228
いつも安価有難うございます ^^

よかったら感想板にも
いらしてください>< !!

⏰:10/01/30 21:50 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#230 []
 
さて‥これで用も済みやした


―‥もう

おさらば、ですよ



"能事終われり"、ですかね

⏰:10/01/31 19:06 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#231 []



壱助さん
もうさよならですか?

確かにあたしは
お金ばかり喰って
役立たずだし、むしろ足手纏い
特別可愛くもないし
‥中の下だし

連れてるだけ無駄かもしれない

⏰:10/01/31 19:07 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#232 []
 
だけど最初からその気なら
‥優しくしないで欲しかった


死ぬなと言ったのも
遊女屋から連れ戻したのも
全部このため?


せっかく
居場所を見つけたと思ったのに

⏰:10/01/31 19:08 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#233 []
 


壱助さん‥


_

⏰:10/01/31 19:08 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#234 []




壱助さんの様子は
いつもと何一つ変わらない

やっぱりあたしは
"所有物"でしかなかった


ああ‥どうしよう
聞いてみようかな

⏰:10/01/31 19:10 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#235 []
 
だけど"そうです、よ"なんて
はっきり言われちゃったら
泣いちゃうかもしれない

壱助さんは確実に
あたしの変化に気付いてる
いつもより多く
こちらに目配りしてるから‥


深く息を吐く
このまま魂も一緒に抜けそうだ

⏰:10/01/31 19:11 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#236 []
 
結局捕らえられる運命か
結局売られる運命‥か


壱助さんに出会って
人生に少し期待したのに


やっぱり運命は変えられない?

⏰:10/01/31 19:12 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#237 []
 
そんなことを考えてばかりで
目の奥が火傷しそう

ここまできて
泣いたら‥負けだ



「どうか‥しました、か」

見かねた壱助さんが
あたしの前にお茶を差し出す

⏰:10/01/31 19:12 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#238 []
 
これも機嫌取り?
最後くらい優しくしようって?

考え出したら止まらない性格だ

「‥」

目が合わないように
無理やり目を伏せる

⏰:10/01/31 19:13 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#239 []
 
「雨でも‥降るんですか、ね」

晴れ渡る空を眺めてる

「私を‥売るんですか?」


すると壱助さんは珍しく
驚いたような顔をして

そして一瞬にして
いつも通りに戻った

⏰:10/01/31 19:13 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#240 []
 
「さぁ‥」


はぐらかすんだ
いつもそうやって。

都合が悪いとき、
面白がってるとき‥いつもそう

1ヶ月でやっと知れた
貴方の癖です。

⏰:10/01/31 19:14 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#241 []
 
「どうでしょうか、ねぇ」

嫌だ‥嫌だよ‥
嫌だよ、壱助さん

独りにしないでよ‥
どこにも行っちゃ嫌‥


ああ‥堪えきれない。
目の前がぼやける

⏰:10/01/31 19:14 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#242 []
 
寝てしまおう。
今日はもう寝てしまおう。
だけど‥朝が来るのが怖い

「もう、お休みですかい?」

「‥」

背を向けて布団をかぶると
"おや、おや"と
溜め息混じりに聞こえた

布団が冷たい

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#243 []



結局なかなか寝付けなくて
寝てはすぐ目が覚めて‥
それの繰り返し

だけど着実に
夜は明けていって
ついに壱助さんが動き出した


襖の奥から聞こえるしゃがれ声
"迎え"にきたんだ‥

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#244 []
 
あたしは息を潜めて
ぎゅっと小さくなった
体が小刻みに震えてるのが分かる


このまま目を開けなければ
見逃してくれたりしないかな
今から窓の外に逃げ出そうか

そんなことばかりが
頭の中を駆け巡る
脳に冷や汗をかいた

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#245 []
 
するとまもなくして
襖が開く音がした


「香夜さん‥」


小さく呼びかけた声
そんな声で呼んだって
あたしの気持ちは和らがないよ

⏰:10/01/31 19:16 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#246 []
 
「香夜さん‥朝です、よ」

貴方って人は
本当にいつもその調子
声に全く感情が漏れない

だから時々
その声があたしを突き刺すの


ねぇ‥壱助さん
貴方にとってあたしは‥

⏰:10/01/31 19:17 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#247 []
 



「いったあぁああぁあい!!!」



縮こまった体が飛び起きる
腹部に走る激痛

⏰:10/01/31 19:17 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#248 []
 
「狸寝入りなど無駄、ですよ」

お腹を抱えて縮こまるあたしに
壱助さんはそう吐き捨てた



思わずむせ返るほど
どうやら強く蹴られたらしい

⏰:10/01/31 19:18 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#249 []
 
「最後くらい‥最後くらい
優しくしてくださいよ!!!」

顔を上げて泣きわめく
しかし目の前には壱助さんだけ
あのお婆さんはいない


しかも何か綺麗な色の
布を抱えている

⏰:10/01/31 19:18 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#250 []
 
「最後‥なら、ね」

珍しく人らしい困った顔で
クスッと含み笑い

「‥?」


「最後なら、優しくします、よ
しかし‥

誰が最後と‥言いました?」

⏰:10/01/31 19:19 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#251 []
 
その瞬間目の前が
山吹の鮮やかな色に染まった


「‥着物‥きれい」


息をのむほど綺麗な色の生地に
赤い花の刺繍がされていた

⏰:10/01/31 19:19 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#252 []
 
「でも‥でも壱助さん
あたしを‥売るんでしょう?!」

そういい終わる前に
"馬、鹿"と口元を緩ませて
それをあたしに差し出した


「一ヶ月、経ったので‥
"所有物"から昇格、ですよ」

⏰:10/01/31 19:20 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#253 []
 
「‥壱助さん
あたしのために‥?」

睫毛を伏せただけで
返事はなかった

だけどわかったよ
"早く着てくだせぇ"と
頭をぽんと撫でてくれた

一ヶ月たてば変わりますか?
壱助さんの声が
柔らかく感じたの

⏰:10/01/31 19:21 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#254 []



「丁度良い‥ようですね」

その着物は袖の長さも
丈の長さも胸周りも腰周りも
全部がぴったりで

そこでやっと
"あぁそう言うことか"って
あのお婆さんを思い出す

と同時に
壱助さんを疑った自分を恥じる

⏰:10/01/31 19:24 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#255 []
 
「壱助さん‥
あ、ありがとう‥ございます」

これでもかと言うくらい
頭を深く下げた


「本当に‥疑い深い人です、よ」

そしてまたお茶を啜る
いつもの壱助さん

⏰:10/01/31 19:26 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#256 []
 
「‥ごめんなさい」

「何故、謝る」

この人は大人だと思う
あたしの知ってる大人なんかより
ずっとずっと大人だ。

「‥ごめんなさい。」

「売り飛ばされたいです、か」

「‥い、嫌です」

⏰:10/01/31 19:29 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#257 []
 
「壱助さんっあたし‥!!」

何処までも貴方は
期待を裏切りやしない。

「‥約束しましょう。」

何処までも貴方は優しくて


「貴女を独りにしない、と」


頭があがらないのです。

⏰:10/01/31 19:33 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#258 [笹]
第九章 【守られて】

*。*。*。*
ちょっぴり甘い話←
ちょっぴり甘い壱助さん

"所有物"から昇格した香夜ちゃん
何に昇格したのかは謎ですがw
壱助さんの偉大さが身に滲みます

甘壱助さん
どんな気持ちで言ったんだか(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/31 19:37 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#259 [我輩は匿名である]
>>226-260

⏰:10/01/31 20:56 📱:W53H 🆔:c7HoKKOs


#260 []
 
嫉妬‥、
私は餓鬼に‥興味はないです、よ



強いて言うなら
‥"保護者"ですか、ね



"親の心、子知らず"

⏰:10/02/01 17:03 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#261 []
 
「いやぁあぁあああ!!」

どんなに暴れても
壱助さんの力に勝てるはずもなく

「少し黙ってくれや、しやせんか」

ぐいっと片手であたしの両腕を掴み
せっせとそれを帯で縛り上げる

前の帯がもういらないからって
そんな事に使わなくても‥

⏰:10/02/01 17:04 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#262 []
 
あっさり両腕を縛られ
捕らわれの身

「解いてください!!」

「何、故」

またお茶を啜る
何事もなかったかのように

「何故って‥こうする理由は?!

ちょっと戻ってくるのが
遅かっただけじゃないですか!!」

⏰:10/02/01 17:05 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#263 []
 
―‥少しの沈黙
一気に空気が凍りついた

カタンと湯飲みを置く
またその落ち着き方が怖い



「ほぉう‥遅かった"だけ"、と」

_

⏰:10/02/01 17:06 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#264 []
 
いつも以上に鋭い目が
あたしを滅多刺しにする

‥心臓が止まりそうですよ



―‥事の発端は今日の午前中の事

⏰:10/02/01 17:06 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#265 []



「えーっと、漢方薬‥と
後は、お茶の葉と‥
それからぁー‥何だっけ?」

朝っぱらから
‥最早あたしの日常の一部だけど
顔面ひっぱたかれて、

買い出しに行ってこいって
買ってくる物を
呪文みたいに聞かされて
ぴょいっと宿から放り出された

⏰:10/02/01 17:07 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#266 []
 
「そんな一回じゃ
覚えられないよー‥もう」

ぶつぶつ言いながら
街のあちこちを行ったりきたり


しかも荷物が増える増える。

これを一人で持てなんて
壱助さんはやっぱり鬼だ

⏰:10/02/01 17:08 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#267 []
 
だけどそんなこと言ったら
どんなことになるか‥


とりあえず、骨一本は犠牲だ‥


いろいろと目に見えてるので
一人で頑張ってた訳です。

⏰:10/02/01 17:09 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#268 []
 
「あらお嬢ちゃん
そんなに大荷物、大変ねぇ‥
財布出せるかい?」

「あぁ‥大丈夫‥です」


袖の中を何とか弄る

手は吊りそうだし肩凝るし
早く済ませて帰りたいったら
この上ない

お金足りたかなぁー‥
‥嘘、ちょっと待って

⏰:10/02/01 17:09 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#269 []
 



「お財布がなぁああい!!!」



_

⏰:10/02/01 17:10 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#270 []
 
だってさっきまでここに‥
どこかに落としたかなぁ
あっれー‥?

がさがさばたばたばたっっ


「うぎゃあぁああっ!!!」


足元が荷物で埋まる
思いっきりぶちまけてしまった

⏰:10/02/01 17:11 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#271 []
 
今日はついてないや‥

溜め息を付き
ぺこぺこ頭を下げて
慌てて荷物を拾う

あーあ、誰か助けてくれな‥


「大丈夫ですかい?」

「ふえ?」

⏰:10/02/01 17:11 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#272 []
 
目の前には
荷物拾いを手伝ってくれてる
男気溢れる人。

って言うか
壱助さんばっかり見てたら
どんな人も
男らしく見えるんだけど‥


「あぁっ‥すみません
ありがとうございます」

⏰:10/02/01 17:12 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#273 []
 
男の人はこうでなくちゃ!!

なぁんて壱助さんを思い浮かべて
思ってしまう不束物です


「これ、貴女の財布ですか?」

「あぁああ!!!あったぁぁ!!!」

確かに壱助さんから預かった財布
いやー助かったぁ
死ななくて済みそうです‥はは

⏰:10/02/01 17:13 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#274 []
 
「ふはは、元気な方だ」

そんな事言われちゃって
しかも目尻下げて笑われて
不覚にも、どきどき

ちゃっちゃと会計済ませて
"お茶でもおごらせて下さい"
なんて言おうもんなら

"お茶は是非と言いたいですが
おごりでは‥"
なんて遠慮するもので

⏰:10/02/01 17:13 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#275 []




「本当に面白い方だ」

本当によく笑う人だなぁ
壱助さんぴくりともしないもんな


んー‥人ってこうあるべきよね

⏰:10/02/01 17:14 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#276 []
 
「よかったらこの後
お時間‥いただけませんか?」

その人は祥吉さんと言って
この街の大工さんらしい。


「あぁ‥はい!!」

まぁ少しくらいならって
思ったわけですよ

⏰:10/02/01 17:15 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#277 []



「‥いい人だったんだもん」

確かにいい人だった
壱助さんばかりといるから余計

「ほぉう‥
知らない叔父さんには
付いて行くなと‥
教わらなかったんですかい?」

縛られたあたしを
舐めるように眺めながら言った

⏰:10/02/01 17:16 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#278 []
 
「そんな‥子供じゃないです」

いつまでも子供扱いして‥
もういい加減嫌なのだ

帯を解こうと必死にもがく
だけどもがけばもがく程
痛くなるくらいに締め付ける



「では‥大人です、か?」

⏰:10/02/01 17:16 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#279 []
 
壱助さんは立ち上がり
着物を畳に擦り付け
こちらににじり寄ってきた

「そ‥そうですよ!!」


もちろん壱助さんは
あたしなんかを大人だなんて
思ってもなくて‥

「男を‥知らないくせに?」

⏰:10/02/01 17:17 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#280 []
 
冷たい手が頬を這う
あの時の壱助さんが蘇る
あの冷え切った心の‥

「前に‥言ったはず、ですが」

首筋を伝い胸元を緩めて

「や‥」

「男はこういう物‥だと」

舌を這わせて

⏰:10/02/01 17:18 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#281 []
 
「いや‥やめて」

「最後まで、されなきゃ‥
わからないんですかい?」

「いやぁあぁっ」


縛られた手は役立たずで
声を上げても無駄だと言われ
ただ泣くしかなかった

⏰:10/02/01 17:18 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#282 []
 
「優しさなんてのは‥
ただの餌、ですよ」

酷いよ‥酷いよ貴方
みんながみんな‥
そういう訳じゃないじゃない


あたしに跨る壱助さんが
冷たい目で見下ろす

祥吉さんも‥そんな目だったかも

⏰:10/02/01 17:19 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#283 []
 
「嬉しかったんです、か

こんな事‥されて」


唇が今にも触れそうなくらい

壱助さんの吐息は暖かかった

⏰:10/02/01 17:20 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#284 []



あれから祥吉さんに
唇を奪われてしまい
運良く?悪く?
壱助さんに見つかってしまい
祥吉さんは何処かへ蹴り飛ばされ



‥あたしはこういう訳で

⏰:10/02/01 17:20 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#285 []
 
「さて‥お仕置きです、よ」


壱助さんは
"子供"と接吻なんて
‥真っ平だそうで


も、もちろんあたしもよ!!
この人としたら
唇食いちぎられそうだもの

⏰:10/02/01 17:21 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#286 []
 
体を離してまたお茶。


お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶



その内体が緑色になるわよ!!
‥もう

⏰:10/02/01 17:22 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#287 []
 
「どう‥されたいです、か」

帯解かれたいです。

「ここで男を知ります、か
あぁ‥それは無理でした」

「へ?」

「‥中の下では、"目覚め"ません」

‥本当に緑色になればいいのに
なんて、思うほど憎い

⏰:10/02/01 17:22 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#288 []
 
「そうです、ねぇ
三角木馬に座るも結構
針山を登るも結構
爪でその皮膚
丁寧に剥いでやりやしょう、か

お薦めは‥
爪との間に針をぶすっと‥」


「ぎゃあぁあぁあっ」

⏰:10/02/01 17:25 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#289 []
 
痛い‥痛すぎる
って言うか

なんでそんな拷問好き?
三角木馬とか‥本格的だし
本物の変態‥


爪とか、ぜーったい無理!!
だったら死んだほうが‥

⏰:10/02/01 17:26 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#290 []
 
「死なせません、ぜ」


急に柔らかくなる声
やっぱりわかる
壱助さんの微妙な声の変化


「無駄な命に、してはいけない」

「‥わかってますよ」

⏰:10/02/01 17:27 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#291 []
 
死んだりしない
お父さんのためにも‥。


「まぁ、今回は‥見逃しましょう
父上から預かった命、ですから」

「ほんとですか?!」


久しぶりの生きた心地ですよ

⏰:10/02/01 17:28 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#292 []
―――――――‥‥




_

⏰:10/02/01 17:28 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#293 []
 
「ぬぁ‥ぬぁあ‥」

「何、か」

「何って‥だって」

「消毒、ですよ」

「えぇえぇええ?!」

⏰:10/02/01 17:29 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#294 []
 


たった一度、触れただけ

一瞬だけ‥重なった。


_

⏰:10/02/01 17:30 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#295 [笹]
第十章 【奪われて】

*。*。*。*。*
遂にしてしまいました(笑)

唇食いちぎられはしなかった
無事です香夜ちゃん

鬼畜壱助さんのリクに
応えようと思ったらこの様←
ただの拷問好き変態に‥。

壱助さんの口は常にお茶なんで
殺菌作用は期待できますw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/01 17:33 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#296 [我輩は匿名である]
>>258-300

⏰:10/02/01 21:28 📱:W53H 🆔:G6YaoaOg


#297 []
 
"立てば芍薬、座れば牡丹、
歩く姿は百合の花"

そんな言葉がありますが
そんなに美しい女性って
実際にいるのかな?


壱助さんは
出会ったことあるんだって

今日はそんな壱助さんの
少し昔のお話です。

⏰:10/02/01 22:32 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#298 []




色がましい声で溢れる此処に
そんな声が一切聞こえない部屋

「また、来やしたぜ?」

毎日のように通いつめるのは
此処目的ではない

「また来たのかい
‥懲りない男だねぇ」

⏰:10/02/01 22:32 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#299 []
 
目的はこの遊女

容姿端麗
性格も気は強いが悪くはない


「まぁ、まぁ」

決まって距離を少しばかり取って
隣で足を崩す

⏰:10/02/01 22:33 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#300 []
 
新しい着物だとか簪だとか
そんなことを言えば
"よく見てるねぇ"と
呆れ顔で笑顔を向ける


真っ白な首筋にある小さな黒子
彼女は好きじゃないと言う


‥私はそうは思わないのですが

⏰:10/02/01 22:33 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#301 []
 
「あんた位だよぉ?
此処へ来て手を出さないの」

「ほぉう‥そりゃあいい」


「金払ってるんだから
何したっていいんだのに‥」


"好き者だねぇ"と酒を差し出す

⏰:10/02/01 22:34 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#302 []
 
「他の輩と‥
一緒にされちゃあ、困りやすから」


他に理由があると言えば
ないとは言い切れません、ね



好きな女にゃ、
金払って手を出す気はないんでね

⏰:10/02/01 22:35 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#303 []
 
「全く‥馬鹿な人」

赤い紅を緩ませて
本当はあどけなさが残る
白いお粉で顔を隠して
金で買われる惨めな女


「あたしが抱いてと言っても
抱かないのかい?」

少し不安そうに顔を覗き込む

そんな顔して
‥何を求めてるんで?

⏰:10/02/01 22:36 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#304 []
 
「"外"に出たら‥いくらでも」

「それなら、あんたのは
一生お目にかかれないねぇ」


嫌味ったらしく
目を細めて呟いた



ほう‥貴女も好き者です、か

⏰:10/02/01 22:36 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#305 []
 
「まだ返し終わりません、か」

心配そうに見つめれば
"一生だよ"と言う


この遊女には莫大の借金がある
自殺した父親の残したものだ

それを返すために
此処で体を売っていると言う

⏰:10/02/01 22:37 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#306 []
 
「一生売ってもね、
終わらないんだよ、好き者さん」


煙管を吹かして
煙を宙に漂わせる

それをぼうっと眺めて
消えるのを見送っていた

⏰:10/02/01 22:37 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#307 []
 
「‥体に悪いですぜ?」

「知ってるさ、
これで死ねるなら‥死にたいよ」

馬鹿なことを言う人です、よ

「‥金なら、私が代わりに‥」


すると大口を開けて笑った
他の女なら下品な姿だ

⏰:10/02/01 22:38 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#308 []
 
「お節介は、よしとくれよ
あんたにゃ関係ないだろう?」

曇った目の奥が
叫んでいるじゃあ、ないですか

"助けてくれ"と
言ってるっというのに


全く遊女は、演技が上手い

⏰:10/02/01 22:39 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#309 []
 
「‥好き者さん?」

最期だと甘えます、か

「壱助と、申しまして」



少し躊躇いやしたか
所詮私は貴女の"顧客"

⏰:10/02/01 22:39 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#310 []
 
「壱助さん‥抱いとくれよ」

真っ白な華奢な肩
何人がそこに触れましたか
‥私は、何人目で?


「此処では‥控えます、よ」

此を嫉妬と言うならば
‥受け入れ、ましょうか。

⏰:10/02/01 22:40 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#311 []
 
「‥汚いからかい?」

「いえ、」

「‥最期に、
あんたに抱かれたいんだよ」

「今日は、これで‥」

あぁ‥貴女と言う人は
私の気持ちを知ってるくせに‥

涙に弱いと知ってお出でで?

⏰:10/02/01 22:41 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#312 []
 
「嫌なんだよ‥
一度でいい‥壱助さん」

やっと子供らしくなって
大きな雫をこぼして

"最期"などと言いますか


「‥もう大人でしょうに、
みっともない、ですよ」

⏰:10/02/01 22:41 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#313 []
 
力なく抱き締めると
しがみつくように
着物に爪を立ててただをこねる


「馬鹿です、ね‥全く」


軽く口元に口づけた

⏰:10/02/01 22:42 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#314 []
 
色がましい声に埋もれて
聞こえる泣き口説く声

背中に訴える枯れた声



貴女を愛した男は
酷く我が儘で

貴女が愛したであろう男は
‥酷く情けなかった

⏰:10/02/01 22:43 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#315 []
 
―‥"籠の鳥"
振り返った時には
何も掴めなかった無力の掌と

煙管と白い着物に染み付いた
美しすぎて恐ろしい赤い花



こんなにも‥
お慕い申し上げていたのに、と

嘆いたって宙に浮いて消えるだけ

⏰:10/02/01 22:43 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#316 []



「立てば芍薬、座れば牡丹
‥歩く姿は何とやら」

月光に浮かぶ
目の前の小娘を‥

「うぅ‥壱、助さん」

また愛そうなんて、

「‥程遠い、か」


嗚呼‥わからない男です、よ

⏰:10/02/01 22:44 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#317 [笹]
番外編 【後ろ髪、引かれて】

*。*。*。*。*。*
何となく切ない物が書きたくて
思いついたお話

壱助さんの昔の悲話。
壱助さんの誠実さと
優しさやらなんやらが
伝わったらいいなぁ ◎
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/01 22:48 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#318 []
 
消毒だと言っているのに‥


"顔に紅葉を散らす"訳を




教えていただけや、しやせんか

⏰:10/02/02 22:52 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#319 []




「ただいまぁー」

たった五日で
お茶の葉一缶終わっちゃうって
‥飲みすぎでしょうよ

だから今日は
三つも買ってきちゃったっ
安くしてもらえたし
んー‥得した気分

⏰:10/02/02 22:53 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#320 []
 
これで半月はもつよね
って言っても‥半月だけ

「壱助さーん!!
買ってきましたよーお茶の葉」

「‥」


‥無視ですか。
せっかく買ってきてあげたのにぃ

⏰:10/02/02 22:53 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#321 []
 
「‥返事くらいしてくださいよぉ」


ぷぅっと頬を膨らませて
横になってる背中に訴えた


‥チュンチュン

何も音がしない
静かな日だなぁー

⏰:10/02/02 22:54 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#322 []
 
窓の外をじっと眺めて
葉から落ちる雫を目で追った

‥チュンチュン

‥チュンチュン



「‥もっしっかっしってぇ」

⏰:10/02/02 22:55 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#323 []
 
不思議と緩む頬

着物をきっちり整えたまま
左腕を枕にして
横になってる壱助さんに
そろりと近づいた


「‥寝てる?」

‥って言うか、生きてる?

死んでる?って
不安になる程微動だにしなくて
また肌が白いから余計‥。

⏰:10/02/02 22:55 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#324 []
 
「おーい」

目の前で手を振ってみたり
いろんな角度から覗いてみたり

‥どの角度から見ても
綺麗だよねぇ、と感心。


「‥ふふ」

怪しい笑みを浮かべる
壱助さんの寝顔なんて
‥初めてみた。

⏰:10/02/02 22:56 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#325 []
 
‥いつも寝てるのかなぁ
あたしが出かけてる時
こうして、寝溜めしてるのかな


伸びきった首筋
伏せられた長い睫
筋の通った鼻
腰の辺りなんてあたしより‥

「‥きれいですねぇ、本当に」

全く抜け目がないから
憎たらしくなる

⏰:10/02/02 22:56 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#326 []
 
壱助さんの横に寝転がって
ふうっと息を吐く

天井を眺めて
独特の自然の模様を
ぼうっと目に映してみた


よく耳をそばだてると
微かに壱助さんの寝息が
耳をくすぐった

乱れない規則正しい呼吸

⏰:10/02/02 22:57 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#327 []
 
「‥消毒」

ふと横に顔を向けると
色っぽい唇に目が行く

消毒‥消毒かぁ
本当に触れただけだったけど
柔らかかったなぁ‥
しかも、あったかかった

「‥むふっ」

⏰:10/02/02 22:58 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#328 []
 
思わずにやけてしまうほど
あの一瞬は
あたしの脳内を満たして
甘ったるい時間をくれた


「"消毒です、よ"なぁんて‥
そんな消毒がありますかぁ?」

人形のように固まった頬に
語りかける

もちろん返事はない

⏰:10/02/02 22:58 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#329 []
 
なんとなく
あの簡素な返事が恋しくなる
無関心そうな声も
あるとないとじゃ大違いだ


「‥壱助さん?
拾ってくれて、ありがとお」

面と向かって
言えた試しがないから‥
こんな時に言ってみるのは
ずるいかな、

⏰:10/02/02 22:59 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#330 []
 

こんなに誰かの隣が
居心地いいなんて‥
知らなかったなぁ



‥生きてて良かった。

⏰:10/02/02 22:59 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#331 []



「風邪‥引きます、よ」

目を開けると
目の前で小さく丸まる猫一匹

羽織物をかけてやると
微かに声を立てた


『‥拾ってくれて、ありがとお』

‥珍しく素直になるもんで、
起きているとも気付かずに
‥本当に鈍いです、ね

⏰:10/02/02 23:00 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#332 []
 
寝ている時だけは大人しい
子供同然じゃあ、ないですか


目を細めて前髪をそっと撫でた

するすると指の隙間を抜ける
細くて艶のある具合が
何とも垢抜けていて
子供だと言えないほどに美しい

⏰:10/02/02 23:01 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#333 []
 
「ちょいと‥
無防備すぎやしやせん、か」

裾の辺りが少しはだけて
女らしい脚が見える


小さく開いた手に指を添えれば
赤ん坊のように
ぎゅっと握りしめられた

⏰:10/02/02 23:02 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#334 []
 


「本当に‥放っておけやしない」



呆れるように溜め息をつき
緩く笑った

⏰:10/02/02 23:02 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#335 []




あぁ‥寝ちゃった。


壱助さんが起きたら
"寝顔見ちゃったぁーっ"って
からかってやりたかったのに

まぁそんなの
‥からかいの内に
入らないんだろうけど

⏰:10/02/02 23:03 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#336 []
 
「‥んん」

乱暴に目をこすると
辺りがぼやけて見えた

その時の顔と言ったら
相当酷かったに違いない

「あ‥壱助さん、起きてる」

あたしが買ってきた
新しいお茶の缶が開けられていた

⏰:10/02/02 23:03 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#337 []
 
いつものように
正座してお茶を啜る姿を見て
夢でないと確信する


「あぁ、やっと」

顔をちらりとも向けず
そう言った

自分にかけてあった
壱助さん香りがする羽織物
‥何だかいい目覚め

⏰:10/02/02 23:04 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#338 []
 
「夢でも見ました、か」

「夢‥?」

夢なんて見たかな‥
覚えてないや


すると壱助さんは
顔だけこちらに向けて
視線を落とした

⏰:10/02/02 23:04 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#339 []
 
「"壱助さん、
お慕い申し上げておりました"と
寝言で、言っていたもので‥」



一度瞬きをして
一気に顔に熱が走ったのは
言うまでもない。


"鈍い人です、ね"と
壱助はまた茶を啜った

⏰:10/02/02 23:05 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#340 [笹]
第十一章 【魅せられて】

*。*。*。*。*
寝たふりをしてる壱助さんに
全く気付かずに
あれこれ思い耽って
あれこれ言ってみた香夜ちゃん

寝言なんて言ってないのに
まんまと壱助さんの悪戯に
はまって顔を赤くした香夜ちゃん

素晴らしいまでに鈍いです(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/02 23:08 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#341 [我輩は匿名である]
>>290-340

⏰:10/02/03 19:07 📱:W53H 🆔:IjHWvVJs


#342 []
 
鈍い上に‥
喜怒哀楽が激しい、ときた

この上なく‥厄介です、ね


‥まだまだ
子供じゃあ、ないですか


"かわいさ余って憎さ百倍"
そんな言葉がありますが

‥この憎たらしさは、どうだか

⏰:10/02/03 21:25 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#343 []
 
「どうして‥
あんな事したんですか!?」

「大したこと‥
ないじゃあないです、か」

「大した事ない?
鼻血でちゃったんですよ?!
血ですよ?血!血!血ーっ!」

「鼻血くらい
貴女も、出るでしょう」

「それとこれとは別です!!」

「ほう‥、全く鈍い人だ」

⏰:10/02/03 21:25 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#344 []




「伊代さん!!
どう思いますかぁ?!」

せっせと他の客に
団子やらお茶やら運ぶ
女将に訴えた


「んー‥そうだねぇ、
‥はい、団子お待ちーっ」

⏰:10/02/03 21:26 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#345 []
 
眉間に深くシワを寄せて
ぷうっと頬を膨らます

香夜は物凄い形相で団子を喰らい
一席空けた横に座る
壱助を睨みつけた


「またお茶ですかぁ?
体緑色になっちゃいますよ」

低い声を横に向けて放つ
しかし変わらぬ壱助の表情

⏰:10/02/03 21:26 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#346 []
 
「‥五月蝿い猫です、ね」

茶を啜って
"やれ、やれ"と軽くあしらった


「んもーっ!!いらいらするぅ」

キーっと頭をかきむしり
落ち着かない香夜の前に
仕事が落ち着いた伊代が座る


「全く、何したってんだぁい?」

⏰:10/02/03 21:27 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#347 []
 
はぁとため息を付いて
壱助に視線を落とす伊代

「ちょいと、
わからせてやっただけ、ですよ」

「‥何をだい?」



「壱助さん、人殴ったんです!!」

⏰:10/02/03 21:28 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#348 []



珍しく壱助さんが
買い出しに付いて来てくれた今朝


だけどちょっと
ご機嫌斜めなようで
野良猫にキッと睨みをきかせ
下駄を乱暴に鳴らしてた

⏰:10/02/03 21:28 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#349 []
 
「あ‥壱助さん
鯛焼き食べましょうよーっ」

「‥甘味は好みやせん」

「美味しいのにー‥」

「食べたら良いじゃあ、ないですか」

そう言われたから
買いに行ったんです。

買いに行っただけ!ですよ?

それなのに‥

⏰:10/02/03 21:29 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#350 []
 
「鯛焼き一つくださぁーい」

「毎度ありーっ!!
おや、お嬢ちゃん‥
別嬪さんだねぇ」


鯛焼きを売ってたのは
お兄さんって感じの若い人
威勢がよくて粋な感じ

⏰:10/02/03 21:29 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#351 []
 
「へ?
や、やだなぁーお兄さんっ
そんなお世辞言っても
一つしか買いませんよー?」

とか言いながら
やっぱり内心嬉しくて
顔を赤く染めてしまったんです

「手厳しいなぁー
‥今夜、どうだい?」

まさか鯛焼き屋さんから
そんな言葉でるとは
思いもしないじゃない?

⏰:10/02/03 21:30 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#352 []
 
だから驚いて
ついついどもってしまって‥

「おや、
照れた顔もかわいいねぇ」

なんて言われて
"あいよ"って鯛焼きを
わざわざこちら側にきて
渡してくれたわけです

「あ、ありがとうございます」

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#353 []
 
突然背筋が凍りついた
後ろから殺気


カラン‥コロン


壱助さんの下駄の音が
だんだんと大きくなる

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#354 []
 
「あぁ、では‥こっこれで」

「ちょいと、お話くらい‥」

鯛焼き屋さんに
腕を掴まれ引き寄せられた


カラン‥コロン


来る‥来るよぉーっ
鯛焼き屋さん離れてくださ‥

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#355 []
 
「‥鯛焼き屋さん、とやら」

低い声がこちらに向かって
刃を剥いた


「んあ?何だぁ?あんた」



たたたたっ鯛焼き屋さん!!
壱助さんに何て口のきき方っ

⏰:10/02/03 21:32 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#356 []
 
壱助さんの切れ長の目が
鯛焼き屋さんを捕らえた

「私の妻に‥
触れないで、いただきたい」


あたしを捕らえた手がぱっと離れ
鯛焼き屋さんの目が開ききり
口がだらしなく開いていた

「つつ‥妻?!
そりゃあ‥失敬し‥」

⏰:10/02/03 21:33 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#357 []
 
―‥ドカッ


壱助さんの拳が
勢いよく鯛焼き屋さんの
顔面に吹っ飛んできた


あたしの足元に倒れ込んだ
彼の鼻から垂れる赤い血


有 り 得 な い !!

⏰:10/02/03 21:34 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#358 []
 
「壱助さん何てこと‥
‥大丈夫ですか?」

"悪いのは俺の方だ"と
軽く笑って謝る鯛焼き屋さん

「壱助さん!!謝って下さい」

正反対にしれっとした顔で
そんな様子も見せない壱助さん

と言うか
まだいらいらしてる模様
眉間にしわが寄っていた

‥人に当たるなんて酷い

⏰:10/02/03 21:34 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#359 []




結局壱助さんは謝らず
あたしが代わりに謝って
鯛焼きをたくさん買って今

「ねぇ?伊代さん
あたし間違ってないですよね?!」

事情を話せばぶり返す熱
自然と声量も大きくなる

「まぁ、いきなり殴るのは
良くないねぇ‥」

呆れ顔で伊代が壱助を見つめる

⏰:10/02/03 21:35 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#360 []
 
「‥わからない人です、ね」

「ただ手を握っただけでしょう?
それだけで殴るなんて‥酷い!!」


明らかな温度差に
伊代はくすりと笑った

「手をあげるのは良くないけど‥
全く、わかりやすいねぇあんた」

⏰:10/02/03 21:36 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#361 []
 
「‥」

「香夜ちゃんも、
わかってやんなよぅ?」


わかってやれって‥
人を殴る気持ちなんて
あたしにはわかんないよ

何だか突然泣きたくなった

⏰:10/02/03 21:36 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#362 []
 
「妻に手出されちゃ‥
誰だって‥ねぇ?」

伊代が目で壱助に訴えると
"全くです、よ"と茶を啜る



そんなのはもう
耳に入らないくらい香夜はご立腹

⏰:10/02/03 21:37 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#363 []
 
「こりゃあ‥手強いです、ね」

涙目で伊代に訴える香夜を
横目で見つめて呟いた



「"妻"と言う言葉も
ご存知ないんですか、ね」

‥ぽつり呟き微笑んだ

⏰:10/02/03 21:38 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#364 [笹]
第十二章 【訴えて】

*。*。*。*。*
しょうもない痴話喧嘩
と言うか喧嘩にもならないくらい
温度差が激しいw

2人の性格の差が
はっきり表れた気がします

伊代さん大人っす

ネタ切れそうですw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/03 21:41 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#365 [我輩は匿名である]
>>340-370

⏰:10/02/04 08:23 📱:W53H 🆔:1leDQ1V.


#366 []
 
私の飼い猫は、
幼い頃に親の愛情を
あまり受けてないようで‥

そうとなれば、親代わり



"蝶よ花よ"と育てましょう、か

⏰:10/02/04 19:11 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#367 []




またお茶の葉がなくなり
また買い出し
半月もたなかった‥有り得ない


壱助さんを連れてくると
喧嘩の原因になりかねないので
今日はひとりです。

⏰:10/02/04 19:12 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#368 []
 
「‥。」

一枚のチラシが
お茶屋さんの壁に貼ってあった
ぴらぴらと風になびいて
音をたててるもんだから
ついつい目が行った

「‥わぁ」

胸を時めかせた

⏰:10/02/04 19:12 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#369 []




「壱助さぁぁああん!!!」

子供みたいに駆け寄って
息を切らせて叫ぶ

「何、か」

珍しくお茶飲んでない‥
って、もう無いんだった

ぼうっと窓の外を眺めて
枝に止まる雀を
愛おしそうに見つめてる

⏰:10/02/04 19:13 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#370 []
 
‥お茶なくても
機嫌良いときあるんだぁ

新しい発見である。


「壱助さん!!今日の夜お祭り!!」

そう
あのチラシは夏祭りの物で
心惹かれたの

⏰:10/02/04 19:13 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#371 []
 
だって小さな時に
数回しか行ったことないんだもん
‥水飴とか食べたいし


「それが何、か」

早く茶を渡せと言わんばかりに
湯飲みをカタカタ鳴らす

‥依存症ですかあなた

⏰:10/02/04 19:14 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#372 []
 
「一緒に行きましょうよーっ!!」

人が勇気出して誘ってるのに
"何、故"と言う

乙女心わかれーっ!!もうっ

「‥水飴食べたいんですぅ」

やっぱり今日は
ご機嫌がよろしいらしい壱助さん

「ほぉう‥よし、よし」

睫を伏せて口角を上げ
一度だけ頷いた

⏰:10/02/04 19:15 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#373 []



「壱助さん早くぅっ!!」

浴衣の袖をひらひらさせて
下駄が忙しなく踊る


「まぁ、まぁ」

と言って出てきた壱助さんは
目眩がするほど美しすぎた

緩く着こなした浴衣
懐から見える白い肌の面積が
いつもより確実に多い

⏰:10/02/04 19:16 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#374 []
 
こりゃあ‥
落ち着いてあるけない‥
いかんいかん!!
しっかりしろ香夜!!


「水飴は逃げやしやせん、よ」


‥それでもって
今日はかなり穏やかだから
少し調子が狂います

⏰:10/02/04 19:16 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#375 []
 
壱助さんの一歩後ろを歩く
‥いい匂いがする。

提灯のぼんやりした明かりが
壱助さんの首筋を照らして
この世の物とは思えないくらい

本当に綺麗で‥

やっぱり女なんじゃないかとか
疑ってしまう

⏰:10/02/04 19:18 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#376 []
 
お昼の街の賑わいとは
また違う雰囲気で
家族連れや恋仲の人達が
たくさんいた

周りの人たちに
あたしと壱助さんは
‥どう映ってるんだろう


一歩の距離がもどかしくなる

⏰:10/02/04 19:18 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#377 []



「お父さん!!金魚すくい!!」

小さな女の子が
父親の浴衣の袖を引っ張った

「おぉ!懐かしいなぁ
やってみるかい?」

目線を合わせて小さく屈んで
答えた笑顔が羨ましい


思わず足が止まった
お父さん‥か

⏰:10/02/04 19:19 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#378 []
 
‥ギュウ

突然手に冷たい感覚
目をやれば真っ白で綺麗な手

「金魚すくい‥やりたい、かい」

視線を前に向けたまま
壱助さんがそう言った

「‥え?」

今日の壱助さんは
やっぱりどこか可笑しい

⏰:10/02/04 19:19 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#379 []
 
きっとこの握った手も
ぎこちない喋り方も
壱助さんなりの気配りだ
‥何となくそんな気がした


何も言わずに
あたしの答えを待つ

器用そうに見えて
案外不器用なのかもな‥


今日二つめの新しい発見

⏰:10/02/04 19:20 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#380 []



結局金魚すくいやって
やっぱり壱助さん器用で
ひょいひょいすくうもんだから
叔父さんも困り顔


言うまでもなくあたしは
一匹もすくえず‥。

と言うか正直な所
壱助さんの横顔に見とれてた
睫‥また伸びてた気がしました。

⏰:10/02/04 19:21 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#381 []
 
"猫のくせに、
魚一匹も捕まえられぬとは‥
‥やれ、やれ"


クスっと鼻であしらわれ
いつもの調子の壱助さんに
少し緊張がほぐれた

⏰:10/02/04 19:21 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#382 []




「あ!水飴だよ壱助さん!」

まるで子供なのだ
壱助さんの手を引いて
人混みを掻き分けて先走る

だけどそれでも構わない
だって水飴なんて久しぶりよ!!

「はい、はい」

水飴を手にしたあたしに
呆れるように返事をした

⏰:10/02/04 19:22 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#383 []
 
水飴をびろんと伸ばして
目を輝かせて巻き取る

キラキラ光るそれを
目を細めて眺める壱助さんと
自然と目があった

「‥食べますか?」

「甘味は‥好みません、で」

あぁそうだったと
気落ちするあたしの手を
また引いて歩く

⏰:10/02/04 19:22 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#384 []
 

親子みたいかな?

それとも恋仲同士?



‥何でもいいのだ
ただ今の時間が心地いいの

⏰:10/02/04 19:23 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#385 []



人が疎らになり
明かりもあまり届かない土手へ

蒸し暑かった人混みで
じわりと汗をかいた背中に
ひんやりした心地いい風が吹く


水飴を銜えて
浴衣を気にしながら腰掛けた

⏰:10/02/04 19:23 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#386 []
 
「壱助さんって‥」

あたしの口は
急に語り出すから冷や汗物


"愛する人いますか?"なんて
聞こうとするのだから
‥本当に恐ろしい

⏰:10/02/04 19:24 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#387 []
 
「人混みは疲れます、ね」

「え?あぁ‥
そ‥そうですねぇーあはは」


壱助さんの声が
久しぶりにはっきり聞こえたから
何だか、どきっとした

⏰:10/02/04 19:25 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#388 []
 
「‥満足ですかい?」


水飴を頬張るあたしを見つめて
壱助さんが呟いた


いやもう
壱助さんの浴衣姿だけで満足‥
なんて言えませんよ。ええ

⏰:10/02/04 19:26 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#389 []
 
「はいっ!!
ありがとうございまし‥」


あれ‥?


突然目の前がひっくり返る
微かに首筋に感じる温もり

⏰:10/02/04 19:26 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#390 []
 
「いぃいっ壱助さん?!」

暗くてよかった‥
絶対今あたし顔赤いよ‥


「たまには、
いいじゃあ‥ないです、か」

甘い声が耳をくすぐる

⏰:10/02/04 19:27 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#391 []
 
手を引き寄せられて
壱助さんの膝を
枕にしてしまったあたし


それだけで心臓が壊れそうなのに
華奢で大きな手が
ふわっとあたしの髪を撫でて


もう‥香夜は死にそうですよ

⏰:10/02/04 19:28 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#392 []
 
「‥香夜さん」



優しく頬を撫でて


ねぇ‥壱助さん

⏰:10/02/04 19:28 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#393 []
「―――――‥、」




"あたしもです"と囁いた。

⏰:10/02/04 19:29 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#394 [笹]
番外編 【微笑んで】

*。*。*。*。*
甘甘リクに応えようと
頑張ってみました番外編

しかし会話少なすぎるw
しかも甘くないよーっ ←

すみません
出直してきます(´;ω;`)w

最後の言葉は
ご想像にお任せします //
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/04 19:33 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#395 [我輩は匿名である]
>>360-390

⏰:10/02/05 12:42 📱:W53H 🆔:QBCwpTC2


#396 []
 
最近、猫は‥危なっかしい



"親"としての責任が
問われます故‥


そこら寄り付く輩を
‥退治せねばぁ、なりませんで


"親の意見と茄子の花は
千に一つも仇はない"

⏰:10/02/05 22:14 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#397 []
―‥鬼も風邪を引くらしい。

また新しい発見である。


と言うわけで
漢方薬でも買ってこようと
また街に出たのです

やっと此処にも馴れてきて
顔も覚えてもらえるようになった

⏰:10/02/05 22:17 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#398 []
 
「‥さて、そろそろ戻らなきゃ
壱助さんに‥。」

いつだって死と隣り合わせ
壱助さんは殺しはしないって
言ってはいるけど‥

「爪の間に針を‥」


考えるだけで心臓が痛みますよ

⏰:10/02/05 22:18 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#399 []
 
ふうっと深く息を付いて
足早に宿に戻ろうとした


‥足が動かない、あれ?



足がずしりと重い
もしかして死神?迎えに?

⏰:10/02/05 22:18 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#400 []
 
思わず引きつる顔を
恐る恐る下に向けると


「‥え?」


そこにはあたしの着物に
ぎゅっとしがみつく子供
着物に顔を埋めたまま離さない

あたし‥子供産んだかしら
なーんて訳の分からんことを
真剣に考えてしまう

⏰:10/02/05 22:19 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#401 []
 
「ごるぁぁぁああ!!!」

突然‥
物凄い形相をした男の人が
こちら目掛けて突進してきたのだ


‥いつだって死と隣り合わせ。

「ちょ‥何何なんなのー?!」

あたふたするものの
子供が地蔵のように重く
ぴくりともしない足

⏰:10/02/05 22:20 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#402 []
 

し、し‥‥死ぬ。


_

⏰:10/02/05 22:21 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#403 []
 
「こっち来るなよぉお!!」

「お前っ!!
米粒を茶碗に残すなって
あれだけ言っただろう!!」

は?

「見えなかったんだぁ!」

「言い訳するなー!!」

明らかに男の人の視線は
この子供に向いている

⏰:10/02/05 22:21 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#404 []
 
「あ‥あのぅ」

あたしを盾にして隠れる子供

とっつかまえようと
あたしの前で機敏に動く人


そしてあたしの周りで始まる
いたちごっこ。

「一粒だけだろーっ!」

「お前っ見えてるじゃあないか!!」

「うぅ‥来るなぁあ!!」


‥厄介な物に巻き込まれました

⏰:10/02/05 22:22 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#405 []




「いやぁーお恥ずかしい所を」

先程の鬼みたいな顔とは
打って変わって
がははと笑うその人は
"茂七"と言うらしい。

とても人がよさそうだ

隣にちょこんと座る
口を尖らせた少年は"正宗"くん
米一粒を残した少年だ

⏰:10/02/05 22:23 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#406 []
 
「正宗は姉貴の子供でして」

「お姉さんの‥そうでしたか」

「姉貴は病弱なもんで、
よく俺が世話するんですが‥」

見る限り
あまり懐いてなさそうだ

「茂七‥怒ると怖いんだもん」

正宗くんが拗ねた様子で呟いた
子供らしい理由に
思わずクスリと笑ってしまう程

⏰:10/02/05 22:23 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#407 []
 
「迷惑かけちゃいやしたし‥
飯でもおごらせてくださいよ!」


非常に爽やかである
うん‥いい青年ってかんじ

‥なんて品定めするほど
あたしは男を知りません

「本当ですかぁっ?」

食べ物には目がありません

⏰:10/02/05 22:24 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#408 []
 
"道草を喰わない、こと"

‥鬼が呼んでいる


"でないと‥お仕置きです、よ"


か‥帰らねば

⏰:10/02/05 22:24 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#409 []
 
「お言葉に甘えたい所ですが、
"鬼"に殺されるので‥あは」


「鬼?」



「鬼のような人が、待ってるので」

⏰:10/02/05 22:26 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#410 []




何だか足取りが軽い
だって明日
男の人とお食事なんて‥

「うふふー」


「ほぉう‥
こりゃあ随分と
遅い帰りで、いらっしゃる」


心臓‥いや
体の全部の臓器がびくりとした

⏰:10/02/05 22:27 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#411 []
 
「あぁあ‥ちょっと」

あははなんて笑って見せても
‥もちろん無駄で

布団の上で正座をする壱助さんは
怪しい笑みを浮かべた


「病人をほったらかしにするとは
‥薄情な人です、ねぇ」

⏰:10/02/05 22:28 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#412 []
 
額にあてていた濡れた手拭いを
ピンと張って‥戦闘態勢ですね


「いや、そのぉ‥」

「お仕置きがそんなに
‥お好きです、か」

「ひぃっ!!」

「自虐的です、ね」

「‥ッうぅ!!!」

⏰:10/02/05 22:29 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#413 []
 
壱助さんの右手が
あたしの首をぐっと掴む
細い指が食い込むのが分かる


「く‥るひぃ」

「風邪を引いてます故‥
少々手に力が入りませんで」

鬼‥鬼鬼鬼!!


「もっと苦しんだ顔が
見たいもの、ですが‥ねぇ」

死ぬ‥窒息死‥馬鹿力‥

⏰:10/02/05 22:29 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#414 []
 
にやりと微笑む壱助さん
優しい笑顔なのだ
いや優しすぎる笑顔なのだ

笑顔が怖いと思うのは
壱助さんくらいだよ


「い‥ひふへ」


ぱっと手が離されると
肺が破裂しそうなほど息を吸い
酸素が脳に一気に入って
体が浮きそうになった

⏰:10/02/05 22:30 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#415 []
 
「‥んぐっはぁ」

「何を‥してたんですかい?」


手拭いをこっちに差し出し
"早く濡らして絞れ"と言うように
顔に押し付ける


もう治ったんじゃないですか?
壱助さん不死身そうだし

「それが‥」

⏰:10/02/05 22:31 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#416 []



冷たい水に手を浸ける
壱助さんの手みたい‥

ぎゅっと絞りながら事情を話すと
乱暴に手拭いを受け取った


「その茂七とやらは‥何者で?」

少し気だるそうに
帯を緩めて白い肌が顔を出す
いつになっても慣れない
この美しさ

⏰:10/02/05 22:31 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#417 []
 
「すごくいい人そうでしたよ!
金物屋さんをやってるそうで‥」


「ほぉう‥」


明らかに話し聞いてないし‥
興味ないなら聞かなきゃいいのに

ずずっと茶を啜るのは
いつもと変わらず元気な気がする

⏰:10/02/05 22:32 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#418 []
 
「私は香夜さんの
‥"親代わり"です、ぜ?」

親代わり‥うん
まぁそうなのかもしれない

自分で言うのもあれだけど
"飼い主"同然である


「まぁ‥そうですねぇ」

⏰:10/02/05 22:33 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#419 []
 
心配してくれてるのかな?

それとも‥"焼き餅"かなぁー
なぁーんて‥

壱助さんは
あたしみたいな子供に
妬くような人じゃないけど

⏰:10/02/05 22:33 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#420 []
 

「そやつに会う‥
義務が、あります‥ねぇ」


カタンと湯飲みが音を立てる


あの口角だけ上げた笑みは
この世で一番恐ろしいのだ

⏰:10/02/05 22:35 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#421 [笹]
第十二章 【現れて/前編】

*。*。*。*。*。*
珍しく二部に分けました ゚ω゚

リクにありました
ライバル・鬼畜壱助さんを
盛り込んでみましたw

んーうまく書けない
後編がんばります !!
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/05 22:40 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#422 [我輩は匿名である]
>>380-430

⏰:10/02/06 08:59 📱:W53H 🆔:evpZsMz6


#423 []




「‥何で付いてくるんですかぁ」

結局付いてきた壱助さん
改め保護者さま

「"責任"ですから、ね」

下駄が立てる音は
明らかに不機嫌そうである

⏰:10/02/06 21:16 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#424 []
 
放たれる威圧感に
周りの人々も寄り付かず
町娘たちは
黙って壱助さんを目で追った


「別にそんな‥
ご飯頂くだけですよー」

「二人で来るなと‥
言われてお出でで?」

痛いところをつくものです

⏰:10/02/06 21:18 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#425 []
 
「‥風邪は?
もう治ったんですか?」

「‥ごほごほ
まだ‥です、が」


変な演技しないでくださいよ
棒読みの咳なんて
初めて聞きましたよ、もう

「だったら
寝てなくちゃだめです!!」

立ち止まって後ろを向き
訴えてみても‥無駄

⏰:10/02/06 21:18 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#426 []
 
「あんまり茂七さんに
突っかからないでくださいよ?」

せっかくの楽しみが‥
仕方なく溜め息を付き
前を向いた瞬間だった。


「んぎゃっ!!」

後ろからど突かれて
顔面から地面に突っ込み
走る激痛、土の味

⏰:10/02/06 21:19 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#427 []
 
言うまでもなく
犯人は壱助さんです

「風邪を引いてます故‥
ちょいと、意識が朦朧と‥ねぇ」

鋭い切れ長の目が見下ろす
行かないでほしいなら
素直に言えばいいのに‥

体がいくつあっても足りない位
それでもって
よく耐えられるなと自讃する

⏰:10/02/06 21:19 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#428 []
 
「香夜さん?!大丈夫ですかい?」

心配そうな面持ちで
駆けつけてくれたのは
茂七さんだった


‥ちょっと、間が悪いです

「あぁ‥大丈夫ですよぉーう」

おどけながら立ち上がり
着物の埃をはらった

⏰:10/02/06 21:20 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#429 []
 
"やだー恥ずかしいなー"なんて
へらへらしてるのは

どうやら場違いだったみたい


「‥女性に何てことするんだ!!」

‥茂七さんっ命知らずっ!!

「ほぉう‥」

少し笑みを浮かべて目を細める
逆鱗に触れた合図です

⏰:10/02/06 21:21 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#430 []
 

壱助さんは絶対に
茂七さんみたいな‥

こういう熱い人が嫌いだと思う



‥の前に、男が嫌いだと思う。

⏰:10/02/06 21:21 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#431 []




「えっと‥
此方が昨日話した茂七さん」

目の前に座る彼を紹介
茂七さんは間が悪そうに
軽く会釈をした

そして‥
隣に座る威厳ある父(仮)
やはり茶を啜る父(仮)

⏰:10/02/06 21:22 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#432 []
 
「それで‥此方が‥」

「‥香夜の兄、です」

あ‥兄と来ましたか?!
まぁ夫とかよりはましだけど

兄‥はぁ、
あたしの兄にしては美しすぎる

「え、ちょっと‥壱助さ‥」

「"お兄様"です、よ」

いつもより張った声が
ずしりと重くのし掛かる

⏰:10/02/06 21:23 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#433 []
 
「お兄様でいらっしゃいましたか
これは誠に無礼な事を‥」

深々と頭を下げる茂七さん

‥残念ながら
お兄様じゃないんですぅ

「いえ、いえ」

‥この雰囲気で
一体何を話すのか

⏰:10/02/06 21:23 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#434 []



「香夜さんは今お幾つで?」

カチャカチャ

「十八ですよっ」

ズルズル

「いやー一番美しい時だぁ!!」

カツカツ

「やだなぁーっ
そんな事ないですってー」

コツコツ

⏰:10/02/06 21:24 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#435 []
 
ねぇわざとでしょう?
ねぇわざとなんでしょう?

その音!!
食事の時なんて
あたしが音立てると
五月蠅いって怒るじゃない‥


「いち‥じゃない、お兄様?」

「何、か」

「もう少し‥」

⏰:10/02/06 21:25 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#436 []
 
「あぁ、
香夜は本当に良い妹でして‥
あれやこれやとお声が
良く掛かるんですが、ねぇ」

口角が上がった
しかも饒舌
声掛かってるのは貴方でしょ

「もう心に決めた者が
‥居るそうですぜ?」

"ねぇ"と横目で訴え
足をぐいっと踏みにじられ
強要される同意

⏰:10/02/06 21:26 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#437 []
 
「香夜さん‥そうなんですかい?」

茂七さんの見開いた目が
何とも印象的で

「ふぇっ?!
あぁ‥えっと‥まぁ‥うぅん」

語尾を弱めれば
潰され行く足の指

「ゔ‥い、居ますぅ!!!」

もうヤケだ
箸を握りしめて声を張る

折角、いい出会いだと思ったのに
あたし一生嫁に行けないのか‥

⏰:10/02/06 21:27 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#438 []



結局威圧感に負け
大したお話も出来ず終い

「ご馳走様でした
何か、空気悪くなってしまって
申し訳なかったです‥」

頭が上がりませんよ
お兄様‥鬼ぃ様。はは

しかし茂七さんの返事は
予想外だった

⏰:10/02/06 21:28 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#439 []
 
「いやぁそんなそんな!!
お兄様にも早速ご挨拶出来まして
‥これからが楽しみですね!!」

がははとまた笑い
あたしの肩をバシバシ叩く

これから?
‥あたし一応さっき
心に決めた人がいるって‥

⏰:10/02/06 21:28 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#440 []
 
「こんな別嬪さんと
恋仲になれるなんて
俺も運がいいなぁ!!」

ほ?
何を勘違いしてるのか
どこまで前向きなのか


「とんだ勘違い野郎です、ね」


背を向けてぽつり呟いたのは
もちろんお兄(鬼)様。

⏰:10/02/06 21:29 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#441 []
 
刀で一突きするように
躊躇なく毒を吐く
その度ひやひやさせられるのは
言うまでもない


「さ、帰りますよ香夜さん」

腕を掴むでなく
ぎゅっとあたしの手を握りしめ
思い切り引き寄せられた

⏰:10/02/06 21:29 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#442 []
 
「‥?」

ぽかんと口をだらしなく開けた
茂七さんをよそ目に


壱助さんの唇が
あたしの首筋に触れた

「ちょちょちょいっ!!!
お‥お兄様何を‥?!」

わけわかりません
状況が読めません

⏰:10/02/06 21:30 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#443 []
 
「‥"壱助さん"です、よ」

「え‥お兄様じゃあ」

目をぱちくりさせて
珍しい物を見るような茂七さん


こんな変な所見られるなんて‥
恥ずかしすぎる!!

⏰:10/02/06 21:30 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#444 []
 
血液が体を
何度も何度も巡るのがわかる
勢いの良い鼓動が帯びる熱


「‥妻です、よ
さぁて、帰ったら直ぐに
此の火照った体を頂こう、か」

首筋を一舐め
生暖かい感覚に支配され
足の力が抜けそうだ

「なな‥なっ」

顔を真っ赤にした茂七さんは
嵐のように目の前から去った

⏰:10/02/06 21:31 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#445 []
 

もう‥もう‥もう!!!


「壱助さんのすけべぇえぇえ!!!」


「おや、おや
威勢が良い妹です、ね」


破廉恥なクセに美しいから
結局、憎めない訳ですが‥

⏰:10/02/06 21:32 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#446 [笹]
第十三章 【現れて/後編】

*。*。*。*。*
兄としての心配か
男としての心配か
微妙な所です壱助さん(笑)

香夜ちゃん
振り回されっぱなしだし←

とんだ破廉恥野郎です、ねw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/06 21:35 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#447 [我輩は匿名である]
>>390-440

⏰:10/02/07 09:32 📱:W53H 🆔:CcPPBOhA


#448 [我輩は匿名である]
>>420-440

⏰:10/02/07 09:33 📱:W53H 🆔:CcPPBOhA


#449 [れぃ]
>>2-200
>>201-400
>>401-600

⏰:10/02/07 11:31 📱:N04A 🆔:eBOH6ab6


#450 []
 
酒は人を変えますが、
酔った姿が‥本当の姿
とも言うもんで‥。

しかし、酒に飲まれては
だらしなくなるものです、よ


"赤いは酒の咎"なんぞ‥
言い訳は無用です、ぜ

⏰:10/02/07 18:26 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#451 []



―‥ある日の事である。

宿から聞こえるむせび声
何かと思って襖を開ければ
ぽつり部屋の片隅で
‥うずくまる"雌猫"一匹


「うぅ‥ッグズ」

‥酒臭い

虚しく転がる一升瓶
滴がぽたり

⏰:10/02/07 18:26 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#452 []
 
足袋が畳に擦れる音に
ぴくりと反応しこちらを向いた


「壱助さぁああぁん」

酷い顔‥ですねぇ

「遅かったじゃ‥ッヒク
遅かったじゃらいれすかぁ」

四つん這いで着物にしがみつく
流石"雌猫"

⏰:10/02/07 18:26 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#453 []
 
「‥酔ってるんで?」

「酔ってまぁぁあっしゅ!!」


"えへへ"なんて言いながら
右手を挙げて見上げた



‥厄介な者に出くわしやした、ね

⏰:10/02/07 18:27 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#454 []



先程からひっきりなしに
だらしない笑みを浮かべ
一人騒ぎ立てる


「‥香夜さん」

「なんれすかぁ?ッヒク」

火照った体をよじり
目の前に座った

⏰:10/02/07 18:27 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#455 []
 
「‥騒がしいのです、が」

そんな事で
黙るとも思わないが
他にかける言葉がないもんで


「壱助さんも‥
飲みましゅかぁあ?」


馬鹿でかい声が鼓膜を突き刺す

⏰:10/02/07 18:28 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#456 []
 
「結構、です」


すると寂しそうに肩を落とし
"飲みましぇん?"と二度押し



―‥全く、困ったもんです、よ

⏰:10/02/07 18:28 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#457 []



「まだ‥寝ませんで?」

既に日付が変わり
静まり返った闇に包まれ
照らすは月の光のみ

子供のようにぐずるので
布団を乱暴に投げつけると
ぱたりと声がしなくなる

急に大人しくなられると
ちょいと、不安になるもので‥

⏰:10/02/07 18:29 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#458 []
 
「風邪‥引きます、よ」

顔にかかった布団を
除けてやれば


―‥ やられたもんだ



「ぶぁぁあっ!!」

‥糞、餓鬼

⏰:10/02/07 18:30 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#459 []
 
飛び出した両手が首に絡みつき
無理やり布団の中に押し込まれた


「命知らずです、ね」


こちらの気も知らずに
‥貴女と言う人は

⏰:10/02/07 18:30 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#460 []
 
背を向けて目を瞑る
乱れた鼓動を整えて
深く溜め息を吐く

調子が狂います、ぜ


「寝ちゃう‥んれすかぁ?」

「‥」

背中に問う声が
情けないほどに弱まった

⏰:10/02/07 18:31 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#461 []
 
「んう‥」

しなびた声が耳にかかる
こちらに現れた小さな白い手


生娘が男を‥襲う気ですかい?


後ろから抱きついた貴女は
何を思ってるのか‥

いつもなら頬を染めて
嫌だと喚くと言うのに

⏰:10/02/07 18:31 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#462 []
 
全く、酒は人を変えます故‥
そのせいで虚しくなるのも
また‥然り


「‥壱助さん」

背中に響く声が
こんなにも、こんなにも‥

「何、か」

色めいて聞こえるのも

⏰:10/02/07 18:32 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#463 []
 
「‥寂しかった」


‥酒の力ですか、ね

小さく震える体を
抱き締めてやりたいのに
どうしてこうも、躊躇うか


‥情けないもんです

⏰:10/02/07 18:32 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#464 []



「‥馬鹿です、ねぇ」


答えるような幼い寝息
月明かりに照らされた肌に
そっと触れる

呆れるほどに無防備で
着物を掴んだ柔らかな手が
ぴくりと呼吸した

⏰:10/02/07 18:33 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#465 []
 
「‥放って、置けやしない」


他の輩の前で
酒など飲ませてたまるかと
仕様もない独占欲に駆られ


‥小さな体を思い切り抱き寄せた

⏰:10/02/07 18:33 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#466 []



久しぶりに眠りに付いた
目を覚ますと
長い睫を伏せた"猫"

昨晩の艶やかさは何処へやら
‥何時ものあどけなさを残す姿


はだけた浴衣から
美しい鎖骨が見え
小さく微笑み遠慮がちに触れた

⏰:10/02/07 18:34 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#467 []
 
「ん‥う」

眩しそうに目を細めた酔っ払い


ちょいと間を置いて目を見開き
どうやら我に返った様子


「あ‥え?そそ‥添い寝?!」

⏰:10/02/07 18:34 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#468 []
 
色気のない声を出し
あたふたする姿を見て
何故か安堵を覚えたもので‥


「壱助さん‥え?やだぁっ」

頬を紅くして
布団に顔をうずめた

何を考えたんですか、ね


そんな簡単に
手なんか出しやしない‥ですぜ

⏰:10/02/07 18:35 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#469 []
 
「あたし‥何かしました?」

しかし覚えてないとなると


「昨夜は‥
楽しませていただきました、よ」


ちょいと悔しい物があるもんで

⏰:10/02/07 18:36 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#470 []
 

「嘘‥うそぉおお!?」



貴女の恥じらい困惑する顔を
見たくなって‥しまう。


意地の悪い男‥です、よ

⏰:10/02/07 18:37 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#471 [笹]
番外編 【呑んで、呑まれて】

*。*。*。*。*。*
またもや番外編 !!

香夜ちゃんをもっと
積極的にさせたかったです
もっと壱助さんを
もどかしくさせたかったぁあ

とりあえず壱助さんは
そんな簡単に襲ったりしない
素敵な男性です w
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/07 18:40 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#472 []
 
時には
究極の選択が迫られることが
誰にでもあるもの、です


自分の無力さに
酷く腹が立つ‥こともある


"断腸の思い"で
時に人は物事を切り捨て
生きていかなければならない

それが‥人生と言うものです、よ

⏰:10/02/08 20:12 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#473 []


「雨なんて珍しいですよね」

ザァ―‥

今日は珍しく
此の街に雨が降った

濡れた地面の独特の匂いが
鼻の奥をくすぐる

真っ赤な番傘から落ちる
雨滴に睫を濡らした

⏰:10/02/08 20:13 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#474 []
 
「‥あたしも入れてください」

「何、故」

もちろんあたしは
傘なんて持っていなくて
壱助さんの傘の中に
一緒に入れてもらうつもりで
今日は街に出た

だけどやっぱり
そううまくは行かないもの

⏰:10/02/08 20:13 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#475 []
 
「濡れちゃうぅ‥」

ぐいぐい無理やり
頭を突っ込んでみても
大きな手で押し出される


「ちょっとくらい
いいじゃないですかぁっ!」

ぷうと頬を膨らませても

「ね?壱助さぁあん、うふん」

ない色気を絞り出しても

⏰:10/02/08 20:14 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#476 []
 
「濡れたくらいで死ぬほど
‥か弱くないでしょう、貴女」


‥無駄ですか。
横目でぼそり呟かれた

これが図星だから辛い

⏰:10/02/08 20:14 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#477 []
 
「高い着物ですから‥
汚されては困りやすから、ね」

そう言って
傘を少しこちらに傾けた

「やっぱり壱助さんって
案外優しいですよねっ」

「‥水溜まりにその顔、
突っ込まれたいんですかい?」

「いや‥結構です!!!」

壱助さんは
褒められるのが嫌いだそうです

⏰:10/02/08 20:15 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#478 []



雨となると
いつもの街もどこか寂しい
賑わいは雨音に変わる

「壱助さん、鯛焼き食べたーい」

「‥」

壱助さんの足が急に止まる
濡れぬように
慌てて傘の中に戻った

「どうしたんですか?」

⏰:10/02/08 20:15 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#479 []
 
壱助さんの視線の先には
小さな竹薮
薄暗くて気味が悪い

「‥血腥い」

「え?」

壱助さんは顔をしかめて
そこから目を離さない

雨音と竹のきしむ音の向こうに
聞こえたのは生々しく鈍い音
荒れ狂った女の声

⏰:10/02/08 20:16 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#480 []
 
「どうしてお前はいつもいつも!!」

バシンッバシンッ

「言うことが聞けないんだい!」

ドガッ

「この役立たず!!」

「‥ッゲホッ、かぁさ‥ん」

「お前なんかねぇ‥お前なんか」

⏰:10/02/08 20:16 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#481 []
 
足が震えた
何とも言えない感情が
わぁっとこみ上げてくる

悔しさに唇を噛み締め
拳を握った

自然とそちらへ足が向かう

「香夜さん‥」

行くなと壱助さんが
あたしの着物の袖を引いた

⏰:10/02/08 20:17 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#482 []
 


「‥死んじゃうかもしれない」



そう言って振り払い
声のするほうへ足を進めた

⏰:10/02/08 20:17 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#483 []



そこには物凄い形相をした
母親らしき女の人と
この雨の中
裸でうずくまる少年

少年の体は
いたるところに痣ができ
歪に腫れ上がった跡や
刃物で切られたような
鋭い傷が無数にあった

母親に思い切りぶたれ
蹴飛ばされ‥

⏰:10/02/08 20:18 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#484 []
 
昔の自分と少年を重ねた

「‥やめ‥なさいよ」

憤りに得体の知れない
幼い頃の感情が湧き上がる

「お前なんか
生まれてこなければよかった!!」

ドガッ

「ごめ‥なさい、ゲホッ‥んぐ」

少年の口から吐き出された
真っ赤な血が雨に消える

⏰:10/02/08 20:18 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#485 []
 
声を張ろうと
大きく息をすると
壱助さんがあたしの腕を掴んだ

「‥帰ります、よ」

「何言ってるんですか‥?
このままじゃあの子‥」

目の奥から今にも
熱いものが溢れそうで

今止めなかったら
この子は死ぬかもしれない
今あたしが助けなきゃ‥

⏰:10/02/08 20:18 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#486 []
 


「貴女に‥何ができるんで?」



いつになく真剣な眼差しが
訴えかける

⏰:10/02/08 20:19 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#487 []
 
「何って‥
助けるんですあの子を!!」

手を振り払おうとしても
壱助さんの手は
掴んで離さなかった


ひどい‥壱助さん

「壱助さんにはわからないんです
親に暴力を振るわれて
黙って耐えて‥」

⏰:10/02/08 20:19 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#488 []
 
不安定な言葉を
無理に立て直しながら
何度も何度も振り払おうとした


「助けた所で‥
彼は、幸せになれますかい?」

悲しそうな壱助さんの目が
捕らえて離さない

幸せ‥?
幸せに決まってるじゃない

⏰:10/02/08 20:20 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#489 []
 
「彼を助けて、その後
貴女が養うとでも‥?」

「それは‥」

「見知らぬ土地に放されても
‥彼は死に至るでしょう。
貴女は、彼の家庭の事情を
全てご存知なんですかい?
彼はあんな母親でも、
慕っているかも‥しれない」

何も言い返せない自分に
腹が立った

⏰:10/02/08 20:21 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#490 []
 
「中途半端に
情に流されて動いては‥
却って苦しめることになる。」

だけど‥だけど
あの子死んじゃうよ‥

「今此処で
あの母親に何か言えば
‥彼は本当に殺されます、よ」

うずくまる少年が
ちらりとこちらを向いた

⏰:10/02/08 20:21 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#491 []
 
助けを求めるでもない
憎しみも悲しみも
何も訴えてこない
曇った目をしていた。



恐怖をも覚えるほど

一番辛くさせる眼差しだった

⏰:10/02/08 20:22 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#492 []



‥雨は止まない

さっきの少年の目が
頭に焼き付いて離れない

あたしには
何もできないと言う悔しさ
一方的に押しつけてしまった
自分の感情。


もうわからないよ‥壱助さん

⏰:10/02/08 20:23 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#493 []
 
「死んじゃったら‥
死んじゃったら‥どうしよう」

ぶわっと泣き出し
顔を両手でふさいだ

これは不安よりも恐怖で
自分の無力さへの
憤りでもあった

たくさんの思いが
複雑に絡みうめき
涙になって流れてゆく

⏰:10/02/08 20:23 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#494 []
 
「香夜さん‥」

畳を擦ってこちらに寄り添い
後ろから優しく
壱助さんが抱きしめた

「‥あたし‥もう」

濡れた体を
優しく撫でるように
手拭いをあてがう

⏰:10/02/08 20:23 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#495 []
 
「もう、何も見なくていい‥
何も考えなくていいんです、よ」


いつもより暖かい
壱助さんの手が
あたしの目を覆った。

⏰:10/02/08 20:24 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#496 []
 
「何も‥。

しかし、あの目を
一生忘れてはいけません、ぜ
あの目を忘れた瞬間‥

貴女は彼を‥
見殺しにした事となる。」

⏰:10/02/08 20:25 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#497 []
 
人は本当に無力で
結局は願うことしかできない。

そのもどかしさが
絡みついてうめき声を上げる


それでもこの願いが
少しでも、たった一瞬でも
誰かを救えると言うのなら

あたしは一生
願うことをやめないでしょう

⏰:10/02/08 20:25 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#498 []
 

―‥そして
"生きることを諦めない"と
心に誓うのです。


_

⏰:10/02/08 20:26 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#499 [笹]
第十三章 【無力さ、覚えて】

*。*。*。*。*
珍しく内容があるものを ←

とりあえず
壱助さん喋りまくり
なんとなく喋らせたかったw
そんでもって
どんなときも冷静沈着

香夜ちゃん
ひとつ大人になるの巻

つまらん(´・ω・`)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/08 20:29 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#500 []
 
どんなに気が強い"猫"も

どんなに意地っ張りな"猫"も



本人の気付かぬ内に
心が虚空に蝕まれるもの


心が"綿のよう"になれば
それも一気に
音を立てて崩れ出すものです、よ

⏰:10/02/09 18:49 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#501 []
 
「香夜さん‥、」

昨日の雨も
夜中の内に上がり
澄んだ青空が広がった


―‥チュンチュン


「朝です、よ」

⏰:10/02/09 18:50 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#502 []
 
ベチンッ


「いぃったあぁい!!!」


またいつもの朝を迎えた
いつになったら
あたしは1人で起きられるのか

‥こんな毎日毎日
顔面叩かれてたら、腫れてしまう

⏰:10/02/09 18:50 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#503 []
 
そして今日も
壱助さんはお美しい

‥只でさえ朝早いのに
着物もきっちり来て
全く寝起きって感じがしない

やっぱり寝てないのかな?



ゆっくり体を起こす
夢にあの少年が出てきて
うなされたのか‥
少し体が汗ばんでる気もした

⏰:10/02/09 18:51 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#504 []
 
「‥」

無言で見つめる壱助さんの手には
空になったお茶の葉の袋


「あのぉ、」

「‥何、か」

何でいつもそう
仏頂面なのかしら‥。

⏰:10/02/09 18:51 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#505 []
 
笑ったりしたら絶対‥

‥笑わなくてももてるから
憎いんだった。


「お茶‥」

「買ってきてください、ね」

「そうじゃなくてぇ‥」

「買ってきてください、ね」

⏰:10/02/09 18:52 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#506 []
 
「‥もうちょっと」

「早く」

こう言うときだけ
笑顔を浮かべる


壱助さんは
笑わなくていいかも‥。

⏰:10/02/09 18:52 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#507 []
 
またぼうっと窓の外を眺めてる
そんな壱助さんを
ぼうっと見つめるあたし

こちらに目を向けてないのに
"何、か"と言う


背中にも目がついてるのかしら
未だに壱助さんは
沢山の謎に包まれています

⏰:10/02/09 18:53 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#508 []
 
「‥行って参ります」

そう言って
しぶしぶ布団から
出たその時であった


「‥あれ?」

足元がふわり浮くような
不思議な感覚に襲われ
頭が石のように重く感じ

そのまま意識が飛び
体が‥

⏰:10/02/09 18:53 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#509 []




一瞬どこかへ旅立った
自分を引き戻し
はっと目を覚ます

目の前には
切れ長の目の肌が白い‥


「壱助さん‥?」

はて‥
何があったんだろうか

⏰:10/02/09 18:54 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#510 []
 
「‥危なっかしいです、ね」

目を細めて、呆れた様子


今‥この体勢は‥
この頭に触れるのは‥


「ひざ‥膝枕」


思わず上擦った声に
ごくりと唾を飲んだ

⏰:10/02/09 18:54 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#511 []
 
壱助さんに
膝枕をしてもらうなんて
壱助さんの
お膝様をお借りするなんて


‥なんて命知らずなんだ


「わわっ
ごっごめんなさいこんなっ」

慌てふためくあたしの顔は
きっと真っ赤に染まってる
火がでるほど熱かった

⏰:10/02/09 18:55 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#512 []
 
下から見る壱助さんの姿は
彫刻みたいに鼻が高くて
また睫長くなってる気がして

たった一度だけ触れた唇が
あの優しい感覚を蘇らせた

‥同じ世界の人間か疑うほど
親の顔が見てみたい

「そんなに‥
か弱かったんですかい?」

「へ?」

⏰:10/02/09 18:55 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#513 []
 
すると見る見る内に
いい匂いと共に近づく
あの美しい顔

「ちょっちょっ壱助さんっ?!」


また消毒ですか?!
待ってよ心の準備ってもんが‥

⏰:10/02/09 18:56 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#514 []
 


‥コツン



え?

恐る恐る目を開けると
近すぎてぼやけて見えるが
やっぱり美しい壱助さんの顔

⏰:10/02/09 18:56 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#515 []
 
「な‥えぇ‥?」

触れていたのは
唇と唇ではなく額と額

残念ながら‥

いや、べ別に残念じゃないけど‥
消毒ではありませんでした

⏰:10/02/09 18:57 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#516 []
 
しばらくの間壱助さんは
寝てるのかと疑うほどに
ぴくりともしなかった

火照った頬を
くすぐる規則正しい呼吸

こっちは緊張しすぎて
息苦しいと言うのに‥

壱助さん
いろいろと手慣れすぎです

⏰:10/02/09 18:57 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#517 []
 
「壱‥助さぁん?」


すると
一時の眠りから覚めたように
目を開けてすっと顔を離した

それと同時にあたしは
その間呼吸できなかった分を
部屋の空気を全部吸い取るくらい
思いっきり体に取り込んだ

⏰:10/02/09 18:58 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#518 []
 
「‥全く、」

いやいや
いきなりそんなことされた
こっちが全くですよ


「たったあれ如きで‥
熱を出すとは、ね」

「熱?」

⏰:10/02/09 18:58 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#519 []
 
そう言われてみれば
朝からちょっと体が重かったかも

昨日の雨にやられたかな?


「情けない‥ですね」


はぁっとため息を吐くと

⏰:10/02/09 18:58 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#520 []
 
ガサッ

一気に目の前が暗くなった
‥お茶の匂い

間違いなく
今あたしに被さってるのは
さっきまで壱助さんが手にしてた
お茶の葉の空袋


そっか‥
じゃあ今日はお茶お預けかぁ

⏰:10/02/09 18:59 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#521 []
 
「‥ごめんなさい」

自分の声が袋中を駆け巡り
また耳の奥へ帰る

きっとお茶は
壱助さんの命の次に大切なもの

そう考えたら
何だか急に申し訳なくなった

⏰:10/02/09 18:59 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#522 []
 
グシャッ

耳を突き刺すような音と共に
朝と同じ激痛が顔面に走る


「ったぁあいぃ!!」


何でこうも壱助さんは
顔面攻撃が好きなんだろうか‥
ただでさえ不細工なのに‥もう

⏰:10/02/09 19:00 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#523 []
 
息つく暇もなく
壱助さんはやりたい放題


「うわっまぶしっ!!」

一気に袋を取り去られ
急にさす光の眩しさに
目の前が眩んだ

じーっとこちらを見つめる
美しい視線とぶつかった

⏰:10/02/09 19:00 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#524 []
 
まばたきもしないで
ただじっと‥


熱のせいか頭が働かない

いつもなら
考えなくとも口が勝手に
喋り出すのになぁ

⏰:10/02/09 19:01 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#525 []



「どんな‥夢を?」

先に口を開いたのは
壱助さんの方だった

ひんやりした雪のような手が
額にそっと触れた


‥心地いい

⏰:10/02/09 19:01 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#526 []
 
「昨日の‥少年の」

蚊の鳴くような声で答えると
"そうです、か"と
何かを考え込んでる顔で言った


壱助さんの手は
まるで魔法の手みたいで
熱を吸い取っていくような
‥そんな気がした

⏰:10/02/09 19:02 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#527 []
 
それから
何を言うでもなく‥
壱助さんは優しく
あたしの額辺りを撫でて
また空を眺めてた


「壱助さん‥空好きですよね」

大した答えなど
期待してなかった

「‥何か見えるんですか?」

返事のない横顔に続けて問った

⏰:10/02/09 19:02 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#528 []
 
「‥いえ、何も」

「どうしてそんなに
眺めてるんですか?いつも
何か考え事でも?」



するとぴたりと手が止まった

⏰:10/02/09 19:03 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#529 []
 
「何も‥考えたくないから
こうして居るんです、よ」


気のせいだろうか
いつもより少しだけ
横顔が寂しそうに見えた


‥見ていられなかった
今日のあたしはどうかしてる

⏰:10/02/09 19:03 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#530 []
 

――――‥


_

⏰:10/02/09 19:04 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#531 []
 
ふわりと
お茶の香りが宙を舞う

体が勝手に動いてしまった
‥きっと壱助さんが
その左手で魔法をかけたのだ


衝動的に起き上がり
壱助さんを
胸の中に押し込めた

⏰:10/02/09 19:04 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#532 []
 
ぎゅうっと綺麗な背中を
壊れそうなくらい
強く抱きしめると
壱助さんは力なく応えた

「‥泣いてるんで?」


わからない
わからないけど
‥涙が止まらなかった

⏰:10/02/09 19:05 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#533 []
 
「壱助さ‥ん
何処にも‥行かないで」

情けなく弱々しい声を
涙と一緒に落とした


何故そんなことを言ったのか
‥わからない

だけど急に不安になった
独りにされてしまいそうで

壱助さんはこんなあたしに
‥疲れているんじゃないかって

⏰:10/02/09 19:05 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#534 []
 

「約束、したでしょう
独りにしない‥と」


包み込むように
ぎこちなくあたしを撫でた手に
一瞬にして不安が吸い取られた

⏰:10/02/09 19:06 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#535 []
 

あたしの、居場所は


―‥貴方の隣。

_

⏰:10/02/09 19:07 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#536 [笹]
第十四章 【寂しさ、溢れて】

*。*。*。*。*
続けてしんみり系
申し訳ない(´・ω・`)

壱助さんのそんな顔をみたら
急に不安や寂しさが
溢れ出してしまった香夜ちゃん

昨日の事で
精神的にやられてた模様。

だけど壱助さんがいれば
安心ですねーっ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/09 19:10 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#537 []
 
まだまだ子供な"飼い猫"が
ぼうっと空ばかり眺めて
雪を待ちわびているもんで‥



"色は思案の外"と
良く言われます故‥



―‥自分でも、
良くわかりゃしないのですが、ね

⏰:10/02/10 16:47 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#538 []
 



雲が低い
空一面を灰色に染める


「‥雪ですか、ね」



冷えた空気が息を白く染めた

⏰:10/02/10 16:48 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#539 []


「お帰りなさいっ」

窓から乗り出すような勢いで
雪が降るのを待ちわびていると
壱助さんが帰ってきた


「今日、雪降りますかねぇ?」

別に雪は珍しくない
だけど真っ白に染められた街に
なんだかとてもわくわくして
何時になっても
目を輝かせてしまうのだ

⏰:10/02/10 16:48 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#540 []
 
「‥さぁ、ね」

後ろで聞こえた素っ気ない声に
着物と肌がすれる音が続く


「‥んう」

また黙って着替えて‥
着替えるときは声かけてって
あれだけ言ってるのに

気付かぬふりをして
じっと空とにらめっこ

⏰:10/02/10 16:49 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#541 []
 
―‥だけど沈黙となれば
どこかむず痒い


「外、寒かったですか?」

「そりゃあ‥ねぇ」


今度は畳と着物がすれる音
どうやら着替え終わったらしい

⏰:10/02/10 16:50 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#542 []
 
流石に手が冷えてきた
外へ向けた息も白い


「囲炉裏があると
やっぱり冬はいいですよねぇ」

なーんて
あたしにとっては珍しかった
囲炉裏に暖かさを求めて
振り返ってみたものの‥

⏰:10/02/10 16:50 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#543 []
 
「壱助さん!!」

どうしてそうも貴方は‥

囲炉裏の前に立ちはだかる
壱助さんの背中


「ちゃ‥ちゃんと袖!!」


時々よくわかんない所で
壱助さんは半裸になりたがる
‥露出狂だ。

⏰:10/02/10 16:51 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#544 []
 
そして何度見ても
この美しさには慣れない

雪みたいに真っ白だから
囲炉裏に近づいたら
溶けちゃうんじゃないかって
馬鹿みたいな心配をするほど


一気に火照った顔を
ぷいっと背けて
また空に目を向けた


雪‥やっぱり降らないかなぁ

⏰:10/02/10 16:51 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#545 []



結局"まぁ、まぁ"と言って
言うことを聞いてくれず‥


って言うか
何が"まぁ、まぁ"よ!!

あたしだって暖まりたいのにぃ‥

⏰:10/02/10 16:52 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#546 []
 
「雪が降りそうだって言うのに
何でわざわざ‥
着物下ろすんですかぁ?」

少し乱暴に唇を尖らせて
後ろにある背中に訴えると


「いいじゃあ、ないですか」

と、満足げな声が返ってきた

⏰:10/02/10 16:53 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#547 []
 
ちらりと少し顔を向けて
横目で様子をうかがえば
胡座をかいた片膝に
頬杖を付いてくつろいでいる


あったかそう‥
行きたい‥けど
そんな半裸の男の人の
隣になんか並べない!と言う

‥生娘の葛藤。


ただただ時間が過ぎ
体が冷え行くだけだった

⏰:10/02/10 16:53 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#548 []



「‥へっくしゅん!!」


このままじゃ風邪引く‥
冷えた手を口元の前で握りしめ
はぁーっと息を吹きかける


「やれ、やれ」

⏰:10/02/10 16:54 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#549 []
 
やれやれって‥
そもそも壱助さんが
変態な趣味持ってるからよ!!


最早此処まで来ると
動いてたまるかとヤケになるもの


「仕方のない人、ですねぇ」

_

⏰:10/02/10 16:55 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#550 []
 



――‥ ギュウゥ



一気にあたしの体を温めたのは
後ろからいきなり
抱きついてきた壱助さんだった

⏰:10/02/10 16:55 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#551 []
 
「維持など張らずに‥
此方に来れば良いものを」

首を抱くようにして
絡みつく腕が
男らしいくせに美しくもある


「べ‥別に、維持なんて‥」


言い訳を並べようとした口に
華奢な指が触れた

⏰:10/02/10 16:57 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#552 []
 
「ほぉう‥」

「壱助さんが‥
あく‥悪趣味だから」

いつもと違って
暖かい壱助さんの体に
とても違和感を覚えて


なんだかいつもとは
別の人のような気もして‥

乱れる鼓動を
止めてしまいたかった

⏰:10/02/10 16:57 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#553 []
 
「‥こいつぁ、手厳しい」


急に横で見せた含み笑いに
いつもより瞬きを多めにして
顔を背けてみる


「おや‥顔が赤く‥」

「言わないで下さいぃっ!!」


もう‥香夜は溶けそうです。

⏰:10/02/10 16:58 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#554 []
 
そんな火照った顔を見るために
出し惜しみしてたかのように
ちらちらと粉雪が舞う


「雪だぁあっ!!
ほらっ壱助さん雪‥」


降り出した雪が
あたしを子供にさせたから

夢中にさせたから

横にいた貴方をも
消してしまったから

⏰:10/02/10 16:59 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#555 []
 


 ――――――‥




_

⏰:10/02/10 16:59 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#556 []
 

「おや、おや
随分と大胆‥ですねぇ」


意識が飛びそうなほどに
唇から伝った熱で



‥早くも、雪解けの予感です。


_

⏰:10/02/10 17:00 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#557 []
 
【 お ま け 】

「あ‥あれは事故‥」

「事故?‥ほぉう」

「そうです事故です事故っ!!」

「‥あの後
物足りずに自ら唇を‥」

「言わないでぇえぇぇえっ!!!」


‥めでたし、めでたし。

⏰:10/02/10 17:04 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#558 [笹]
番外編 【待ちわびて】

*。*。*。*。*。*
急に寒くなったので
甘甘をご提供 ////

なんかいろいろとあれですが←
あくまで番外編なので
好きにさせていただきましたw

外ばっかり見てる上に
意地っ張りな香夜ちゃんに
してやったりの壱助さん

香夜ちゃん案外大胆w
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/10 17:07 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#559 []
 
貴女がそうしたいと言うならば

私は何も言いません、よ



"去るもの追わず"

⏰:10/02/14 01:33 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#560 []
 
「‥」

あの日から
口数が確実に減った

何を考えているのか‥
正座したまま虚ろな目

「どうか‥しました、か」

「‥いえ、別に」

不思議なほど此の調子
此方の調子が狂います、よ

⏰:10/02/14 01:34 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#561 []
 
夜になれば寝付きもせず
声を殺して泣く、ときた

‥どうしたもんか、ねぇ


「‥壱助さん」

畳に話しかけて‥
私は此方なのですが

⏰:10/02/14 01:34 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#562 []
 

「何、か」

「壱助さんは‥」


言葉が途切れた
いや‥躊躇っているのでしょう
小さく喉が動いた

⏰:10/02/14 01:35 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#563 []
 
「壱助さんは‥本当にあたしと
ずっと一緒に?」

「居ます、よ」


嫌だとでも言いますかい?
去る者は追わぬ主義ですが‥


「恋仲の人が出来たら‥
あたし、邪魔ですよね?」

⏰:10/02/14 01:35 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#564 []
 
そんな事で‥
今まで泣いてたの、か

全く‥貴女と言う人は


「ほう‥」

「あたしなんかと居たら
一生結婚できませんよ?
壱助さん‥絶対いい人に‥」

⏰:10/02/14 01:36 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#565 []
 
「其れならば‥去る、と?」

「‥んう」

下を向いて肩を震わせる


本当に意地が悪い奴です
貴女を何処までも困らせたい

⏰:10/02/14 01:36 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#566 []
 

「香夜さん次第です、よ」

「‥足手纏いな気がして」


悩みなど無さそうな顔を
している人ほど
押し潰されそうになっている

‥そんな物です

⏰:10/02/14 01:37 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#567 []
 
「あたし、どじだし‥五月蠅いし
色気もないし、使えないし‥」


自分を何だとお思いで?
ちょいと安く見積もりすぎでは‥


「どう‥したいんで?」

貴女は私を苦しめる

⏰:10/02/14 01:38 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#568 []
 
「‥」

何処までも、何処までも

「答えられぬと言うなら‥」


「一日‥時間を下さい」


お考えになろうと‥いうこと、か

別れもそう遠くはない、と

⏰:10/02/14 01:38 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#569 []



背を向けて眠りにつく

香夜さんが悩んでいる事は
正直言えば下らない
無駄な心配でしかない

しかし貴女にとっては
大問題なのでしょう


‥本当に鈍い人だ
だから放って置けないと言うのに

⏰:10/02/14 01:39 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#570 []
 
後ろの気配が息を潜めて
ゆっくりと布団から抜け出した

小さく鼻を啜り
着物がはらりと脱げる音

帯をきっちりしめて


‥音が止まる

⏰:10/02/14 01:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#571 []
 
闇に包まれて
何も見えないはずなのに

何故でしょう、ね
貴女の泣き顔が目に浮かぶ‥


"行くな"と声をかける事も
抱き寄せる事も
肝心な時に限ってできずに
体が動かなくなる

⏰:10/02/14 01:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#572 []
 
私は、
何に躊躇っているのでしょう、ね



―‥ 足音が消えた

⏰:10/02/14 01:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#573 []



一睡もできずに
唯ぼうっと
月明かりが照らす畳の網目を
雑に何度も目で追った

重い体を起こし
消えた隣の温もりに
そっと手を添える


「‥馬鹿です、ね」

⏰:10/02/14 01:41 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#574 []
 
枕元に置き手紙

『最後の挨拶くらい
しっかりしたかったのですが
壱助さんの顔を見たら
辛くなると思ったので‥

どうか、お許し下さい。
本当にお世話になりました』


綺麗に整った文字が
一カ所滲んでいた

⏰:10/02/14 01:41 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#575 []
 
「もうだいぶ
連れ添ったと言うのに‥
淡泊な別れです、ね‥香夜さん」



目を細めて
ぼやけた文字を撫でた

⏰:10/02/14 01:42 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#576 []
 

本当に意地っ張りな人だ



最後の最後まで
香夜さん‥

貴女は貴女でした、ね

_

⏰:10/02/14 01:43 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#577 [笹]
第十五章 【温もり、消えて】

*。*。*。*。*。*
バレンタインなのに
えぇえーっな展開w

香夜ちゃんどーしたのっ?
ねぇどーしたのっ?!
壱助さん止めなさいよっ
抱きしめちゃいなさいよっ
あんたいつから
奥手になったのよw

不安定な、お2人様です
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/14 01:46 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#578 []
 
自分で腹を括ったって

後悔は
情が籠もれば籠もるほど
溢れかえってくるもので

何度泣いても泣き足りない

でも、泣くことしか
あたしにはできないのだから‥

"声涙、倶に下る"

⏰:10/02/14 22:37 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#579 []



理由は簡単で

これ以上
迷惑をかけたくなかった

あの日あたしの居場所は
壱助さんの隣しかないって
そう思った

だけど‥だけど違う
今までとは確実に何かが違う

⏰:10/02/14 22:38 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#580 []
 
いけないことに
気がついてしまった気がして


もう一緒に居られないって
‥そう思ったの



できるならこんなこと
したくなかった‥
離れたくなかった

⏰:10/02/14 22:38 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#581 []
 
意地悪だけど根は優しいし

あたしを認めてくれたから
あたしを助けてくれたから


「はぁ‥」

もう泣きそうだ
家出てから
泣かないって決めたのに‥

壱助さんといたら
すぐ泣いちゃう
‥居心地いいんだよね、それだけ

⏰:10/02/14 22:39 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#582 []
 
「猫ぉ‥
これからどうしよう」

野良猫がすり寄ってきた
そんなに可哀想に見えたかな

「‥行くあてがないや」

飢え死にするかも‥
んう‥壱助さぁん

「ミャァウ」

真っ黒な瞳が
こちらを覗き込む

⏰:10/02/14 22:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#583 []
 
「お前も‥独りかぁ」


思いっきり撫でてやる

毛の下から伝わる暖かさに
何故か胸が苦しくなった



‥また遊女屋かなぁ

⏰:10/02/14 22:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#584 []
 
「‥香夜ちゃん?」




「‥伊代さぁああぁん!」

⏰:10/02/14 22:41 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#585 []



「でもさぁ香夜ちゃん?
壱助さん心配するだろう?」

不安そうな顔で
伊代さんはお茶を差し出した

「でも‥
去るのもあたし次第だって
壱助さん言ってたし‥」

「んん‥まぁねぇ
あの人も‥」

そう言って眉を下げて
緩く微笑んだ

⏰:10/02/14 22:41 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#586 []
 
「‥?」

「香夜ちゃんと"同じ"さぁ」

「同じ?」

意味深な言葉を残し
頬杖を尽きながら団子を食らう


伊代さんはいつも幸せそう

⏰:10/02/14 22:42 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#587 []
 
湯飲みの中をぼうっと覗き込む

深い緑色の奥に
自分のみっともない顔が
ぼやけて映し出された


お茶‥まだ大丈夫だよね
この前買ってきたばかりだし

「‥はぁ」

体に染み付いた習慣が
余計虚しくさせて、ため息

⏰:10/02/14 22:42 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#588 []
 
「でも、どうするんだい?
これから一人じゃあ‥」

「んー‥」

出された団子に目もくれず
緑色をじっと見つめる


「あたしんちでよけりゃあ‥
汚いけど、使うかい?」

「え?!いいんですかっ?」

⏰:10/02/14 22:43 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#589 []
 
思わず身を乗り出した

しかしすぐさま冷静になり
この朗報の穴に気づく


「でも‥壱助さん
来ますよね‥此処」

見つかっては
合わせる顔がないの
もう会わない
迷惑かけないって決めたから

⏰:10/02/14 22:43 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#590 []
 
結局飢え死に‥
じゃなきゃ、遊女屋

でも遊女屋だって
壱助さん来るかもしれない‥


何を考えても
壱助さんばかり絡んで

情けないほどに
自分は頼ってばかりだったと
改めて実感するのだ

⏰:10/02/14 22:44 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#591 []
 
「まぁ‥来るけどさぁ
部屋貸すから、ね?」


母親のような笑みを
此方に向けた伊代さん

母親の笑みなんて
あたしにはわからないけど

⏰:10/02/14 22:45 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#592 []
 
「でも‥タダで借りるなんて」

「それなら、うちで雇うよ?
裏方ならできるだろう?」


裏方‥そっか
表にでなきゃいいんだ


「よろしくお願いします!!」

⏰:10/02/14 22:45 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#593 []
 
いつか壱助さんが
迎えに来てくれたら‥なんて
仕様もない希望を抱いていた


日が経てば経つほどに
このもどかしさは
恐ろしいくらいに膨れ上がり

壱助さんは
‥あたしを蝕んでいくの

⏰:10/02/14 22:46 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#594 [笹]
第十六章 【嘆いてみても】

*。*。*。*。*
遂に絡みがなくなったw
あー早く絡ませたい←
いやでも
これからどうなるかは
あたしの頭の中次第w

2人の絡みが好きな皆様
もう少々お付き合いください
(´・ω・`)ね
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/14 22:51 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#595 []
 
去るものは追わぬ主義

確か‥
私はそう言いました、ね



"乙に澄ます"のも


終わりにしやしょう、か

⏰:10/02/14 22:57 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#596 []



「香夜ちゃーん!!」

「はぁい!」

あれから一週間
あたしの知る限りでは
壱助さんは此処には来ておらず

伊代さんと伊代さんのご家族に
本当に親切にしてもらい
不自由なく生活してます

⏰:10/02/14 22:57 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#597 []
 
だけどやっぱり
忘れることができなくて

夢に見ては
涙に濡れた頬を拭う


夢の中でしか会えないなら
ずっと眠りについてたいくらい

⏰:10/02/14 22:58 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#598 []
 
朝独りでに目が覚めて

笑いもせずにあたしを見下ろして
"朝です、よ"って言う
そんな声を脳裏から
無理矢理に引っ張り出せば

虚しさが増すばかり


‥馬鹿だなぁ、あたし

⏰:10/02/14 22:58 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#599 []
 
「ちょいと、
買い出し行ってくるから
その間店番‥お願いできる?」

店番‥
表にでなきゃ、か‥


「あぁ‥はい!」

お世話になってるんだもの
しっかり働かなきゃ

⏰:10/02/14 22:59 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#600 []



「‥あぁああ」

独りになると‥貴方ばかり

会いたくない
合わせる顔もない

‥だけど何処かで
ふらりと現れる壱助さんに
期待してるみたい

⏰:10/02/14 22:59 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#601 []
 
「もぉ‥わかんないよぉ」

前のめりに突っ伏して
頭を掻きむしる


木の独特の慣れない香りに
顔をしかめ
恋しくなるは貴方の香り


‥こんな気持ち初めて

⏰:10/02/14 23:00 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#602 []
 
「‥香夜さん?」



名前を呼ばれて
慌てて顔を上げると


「も‥茂七さん?!」

⏰:10/02/14 23:00 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#603 []



茂七さんには失礼だけど
‥正直がっかり

その上なんとなく気まずい


「どうぞ」

ぎこちなく茶を差し出す

あー‥そろそろ壱助さん
お茶飲み切っちゃうかも

⏰:10/02/14 23:01 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#604 []
 
「何でまたこんな所で?」

茂七さんは目を丸くして
湯飲みに手を添えた


何で‥何ででしょう
もう自分でもよくわからない

「ほら、あたしも
稼がなきゃなぁー‥なんて」

思いっきり顔を釣り上げて
作り上げた笑顔を向け
変におどけて見せた

⏰:10/02/14 23:01 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#605 []
 
「偉いなぁ香夜さんは!!」

またがははと笑う
何て呑気なのかしら‥


気付けば、ほら
道行く人に目を凝らして
探してしまっているじゃない

一発で見つける自信はあるのに‥

⏰:10/02/14 23:02 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#606 []
 
「そういえば‥
お兄‥じゃない、旦那は?」


お兄様でもいい
旦那様ならどれだけいいことか


あたしと壱助さんには
何の繋がりもない

⏰:10/02/14 23:02 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#607 []
 
「あぁ‥えっと
本当は、旦那じゃないんです」

「え?!」

茂七さんの表情は
面白いほどにころころ変わる


「あたしはただ
あの方にお世話になってた‥」

⏰:10/02/14 23:03 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#608 []
 

‥お世話になってた

「だけ、なんです」


こんなに薄っぺらかったのか
言葉にしてやっと気づく


何もなかった
壱助さんとの間には、何も

⏰:10/02/14 23:03 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#609 []
 
「そうかそうか!!
と、言うことは‥やっぱり」


お世話になっただけじゃない

その上
縛られたり叩かれたり蹴られたり
酷い扱いだったじゃない

⏰:10/02/14 23:04 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#610 []
 


「俺と恋仲になると言うことか!!」


「‥え?」


茂七さん‥あんたって人は

⏰:10/02/14 23:05 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#611 []
 
とんだ‥


「‥勘違い野郎です、ね」


はっきりとあたしの目は
目の前に現れた
貴方の姿を捕らえました。

⏰:10/02/14 23:06 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#612 [笹]
第十七章 【待ちわびて】

*。*。*。*。*
茂七さん再びw

そして壱助さんきたーっ!!←
一言だけですが(´-ω-`)

離れてわかる大切さ
香夜ちゃん‥
きっともう気付いているはず
でもそれが何なのか
鈍いからわかっていない
悲惨だw(゚o゚)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/14 23:09 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#613 []



来てくれた‥壱助さん

もう何年も何十年も
会ってなかったような気がする


壱助さんは何一つ変わらず‥

表情さえも変えずに
入り口の柱に寄りかかり
横目で此方を睨みつけた

⏰:10/02/15 16:51 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#614 []
 
「壱す‥」

「おいこら!!
お前‥香夜さんの
旦那じゃないんだって?」


茂七さんがすかさず責め立て
つかつかと詰め寄った


本当に命知らず‥

⏰:10/02/15 16:52 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#615 []
 
「俺は嘘をつく奴が
大嫌いなんだぁよ!!」

と茂七さんが言い終わる前に
壱助さんは
するりと目の前に立ちはだかる
茂七さんをかわし‥


「‥帰ります、よ」

「へ?」

⏰:10/02/15 16:52 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#616 []
 
あたしの手首を捕らえた
あの美しくて冷たい手


「でも‥あたし」

いつもより少し
壱助さんが情で動いてる気がする

気のせいかな?

⏰:10/02/15 16:53 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#617 []
 
そのままぐいっと引っ張られ
前のめりになる

忙しなく下駄に足を突っ込み
わけがわからぬままに
体を預けてみた


「壱助さん‥ちょっと待って‥」

「‥その勘違い野郎に
ついて行く、とでも?」

⏰:10/02/15 16:53 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#618 []
 
急に足を止めて
前に放った言葉なのに
威圧感はいつも以上


「その通りだ!
香夜さんと俺は恋仲に‥」


「格下げです、よ」

少しくらい茂七さんの話を
最後まで聞いてあげてほしい
そう思うくらい

⏰:10/02/15 16:54 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#619 []
 
壱助さんはぶった斬るように
次々に言葉を並べる

怒ってるかな‥


「格下げ‥?」

「"所有物"に格下げ、ですよ」

⏰:10/02/15 16:55 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#620 []
 
―‥、

「‥もう、嫌なんです」

思わず零れた言葉に
反応するように振り向いた


‥顔も見たくない
辛くて苦しくて仕方がないの

⏰:10/02/15 16:55 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#621 []
 
「‥嫌、とは」

白々しい視線が
上から惜しげもなく降り注ぐ


「もう迷惑かけたくない‥
宿代も食事代も
壱助さんに任せっきりで、
あたし‥赤の他人ですよ?」

親切にされるのが
もう怖くなってしまったの

⏰:10/02/15 16:57 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#622 []
 
‥会えて嬉しいのに


「ほぉう‥それで?」

相変わらず冷静で
熱くなってる自分が
馬鹿馬鹿しく思えてしまうほど

しっかりと掴んで離さない
その繋がりを見つめて
その繋がりを妬んだ

⏰:10/02/15 16:57 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#623 []
 
「それで‥それで、
最近おかしいんです。
壱助さんといると
辛くて‥苦しくて‥もう、」


‥また泣いてしまった

乱暴に涙を左手で拭っても
それを無駄にしてしまうほど
溢れかえって止まらない

⏰:10/02/15 16:58 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#624 []
 
「‥」

声のない返事に
余計に胸を痛ませて

「胸の奥がずきずき痛んで‥
この気持ち‥」


「それ以上‥
言わないで、もらえやせんか」

_

⏰:10/02/15 16:59 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#625 []
 
ぎゅっと繋がりが力強く‥
ぽつり呟くような声と共に

傷つけてしまったかな‥
一番大切にしなきゃ
いけない人なのに


「許しません、ぜ」

見上げて、ほら
この程度じゃ傷つかない?
それとも無理してる?

⏰:10/02/15 16:59 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#626 []
 
まだまだあたしは
‥貴方を何も知らないの


「"所有物"ですから‥」


だけど変なんです
あたしなんかの言葉に
酷く傷付いてほしいなんて

考えてしまうんですから

⏰:10/02/15 17:00 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#627 []
 


「勝手に‥
私の傍を離れるなど、ね」


もっと貴方を知りたくて

_

⏰:10/02/15 17:01 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#628 []
 
【 お ま け / 茂七さんの行方】

香夜ちゃんが泣き出して

「男が女性を泣かせるなど
言語道断だ‥!!」

(って言ってたんですが
邪魔なので省略しました←)

「茂七さんじゃないかぁ!!
今団子焼けるから
さぁさ!入っとくれよぉ」

丁度帰ってきて
気を利かせた伊代さんが
団子食わせて
黙らせてましたとさ

め で た し め で た し ←

⏰:10/02/15 17:02 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#629 [笹]
第十八章 【迎えに来て】

*。*。*。*。*
個人的に
壱助さんと茂七さんの
温度差が好きですwww

とりあえず
香夜ちゃん!!
その胸の痛みはko‥じゃないのか
って言いたいです ^ω^ え

壱助さんは何故最後まで
言わせなかったのでしょーか
そこ大事です\(^O^)/うふ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/15 17:06 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#630 [笹]
>>629
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

貼れてませんでしたw

⏰:10/02/15 17:07 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#631 []
 
やっと心配事も
‥無くなりました、ね

"愁眉を開く"とでも言いましょう

心配事‥と言うほどの物でも
ないような気もしますが


分かりやすい上に
‥鈍い、ときた

今後が最大の心配事です、ね

⏰:10/02/15 20:59 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#632 []



久しぶりの宿
畳の匂いに囲炉裏の暖かさ
壱助さんがお茶を啜る音

何だか妙に嬉しくて
落ち着いていられない

「今後とも‥
よろしくお願いいたします」

額を畳にこすりつけ
深く頭を下げた

⏰:10/02/15 21:00 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#633 []
 
「‥自分のした事を
お分かりでお出でで?」

湯飲みを置き
こちらに近付く着物が擦れる音


お仕置き‥か

まぁ仕方ないよね
これだけお世話になった人に
置き手紙だけ残して
姿を消したんだもの

⏰:10/02/15 21:01 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#634 []
 

「頭を‥上げて下さい、よ」


どんな形相をしてるのか‥

目があった瞬間
その目力だけで殺されそうだ

⏰:10/02/15 21:02 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#635 []



ごくりと唾を飲み
恐る恐る顔をあげれば
思いの外、穏やかな‥

と言うか
いつもと変わらぬ仏頂面


「あの‥えーっと‥」

目が泳ぐとはこのことですね

⏰:10/02/15 21:02 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#636 []
 
お顔を直視できませぬ
いや、でも
美しいお顔‥拝見したいかも

あれやこれやと
頭の中を駆け巡り
一週間の距離に戸惑う


「‥香夜さん」

⏰:10/02/15 21:03 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#637 []
 
首筋を這う冷たい手

お仕置き‥
コッチのお仕置きですか?

それとも
首をちょいと‥のアレですか?


「こ‥心の準備が‥」

⏰:10/02/15 21:03 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#638 []
 
何時だって壱助さんは
あたしの予想通りには行かない

‥期待には応えてくれるけど


するりとソレは首筋を通り抜け

「壱助‥さん?」

ぎゅうっと抱き寄せられた

⏰:10/02/15 21:04 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#639 []
 
不安定になり
壱助さんに体を預ける

この胸板、薄く見せておいて
包み込むように広い

あったかい‥


壱助さんの傍は
本当に落ち着くのだ

⏰:10/02/15 21:05 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#640 []
 
「香夜さん‥あんただけだ」

「へ‥?」

顔を首元に埋め
低い声が体に響いた

ぎゅうっと力を込めて
少し苦しいくらいに
強く抱きしめられて

今までにないくらい
こんなに誰かに求められたのは
初めてなのかもしれない

⏰:10/02/15 21:05 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#641 []
 
目の奥が熱くなる


この言葉の意味が
あたしの思う意味じゃなくても
がっかりしない

むしろ気にならない

言葉以上に伝わる温もりを
あたしは信じたいです

⏰:10/02/15 21:06 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#642 []



しばらく動かず何も言わず
聞こえるのは
整った壱助さんの呼吸と
自分の忙しない鼓動

どうしたらその呼吸が
乱れるますか?
どうしたら頬を赤く染めますか?

仕様もないことばかり
最近では考えてしまうの

⏰:10/02/15 21:06 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#643 []
 
「壱助さん‥?」

もしかしたら
寝ているのかもしれない

‥それくらい静かで

「あの、
壱助さん‥あたしの事‥」

「香夜さん‥」

「は‥はい」

⏰:10/02/15 21:07 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#644 []
 
さっきから
まともに会話ができていない

全てが何処かぎこちないの


「あんただけだ‥」

「壱助さん‥それは‥」

「こんなに、
子供じみた事をするのは‥」

「子供っ‥?」

⏰:10/02/15 21:08 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#645 []
 
やっぱり
あたしの予想通りにはいかない

ぐいぐいと力が強まれば
いつの間にか
呼吸を乱す原因になり


「壱助さ‥くる、苦ひいっ」

「本当に貴女と言う人は‥」

⏰:10/02/15 21:08 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#646 []
 
その内背骨が
粉々になりそうなほど

「痛い‥いたっ‥
今ぼきって!ぼきっていった!!」

「"所有物"と言う分際で‥
此方が緩く扱いだしたのを
良いことに‥ねぇ」

「壱助さん!!ぐぇっ
本当に‥本当に砕け‥っう」

⏰:10/02/15 21:09 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#647 []
 
めりめりと
背中からひしめく音

今回ばかりは
やっぱり一本くらい犠牲に‥


「随分と、度胸がお有りで‥」


それなのに
耳元で囁く色っぽい声に
全身が熱を帯びてしまう

⏰:10/02/15 21:09 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#648 []
 
「本当に‥ごめんなさ‥うぃ
もう‥こんなっ‥んぐ!!」

この勢いに乗って
内蔵が破裂しそうな気もしてくる

「それとも何ですか‥
余程、自虐行為がお好みで?」

何故でしょう壱助さん
人を戒めてる時でさえ
冷静さは保ちつつ
それでいて色めいて

⏰:10/02/15 21:10 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#649 []
 
もはやその冷静さは‥冷酷。


「もう二度と‥離れませんーっ!!
だから許してくだ‥」


すると呆気ないほどに
するりと手放され
みっともなくそのまま
倒れ込んだ

多少背中が痛むものの
‥背骨さん健在です!!

⏰:10/02/15 21:10 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#650 []
 
「言いました、ね?」

「‥え?」


呼吸を整え少し帯を緩めつつ
体を無理やり起こせば

何事もなかったかのように
綺麗に正座している壱助さん

⏰:10/02/15 21:11 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#651 []
 
「二度と離れない、と」

にやりとつり上がった
艶容な口元

「‥言いましたけど」

だから何ですかと言う話である


不思議そうに見つめれば
満足そうに茶を啜った

⏰:10/02/15 21:11 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#652 []
 

そしてまた貴方は呟いた


"あんただけだ。"‥と


_

⏰:10/02/15 21:12 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#653 [笹]
第十九章 【約束、交わして】

*。*。*。*。*。*
本日二度目の更新
早く二人を絡めたくて
書いてしまいましたw
どうやら皆様のおかげで
スランプ抜け出しました ^ω^

えーっと
もどかしいですねw
直接的な言葉は避け続けます←
もどかしいのが好きなんです//
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/15 21:15 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#654 []
 
壱助さんと居ると
何だかんだ、落ち着くの

嫌な過去も忘れられて
今の時に満足できる


思わず"会心の笑みを漏らす"もの

⏰:10/02/16 22:38 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#655 []



「壱助さん!!」

「何、か」

―‥ある日の午後

「裾!!」

「‥」

⏰:10/02/16 22:39 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#656 []
 
出掛けようと腰を上げた
壱助さんの着物の裾を
引っ張った

眉間にしわを寄せて
それを見下げる壱助さん


「解れてますよ!!」

裾から垂れた細い糸が
畳の上を這っていたのだ

⏰:10/02/16 22:39 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#657 []
 
「おや、おや」


それは驚いているのか‥


声の調子からは
全く読みとれないのが
壱助さん独特なのです

⏰:10/02/16 22:40 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#658 []



「あたしが直しますから‥
脱いで下さい!!」

よく言えたものだ
あたしみたいな生娘が
色男に脱げなんて‥

「こりゃぁ、随分と積極的‥」

「ち‥違いますぅ!!」

⏰:10/02/16 22:41 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#659 []
 
くすっと鼻で笑い
するりと帯を解く


顔を覗かせた真っ白な肌に
目を奪われて‥

「って、
目の前で脱がないでください!!」

⏰:10/02/16 22:41 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#660 []
 
気付けば
してやられているのです


「注文が多いです、ね」


いちいち顔を熱くして
何時か慣れる時が来るだろうか

⏰:10/02/16 22:42 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#661 []



「ほぉう‥」


解れた裾に針を通し
ちくちくと縫い上げる手を
物珍しそうに見つめていた


‥なんか、可愛い

いや、壱助さんに可愛いなんて
‥あたしは何を考えてるんだ

⏰:10/02/16 22:42 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#662 []
 
最近何かと愛着がわいて
時々そんな事を考える

だけどこの人には
美しいという言葉が
一番似合うわけですが‥

「随分と‥器用なものです、ね」

「お裁縫は得意なんですよっ!」

と得意げに
にいっと笑ってみせれば

⏰:10/02/16 22:43 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#663 []
 
「"だけ"」

と痛いところを突いてくる


だけど最近
壱助さんがよく笑う気がする

此は笑う‥って言うのか
よくわからないけど
含み笑い?‥そんなの。

⏰:10/02/16 22:43 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#664 []
 
「何処で‥
引っ掛けてきたんですか?」

「さぁ、ね」


わざとはぐらかしているのか
本当にわからないのか

睫を伏せて腕を組み直す

⏰:10/02/16 22:44 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#665 []
 
「‥」

ちくちくちくちく

「‥」

ちくちくちくちく


‥見すぎ!!
ちょっとやりにくいし
何か近いんですけど!!

⏰:10/02/16 22:44 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#666 []
 
あっちこっちに角度を変えて
針を目で追っている

本当にもう少しで
その綺麗な顔まで縫いそうなほど

「あの‥やりにくいんですけど」

その手を止めれば

「いいじゃあ、ないですか」

いつもの調子
そんなに面白いだろうか

⏰:10/02/16 22:45 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#667 []
 
代わりに羽織っただけの浴衣
きちんと着ていないのは
初めてだから‥なんか新鮮で

それでいて今日は
やっぱり何処か‥うん
珍しく壱助さんから
寄ってきたからかな?


「‥ちょっと
あっち行ってて下さい」

⏰:10/02/16 22:46 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#668 []
 
「‥」


‥どうしてそんな
不機嫌になるんですか!!

切れ長の目で一度睨み付けて
仕方なさそうに腰を上げた


ひらり翻った浴衣から香る
壱助さんの匂いが鼻をくすぐる

⏰:10/02/16 22:46 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#669 []
 
胡座をかいて茶を啜り
外の世界に目を向けて


だらしなく下がった襟元の色気
ただの浴衣さえ
貴方が着れば一級品


‥あたしもあれくらい
美しく生まれたかったもんだ

⏰:10/02/16 22:47 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#670 []



「でーきたっ!!」

我ながら完璧
着物を宙に広げて
満足そうに微笑んだ

「壱助さーん、できましたよーっ」

「はい、はい」

返事をするものの
動こうとしないもんだから
自ら近寄った

⏰:10/02/16 22:48 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#671 []
 
「はいっどーそ!」

着物を差し出せば
"有り難い"とぽつり呟き
するりと袖を通した


今日の壱助さんは
とても穏やかな気がします

それから‥素直。

⏰:10/02/16 22:49 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#672 []
 
「ちょいと手が‥
冷えちまったもんで、ね」

袖に閉まっていた両手を
此方に差し出しながら言った


いつも冷たい気もするけど‥

脱いだ浴衣をあたしの肩にかけ
にやり口角をあげる

⏰:10/02/16 22:49 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#673 []
 

「暖めてくれや‥しやせん、か」


浴衣ごと包み込むように
抱き寄せて
胸の中に押し込められた

少し冷えた体と暖かな鼓動
何故だかこの上ない
幸せを感じて‥

⏰:10/02/16 22:50 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#674 []
 

最初から
こうしたかったのかな、なんて
仕様もなく良いように考える


やっと貴方に
‥追いつけた気がします。

_

⏰:10/02/16 22:51 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#675 [笹]
第二十章 【抱き寄せて】

*。*。*。*。*
甘めです(´゚ω゚`)

壱助さんって
意外と寂しがり屋w?
香夜ちゃんに
構ってほしいんだと思う←
香夜ちゃんを抱きしめたくて
たまらないんだと思う←

壱助さんの意外性を
表現したかったですw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/16 22:54 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#676 []
 
少しの人情
少しの気の迷い

たった其れだけでも
"月夜に釜を抜かれる"事がある


いつ何時も
油断しては成らぬと言うのに‥

ねぇ、香夜さん‥

⏰:10/02/17 23:52 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#677 []



誘拐されました。


自分でも
よくまだ理解できてません

とりあえず
暗いっ!怖いっ!!

壱助さぁぁあんっ!!

⏰:10/02/17 23:53 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#678 []



ついさっきのこと。

壱助さんのお茶を買うため
いつも通り街に出ました

「あーあ‥
本当に毎回毎回
なくなるのが早くなる
もう一週間で飲み切って‥
ありえない、あの人」

ぶつぶつ言いながら
大量に買った
お茶の袋を抱えて帰る途中

⏰:10/02/17 23:53 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#679 []
 
目の前にうずくまった女の人

「大丈夫ですか?」


声をかけて顔を覗き込めば
それはそれは美しい方で

「少々‥立ち眩みがして」

頭を抑えて眉間に皺を寄せていた

⏰:10/02/17 23:54 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#680 []
 
あまりに辛そうで
放っておけるわけもなく
‥普通は放っておかないか


「あの‥立てますか?
此処じゃ危ないので何処か‥」


誰だって油断するでしょう
誰だって心配するでしょう

⏰:10/02/17 23:54 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#681 []
 
肩を貸して立たせてあげた瞬間


「‥?!」


腹部に走った激痛
よく覚えてないけど
多分殴られたんだと思います

⏰:10/02/17 23:55 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#682 []



そこから全く記憶がなく
気付いたら真っ暗闇で

しかも
手足縛られ‥口塞がれ

‥此処どこなのよぉーっ!!

って叫びたくても叫べない
‥辛いです

⏰:10/02/17 23:56 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#683 []
 
「お律様、
あの男がもうそろそろ此方へ‥」

微かに男の低い声が
向こう側から聞こえた


「そうかい‥
相当此の娘気に入ってるのかい」

次に聞こえたのは女の‥
ん‥?

⏰:10/02/17 23:56 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#684 []
 
―‥もしかして
『少々‥立ち眩みが』


‥あぁあああ!!
さっきの女の人の声だ


「‥憎たらしい娘だねぇ」

チッと舌打ちが聞こえた
さっきの雰囲気とは大違い

⏰:10/02/17 23:57 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#685 []
 
話の内容的には
憎たらしい娘があたしで
あの男が壱助さん‥かな?


ってことは
壱助さんが助けに来てくれるっ!!

その瞬間
一気に体の力が抜けて
楽になった

なぁーんだ
すぐ帰れるじゃなぁい!

⏰:10/02/17 23:57 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#686 []
 
何て‥調子に乗れば


「それで、あの娘は?」

「へいっ」


‥ろくなは事ない

⏰:10/02/17 23:58 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#687 []
 
―‥バン!!

一瞬で光が差し込み
真っ白になった世界に目を細めた

びくんと心臓が飛び跳ね
目の前に急に現れた
柄の悪い男に驚く


「おいお前!!」

⏰:10/02/17 23:58 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#688 []
 
塞がれた口を
塞がれてるなりに
ぱくぱくと開け
最早‥涙目

こんなごっつい男の人
久しぶりに見たよ‥
壱助さんしか見てないから
余計に驚いた


「暴れたら‥
只じゃ、おかねぇからな!!!」

「‥んっ、んぐ」

⏰:10/02/17 23:59 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#689 []
 
これ以上はないと言うくらいに
思い切り縦に首を振った



‥これは本当に殺される。


_

⏰:10/02/18 00:00 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#690 []
 
バン!!


その男は思い切り襖を閉め
また一人暗闇に放り出された


もう怖すぎて‥
体の震えが止まらないよ

壱助さん早く助けてぇ‥

⏰:10/02/18 00:00 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#691 []



「あら、いらっしゃい」

「ご無沙汰しておりました、ね
‥お姉様」


‥!!
壱助さんだっ!

その声を聞いて
ほっと胸をなで下ろした

⏰:10/02/18 00:01 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#692 []
 
「‥此処へは、あれから
来てないそうじゃない?」

「えぇ‥まぁ」


男が思い切り閉めた弾みで
少しだけ出来た隙間に
思い切り目を押し当てた

派手な着物を着崩したあの女の人
その傍にお猪口を手にした
壱助さん

⏰:10/02/18 00:01 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#693 []
 
その横に大きめの布団
この独特の香り


もしかして此処‥遊女屋?


「相変わらず‥お綺麗で」

艶容な唇をうっすら釣り上げて
あたしには見せない優しい笑み

⏰:10/02/18 00:02 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#694 []
 
「まぁ‥
あの子と重ねてるのかい?」


あの子‥?
それにさっき壱助さん
"お姉様"って‥

やっぱり常連なのかな
信じたくないけど
考え出したら止まらないたち

‥何だか悔しいよ。

⏰:10/02/18 00:02 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#695 []
 
「いえ、いえ
‥確かにそっくりですが、ね」

「双子だもの、当たり前さ」


女の人の赤く染まった爪が
壱助さんの真っ白な頬を撫でた

それに応えるように
壱助さんが片方の手を握った

⏰:10/02/18 00:04 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#696 []
 
‥やだ。

あたしの前で?
壱助さん、
あたしに気付かないの?


暴れてみても
余計に縄が食い込み痛むだけ
声を上げても
周りの色がましい声に消される

⏰:10/02/18 00:04 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#697 []
 

ねぇ‥やめて
壱助さんに触らないでよ‥



壱助さん‥壱助さんっ!!

_

⏰:10/02/18 00:05 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#698 [笹]
第二一章 【血の涙、滲んで/前】
>>676-697
*。*。*。*。*
また急展開w
甘甘から一転(´・ω・`)

壱助さん
まさかの公開プレイ?w←
そしてこの女性の正体は‥?

どっかしらの番外編と
実は繋がってる‥かも ^p^
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/18 00:10 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#699 [笹]
【本編アンカー/1〜10】
>>1-44
>>46-78
>>80-116
>>118-127
>>129-144
>>147-171
>>173-193
>>197-227
>>230-257
>>260-294

⏰:10/02/18 00:27 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#700 [笹]
【本編アンカー/11〜20】
>>318-339
>>342-363
>>396-420
>>423-445
>>472-498
>>550-535
>>559-576
>>578-593
>>595-611
>>613-628

⏰:10/02/18 00:30 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#701 [笹]
【本編アンカー/21〜】
>>631-652
>>654-674
>>676-697

だいぶ章がずれてましたw
気にしないでください
(´;ω;`)

⏰:10/02/18 00:32 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#702 [笹]
【番外編アンカー】
>>297-316
>>366-393
>>450-470
>>537-557

最後のタイトル
笹の感想部は
流れを重視したいため
省きました(´・ω・`)ノ

⏰:10/02/18 00:34 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#703 []


目の前で繋がった手と手

真っ赤な着物が背を向けて
貴方に詰め寄る

見たくもない光景
だけど目が離せない

今すぐ追い払いたい
だけど今のあたしは無能

もどかしさと悔しさに
涙を浮かべても
貴方は気付いてくれなくて‥

⏰:10/02/18 20:11 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#704 []
 
「彼女は、首筋に
黒子がありました‥」

「‥やめとくれよ
もうあの子は居ないじゃないの」


頬を這った赤い爪
それに手を添えて微笑した

⏰:10/02/18 20:12 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#705 []
 
壱助さん‥やだよ
あたしが子供だから?
あたしじゃ満たされないから?


あたしは‥貴方がいいのに

⏰:10/02/18 20:12 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#706 []
 
「まぁ、まぁ」

そう言うと壱助さんは
赤い爪を優しく払いのけ
睫を伏せた


「‥壱助さん、抱いとくれよ」

甘ったるい声が響く


暴れすぎて食い込む縄
じりじりと痛みが熱さに変わる

⏰:10/02/18 20:13 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#707 []
 
悔しくて悔しくてたまらない

思いきり噛み締めると
布に滲んだ鉄分が
舌に流れ込んだ


「あの子と同じだろう?
あの子と何一つ変わらない‥
それとも何だい‥
あんな小娘を慕ってるとでも?」

挑発的に腕を首に絡ませて
紅に染まった唇を
壱助さんの首筋に寄せた

⏰:10/02/18 20:14 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#708 []
 
あの子って誰だろう‥
壱助さんの恋仲だった人?

あたしとは
恋仲でも何でもないのに
どうしてこんなに
気になっちゃうんだろう‥


壱助さんには
あたしなんか釣り合わない
わかってるのに

⏰:10/02/18 20:14 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#709 []
 
「香夜さんを‥ご存知で?」

微動だにせず唇だけ動かした

「まだまだ子供じゃないか‥
あんなのよりも‥ねぇ?」


そうだ‥
誰から見ても
あたしはまだ子供

壱助さんも
あたしのことなんて
相手にしてないかもしれない

⏰:10/02/18 20:14 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#710 []
 
蛇のように絡みつき
舌を頬に這わせた


「そうです、ね
確かに‥子供だ」


ほらやっぱり
期待して盛り上がってるのは
あたしだけなんだ

⏰:10/02/18 20:15 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#711 []
 
納得しようと
自らに語りかけても
溢れ出す涙は止まらない


今にも重なりそうな唇
思わず息をひそめた

「しかし‥」


―‥目の前で重なった

⏰:10/02/18 20:15 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#712 []
 
欲望をかき回すように
お互いを弄り
漏れる女の吐息と
冷静な顔つきの貴方

色がましいほどの接吻
耳にへばり付く音


その目にあたしは映らない
‥このまま消えてしまいたい

事が一気に重なりすぎて
自分を見失ってしまいそう

⏰:10/02/18 20:16 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#713 []



「ぎゃあぁああぁ!!!」


それは突然だった

いつの間にか二人は離れ
悲鳴を上げて悶える女の姿

ぺろりと舐めた壱助さんの唇には
真っ赤な血液

⏰:10/02/18 20:17 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#714 []
 
転がる女の口からも
同じ色の液体が滴る


「私は、好き者なもんで‥ね」


横目でその姿を見つめ
すぐさま腰を上げた

⏰:10/02/18 20:17 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#715 []
 
「げほっ‥んぐ
お前‥ふざけるな‥っ!!」

「連れを悪く言われては‥
流石に私も‥黙っちゃいない」
冷酷な視線が女を突き刺す


悲鳴に反応して
集まった男たちが刀を抜いた

「よくも‥貴様!!」

⏰:10/02/18 20:18 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#716 []
 
壱助さん‥殺されちゃう
逃げて壱助さん!!


しかしそれには目もくれず
すたすたと此方に向かってきた



もしかして‥最初から

⏰:10/02/18 20:18 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#717 []
 
「ふざけるのもいい加減に‥!!」

そう言った一人の男が
刀を壱助さんの背中に振り上げた


「どいつもこいつも‥
騒がしいです、ね」

⏰:10/02/18 20:19 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#718 []
 
―‥ドカッ!

そう言い終わる前に
すぐさま振り返り
余裕の回し蹴り‥

壱助さん‥貴方強すぎです


怖じ気づいた他の衆に
睨みをきかせると

「何時まで其処に‥居る気で?」

⏰:10/02/18 20:20 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#719 []
 
場に似合わないような
美しい手が襖を開けた

「おや、おや
随分と悪趣味な‥」

悪趣味って‥
好きで縛られてるんじゃない!!

ぼろぼろ涙を零すあたしの
口を塞いでた布を
簡単に解いて
ひょいと抱き抱えられた

⏰:10/02/18 20:20 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#720 []
 
「壱助さぁあんっ!」

「‥全く、だらしない」


呆れ顔に呆れ口調

結局はどんな対応でも
壱助さんなら許せちゃう

⏰:10/02/18 20:21 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#721 []
 
「‥どうしてだい?!」

急に背中から聞こえた
女の叫び声


「あの子が居なくなったら‥!
あの子が死んだら、
振り向いてもらえると
‥思っていたのに!!」

⏰:10/02/18 20:22 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#722 []
 
後ろを覗き込めば
狂気に犯された女が
あの真っ赤な爪で頭を掻きむしり
急に老いぼれたようで


‥まるで化け物


「あの子さえ居なくなれば‥
あんたはあたしの物だった
あの子が邪魔をしたんだ!!」

⏰:10/02/18 20:22 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#723 []
 
立ち止まり
真っ直ぐ前を見据えた壱助さんは
黙ってそれを聞いていた


「‥今度はその娘かい?!
どうしてあたしじゃ‥」

俯き滴る雫
こぼれた血液と混ざり合い
怪しく濁る

⏰:10/02/18 20:23 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#724 []
 
‥この人は
壱助さんを愛してたんだ

あの涙は
さっきあたしが流したものと
きっと同じ

憎しみや嫉妬
嫌らしい欲情に埋もれた
透き通ってたはずの心

なんだか
わかる気がした‥

⏰:10/02/18 20:23 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#725 []
 


「‥ちょいと、貴女は
履き違えてしまった」


ぽつりそう言い残して
振り向きもせずに、


―‥そして悲しい顔をした。

_

⏰:10/02/18 20:24 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#726 []
第二四?章 【血の涙、滲んで/後】
>>703-725
*。*。*。*。*。*
初めて修羅場に挑戦(´・ω・`)
暗い‥女って怖いw

あの子=番外編に出てきた
壱助さんが過去に愛した遊女
血が出ちゃったのは‥
壱助さんが舌噛んだからw←

ちょっと背伸びした作品
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/18 20:29 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#727 [笹]
【本編アンカー/1〜20】
>>699-700
【21〜】
>>631-652
>>654-674
>>676-697
>>703-725

【番外編アンカー】
>>702

⏰:10/02/18 20:31 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#728 []
 
誰かに対する愛情は
大きければ大きいほど

失った時の悲しみが
憎しみに変わる


人格をも変えてしまう
愛は何よりも暖かく
そして恐ろしくもある

⏰:10/02/21 18:50 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#729 []



あたしの母親と
あの遊女さんは
同じ顔をしてた気がする

酷く狂気におかされて
憎しみが溢れ出して‥
だけどその目の奥は
不釣り合いなほどに
孤独の悲しみに濡れ
未来に瞳を曇らせていた

⏰:10/02/21 18:50 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#730 []
 
愛されたいと思うのも
愛したいと思うのも
‥人間の本質で

愛する人がいて初めて
心の支えができる


母親を許すわけじゃない
妹を殺す事も許されない

だけど‥

⏰:10/02/21 18:51 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#731 []
 
「‥壱助さん」

「気になります、か」

あの表情が頭から離れない
ずしりとした感覚が
頭の先から流れ出す

「あの遊女さん‥、」

「妹を‥殺しました」

「‥双子の?」

「えぇ、」

⏰:10/02/21 18:51 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#732 []
 
「壱助さんは‥恐ろしいですね」

そう言うと
驚きもせずに
むしろ納得してるみたいに
ほくそ笑んで目を細めた


「それだけ‥
魅了してしまうんだもの」

「私が‥
殺めたような物です、よ」

⏰:10/02/21 18:52 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#733 []
 
壱助さんが悪いのかな
誰が悪い‥?

「誰も‥悪くないと思います」

「ほぉう‥」

壱助さんは
興味深そうにこちらを見つめ
楽に足を崩した


「愛されたいじゃないですか‥
誰だって」

⏰:10/02/21 18:52 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#734 []
 
だって‥
あたしは愛を知らないから
愛されたいって思います

愛しても見捨てられて
それでも無理矢理に追いかけて

あたしに向けられたのは
痛いほどの言葉たちと
たくさんの醜い傷

お父さんに対する母の愛情に
あたしは負けてしまったの

⏰:10/02/21 18:53 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#735 []
 
これが愛だと言うなら
もう誰も‥愛したくない


「香夜さん、」

それはとても優しくて
だけど厳しくて


「見返りを求めてしまえば
‥それは、ただの欲望だ」

「欲‥望?」

⏰:10/02/21 18:53 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#736 []
 
「愛されると言うことは
誰にとっても本望です、よ
しかし‥
此方が得するような愛などない」

得なんかしなくていい
ただ同じ重さのものが欲しくて

「初対面の人を愛せと言われて
愛せる人などいないでしょう
‥自然とそんなものは
生まれるもので、香夜さん」

⏰:10/02/21 18:54 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#737 []
 
だから何だと言うの?


「相手もまた‥然り
愛してと言ったって
‥無理なものは無理です、ぜ
偽りとなれば
また話は別ですが‥」

「運命ってことですか?」


運命‥そんな不確かなものを
壱助さんは信じないでしょう

⏰:10/02/21 18:54 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#738 []
 
「自らが与え続ければいい
‥それだけの事、ですよ」


壱助さんは色男だから
そんな事が言えるんじゃないのか

与え続けて成果がなければ
疲れてしまうじゃない

⏰:10/02/21 18:55 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#739 []
 
「お律さんが‥
私を慕ってくれていた
それは自然と起こった感情で
自らの自由な思いです。

しかしそれを私にも求めて‥
都合のいい話じゃあないですか

関係のない彼女の自由をも犯し
‥それが愛だとでも?」

貴方は何処までも大人で

⏰:10/02/21 18:56 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#740 []
 
「与えれば、必ず与えられる
そんな保証が此の世に有るなら
‥ソレは偽りと化す

彼女はちょいとばかり
‥求めすぎた」


いつもいつも
何かを教えてくれる

⏰:10/02/21 18:57 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#741 []
 
「分からないからこその
本物だと思うのですが、ね」

「ソレが本物なら‥
どれだけ辛くても‥そっか」


辛くても耐えられる
耐えられなくなった時
ソレは偽りに変わる

⏰:10/02/21 18:57 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#742 []
 

「時に泣き、時に憎しみ
‥それが浮き世と言うもんで
誰かの幸福が
誰かの不幸になる‥」


じゃあ、あたしが
辛い思いをした時に
誰かが幸せになってたのかな

⏰:10/02/21 18:58 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#743 []
 
他人の幸せを
願える人になれたなら

自分の幸せを
そっちのけにできたなら


‥それが一番の幸せ
偽りのない本物が手に入る

⏰:10/02/21 18:58 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#744 []
 
『あの子さえ居なくなれば‥!!』

本物の愛を見つけて

"貴方が幸せなら其れでいい"

‥そのことに気付けたなら


「不幸は幸せに‥
変わるもんです、よ」

_

⏰:10/02/21 18:59 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#745 []
第二五章 【与え続けて】
>>728-744
*。*。*。*。*。*
趣旨がよくわかりません
またスランプ←

とりあえず
笹の恋愛観を詰め込んでみました
人にはきれい事だって
よく言われますが(´・ω・`)

相手を変えたかったら
自分が変われというやつです
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/21 19:03 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#746 []
 



「それより‥!!」

「まだ、何か」

貴女は素直な娘だと
思うのですが‥

ちょいと怒った様子で
此方に詰め寄ってきた

ふわり、香る貴女

⏰:10/02/21 19:04 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#747 []
 
「何ですかあれ!!」

大人の色気とは程遠い
首筋のあどけなさ
自然に染まった唇の色が
何とも‥柔らかく


「あれ、とは?」

じっと睨みをきかせても
今回ばかりは
怖じ気付かずに‥強気、と来た

⏰:10/02/21 19:05 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#748 []
 
「さっき遊女さんに‥」

「はい、はい
近頃、あのような行為からは
疎遠だったもので‥
ついつい‥力んでしまい」


くすっと鼻であしらえば
不満そうに顔をしかめる

⏰:10/02/21 19:05 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#749 []
 
確かにアレは
意図的なもので
思いの外、血が出てしまい

しかし
一体‥何だって言うんで?


「そうじゃなくて!!」

随分と今日は
はっきりと物を言う

⏰:10/02/21 19:06 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#750 []
 
私に睨みをきかせるとは‥
何様のおつもりなのか、ねぇ


「誘惑に負けたんですか?!」

「‥誘、惑」


あぁ‥なるほど、ねぇ

⏰:10/02/21 19:06 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#751 []
 

「妬いていらっしゃるんで?」


貴女は本当に
‥可愛らしい人だ


しかし、何時もは此処で
違うと頬を染めて声を張る

⏰:10/02/21 19:07 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#752 []
 
「そりゃ‥妬きますよ」

「ほぉう」


どうしたもんか‥ねぇ
珍しい話だ

一向に目を逸らそうとせず
潤んだ瞳の色に魅了され

‥自分に呆れるもんで

⏰:10/02/21 19:07 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#753 []
 
「よし、よし」

誤魔化そうと頭を撫でても
機嫌は直らず

‥しぶとい、ですね


「子供扱いしないでくださいぃ!」

そんなつもりは
さらさら無いのですが‥

⏰:10/02/21 19:07 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#754 []
 
子供を相手にするほど
暇じゃあない


「では、何ですか
あのように‥されたいとでも?」


言い寄られては立場がない

やれやれと睫を伏せれば

⏰:10/02/21 19:08 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#755 []
 


――――‥


やられだもんだ


_

⏰:10/02/21 19:08 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#756 []
 
押し当てられた唇
随分と‥強引な方だ

盛りの猫ですか、貴女は


堅く閉じられた瞼が
時折ぴくりと動く

数秒押し当て満足したのか
急に離して頬を染めた

⏰:10/02/21 19:09 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#757 []
 
「‥消毒ですかい?」

羞恥に溢れた熱を
瞳に目一杯溜めて
不満そうな唇


「‥下手くそ」

「へ?」

そう吐き捨てて含み笑い

⏰:10/02/21 19:09 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#758 []
 
香夜さん‥
あんたは本当に
子供じみた事をするもんだ


「ちょいと‥
大人になったらどうです、か」


‥あんたが悪い

⏰:10/02/21 19:10 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#759 []
 
その不満そうな唇に
思い知らせてやりましょう、か


「ふぁっ」



漂う桃色に、本日は‥身を任せ。

_

⏰:10/02/21 19:10 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#760 []
番外編 【口付けて、桃色】
>>746-759
*。*。*。*。*
思い話が続いてたのでw
一応前話の続きなので
本編にしようか迷ったんですが
やっぱり2人には
いつまでも
もどかしくあってほしいから←

どんな状況でも
壱助さま冷静wそしてS ^p^
香夜ちゃんの素直な感じを
書いてみましたw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/21 19:15 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#761 []
【本編アンカー/1〜20】
>>699-700

【21〜】
>>631-352
>>654-674
>>676-697
>>703-725
>>728-744

⏰:10/02/21 19:19 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#762 [笹]
【番外編アンカー】
>>297-316
>>366-393
>>450-470
>>537-557
>>746-759

⏰:10/02/21 19:20 📱:D905i 🆔:lVW6ewV2


#763 []
 



春になって
辺りの木々が鮮やかになる
新芽が生えて鶯が鳴く

暖かな空気と
鼻をくすぐる梅の香り


「‥香夜さん」

いろいろあったけど
壱助さんとは
一応仲良くやってる‥つもり

⏰:10/02/26 16:21 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#764 []
 
相変わらず
意地悪してくるけど‥

「何ですか?」


突拍子もないことを言う
何を考えてるのかは
未だによくわからない

「行きます、よ」

とりあえず
肝心なところを言わないのが
壱助さん流なんだと思う

⏰:10/02/26 16:22 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#765 []
 
「行くって‥何処へ?」

そんなあたしの質問には
耳も傾けず

流れるような細い指が
腕に絡まる


どきっとしてしまう
恐ろしいほどの貴方の色気

⏰:10/02/26 16:23 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#766 []



怒ってるわけじゃないみたい
‥売られることはなさそう


いつもよりゆっくりと
下駄の音を緩くして
艶容な口元が柔らかい

だからと言って
笑ってるわけでもなく
いつもの仏頂面

⏰:10/02/26 16:24 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#767 []
 
「もう春ですねぇー」

小鳥のさえずりに耳を傾ける


「えぇ‥そのようです、ね」


春が嫌いなのか何なのか
ちっとも嬉しくなさそう

⏰:10/02/26 16:24 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#768 []
 
「壱助さんは
四季で一番いつが好きですか?」

そう問えば
横目でちらり此方を覗く


「‥貴女は?」

繋ぎ目から伝わる温かさ
春はさすがに
冷え性も治るのかな?

⏰:10/02/26 16:25 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#769 []
 
「あたしは春が好きです!!」

だから今こうして
外を歩いているのが楽しい


「‥ほぉう
それはまた‥何、故?」

珍しく壱助さんが
あたしに興味をしめしてる

⏰:10/02/26 16:25 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#770 []
 
春だから?暖かいから?
そんなことが理由なら
壱助さんはとても単純な事になる

「ぽかぽかして暖かいし、
ほら!小鳥のさえずりって
聞くと何だか幸せになるし!!
‥あとは、お花が綺麗っ」


「‥へぇ」

⏰:10/02/26 16:26 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#771 []
 
‥自分から聞いておいて
そりゃぁないよ‥壱助さん

いつもと同じ無関心な声が
たった一言そう告げる


「で、壱助さんは?」

少し歩幅を大きくして
顔を覗き込む

⏰:10/02/26 16:26 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#772 []
 
「ご存知ですかい?」

「‥何を?」

「春の陽気にさそわれて
動物たちが活動を、始める」

「だからいいんですよ春!!
賑やかじゃないですかぁっ」



「ついでに‥変質者も、ね」

⏰:10/02/26 16:26 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#773 []
 
つり上がった口元と
冷たい視線が訴えた

「あたしの何処がっ‥
変質者なんですかぁっ?!」

「おや、おや
わからないとは‥可哀想な方、だ」


吐き捨てた言葉がぐさり

意地悪!意地悪ーっ!

⏰:10/02/26 16:27 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#774 []



もうだいぶ歩いて街から外れた

人がめっきりいなくなり
真っ青な空が一面に広がる


「んぅー‥」

ぷうっと頬を膨らませる

正直歩き疲れたし
何処へ向かってるかもわかんない

⏰:10/02/26 16:28 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#775 []
 
ただただ手を引かれる
少しだけ心細い


「‥」

「んわっ!!」

急に壱助さんの足が止まり
背中に顔が埋まった

鼻‥痛い

⏰:10/02/26 16:28 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#776 []
 
「急に止まんないでくださ‥」



―‥ガンッ!!!



目の前の鮮やかな緑が歪み
一気に真っ暗になった

⏰:10/02/26 16:28 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#777 []



ふわり鼻をくすぐる
体の中が色づくような
華やかな梅の香り


「痛たた‥ったぁ‥あぁ?!」


頭を抑えながら体を起こせば
一面に広がる梅の花

⏰:10/02/26 16:29 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#778 []
 
柔らかな赤い花
さわやかな白い花
愛らしい桃色の花


‥天国?


そう疑ってしまうほど
こんな景色‥見たことない

⏰:10/02/26 16:29 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#779 []
 
「‥石頭」

「へ?」


隣から聞こえたその声は
不機嫌そうな壱助さん

「ちょいと踵が‥
痺れてしまいやした、よ」

胡座をかいて
右の踵を軽くさすりながら
呆れたようなため息を漏らす

⏰:10/02/26 16:30 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#780 []
 
ってか‥踵って
踵落とししたんかいっ!!!

どうりで頭が
割れそうに痛むわけだ


「壱助さん‥此処‥」

いつもならそこで
"酷ーい!!"なんてわめくのに

不思議とそんな思いが
この景色の中に吸い込まれていく

⏰:10/02/26 16:30 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#781 []
 
「冬が‥好きでしたが、ね」


長い睫を伏せて
膝に落ちた花びらを愛でる


なんだか一つの作品みたいに
壱助さんは
こんな素敵な空間に
あっという間に溶け込んでしまう

⏰:10/02/26 16:31 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#782 []
 
「今は、春‥ですかね」

「春‥春やっぱりいいですよね!!」


初めて意見が合った気がする

春の力は素晴らしい

⏰:10/02/26 16:31 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#783 []
 
「しかし、そのうち‥」

純白の指で摘んだ
真っ赤な花びらをじっと眺めて


「夏が好きに‥なります、よ」


ふっと息を吹きかけると
踊るように舞った


‥―梅の香りに誘われて

⏰:10/02/26 16:31 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#784 [笹]
第二六章 【春、訪れて】
>>763-783
*。*。*。*。*。*
最近暖かいので春ネタ ^^*
2人のお出かけが見たいと
リクを貰ったんで参考に!
これはお出かけなのかww?

2人らしい話っす
最後の壱助さんの台詞の意味は
‥想像してください←
ヒント:隣の香夜ちゃん w
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/26 16:38 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#785 [笹]
【本編アンカー/1〜20】
>>699-700

【21〜】
>>631-352
>>654-674
>>676-697
>>703-725
>>728-744
>>763-783

⏰:10/02/26 16:39 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#786 [笹]
【番外編アンカー】
>>762

⏰:10/02/26 16:40 📱:D905i 🆔:ABxgeLMY


#787 []



壱助さんは早起きだ
とんでもなく早起きだ


目が覚めたらいつも
着物をきっちり着付けて
正座をしてお茶を啜ってる

もちろん激痛を伴う
顔面平手打ちの目覚ましを
あたしに喰らわせてから‥

⏰:10/03/08 17:28 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#788 []
 
だけど今日は‥
すっと目が覚めた

痛みはない。

春の柔らかな風が頬をくすぐった


「おはよ‥ございます」

⏰:10/03/08 17:30 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#789 []
 
呂律の回りきらない
寝ぼけ眼でそう言った

珍しく着くずした着物
胡座をかいてぼうっとしてる


まさか‥寝起き?

「随分と‥早いもんだ」

⏰:10/03/08 17:31 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#790 []
 
よく見ればまだ日は昇りかけ
太陽の光がこちらに差し込む


「あぁ‥うんと
何か目が覚めちゃって」

胸元を整え髪を結い直せば
どことなく‥
穏やかな表情の壱助さん

⏰:10/03/08 17:31 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#791 []
 
「おや、おや」

眠そうなその目は
とろんと睫で覆われ
無防備なまでの唇に
あたしの胸が鳴いた


どうしてこうも‥
いちいち色気を振りまくのか

いつだってあたしの鼓動は
忙しなく遊ばれる

⏰:10/03/08 17:32 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#792 []
 
 
「夢でも‥見ました、か」

「‥夢、あぁ‥うぅん」


誤魔化すのは無駄だと
言わんばかりに
こちらに向けられた鋭い視線

「い‥壱助さんこそ!!」

⏰:10/03/08 17:32 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#793 []
 
壱助さんこそ何だと言うのかしら
あたしの口は‥もう

とろけそうなあたしの頭の中は
まだまだ目覚めない様子


「何、か」

にこっとつり上がった口元に
応じるように瞳が笑う

⏰:10/03/08 17:33 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#794 []
 
壱助さんが‥わ、笑ってる


相変わらず美しい手で
膝の上に頬杖をついて
うっすら浮かべた笑みを
惜しげもなく向けられた


何を企んでるのかしら‥?

「え‥ええっと」

⏰:10/03/08 17:33 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#795 []
 
残念ながら寝起きの頭は働かず

‥もとから
働かす頭もないけれど


「‥ゆ、夢!
見たんじゃないですか?!」

訳の分からぬ発言を
壱助さんは軽く
クスッと鼻であしらった

⏰:10/03/08 17:34 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#796 []
 
"壱助さんこそ
夢見たんじゃないですか?!"

うん‥意味がわからない


「ゆ、め‥
そうですねぇ‥見ました、ね」

珍しくあたしの問いかけに
まともに答えた‥!!

おかしい‥怪しいわよ

⏰:10/03/08 17:35 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#797 []
 
ゆっくり昇る光が
壱助さんの頬を照らした

透き通るような肌
もう、恐ろしいくらい‥


「どんな夢?」

前のめりになり
興味津々に目を輝かせてみた

だって壱助さんが
自分の内を語るなんて
あり得ないことだから

⏰:10/03/08 17:35 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#798 []
 
「ほぉう‥気になります、か」

勢いで突き出した顔は
案外大胆で‥


春風に揺られて
壱助さんの香りも運ばれてきた

⏰:10/03/08 17:36 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#799 []
 
意地悪そうに
視線で体を撫でられて

急に帯びてきた熱を
誤魔化そうとまばたきを多めに

"はい"と頷けば
満足げに笑った

⏰:10/03/08 17:36 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#800 []



それから少々の沈黙
なかなか開かない口


え‥まさか
このまま言わないつもり?

らしいと言えばらしいけど‥

⏰:10/03/08 17:37 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#801 []
 
「そうです、ねぇ」

「早く教えてくださいよぉ!!」

「香夜さんは‥どんな?」


正座をして急かすあたしに
余裕たっぷりにそう言った

話をそらすのが本当に上手い

⏰:10/03/08 17:37 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#802 []
 
「‥言えません」

昨晩みた夢は壱助さんに‥
そんなこと
死んでも言いたくない!!


「私に逆らう、と?」

卑怯だ‥壱助さん

⏰:10/03/08 17:38 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#803 []
 
「絶対絶対絶対!!
絶対言いませんっ!!」

勢いでそう吐き捨てて
畳を押し返し立ち上がった


くるりと背を向ければ

‥ガシッ


急に冷たい感覚が
手首を纏って

⏰:10/03/08 17:38 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#804 []
 
‥グイッ


下にかかる力に負けて
情けなくも
ふらりと呆気なく崩れてしまった


「んわっ‥」

すとんと腰を落としたとこは
壱助さんの胡座の中

⏰:10/03/08 17:39 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#805 []
 
これ‥もしかして


「これは、これは」

ぎゅうっと後ろから首を抱かれ
耳元に迫る低い声


これって‥

高鳴る胸を抑えようと
そっと呼吸をした

⏰:10/03/08 17:39 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#806 []
 

「正夢です‥ね」



そう囁いた声が
電気になって頭に流れて


昨晩の夢と溶け合った‥

_

⏰:10/03/08 17:40 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#807 []
番外編 【夢、重なって】
>>787-806
*。*。*。*。*。*
久しぶりの更新が
まさかこんなぐだぐだになるとは
思ってもなかった(゚-゚)アァ
しかも番外編w

お互い見た夢が同じで
壱助さんが無理やり←
正夢にしちゃったってゆう‥
壱助さんは香夜ちゃんが
可愛くて可愛くて仕方ないw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/08 17:44 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#808 []
【本編アンカー/1〜20】
>>699-700

【21〜】
>>631-651
>>654-674
>>676-697
>>703-725
>>728-744
>>763-783

⏰:10/03/08 17:47 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#809 [笹]
【番外編アンカー】
>>297-316
>>366-393
>>450-470
>>537-557
>>746-759
>>787-806

⏰:10/03/08 17:48 📱:D905i 🆔:6zJg1U3A


#810 []



「壱助さんって‥」

手にした紙に
ずらりと並ぶ品名と値段

それを指でたどって
あっちこっちに彷徨わせ

「お蕎麦とうどん‥
どっちが好きですか?」

"うーん"と唸りをあげ
眉間に皺を寄せて問った

⏰:10/03/09 14:37 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#811 []
 
目の前に座る
問いかけた貴方様は
聞く耳も持たず


「おや、おや
此処にこんなお美しい娘さんが
いたとは‥ねぇ」


色めいた声で
娘さんにご挨拶

⏰:10/03/09 14:38 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#812 []
 
これは口説いてるんじゃない
ただの挨拶だそうです
色男、曰わく


「‥ったくぅ」

むかむかする下腹部

いらいらを人差し指に込めて
カツカツと机を叩く

⏰:10/03/09 14:38 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#813 []
 
「やだぁもうっ
壱助さんったらぁ〜」

「事実を‥述べたまで、ですよ」


‥いらいらいら

頬を赤く染めた娘さん
‥別に
娘さんを恨むわけじゃないけど

⏰:10/03/09 14:39 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#814 []
 
って言うか誰でも
こんな色男に言われたら
顔赤くするだろうけど‥


んぅー‥やきもち?まさか


「壱助さん、今日は
何になさいますの?」

「そう‥ですねぇ」

⏰:10/03/09 14:39 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#815 []
 
何なの?
壁があるの?ここには

全くこちらに目も向けず
いや‥わざとらしいかも


「今ならお蕎麦が‥
打ち立てですのよ?」

にこり笑った娘さん
薄い朱色の着物が躍る

⏰:10/03/09 14:40 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#816 []
 
「では‥其れで」

「あたしも!!お蕎麦にします!!」

重ねるようにそう言えば
"いたんです、か"と
嫌みったらしく
惚けた顔で呟かれ‥


‥いらいらいら

⏰:10/03/09 14:41 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#817 []
 
「あのぉう‥壱助さん?」

恥じらうようにもじもじして
娘さんが声をかけた

「この後って‥」


‥あたしが居るのに
よくそんなこと言える

遠慮して小声にしたのか
何なのかわからないけど
聞 こ え て ま す か ら !!

⏰:10/03/09 14:41 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#818 []
 
「えぇ‥構いません、よ」

あたしの存在はなんなのか
消されてるのか
女に見えてないのか‥


ここまでくると切ない

楽しそうに話す二人が
遠くにぼやけて見えた

⏰:10/03/09 14:41 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#819 []



‥カツカツ

「先ほどから‥」

‥ズズズズッ

「ご機嫌が、随分と斜め‥」

‥ゴクッゴクッ

「です、ねぇ」

⏰:10/03/09 14:42 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#820 []
 
「ぷはぁあぁっ!!
水!水くださーい!!」

湯飲みを机に打ちつけて
がむしゃらに声を張った


「別に!!いつも通りですぅ」

あたしは
すぐ態度に出てしまう
本当に子供‥

これじゃあいつになっても
相手にされないや

⏰:10/03/09 14:43 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#821 []
 
「‥あぁああ!!
なんでわさび入れるんですか?!」

ちょっとよそ見をすれば
お猪口に入った鮮やかな緑色


何事もなかったかのような
壱助さん‥

⏰:10/03/09 14:43 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#822 []
 
「好き嫌いは‥良くないです、ぜ」

まるで‥親です


「わさび‥わさびぃ‥」

考えるだけで
鼻の奥がつんとする

独特の刺激が苦手

⏰:10/03/09 14:44 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#823 []
 
顔をしわくちゃにして
濁った汁を箸でかき回す

まだお蕎麦残ってるのにぃ‥


「欲しがりです、ね」

「いやぁああぁあっ!!」

壱助さんは
それはもうご丁寧に
自分の余りの天敵を
惜しげもなく沈ませた

遂にいらいらは頂点に達した

⏰:10/03/09 14:44 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#824 []


鼻の奥をひりひりさせて
蕎麦屋を後にした

熱い涙が止まらない
わさびなんて大嫌い


潤んだ目で見上げれば
貴方の隣に娘さん

「香夜さん‥、
ちょいと出掛けて来やすんで」

⏰:10/03/09 14:45 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#825 []
 
「あた‥あたしも!
約束が‥あ、あるんです!!」

とんでもない嘘を吐く
意地っ張りは直らない


「ほぉう‥誰、と」

試すような視線
艶容な口元がつり上がる

しなやかな手を袖に入れ
腕組みをした壱助さん

⏰:10/03/09 14:45 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#826 []
 
その場しのぎのはずだった
大した理由もなく‥
後から説明すれば済むと思った


とっさに通りすがりの
男性の腕をつかみ


「こ‥この人と!!」

⏰:10/03/09 14:46 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#827 []
 
そう言ってしまったことが



‥災難の始まりだった。



噛み合ったはずの歯車の
歯がひとつ、欠け落ちた

⏰:10/03/09 14:47 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#828 []
第二七章 【破片、散って】
>>810-827
*。*。*。*。*。*
やっとこ本編です
夢で見たことをヒントに
何とか展開していけそう‥←

意地っ張りな香夜ちゃん
大人気ない色男壱助さん

素直になれば
簡単に寄り添えるのに´・ω・`)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/09 14:53 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#829 []
【本編アンカー/1〜20】
>>699-700

【21〜】
>>631-651
>>654-674
>>676-697
>>703-725
>>728-744
>>763-783
>>810-827
最終更新*3月9日(27章)

⏰:10/03/09 14:56 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#830 [笹]
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/09 14:57 📱:D905i 🆔:7npRrRVQ


#831 []



だんだんと遠くなる
あたしたちの距離


「え‥?あの‥」

見上げれば戸惑う男性

こんな痴話喧嘩に
巻き込まれてしまっては
当然の反応

⏰:10/03/11 13:34 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#832 []
 
その男性は
年齢で言えば30才前半くらい
優しい雰囲気の‥


「ほぉう‥」


ぴくりと眉を上げ
品定めするように視線を送り
最後の一突きと言わんばかりに

⏰:10/03/11 13:35 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#833 []
 
「その小娘は‥
人並み以下ですが、ね
実に自虐行為を好みます故
‥痛いのがお好きです、ぜ

見かけによらず破廉恥ですから
たっぷりと遊んで‥くだせぇ」


にこっと怪しく微笑み
あたしの隣の男性に告げた

⏰:10/03/11 13:35 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#834 []
 
「な‥そんなことないっ!!」


顔を真っ赤にして
否定した先には二つの背中

寄り添う娘さん
壱助さんの下駄の音が
遠く遠く‥消えてった


上手く行かない‥
今日は厄日なのかもしれない

⏰:10/03/11 13:36 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#835 []




ちょいと、
意地が悪すぎた‥か


ぼうっと空を見上げれば
灰色に染まり光が遮られ

隣に座る娘
慣れないような化粧に
顔を白々とさせ
不釣り合いな紅が一層‥

⏰:10/03/11 13:36 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#836 []
 
「壱助さん?」

貴女以外の娘に
名前を呼ばれるのは
あまり慣れていないもんで

‥居心地が悪い、


「何、か」

目配せすれば
いつの間にか縮まった距離

⏰:10/03/11 13:37 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#837 []
 
欲しいものなど‥
ないんですが、ね


「"あの子"のこと‥
慕っていらっしゃるの?」

さぁ‥
今まで出逢った方々と

違いますからね、香夜さんは

⏰:10/03/11 13:37 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#838 []
 
「さぁ、ね」

「それなら‥」


随分と積極的だ‥

華奢な手が此方の手を捕らえ
自らの胸元に添えた

「おや、おや」

「私を‥見て頂けます?」

⏰:10/03/11 13:38 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#839 []
 
そのようにされても
何も‥

私の心は何処へやら
つまらぬ話です、よ


「そうです、ね
今夜は‥そうしましょう、か」

_

⏰:10/03/11 13:38 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#840 []
 
空になった体が
娘の小さな体に覆い被さる

嬉しそうにそして恥じらい
睫を伏せて身を任せ
素直に倒れた朱色の着物


「ずっと‥夢でしたの」

この笑みは
私に向けられたものなのか

⏰:10/03/11 13:39 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#841 []
 
はたまた‥
香夜さん、
貴女に勝ったという
嫌らしいもの‥なのか

何だか‥わかりゃしない

仕込んできたかと言うくらい
緩く結ばれた帯を
するりと解く
手慣れた自らの指に

この上ない嫌悪感を抱いた

⏰:10/03/11 13:40 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#842 []
 

欲しいものなど
‥ないんですが、ね


触れた肌、濡れた吐息

何を頼りにすれば‥良いのか


強請る声、汚れた水音

貴女の透明感が身に沁みる

⏰:10/03/11 13:40 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#843 []


今宵は満月

隣で寝息を立てる娘に
伸ばした腕をするりと抜き

そのまま布団を抜け出した


雑に浴衣を羽織り
力強く帯を締める

体に染み着いたような香りを
かき消すかのように
背中を夜風に当てた

⏰:10/03/11 13:41 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#844 []
 
「―‥、」

久々に煙管に手を伸ばし
全てを洗い流そうと
煙を体に取り込んで


‥帰ってこない、と来りゃぁ

"やられっちまった"‥か


得体の知れない感情を
煙に混ぜて満月を隠した

⏰:10/03/11 13:42 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#845 []
 
一番に恨んでいるのは
‥己の身、ですがね

空中分解したそれを
未だ直視できないでいる


「貴女を‥
濁らせたく、ない故に」


どうにもこうにも

‥気付いてはならぬ思いが先回り

⏰:10/03/11 13:44 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#846 []
第二八章 【煙に、染めて】
>>831-845
*。*。*。*。*
壱助さんが自分を見失ってます
どこまでも冷静だけど
感情的になるべきとこでも
冷静なのがもどかしい(゚-゚)

好いてる方には
簡単に手を出さない主義です、よ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/11 13:49 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#847 []


「あの‥
ご迷惑をお掛けしてしまい
本当に申し訳ありませんでした」

額を畳にこすりつけ
深々とお詫びをした


しかし此処は
男性の住まいらしき所

‥やっぱりそんな
一筋縄ではいかないかな?

⏰:10/03/11 13:50 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#848 []
 
壱助さんが
あんな破廉恥なこと言わなければ


はぁ‥。

頭に浮かぶ貴方の隣に
あの娘さんが寄り添って
少し‥不愉快なのです

⏰:10/03/11 13:51 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#849 []
 
「頭を御上げください
そんな、お気になさらず‥」

見た目通り優しい方で
暖かくて柔らかい

目尻に出来た笑い皺が
人の良さを引き立てた


「本当に‥
あたしのこの性格のせいで」

⏰:10/03/11 13:52 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#850 []
 
お詫びしようにも
壱助さんがそばにいないあたしは
無能で一銭も持ってない

ただ頭を下げるしかできないのだ


「これも何かの縁ですから‥」

初めて会った気がしない
其れほどの安心感

⏰:10/03/11 13:52 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#851 []
 
「あたし‥香夜と申します!!
お金もないし、色気もないけど
お裁縫は得意なので‥
お着物の解れなど有りましたら
‥な、何なりと!!」

案の定
男性からはクスッと笑い声


本当にあたしって役立たず
俯き指で畳の網目をなぞった

⏰:10/03/11 13:53 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#852 []
 
「自分は"幸太郎"と申します
年は‥香夜さんより
一回りくらい上です、たぶん
不器用なもんで‥
裁縫は苦手ですね」

柔らかい笑顔を浮かべた

一回りくらい上なら
お父さんと同じくらいかな‥
生きてたら‥、
幸太郎さんと同じくらい

⏰:10/03/11 13:53 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#853 []
 
催眠術にかかったように
頭の中がぽーっとした

もう与えられることのない
父からの愛情を‥
今目の前に見てしまう


「今は、一人暮らしですが‥
自分には妻と娘が居ました。」

何故かその時胸が泣いた

⏰:10/03/11 13:54 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#854 []
 
幸太郎の姿が
亡き父と重なってしまった


隠れていた寂しさが
奥の方から湧き上がる

「もう、十年も前ですか‥
三人で暮らしていた住まいが
‥火事に遭いまして
全焼でした、
真っ黒な炭になった木材が
ぼろぼろと崩れていく光景は
本当に‥見てられませんでした」

⏰:10/03/11 13:54 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#855 []
 
遠くの過去が
最早思い出となってるのか
ほんのり浮かんだ悲しげな笑みが
胸を突き刺した


「自分は丁度出掛けてまして‥
帰ってきたら‥"それ"だけ。
逃げ切れなかった妻と娘は‥」

⏰:10/03/11 13:55 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#856 []
 
その現場に
居合わせたわけじゃないのに
鮮明に目の前に広がる
悲惨な光景

目を、耳を塞ぎたくなるような‥


「‥何故、自分だけ
助かってしまったのか、
そう‥何度も思いました。」

⏰:10/03/11 13:56 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#857 []
 
「家族が目の前から
急に‥いなくなるのは
つらいですよね、本当に」


悲しみが極限を超えて
無になった時

この上ない恐怖が襲う

⏰:10/03/11 13:56 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#858 []
 
「娘は‥生きてたら
貴女と同じくらいでした。
とても天真爛漫でね、
優しくて、気配り上手で‥」


『香夜は優しいなぁ!!』

『香夜は気配り上手だ!!
いい嫁さんになれるぞっ』

『香夜‥』

⏰:10/03/11 13:57 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#859 []
 

「おと‥さん」


正気を失った
自分でもわかってる

だけど気持ちが飛んでいく


あたしが求めてたのは
単なる愛情じゃない

‥お父さんからの愛情なんだ

⏰:10/03/11 13:57 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#860 []
 
「香夜さん‥?」

幸太郎さんの声が
やんわりと耳をすり抜け
穏やかな思い出と溶け合った


お父さんは
子供みたいな人だった

あたしと一緒に騒いで
‥泣いて笑って

⏰:10/03/11 13:58 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#861 []
 
だけど
包み込むような安心感

叱られても
その後ぎゅうっと抱きしめて‥

『「‥よしよし」』


そう言って‥くれた

⏰:10/03/11 13:58 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#862 []
 
完全に溶け合った
寂しさに漬け込んだ甘い錯覚


優しく幸太郎さんに抱き締められ
大きな手で頭を撫でられた


忘れかけてた感覚が
ふいに蘇る

お父さんが‥生き返ったみたい

⏰:10/03/11 13:59 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#863 []
 

「‥ッ‥う、さん」


流れ行く大人ぶった幼かった心


‥溢れて、求めて

⏰:10/03/11 13:59 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#864 []
第二九章 【甘い、錯覚】
>>847-863
*。*。*。*。*
幸太郎さんと亡き父の姿が
重なってしまった香夜ちゃん
催眠術にかかったように
不思議と吸い込まれていく


あたしの居場所は‥此処?
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/11 14:03 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#865 []
【本編アンカー/1〜20】
>>699-700

【21〜】
>>631-651
>>654-674
>>676-697
>>703-725
>>728-744
>>763-783
>>810-827
>>831-845
>>847-863
最終更新*3月11日(28、9章)

⏰:10/03/11 14:05 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#866 [笹]
 
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/11 14:06 📱:D905i 🆔:dGcWPyzM


#867 []



夜が明けた

幸太郎さんに抱かれたまま
いつの間にか寝ちゃった‥

「あ‥、」

「おはようございます
朝ですよ」

⏰:10/03/14 20:05 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#868 []
 
顔面が痛くない朝が
もう物足りなくなってる

壱助さん‥


「あの‥」

「あの方の元へ
帰ってしまいますか?」

少し寂しそうな幸太郎さんの表情
下がった眉に胸が痛む

⏰:10/03/14 20:05 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#869 []
 
『「‥香夜」』


絡まった腕が
ぎゅっと締め付けて
なぜか目の奥が熱くなった

幸太郎さんの声が
耳の奥を抜けて

記憶の隅のお父さんの声と重なる

⏰:10/03/14 20:06 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#870 []
 
‥どうしよう
やっぱりあたし、おかしい


混じり合った灰色が
あたしの中を蝕んで‥


「自分の元で‥暮らしませんか?」

例えばそれが
甘い嘘だとして‥

⏰:10/03/14 20:06 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#871 []



「はぁ‥」

なぜか妙に汗をかく
じわじわと熱を帯びる体を
ばしんと叩いて引き締めた


‥娘さんの下駄はない
もう帰ったのかな


「‥ただいまぁ」

⏰:10/03/14 20:07 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#872 []
 
ゆっくりと襖を開ければ
いつも通りの光景

胡座をかいた膝の上に
華奢な細い手で頬杖て
ただぼうっと外を眺める


少しだけ
心配しててほしくて
貴方の忙しない姿が見たかった


もう‥今日で、

⏰:10/03/14 20:07 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#873 []
 
「どう‥されたんで?」

立ちすくむあたしに
いつもの口調で問った

壱助さんが考えてること
‥今でもわからない


一緒にいた時間は
長いはずだったのになぁ

空っぽの時間、虚空

⏰:10/03/14 20:08 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#874 []
 
「‥壱助さん」

「ちょいと‥
腰くらい、下ろしやせんか?」

目の奥の一番柔らかいとこを
一突きするような
鋭い視線に肩をびくつかせた


あの娘さんとは
寝てしまったんだろうか

⏰:10/03/14 20:08 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#875 []
 
恋仲でもないのに
妬いてしまってる‥


だけどあたしが求めてたのは

‥お父さんの、
幸太郎さんの温もり

⏰:10/03/14 20:09 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#876 []



目を魚のように泳がせて
落ち着きを無くし‥

元から落ち着きがないと言えば
否めませんが、ね


あの男に抱かれちまったか
翻弄された‥と

⏰:10/03/14 20:09 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#877 []
 
「あの娘さんは‥?」

「もう、帰りましたぜ」

「そうじゃなくて‥」

言いたい事など
最初からわかっている

「"抱いた"」

そう呟けば聞く耳も持たず
体をびくつかせ着物を握りしめた

⏰:10/03/14 20:10 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#878 []
 
「‥と言えば、
どう‥されるんで?」

結局信じたら負けで
無意識のうちに貴女に‥
身を委ねてたのかもしれない


「‥あたし、えっと」

その戸惑いが唇の微妙な動きに
こんなにも‥
惑わされてしまう、とは

⏰:10/03/14 20:10 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#879 []
 
私は何時からこれほど
弱っちまったのか‥ねぇ


「抱いちゃ‥居ませんが、ね」

指に絡みついた粘液
耳にへばりついた水音

どんなに強請られても
どうにもならなかった

最早‥末期、ですかね

⏰:10/03/14 20:11 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#880 []
 
「え‥」

ただ貴女を困らせたかった
素直になれやしないもんで

こう意地悪くすることが
私にとっては貴女を引き止める
最高の手段、でしたから


ばつが悪そうに眉を下げた

⏰:10/03/14 20:11 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#881 []
 
離れると言うなら
‥止める気はない

しかし、どうも其れでは‥


「壱助さん‥ごめんなさい」


潤んだ目を無理やり拭い
急に立ち去ろうとした

⏰:10/03/14 20:12 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#882 []
 

「逃げるな‥!!」


何時もより張り上げた自らの声が
部屋中を駆け回り
貴女の背中を仕留めて‥

小さな背中が打ち抜かれた

⏰:10/03/14 20:12 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#883 []
 

向き合ってほしいんです、よ


どうせ離れてしまうなら‥

惨めなままに、してしまうな

⏰:10/03/14 20:13 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#884 []
第三十章 【歪んで、淡く】
>>867-883
*。*。*。*。*。*
文才なさすぎて‥伝わらないw

2人の関係
さぁどうなる(´・ω・`)
去るもは追わない主義な壱助さん
今回ばかりはそうはいかない?
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/14 20:18 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#885 []
【本編アンカー/1〜20】
>>699-700
【21〜30】
>>631-651
>>654-674
>>676-697
>>703-725
>>728-744
>>763-783
>>810-827
>>831-845
>>847-863
>>867-883
最終更新*3月14日(30章)

⏰:10/03/14 20:20 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#886 []
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/14 20:20 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#887 [笹]
あげ忘れた(´・ω・`)

⏰:10/03/14 20:21 📱:D905i 🆔:ZQnjeNcY


#888 []



「‥」

耐えきれなくなって
自分がわからなくなって
もうどうしようもない

本当にそばにいたい人
本当にそばにいてほしい人


誰?

⏰:10/03/18 15:42 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#889 []
 
「何が‥あった、」

少しの沈黙に躊躇なく
一呼吸置いて問いかけた低い声


‥知ってる
壱助さんは優しいこと

本当は‥すごく

⏰:10/03/18 15:43 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#890 []
 
答えに詰まるのはどうして?
そのまま答えればいいだけ


あたしは居場所を見つけた

求めて求められて
互いが必要としていける

そんな‥場所

⏰:10/03/18 15:44 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#891 []
 
「あの人‥幸太郎さんって言って
家族がいたんだけど‥」


喉が乾く
指先から水分が滲み出て
鼻の奥がつんとした

うまく声が出せない

⏰:10/03/18 15:44 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#892 []
 
黙って聞く壱助さんは
いつもみたいに睫を伏せて
だけど少しだけ唇が弧を描いて

笑ってる‥?


「目の前で家族を‥」

「失った‥か」

あたしの言葉に付け足すように
そうぽつり呟いた

⏰:10/03/18 15:45 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#893 []
 
貴方の目が見れない

震えだした唇を
無理やり噛み締めて堪えた



だって壱助さん、貴方といると
とても辛いんだもの‥

⏰:10/03/18 15:45 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#894 []
 
「同じ境遇‥故に
心惹かれたと、言うんで?」

そうだとしたら
この感情は同情なのか

寂しさを苦しさを
共有したがる弱さなのか


あたしは弱い
そんなのはわかってる

⏰:10/03/18 15:46 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#895 []
 
ぐるぐると渦を巻く
灰色の何かが
だんだんと暗くなる


強くなったつもりだよ
強くなったはずだった

どうしてこうも上手くいかない
結局誰かにすがりつかなきゃ
生きていけない

⏰:10/03/18 15:46 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#896 []
 
「‥あたし、」


左手首の落ち着いた傷たちが
疼き始めて痛い

壱助さんに出会ってから
傷は増えることがなかった

あたしを心配して
止めろと言ってくれた

⏰:10/03/18 15:47 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#897 []
 
「香夜さん」


頭がぼうっとする
昨日からずっと

体と心が全く別物
宙に浮かんで掴めない


畳の網目をなぞってた右手が
左手首に爪を立てた

⏰:10/03/18 15:47 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#898 []
 
「‥香夜さん」


少し引っ掻いただけで
血が滲みはじめて
久しぶりの感覚にぞっとした



真っ赤な液体が
爪の間をすり抜けて滲みた

⏰:10/03/18 15:48 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#899 []
 
「あたし‥どうかしてる
どうかしてる‥よ、
もう‥消えちゃいた‥」


『「‥香夜っ!!」』


はっとした
また父親と重なった声

⏰:10/03/18 15:48 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#900 []
 
壱助さんが声をあげた
思わず顔を見上げれば
どこかそれは悲しそうな顔で

しわの寄った眉間
鋭いのに優しい目


「契りを交わしたはず、ですよ
そのお命‥無駄にはしない、と」

⏰:10/03/18 15:49 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#901 []
 
今あたしを叱ってくれるのは
貴方だけで‥

真剣に向き合ってくれる
その瞳で包んで

「本当に‥世話が焼ける」

「い‥ち助さん」

流れるような細い指で
手首を包み込まれれば
どくどくと生命が鳴いてる

⏰:10/03/18 15:49 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#902 []
 
生きてる心地がした


「何処へ行こうが
貴方の勝手ですが、ね‥」

深いため息を此方に向けて

そう自由にされてしまうと
どうしたらいいかわからなくてね

何処へも行きたくなくなるんです

⏰:10/03/18 15:49 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#903 []



「壱助さん‥
迷惑じゃないんですか?」

「何、が」

「あたしの世話とか‥」

もじもじと不安げに
そう呟いて見上げた

⏰:10/03/18 15:52 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#904 []
 
「そう‥ですねぇ」

ちょいと深刻に考えすぎるのが
貴女の性格

「やっぱり迷惑‥ですよね」

肩をぐったり落として
貴女が落ち込めば
辺りは薄暗くなって渦を巻く

しかし、微笑ましくも思う

⏰:10/03/18 15:55 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#905 []
 
「私に迷惑をかけるのは
まぁ‥構いませんが、ねぇ」

茶を入れれば湯気がたつ
まだ部屋は冷えて
桜の蕾が桃色に染まる

「ちょいとばかり‥
面倒な方が、扱い甲斐がある」

鼻で軽くあしらえば
馬鹿にされてる事にも気付かず
真っ直ぐな瞳が此方を向く

⏰:10/03/18 15:59 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#906 []
 
「さて、どう‥しますか」

意地悪気に問えば
少し躊躇って唇を浮つかせ


「此処だ、あたしの居場所」

自らに言い聞かせるように
ぽつり呟いて頷いた

⏰:10/03/18 16:03 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#907 []
 
それでも離れると言ったなら
‥止めていた、でしょうね

不安に握った拳を
柔らかく解いて立ち上がる


「壱助さん‥何処に?」

「丁重に‥お断りしてきましょう」

本音を言えば‥
私だけの貴女にしたいんですが

⏰:10/03/18 16:06 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#908 []
 


「次期に私の‥妻になると、ね」


「え‥?壱助さん今何て‥」


「まぁ、まぁ」


桜が咲いたら‥一番に、貴女と

⏰:10/03/18 16:09 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#909 []
第三一章 【桜咲いて、共に】
>>888-908
*。*。*。*。*。*
急に仲直り(゚o゚)
こういう微妙な展開にしか
持っていけない私orz

大事な所聞き逃しましたが
やっぱり壱助さんの隣が
好きな香夜ちゃん
世話好き確定壱助さん
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/18 16:15 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#910 [笹]
【本編アンカー/1〜30】
>>885
【31〜】
>>888-908
最終更新*3月18日
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/18 16:16 📱:D905i 🆔:WpH3kYYs


#911 []



あの後
幸太郎さんにはしっかりと
気持ちを伝えてきた

とても残念そうに
眉を下げていたけれど
『お幸せに』って言って
諦めてくれた

お幸せにって‥
何か変な気もするけれど

⏰:10/03/20 21:22 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#912 []
 
だってあたしと壱助さんは
恋仲じゃあ‥ないんだし


こんな感情に
気付いちゃいけないんだ
辛いだけ、そうでしょ?

貴方はかなりの色男
それに年だって‥離れてる
って言っても
何歳なのか知らないけどね

⏰:10/03/20 21:23 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#913 []
 
でも友人と言ったら
違う気がするし
お父さんでもないしね
お兄さんでもないかも‥
世話好きな所は
お母さんっぽいけれど、


壱助さんはどうなんだろう
あたしのこと‥
どう思ってるんだろう

⏰:10/03/20 21:23 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#914 []
 
「"所有物"‥ですよ」

「‥え?」

澄み切った空を仰いで
艶容な唇が弧を描いた

って言うか‥
何で心のなかが読めるのよ

「おや、おや」

相変わらず冷静で
その上どこか呑気で
伏せた長い睫が揺れている

⏰:10/03/20 21:24 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#915 []
 
「‥見頃、ですね」

ひらり、桃色の花びらが舞う
くすっと笑った壱助さんの手が
此方に伸びてきた


「何‥何ですか?」

食らうつもりなのかと
思わず肩をびくつかせる

⏰:10/03/20 21:25 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#916 []
 
「なぁに‥食らいやしません、よ」

その美しい手が
あたしの頭を一撫ですると
二本の細い指に摘まれた
桜の花びら

それを日の光にかざし
緩く微笑んだ

「春です、ね」

その姿はとても煌びやかで
見とれてしまったの

⏰:10/03/20 21:26 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#917 []



鮮やかに桜色に染まった街外れ
これは絶景、間違いないよ

揺れる花に人々の賑わい
酒の甘い香りがほんのり漂う

酔っ払いは好まない
だけど花見の時くらいは
心を許してしまうんだ

「ほぉう‥酒豪、ときたか」

⏰:10/03/20 21:26 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#918 []
 
酒飲みを見つめたあたしに
壱助さんの低い声がかかる

「え‥ち、違いますよ!!
あたしお酒得意じゃないし!!」

「それは、それは
‥良い事を聞きました」


細めた目で此方を見つめる
何を企んでいるのやら

⏰:10/03/20 21:27 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#919 []
 
「本日は‥盛大に、いきますぜ」

片手に二本ずつ一升瓶を抱えて
微笑んだ貴方
以外とこの腕は力がある


どこから持ってきたんですかそれ
酒豪は貴方でしょう‥?

⏰:10/03/20 21:27 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#920 []



「あ‥伊代さん!!」

「香夜ちゃんじゃないかぁ!!
久しぶりだねぇ」

相変わらず元気な伊代さん
ここ最近何かと忙しくて
顔出しができてなかった

「伊代さんもお花見ですか?」

「出張だよぉ!!」

⏰:10/03/20 21:27 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#921 []
 
この笑顔が好きだ
くしゃっと笑って
ぽんと肩をたたかれる

「花見にゃ団子だろう?
だからこうして、売りに来たのさ」


なるほどと頷き
目の前に置かれた
色とりどりの団子に目を向ける

⏰:10/03/20 21:28 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#922 []
 
「じゃあ伊代さんっ
お団子くださいなっ」

「はいよぉ!!
そいやぁ‥壱助さんは?」

団子を手際よく皿に乗せ
真っ黒な瞳が此方を見つめる


「"酒のお供が欲しいです、ねぇ"
って‥お使いに来たわけです」

⏰:10/03/20 21:29 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#923 []
 
あの人は本当に動かない
相当な事がないと動かない
そしてあの言葉の威圧感
‥遠まわしに言わなくても

"あの人らしいね"と呟いて
沢山の団子を手渡された

「香夜ちゃん!!
乗せられちゃだめよぉ?」

別れを告げた背中に
一言そう告げられた
‥何の事だろう

⏰:10/03/20 21:29 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#924 []



"主人"の元へ戻れば
桜の木に寄りかかり
立て膝をついてすでに飲酒中

はらはらと舞う花びらを
愛おしそうに見つめて
お猪口を口に運ぶ

何て綺麗なんだろう
その色っぽさに何度嫉妬した事か

⏰:10/03/20 21:31 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#925 []
 
「はい、どーぞ」

山のかかった調達品を
目の前にどさっと差し出せば
一瞬その量に目を見開いた

「‥食いしん坊」

鼻で笑いながら
横目でちらり見つめられ

「な‥別に
あたし一人分じゃないですぅ!!」

⏰:10/03/20 21:31 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#926 []
 
結局いつも通り
意地になって反論してしまう
乗せられるとは
こういうことかな?


隣に腰を下ろせば
ふわり漂う壱助さんの香り
着物の襟から伸びた
首筋が淡く溶けてしまいそう

何だか緊張する
体がじわりと熱を帯びた

⏰:10/03/20 21:32 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#927 []
 
「おや‥何処かで酒を
召してきたんですかい?」

「飲んでないですよっ!」

そう答えれば怪しげに笑い
細い指があたしの頬に触れた


「良い色に染まってます故‥
そうなのかな、とね」

⏰:10/03/20 21:32 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#928 []
 
完璧にからかわれてる‥
そうわかっててもやっぱり駄目で


「んもっ‥馬鹿っ!!」

羞恥に目を潤ませて
その指を払いのければ
一気に顔が熱くなり

⏰:10/03/20 21:33 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#929 []
 
「‥紅い」

楽しそうに笑みを浮かべ
お猪口を此方に差し出した


乗せられる‥
やっぱりこういうことかぁ

⏰:10/03/20 21:34 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#930 []



あっという間に日が暮れて
昼とはまた違う
大人な雰囲気の夜桜

賑わいはさらに増して
陽気に踊り出す人々もちらほら

あんなにあった団子も
いつの間にかあと数個

⏰:10/03/20 21:34 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#931 []
 
「あぁっ
もう‥飲めないれす‥ッヒク」


自分でもわかってた
だんだん酔っていくのを

頭がぼーっとして
何だか楽しくなって
勧められればぐいぐいと

調子に乗らされました

⏰:10/03/20 21:34 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#932 []
 
「まぁ、まぁ
まだ夜は長い‥ですよ」

お猪口いっぱいに
とくとくと酒を注がれる

透き通ったこの液体が
あたしの中をめぐって
気分よくさせてるのか

見た目なんて
水と変わりやしないのに

⏰:10/03/20 21:36 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#933 []
 
「おっとっと」

結局溢れそうなそれを
口元に運んで一気に飲み干す

頭じゃわかってる
頭ん中は至って冷静
だけど体は分離してる

もう空の瓶が
いち、に、さん、し‥
あれ?
四本以上あるのはなぜだ
どこから湧いて出てきたんだ

⏰:10/03/20 21:37 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#934 []
 
それにしても‥

「いちしゅけさんは‥
お酒‥ちゅよいれすねぇ」

今にもふらり倒れそうなあたし

打って変わって
先ほどから全く変化のない貴方
顔色一つ変えやしない
化け物かって思いますよ

⏰:10/03/20 21:37 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#935 []
 
「まぁ‥ね」

「ふぅん‥
そおいえば、いちしゅけさん」

完璧に呂律が回ってない
もうさすがにやめよう


「想い人っていましゅかあ?」

あたしは何を聞いてるんだ

⏰:10/03/20 21:38 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#936 []
 
唯一の生き残りの頭さえ
じわじわと蝕まれ
甘ったるいやつに洗脳されていく

「そうですねぇ‥」

ぐいっと言った喉の辺りが
むず痒くなるほど綺麗で


「います、かね」

⏰:10/03/20 21:38 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#937 []
 
遠くを見つめた壱助さん
その瞳には
一体何が映っているのか
あたしの知り得たことじゃない

だけどこうも知りたくなる
そしてその返事に
胸がぎゅうっと締め付けられた

酔っているからかな
どうも変に愛おしい

⏰:10/03/20 21:39 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#938 []
 
俯き地面を見つめれば
優しく頭を撫でられた

優しくしないでほしい
今は涙腺が弱ってるんです


「叶うかどうかは‥
厳しいところ、ですがね」

そっと見上げれば
困ったように微笑んで

⏰:10/03/20 21:40 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#939 []
 
厳しいところって
人妻にでも恋してるのかな
それとも男性だったり?
こんなにも色男だもん
落ちない相手がみてみたい


「だいじょぶれす、きっと
あたしが‥保証しま‥しゅ」

遂に限界を迎え
ふわり体が宙を浮く

⏰:10/03/20 21:41 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#940 []
 
よりかかった隣の肩は
見た目以上に柔らかく

落ちた花びらが頬をくすぐり


そのまま眠りについた

⏰:10/03/20 21:41 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#941 []


小さな寝息
口元に手をかざせば
やっと確認できるほど

「保証‥ねぇ」

一人酒はやはり
ちょいと物寂しい

愛らしい寝顔を眺めて飲むのも
また一興‥ですかね

⏰:10/03/20 21:42 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#942 []
 
もたれた頭を
抱き寄せるように撫でれば
ぴくりと片手が跳ね
此方の着物をつかんだ

「本人に言われちゃぁ‥
参ったもんだ」

呆れ顔で見つめれば
幸せそうに笑みをこぼした想い人

⏰:10/03/20 21:42 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#943 []
 
「あり‥と」

「‥」

「壱‥けさ‥ありが‥と」

素直な寝言に
抱き締めたくなるほどの
愛おしさを覚える

酒のせいですか、ね
やたらと反応してしまう

⏰:10/03/20 21:43 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#944 []
 
「ずっと‥と‥いっ‥しょ」


頬を伝った滴
人聞きが悪いかも知れませんが
貴女の涙は、美しい


‥叶おうが叶わまいが
関係ないですぜ

⏰:10/03/20 21:43 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#945 []
 
貴女がずっと隣にいりゃあ
文句はない、ですから


「‥承知」

涙を片指で拭い
幼い額に唇をそっと寄せた


春の香り、ふわり

⏰:10/03/20 21:44 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#946 []
第三二章 【桜色、溶けて】
>>911-945
*。*。*。*。*
今日は暖かかったので
桜ももうすぐ開花と言うことで
こんなお話^^*ちょっと長め

2人のじれったい関係
どっちかが素直にならないと
叶いそうもありませぬな←
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/20 21:48 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#947 [笹]
 
【本編アンカー/1〜30】
>>885
【31〜】
>>888-908
>>911-945
最終更新*3月20日
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/20 21:49 📱:D905i 🆔:Z99/cef.


#948 []



「‥あれ?此処って」

此処はとある旅館
何故旅館かって?
それは‥

「香夜さん‥置いて行きます、よ」

このお方の気まぐれです

⏰:10/03/22 11:49 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#949 []



それはつい昨日の事
夜空を眺めながら彼は言った

『明日は晴れ、ですね』って

空が澄み切っていたのか
神様の声が聞こえたのか
ただの勘なのかわからないけど

『では‥出掛けましょう、か』

⏰:10/03/22 11:49 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#950 []
 
本当に気まぐれよ
晴れていたって
いつもお茶飲んで動かないのに

しかもただの散歩かと思ったら
旅館を予約したとか何とか‥
いつ予約したのよ‥はぁ

あたしは全然構わないけど

⏰:10/03/22 11:50 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#951 []
 
「立派‥ですね」

こんな豪勢な旅館に泊まる
お金は何処から湧いてでてくるの

本当に‥不思議な人


離れ街にあるこの旅館は
場違いなほど立派で
庭園の木々や花はもちろん
丁寧に手が行き届いてて
入り口には大きな門がある

⏰:10/03/22 11:50 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#952 []
 
しっかりとした柱や骨董品が
あたしの目を奪う
廊下は埃一つ見当たらない
床に自分が映ってる‥


「ようこそ、いらっしゃいました」

女将さんらしき人が
三つ指をついて頭を下げた

なんだか緊張する‥

⏰:10/03/22 11:51 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#953 []
 
ぎこちなく頭を下げて
横目で壱助さんを伺えば
手慣れた様子で笑みを浮かべ
綺麗にお辞儀した

指先まで、爪の先まで
美しいのだから
隣にいるのが苦痛です

「さて、と」

色男が顔を上げて呟けば
色を召した仲居さんたちの頬

⏰:10/03/22 11:51 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#954 []
 
壱助さんがいれば
いつだって春が来る
色んな意味で‥ね

「行きます、よ」

春になってもこの手は
ひやり、あたしの手首を冷ます
だけど捕まれるたび
そこからじわり熱を帯びてしまう

いつまで保つかな‥あたしの心臓

⏰:10/03/22 11:52 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#955 []



「ひろっ‥!!」

部屋間違えてないですか?
二人部屋にしては
空間を持て余しすぎ‥

目の前に広がる空間は
とても洗練されていて
それでいて上品な‥

置いてあるもの全てが
とても高価に見える

⏰:10/03/22 11:53 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#956 []
 
この座布団さえ‥
座るのを躊躇ってしまうほど


「ほぉう‥」

興味深そうに
部屋の隅々を見渡し
壁にもたれて外を眺めた
足袋が擦れる音が心地いい

どことなく楽しそうな壱助さん

⏰:10/03/22 11:53 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#957 []
 
と言うかお花見の日以来
‥ご機嫌な気がする

いつか雷が落ちなきゃいいけど

「壱助さん?
何で急にこんな‥」

「失礼致します。
お茶を‥お持ちしました」

男性の声と共に
襖が丁寧に開けられた

⏰:10/03/22 11:54 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#958 []
 
そちらに目をやれば
藍の着物を着た男性
此処で働いてる人なのかな‥


「香夜‥香夜だろ?」

あ‥やっぱりそうだ
此処は‥

「倫次‥?」

⏰:10/03/22 11:54 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#959 []
 
そう声をかければ
ぱぁっと笑顔になった

「やっぱり香夜だ!!」

何も変わりやしない
無邪気なままの笑顔


過去の闇の中の
ほんの一握りの至福の時を
彼はくれたのだ

⏰:10/03/22 11:55 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#960 []
 
「久しぶりだぁあっ
元気にしてたぁ?」

思わずにじり寄り手を握った
そう、倫次は唯一の幼なじみ

真っ黒な髪と瞳
笑った時にできる皺
何だかほっとする

「もちろん!!‥香夜は?」

⏰:10/03/22 11:55 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#961 []
 
倫次の視線があたしの後ろへ
‥あの色男へ向いた
そして同様にして
あたしにそのまま聞き返す


どんな顔をしてるのかな壱助さん
相変わらずの仏頂面?

「うん!元気だった
‥えっと、こちらは‥」

⏰:10/03/22 11:56 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#962 []
 
恐る恐る体を後ろへ向けた

思いのほか彼の表情は柔らかく
口元を釣り上げ目を細めていた


「香夜さんの‥"主人"、です」

「しゅ‥主人?」

⏰:10/03/22 11:56 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#963 []
 
「あぁああっ!!
こちらは壱助さん!!
あたしの‥あたしの‥えっと」

ほら‥戸惑う
結局あたしたちって何なの?

「友人‥じゃないな
えっと、恩人‥そう!恩人!!」

どうして焦る必要があるのか
どうして無理に恋仲を避けるのか
一番自分がよくわかってる

⏰:10/03/22 11:57 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#964 []
 
必死の作り笑いを浮かべ
"恩人"に目をやれば
組んだ腕を人差し指で
規則正しく叩いている

この仕草‥いらいらしてます
何故って?
そんなの決まってるでしょう


彼は男が大嫌いだから

⏰:10/03/22 11:57 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#965 []
 
漂う冷たい空気
明らかに嫌な空気です

「あ‥壱助さん!
此方は幼なじみの倫次です」

"あはは"なんておどけてみて
一生懸命和ませてみても
‥壱助さんの鋭い視線で
打ち壊される

「ほぉう‥幼、なじみ」

⏰:10/03/22 11:58 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#966 []
 
腕を叩いてた指を顎筋にあてて
倫次を下からなめ回すように
見つめていた

倫次に会えたのは嬉しいけど
‥この重苦しい雰囲気

「また夜落ち着いて時間できたら
‥話そうな、じゃあ」

そう言って深く頭を下げて
襖を閉じた

⏰:10/03/22 11:58 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#967 []
 

さぁて‥どうなることやら


_

⏰:10/03/22 11:59 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#968 []
第三三章 【ぼやけて、心/前編】
>>948-967
*。*。*。*。*
1000を目前にして波乱の予感w
新キャラ倫次(りんじ)くん
さてどうなるか(゚_゚)w

お花見以来
るんるん壱助♪だったのに←
久々に壱助さんの
鬼畜が見たい気分です ^p^え
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/22 12:05 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#969 [笹]
 
【本編アンカー/1〜30】
>>885
【31〜】
>>888-908
>>911-945
>>948-967
最終更新*3月22日
【番外編アンカー】
>>809
最終更新*3月8日

⏰:10/03/22 12:05 📱:D905i 🆔:b7M9uhWk


#970 []



何にもやましいことはない
だって倫次は幼なじみ
壱助さんはお‥恩人だし

何にも気にすることはない

「‥」

そうよ‥何も

⏰:10/03/26 16:58 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#971 []
 
「壱助さんって
甘いもの好きでしたっけ?」

「いえ、別に」

倫次が持ってきたお茶を啜らず
用意されていた和菓子を
丁寧に切って口の中へ

ゆっくりそうに見えて
案外食べるの早い

⏰:10/03/26 16:58 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#972 []
あっという間に平らげて
不満げにこちらを見つめてきた


「お茶飲まな‥あぁあああぁっ!」

するり伸びてきた手が
あたしの和菓子をひょいと摘み
あの艶容な唇に触れ
吸い込まれた

⏰:10/03/26 16:59 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#973 []
 
「それ‥それあたしのぉぉおっ」

食べたかった‥
すごく美味しそうだったのに

"犯人"の憎たらしい流し目
む か つ く !!

まだ熱いお茶を
いっきに口に流し込んだ
その熱さに喉が痛んだが
見栄を張った

⏰:10/03/26 16:59 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#974 []
 
流れていくのがわかる
どくどくと内側から痛めつけられ
何だか妙に切なくなった


頬杖をついた横顔
貴方の見つめる先に
何があるのかなんて‥

⏰:10/03/26 17:00 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#975 []



「わぁっすごい!!」

広がる桜並木
舞う花びらが鮮やかな絨毯を作る
その横に流れる川のせせらぎ
澄み切った青空と浮かぶ白い雲

‥春真っ盛りだ

⏰:10/03/26 17:00 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#976 []
 
「あまりはしゃいでいると
‥怪我、しますよ」

あまりにも重苦しい空気に
耐えきれなくなって
散歩に行こうと誘おうとしたら
壱助さんの方からお誘いが

何だか表情も
柔らかくなったみたい

この風景と壱助さんの組み合わせ
‥絶景だ

⏰:10/03/26 17:01 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#977 []
 
それを目に焼き付けるように
そっと目を閉じた


「何を‥していらっしゃる」

「いや‥いい景色だなぁって」

ゆっくり目を開ければ絶景
長い睫にすらっと筋の通った鼻
きめの細かい真っ白な肌
荒れを知らない色っぽい唇

⏰:10/03/26 17:01 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#978 []
 
‥って

「ち‥近いんですけど」

吐息が頬をかすめる
思わず息を潜めてしまうほど
美しすぎて‥
体が熱を帯びていく

「まぁ、まぁ」

まぁまぁって貴方‥

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#979 []
 
「さぁ‥早くしないと
日が暮れてちまいます、よ」

そう余裕たっぷりに囁き
あたしの手を取る


もの凄く近いはず
それなのに貴方の背中は
遠く遠く離れて見える

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#980 []
 
いつまでもいつまでも
追っていくのだろうか
結局は追いつかずに‥


気付いているのです
ほんとはね、気付いてる

この気持ちが何なのか

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#981 []




温泉どっぷり浸かって
いろいろ考えた

‥いろいろ

廊下に浴衣が擦れる音
ぼんやり映る自分の顔
なんて情けないんだ

⏰:10/03/26 17:03 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#982 []
 
考えたって無駄なんだけど
考えてしまう

あぁ‥もう嫌


襖をゆっくり開ければ
浴衣を着た壱助さんの後ろ姿

首に手拭い巻いてるけど
この人は汗をかくのだろうか

⏰:10/03/26 17:03 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#983 []
 
「早いですね」

「まぁ‥男、ですから」

胡座をかいた横には
お猪口とお酒の瓶
‥酒豪

男の一人酒‥
邪魔しちゃ悪いかな?

⏰:10/03/26 17:04 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#984 []
 
じゃあ、そろそろ時間だし‥

「‥香夜さん」

少し甘ったるい声が
立ち去ろうとしたあたしを
呼び止めた


「何処、へ」

「あぁ‥えっと
ちょっと‥外に」

⏰:10/03/26 17:04 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#985 []
 
何となく言葉を濁らせて
倫次のとこへ行くとは
言えなかった

これがいけないのか
‥やましいわけじゃないの

「幼、なじみ」

いつの間にかその声は
耳元で囁いて
風呂上がりの貴方の体は
少しまだ暖かかった

⏰:10/03/26 17:05 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#986 []
 
「壱助さん‥?」

腰を抱かれて
そのまま身を委ねてしまった


「‥倫次、待ってます」

「私の‥
知ったこっちゃ、ないのですが」

知ったこっちゃあってほしい‥

⏰:10/03/26 17:05 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#987 []
 
首にかかる吐息が
少しお酒を漂わせて
酔ってんのかな?

「すぐ、戻りますから」

「それなら‥行かなくても
いいじゃあ、ないですか」

「‥んん」

⏰:10/03/26 17:06 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#988 []
 
口ごもれば‥
さすがに壱助さんも子供じゃない

「‥体が冷えます故
早く、戻ること」

そう言うと
するり腰から腕が溶けた
軽くなった腰を上げ

足早に部屋を出た。

⏰:10/03/26 17:06 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#989 []
 
ねぇ、壱助さん

貴方の手が
引き止めたのは

お酒のせいじゃ
‥ないのでしょうか?


何時だって貴方は
あたしを惑わせて‥

⏰:10/03/26 17:08 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#990 []
第三四章 【ぼやけて、心/後編】
>>970-989
*。*。*。*。*
ここではラスト話です ^p^
壱助さんが
わかりやすく妬いてます w
しかしよくわかってない
香夜ちゃんw(゚_゚)鈍感

第二段に続きます !!
末永くよろしゅう(´・ω・`)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/26 17:15 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#991 []
【本編アンカー/1〜10】
>>1-44   ( 拾われて
>>46-78  ( 救われて
>>80-116  ( 雇われて
>>118-127 ( 誘われて
>>129-144 ( 叱られて
>>147-171 ( 困らせて
>>173-193 ( 触れられて
>>197-226 ( 捨てられて
>>230-257 ( 守られて
>>260-294 ( 奪われて

⏰:10/03/26 17:45 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#992 []
【本編アンカー/11〜20】

>>318-339 ( 魅せられて
>>342-363 ( 訴えて
>>396-420 ( 現れて/前
>>423-445 (  〃 /後
>>472-498 ( 無力さ、覚えて
>>500-535 ( 寂しさ、溢れて
>>559-576 ( 温もり、消えて
>>578-593 ( 嘆いてみても
>>595-611 ( 待ちわびて
>>613-628 ( 迎えに来て

⏰:10/03/26 17:48 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#993 []
【21〜30】
>>631-652 ( 約束、交わして
>>654-674 ( 抱き寄せて
>>676-697 ( 血の涙、滲んで/前
>>703-726 (   〃    /後
>>728-744 ( 与え続けて
>>763-783 ( 春、訪れて
>>810-827 ( 破片、散って
>>831-845 ( 煙に、染めて
>>847-863 ( 甘い、錯覚
>>867-883 ( 歪んで、淡く

⏰:10/03/26 18:01 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#994 []
【31〜34】
>>888-908 ( 桜咲いて、共に
>>911-945 ( 桜色、溶けて
>>948-967 ( ぼやけて、心/前
>>970-989 (   〃   /後

⏰:10/03/26 18:08 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#995 []
【番外編】

>>297-316 ( 後ろ髪、引かれて
>>366-393 ( 微笑んで
>>450-470 ( 呑んで、呑まれて
>>537-557 ( 待ち焦がれて
>>746-759 ( 口付けて、桃色
>>787-806 ( 夢、重なって

⏰:10/03/26 18:15 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#996 []
【零れ話】
ほんとはこの作品
1000で終わらせるつもりでした←

だけど
皆様から沢山のお言葉を頂き
大変励みになりまして
調子に乗って第二段いきますw
これからもよろしくです ^^*

⏰:10/03/26 18:21 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#997 []
最初は
こんな変な小説
読む人なんかいないだろうと
暇つぶしに書いてました←

だけど今では
壱助さんが人気者にwww
まさかです\(^O^)/
笹はとっても幸せです !!

⏰:10/03/26 18:25 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#998 []
 
こんなぐだぐだな作者ですが
放置は絶対しません !!

これから忙しくなるので
マイペース更新ですが(゚_゚)

皆様今後とも
お付き合い願たい !!

⏰:10/03/26 18:27 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#999 []
 
誤字脱字、多々見られましたが
お許しください(´・ω・`)

感想、指摘等はこちらへ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/26 18:28 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#1000 [笹]
 
ではでは
>>991-995
全部制覇したあなた !!

第二段へれっつごー ^p^
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/11461

⏰:10/03/26 18:29 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#1001 [我輩は匿名である]
このスレッドは 1000 を超えました。
もう書けないので新しいスレッドを建ててください。

⏰:10/03/26 18:29 📱: 🆔:Thread}


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