浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#380 [笹]
:
:
結局金魚すくいやって
やっぱり壱助さん器用で
ひょいひょいすくうもんだから
叔父さんも困り顔
言うまでもなくあたしは
一匹もすくえず‥。
と言うか正直な所
壱助さんの横顔に見とれてた
睫‥また伸びてた気がしました。
:10/02/04 19:21
:D905i
:5gVCO4/Q
#381 [笹]
"猫のくせに、
魚一匹も捕まえられぬとは‥
‥やれ、やれ"
クスっと鼻であしらわれ
いつもの調子の壱助さんに
少し緊張がほぐれた
:10/02/04 19:21
:D905i
:5gVCO4/Q
#382 [笹]
:
:
:
「あ!水飴だよ壱助さん!」
まるで子供なのだ
壱助さんの手を引いて
人混みを掻き分けて先走る
だけどそれでも構わない
だって水飴なんて久しぶりよ!!
「はい、はい」
水飴を手にしたあたしに
呆れるように返事をした
:10/02/04 19:22
:D905i
:5gVCO4/Q
#383 [笹]
水飴をびろんと伸ばして
目を輝かせて巻き取る
キラキラ光るそれを
目を細めて眺める壱助さんと
自然と目があった
「‥食べますか?」
「甘味は‥好みません、で」
あぁそうだったと
気落ちするあたしの手を
また引いて歩く
:10/02/04 19:22
:D905i
:5gVCO4/Q
#384 [笹]
親子みたいかな?
それとも恋仲同士?
‥何でもいいのだ
ただ今の時間が心地いいの
:10/02/04 19:23
:D905i
:5gVCO4/Q
#385 [笹]
:
:
人が疎らになり
明かりもあまり届かない土手へ
蒸し暑かった人混みで
じわりと汗をかいた背中に
ひんやりした心地いい風が吹く
水飴を銜えて
浴衣を気にしながら腰掛けた
:10/02/04 19:23
:D905i
:5gVCO4/Q
#386 [笹]
「壱助さんって‥」
あたしの口は
急に語り出すから冷や汗物
"愛する人いますか?"なんて
聞こうとするのだから
‥本当に恐ろしい
:10/02/04 19:24
:D905i
:5gVCO4/Q
#387 [笹]
「人混みは疲れます、ね」
「え?あぁ‥
そ‥そうですねぇーあはは」
壱助さんの声が
久しぶりにはっきり聞こえたから
何だか、どきっとした
:10/02/04 19:25
:D905i
:5gVCO4/Q
#388 [笹]
「‥満足ですかい?」
水飴を頬張るあたしを見つめて
壱助さんが呟いた
いやもう
壱助さんの浴衣姿だけで満足‥
なんて言えませんよ。ええ
:10/02/04 19:26
:D905i
:5gVCO4/Q
#389 [笹]
「はいっ!!
ありがとうございまし‥」
あれ‥?
突然目の前がひっくり返る
微かに首筋に感じる温もり
:10/02/04 19:26
:D905i
:5gVCO4/Q
#390 [笹]
「いぃいっ壱助さん?!」
暗くてよかった‥
絶対今あたし顔赤いよ‥
「たまには、
いいじゃあ‥ないです、か」
甘い声が耳をくすぐる
:10/02/04 19:27
:D905i
:5gVCO4/Q
#391 [笹]
手を引き寄せられて
壱助さんの膝を
枕にしてしまったあたし
それだけで心臓が壊れそうなのに
華奢で大きな手が
ふわっとあたしの髪を撫でて
もう‥香夜は死にそうですよ
:10/02/04 19:28
:D905i
:5gVCO4/Q
#392 [笹]
「‥香夜さん」
優しく頬を撫でて
ねぇ‥壱助さん
:10/02/04 19:28
:D905i
:5gVCO4/Q
#393 [笹]
「―――――‥、」
"あたしもです"と囁いた。
:10/02/04 19:29
:D905i
:5gVCO4/Q
#394 [笹]
:10/02/04 19:33
:D905i
:5gVCO4/Q
#395 [我輩は匿名である]
:10/02/05 12:42
:W53H
:QBCwpTC2
#396 [笹]
最近、猫は‥危なっかしい
"親"としての責任が
問われます故‥
そこら寄り付く輩を
‥退治せねばぁ、なりませんで
"親の意見と茄子の花は
千に一つも仇はない"
:10/02/05 22:14
:D905i
:mdMMDFsU
#397 [笹]
―‥鬼も風邪を引くらしい。
また新しい発見である。
と言うわけで
漢方薬でも買ってこようと
また街に出たのです
やっと此処にも馴れてきて
顔も覚えてもらえるようになった
:10/02/05 22:17
:D905i
:mdMMDFsU
#398 [笹]
「‥さて、そろそろ戻らなきゃ
壱助さんに‥。」
いつだって死と隣り合わせ
壱助さんは殺しはしないって
言ってはいるけど‥
「爪の間に針を‥」
考えるだけで心臓が痛みますよ
:10/02/05 22:18
:D905i
:mdMMDFsU
#399 [笹]
ふうっと深く息を付いて
足早に宿に戻ろうとした
‥足が動かない、あれ?
足がずしりと重い
もしかして死神?迎えに?
:10/02/05 22:18
:D905i
:mdMMDFsU
#400 [笹]
思わず引きつる顔を
恐る恐る下に向けると
「‥え?」
そこにはあたしの着物に
ぎゅっとしがみつく子供
着物に顔を埋めたまま離さない
あたし‥子供産んだかしら
なーんて訳の分からんことを
真剣に考えてしまう
:10/02/05 22:19
:D905i
:mdMMDFsU
#401 [笹]
「ごるぁぁぁああ!!!」
突然‥
物凄い形相をした男の人が
こちら目掛けて突進してきたのだ
‥いつだって死と隣り合わせ。
「ちょ‥何何なんなのー?!」
あたふたするものの
子供が地蔵のように重く
ぴくりともしない足
:10/02/05 22:20
:D905i
:mdMMDFsU
#402 [笹]
し、し‥‥死ぬ。
_
:10/02/05 22:21
:D905i
:mdMMDFsU
#403 [笹]
「こっち来るなよぉお!!」
「お前っ!!
米粒を茶碗に残すなって
あれだけ言っただろう!!」
は?
「見えなかったんだぁ!」
「言い訳するなー!!」
明らかに男の人の視線は
この子供に向いている
:10/02/05 22:21
:D905i
:mdMMDFsU
#404 [笹]
「あ‥あのぅ」
あたしを盾にして隠れる子供
とっつかまえようと
あたしの前で機敏に動く人
そしてあたしの周りで始まる
いたちごっこ。
「一粒だけだろーっ!」
「お前っ見えてるじゃあないか!!」
「うぅ‥来るなぁあ!!」
‥厄介な物に巻き込まれました
:10/02/05 22:22
:D905i
:mdMMDFsU
#405 [笹]
:
:
:
「いやぁーお恥ずかしい所を」
先程の鬼みたいな顔とは
打って変わって
がははと笑うその人は
"茂七"と言うらしい。
とても人がよさそうだ
隣にちょこんと座る
口を尖らせた少年は"正宗"くん
米一粒を残した少年だ
:10/02/05 22:23
:D905i
:mdMMDFsU
#406 [笹]
「正宗は姉貴の子供でして」
「お姉さんの‥そうでしたか」
「姉貴は病弱なもんで、
よく俺が世話するんですが‥」
見る限り
あまり懐いてなさそうだ
「茂七‥怒ると怖いんだもん」
正宗くんが拗ねた様子で呟いた
子供らしい理由に
思わずクスリと笑ってしまう程
:10/02/05 22:23
:D905i
:mdMMDFsU
#407 [笹]
「迷惑かけちゃいやしたし‥
飯でもおごらせてくださいよ!」
非常に爽やかである
うん‥いい青年ってかんじ
‥なんて品定めするほど
あたしは男を知りません
「本当ですかぁっ?」
食べ物には目がありません
:10/02/05 22:24
:D905i
:mdMMDFsU
#408 [笹]
"道草を喰わない、こと"
‥鬼が呼んでいる
"でないと‥お仕置きです、よ"
か‥帰らねば
:10/02/05 22:24
:D905i
:mdMMDFsU
#409 [笹]
「お言葉に甘えたい所ですが、
"鬼"に殺されるので‥あは」
「鬼?」
「鬼のような人が、待ってるので」
:10/02/05 22:26
:D905i
:mdMMDFsU
#410 [笹]
:
:
:
何だか足取りが軽い
だって明日
男の人とお食事なんて‥
「うふふー」
「ほぉう‥
こりゃあ随分と
遅い帰りで、いらっしゃる」
心臓‥いや
体の全部の臓器がびくりとした
:10/02/05 22:27
:D905i
:mdMMDFsU
#411 [笹]
「あぁあ‥ちょっと」
あははなんて笑って見せても
‥もちろん無駄で
布団の上で正座をする壱助さんは
怪しい笑みを浮かべた
「病人をほったらかしにするとは
‥薄情な人です、ねぇ」
:10/02/05 22:28
:D905i
:mdMMDFsU
#412 [笹]
額にあてていた濡れた手拭いを
ピンと張って‥戦闘態勢ですね
「いや、そのぉ‥」
「お仕置きがそんなに
‥お好きです、か」
「ひぃっ!!」
「自虐的です、ね」
「‥ッうぅ!!!」
:10/02/05 22:29
:D905i
:mdMMDFsU
#413 [笹]
壱助さんの右手が
あたしの首をぐっと掴む
細い指が食い込むのが分かる
「く‥るひぃ」
「風邪を引いてます故‥
少々手に力が入りませんで」
鬼‥鬼鬼鬼!!
「もっと苦しんだ顔が
見たいもの、ですが‥ねぇ」
死ぬ‥窒息死‥馬鹿力‥
:10/02/05 22:29
:D905i
:mdMMDFsU
#414 [笹]
にやりと微笑む壱助さん
優しい笑顔なのだ
いや優しすぎる笑顔なのだ
笑顔が怖いと思うのは
壱助さんくらいだよ
「い‥ひふへ」
ぱっと手が離されると
肺が破裂しそうなほど息を吸い
酸素が脳に一気に入って
体が浮きそうになった
:10/02/05 22:30
:D905i
:mdMMDFsU
#415 [笹]
「‥んぐっはぁ」
「何を‥してたんですかい?」
手拭いをこっちに差し出し
"早く濡らして絞れ"と言うように
顔に押し付ける
もう治ったんじゃないですか?
壱助さん不死身そうだし
「それが‥」
:10/02/05 22:31
:D905i
:mdMMDFsU
#416 [笹]
:
:
冷たい水に手を浸ける
壱助さんの手みたい‥
ぎゅっと絞りながら事情を話すと
乱暴に手拭いを受け取った
「その茂七とやらは‥何者で?」
少し気だるそうに
帯を緩めて白い肌が顔を出す
いつになっても慣れない
この美しさ
:10/02/05 22:31
:D905i
:mdMMDFsU
#417 [笹]
「すごくいい人そうでしたよ!
金物屋さんをやってるそうで‥」
「ほぉう‥」
明らかに話し聞いてないし‥
興味ないなら聞かなきゃいいのに
ずずっと茶を啜るのは
いつもと変わらず元気な気がする
:10/02/05 22:32
:D905i
:mdMMDFsU
#418 [笹]
「私は香夜さんの
‥"親代わり"です、ぜ?」
親代わり‥うん
まぁそうなのかもしれない
自分で言うのもあれだけど
"飼い主"同然である
「まぁ‥そうですねぇ」
:10/02/05 22:33
:D905i
:mdMMDFsU
#419 [笹]
心配してくれてるのかな?
それとも‥"焼き餅"かなぁー
なぁーんて‥
壱助さんは
あたしみたいな子供に
妬くような人じゃないけど
:10/02/05 22:33
:D905i
:mdMMDFsU
#420 [笹]
「そやつに会う‥
義務が、あります‥ねぇ」
カタンと湯飲みが音を立てる
あの口角だけ上げた笑みは
この世で一番恐ろしいのだ
:10/02/05 22:35
:D905i
:mdMMDFsU
#421 [笹]
:10/02/05 22:40
:D905i
:mdMMDFsU
#422 [我輩は匿名である]
:10/02/06 08:59
:W53H
:evpZsMz6
#423 [笹]
:
:
:
「‥何で付いてくるんですかぁ」
結局付いてきた壱助さん
改め保護者さま
「"責任"ですから、ね」
下駄が立てる音は
明らかに不機嫌そうである
:10/02/06 21:16
:D905i
:uaVNeT2k
#424 [笹]
放たれる威圧感に
周りの人々も寄り付かず
町娘たちは
黙って壱助さんを目で追った
「別にそんな‥
ご飯頂くだけですよー」
「二人で来るなと‥
言われてお出でで?」
痛いところをつくものです
:10/02/06 21:18
:D905i
:uaVNeT2k
#425 [笹]
「‥風邪は?
もう治ったんですか?」
「‥ごほごほ
まだ‥です、が」
変な演技しないでくださいよ
棒読みの咳なんて
初めて聞きましたよ、もう
「だったら
寝てなくちゃだめです!!」
立ち止まって後ろを向き
訴えてみても‥無駄
:10/02/06 21:18
:D905i
:uaVNeT2k
#426 [笹]
「あんまり茂七さんに
突っかからないでくださいよ?」
せっかくの楽しみが‥
仕方なく溜め息を付き
前を向いた瞬間だった。
「んぎゃっ!!」
後ろからど突かれて
顔面から地面に突っ込み
走る激痛、土の味
:10/02/06 21:19
:D905i
:uaVNeT2k
#427 [笹]
言うまでもなく
犯人は壱助さんです
「風邪を引いてます故‥
ちょいと、意識が朦朧と‥ねぇ」
鋭い切れ長の目が見下ろす
行かないでほしいなら
素直に言えばいいのに‥
体がいくつあっても足りない位
それでもって
よく耐えられるなと自讃する
:10/02/06 21:19
:D905i
:uaVNeT2k
#428 [笹]
「香夜さん?!大丈夫ですかい?」
心配そうな面持ちで
駆けつけてくれたのは
茂七さんだった
‥ちょっと、間が悪いです
「あぁ‥大丈夫ですよぉーう」
おどけながら立ち上がり
着物の埃をはらった
:10/02/06 21:20
:D905i
:uaVNeT2k
#429 [笹]
"やだー恥ずかしいなー"なんて
へらへらしてるのは
どうやら場違いだったみたい
「‥女性に何てことするんだ!!」
‥茂七さんっ命知らずっ!!
「ほぉう‥」
少し笑みを浮かべて目を細める
逆鱗に触れた合図です
:10/02/06 21:21
:D905i
:uaVNeT2k
#430 [笹]
壱助さんは絶対に
茂七さんみたいな‥
こういう熱い人が嫌いだと思う
‥の前に、男が嫌いだと思う。
:10/02/06 21:21
:D905i
:uaVNeT2k
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