浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#197 [笹]
死にそうな所を
拾ってやったと言うのに‥
疑い深い猫、ですよ
少しは恩でも返そうと
‥思わないんですかい?
"猫は三年の恩を三日で忘れる"
‥って、ね
:10/01/30 19:50 :D905i :weUwJGLs
#198 [笹]
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:
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何をするでもない
壱助さんはいつもこう。
正座してお茶を入れて啜って
少し間を置いてまた啜って‥
飲み終えたら
‥―立ち膝で窓際に座る
ぼうっと空ばかり眺めて
何が面白いのだろう。
:10/01/30 19:50 :D905i :weUwJGLs
#199 [笹]
立ち膝で座ってる時の
少しはだけた着物から見える
白い肌が何とも‥。
あー‥羨ましさを越えて憎らしい
‥ねぇ壱助さん
あたしが居ること忘れてる?
存在消されてる?
:10/01/30 19:51 :D905i :weUwJGLs
#200 [笹]
そういえば、壱助さんは何で‥
あたしを助けてくれたの?
:10/01/30 19:52 :D905i :weUwJGLs
#201 [笹]
しかも、それから
ずっと面倒見てくれてる。
扱いは‥まぁ考えないとして
お金だってないのに‥。
―‥ただの人助け?
あたしに対する同情かしら
:10/01/30 19:52 :D905i :weUwJGLs
#202 [笹]
「さて、」
壱助さんが珍しく
自分から口を開いた
そして立ち上がる。
また‥花街?
だけど、まだ午前中よ?
:10/01/30 19:53 :D905i :weUwJGLs
#203 [笹]
「‥行きます、か」
すっと腰を上げて
帯をきつく引っ張り整える
「何処‥行くんですか?」
不安そうに見つめると
ひんやりとした手が
あたしの腕をしっかり捕まえた
:10/01/30 19:54 :D905i :weUwJGLs
#204 [笹]
「なっ‥何処に?!」
「その内わかります、よ」
あたしと壱助さんの温度差は
一ヶ月経っても縮まらない
:10/01/30 19:55 :D905i :weUwJGLs
#205 [笹]
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「壱助さぁんっ」
こちらの呼びかけに
一切振り返りもせずに
ただ腕を引いて街を歩く
そんな中でも
町娘の黄色い声が聞こえる
"あら、色男ーっ"
"見とれちゃうわぁー"
:10/01/30 19:55 :D905i :weUwJGLs
#206 [笹]
自然と眉間にしわが寄った
だけど当の本人は
ぴくりともしない
普段から持て余されてる色男は
もう馴れているのだろう
‥憎たらしい。
:10/01/30 19:56 :D905i :weUwJGLs
#207 [笹]
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:
:
「あらぁああ!!壱助さんっ
紹介しに?」
うわ‥綺麗な人‥。
団子屋から出てきたその人は
壱助さんを見るやいなや
顔に花を咲かせた
:10/01/30 19:57 :D905i :weUwJGLs
#208 [笹]
「今日はちょいと、別件でして」
「あら‥そうなのかい
ちょいと時間があるならさぁ
紹介しておくれよぉっ!」
その人と壱助さんが話す姿は
何故かしっくりきて
‥お似合いだった
:10/01/30 19:58 :D905i :weUwJGLs
#209 [笹]
"では‥"と言うと
壱助さんはあたしに
横目で合図をする
「あ‥香夜です!!はじめまして」
ぺこりとぎこちなくお辞儀をした
:10/01/30 19:58 :D905i :weUwJGLs
#210 [笹]
「香夜ちゃん?
可愛いじゃないかぁーっ
やっぱり壱助さん、
お目が高いよぉーあんた!!」
ぽんっとあたしの肩を叩いく
その美しい手が
初めてとは思えないくらい
優しくて暖かかった
:10/01/30 19:59 :D905i :weUwJGLs
#211 [笹]
「伊代さんにゃあ、劣りますぜ」
あたしなんかと扱いが違う
優しい目で見つめてた
この色男め‥
そんな言葉がぽんと出るなんて
確かに綺麗だし、いい人そう
‥だけど、ちょいと悔しい
:10/01/30 20:00 :D905i :weUwJGLs
#212 [笹]
「馬鹿言うんじゃないよぉ!全く」
壱助さんを叩くのも
何となく馴れてる気がして‥
やっぱりあたしなんかは
まだ付き合いが浅いんだって
思い知らされるのだ。
:10/01/30 20:01 :D905i :weUwJGLs
#213 [笹]
"団子屋の女将の伊代です"と
笑顔で言われて
ついついつられて笑顔になる
大人の女と言えば
"あの母親"しか印象にないから
なんだか不思議な感じがするの
:10/01/30 20:02 :D905i :weUwJGLs
#214 [笹]
「‥では、これで」
息つく間もなく
またぐいっと手を引かれ
伊代さんに軽くお辞儀して
団子屋を後にした
「あれは‥仲いいのね、きっと」
クスっと笑いながら
伊代は二人の背中を眺めた
:10/01/30 20:04 :D905i :weUwJGLs
#215 [笹]
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:
:
「‥此処ですか?」
壱助さんが足を止めたのは
怪しい雰囲気の
お店‥のような建物の前
手を引かれて入ってみると
これまた怪しいお婆さん
こ‥怖いじゃあありませんか
:10/01/30 20:04 :D905i :weUwJGLs
#216 [笹]
「お願いします、ね」
そう言うと今度は
お婆さんに手を引かれて
襖の奥へ
「ちょ‥壱助さん?!」
壱助さんは
こちらに来る様子もなく
側にあった椅子に腰を掛けた
:10/01/30 20:05 :D905i :weUwJGLs
#217 [笹]
次の瞬間壱助さんの姿が消え
ばんっと襖が現れた
‥な、何でぇえ?
「あの‥何を‥」
またこの人も
あたしの存在無視ですか‥?
:10/01/30 20:05 :D905i :weUwJGLs
#218 [笹]
お婆さんは物差し片手に
あたしを睨み付ける
それはもう‥殺されそうなくらい
「あんた‥年は?」
しゃがれ声が沈黙を破る
「じゅ‥十八‥です」
:10/01/30 20:06 :D905i :weUwJGLs
#219 [笹]
"へぇ"と無関心な声を出し
日焼けした黒い手が
こちらに物差しをあてがう
こっちが喋ろうもんなら
キッと睨み付けられる
一体何なんですか?
:10/01/30 20:06 :D905i :weUwJGLs
#220 [笹]
「きゃっ‥何するんですか?!」
突然胸を鷲掴みにする
小さな骨張った手
「‥中の下だね」
壱助さんと同じ捨て台詞。
反論する間もなく
お婆さんは何か書き留め
算盤をはじき出した
:10/01/30 20:07 :D905i :weUwJGLs
#221 [笹]
"こんなもんかねぇ"と呟くと
「壱助!!ちょっと来な!!」
壱助さんを呼び捨て‥
どんな関係‥?
すると壱助さんが
襖の向こうから現れ
あたしに目もくれずに
お婆さんの元へ
:10/01/30 20:08 :D905i :weUwJGLs
#222 [笹]
「こんなもんでどうかねぇ?」
さっきの紙を壱助さんに渡す
少し顔をしかめて
こしょこしょと耳打ち
「まぁ、色男の言うことにゃあ
聞かない訳には‥」
こしょこしょ
こしょこしょ
:10/01/30 20:08 :D905i :weUwJGLs
#223 [笹]
「これは、有り難い」
「2、3日したらまた来な」
話は終わったのか
あたしは一切事情を知ることなく
また手を引かれる
:10/01/30 20:09 :D905i :weUwJGLs
#224 [笹]
顔色一つ変えない壱助さんに
あたしは事情を聞かなかった
そうじゃない。
‥聞けなかったんだ
:10/01/30 20:10 :D905i :weUwJGLs
#225 [笹]
あの耳打ちから漏れた言葉
確かに聞こえたのは
"お金"のやり取り
:10/01/30 20:11 :D905i :weUwJGLs
#226 [笹]
ねぇ‥壱助さん
あたしを売るんでしょう?
_
:10/01/30 20:11 :D905i :weUwJGLs
#227 [笹]
:10/01/30 20:15 :D905i :weUwJGLs
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