浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#537 []
 
まだまだ子供な"飼い猫"が
ぼうっと空ばかり眺めて
雪を待ちわびているもんで‥



"色は思案の外"と
良く言われます故‥



―‥自分でも、
良くわかりゃしないのですが、ね

⏰:10/02/10 16:47 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#538 []
 



雲が低い
空一面を灰色に染める


「‥雪ですか、ね」



冷えた空気が息を白く染めた

⏰:10/02/10 16:48 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#539 []


「お帰りなさいっ」

窓から乗り出すような勢いで
雪が降るのを待ちわびていると
壱助さんが帰ってきた


「今日、雪降りますかねぇ?」

別に雪は珍しくない
だけど真っ白に染められた街に
なんだかとてもわくわくして
何時になっても
目を輝かせてしまうのだ

⏰:10/02/10 16:48 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#540 []
 
「‥さぁ、ね」

後ろで聞こえた素っ気ない声に
着物と肌がすれる音が続く


「‥んう」

また黙って着替えて‥
着替えるときは声かけてって
あれだけ言ってるのに

気付かぬふりをして
じっと空とにらめっこ

⏰:10/02/10 16:49 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#541 []
 
―‥だけど沈黙となれば
どこかむず痒い


「外、寒かったですか?」

「そりゃあ‥ねぇ」


今度は畳と着物がすれる音
どうやら着替え終わったらしい

⏰:10/02/10 16:50 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#542 []
 
流石に手が冷えてきた
外へ向けた息も白い


「囲炉裏があると
やっぱり冬はいいですよねぇ」

なーんて
あたしにとっては珍しかった
囲炉裏に暖かさを求めて
振り返ってみたものの‥

⏰:10/02/10 16:50 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#543 []
 
「壱助さん!!」

どうしてそうも貴方は‥

囲炉裏の前に立ちはだかる
壱助さんの背中


「ちゃ‥ちゃんと袖!!」


時々よくわかんない所で
壱助さんは半裸になりたがる
‥露出狂だ。

⏰:10/02/10 16:51 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#544 []
 
そして何度見ても
この美しさには慣れない

雪みたいに真っ白だから
囲炉裏に近づいたら
溶けちゃうんじゃないかって
馬鹿みたいな心配をするほど


一気に火照った顔を
ぷいっと背けて
また空に目を向けた


雪‥やっぱり降らないかなぁ

⏰:10/02/10 16:51 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#545 []



結局"まぁ、まぁ"と言って
言うことを聞いてくれず‥


って言うか
何が"まぁ、まぁ"よ!!

あたしだって暖まりたいのにぃ‥

⏰:10/02/10 16:52 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#546 []
 
「雪が降りそうだって言うのに
何でわざわざ‥
着物下ろすんですかぁ?」

少し乱暴に唇を尖らせて
後ろにある背中に訴えると


「いいじゃあ、ないですか」

と、満足げな声が返ってきた

⏰:10/02/10 16:53 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#547 []
 
ちらりと少し顔を向けて
横目で様子をうかがえば
胡座をかいた片膝に
頬杖を付いてくつろいでいる


あったかそう‥
行きたい‥けど
そんな半裸の男の人の
隣になんか並べない!と言う

‥生娘の葛藤。


ただただ時間が過ぎ
体が冷え行くだけだった

⏰:10/02/10 16:53 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#548 []



「‥へっくしゅん!!」


このままじゃ風邪引く‥
冷えた手を口元の前で握りしめ
はぁーっと息を吹きかける


「やれ、やれ」

⏰:10/02/10 16:54 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#549 []
 
やれやれって‥
そもそも壱助さんが
変態な趣味持ってるからよ!!


最早此処まで来ると
動いてたまるかとヤケになるもの


「仕方のない人、ですねぇ」

_

⏰:10/02/10 16:55 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#550 []
 



――‥ ギュウゥ



一気にあたしの体を温めたのは
後ろからいきなり
抱きついてきた壱助さんだった

⏰:10/02/10 16:55 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#551 []
 
「維持など張らずに‥
此方に来れば良いものを」

首を抱くようにして
絡みつく腕が
男らしいくせに美しくもある


「べ‥別に、維持なんて‥」


言い訳を並べようとした口に
華奢な指が触れた

⏰:10/02/10 16:57 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#552 []
 
「ほぉう‥」

「壱助さんが‥
あく‥悪趣味だから」

いつもと違って
暖かい壱助さんの体に
とても違和感を覚えて


なんだかいつもとは
別の人のような気もして‥

乱れる鼓動を
止めてしまいたかった

⏰:10/02/10 16:57 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#553 []
 
「‥こいつぁ、手厳しい」


急に横で見せた含み笑いに
いつもより瞬きを多めにして
顔を背けてみる


「おや‥顔が赤く‥」

「言わないで下さいぃっ!!」


もう‥香夜は溶けそうです。

⏰:10/02/10 16:58 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#554 []
 
そんな火照った顔を見るために
出し惜しみしてたかのように
ちらちらと粉雪が舞う


「雪だぁあっ!!
ほらっ壱助さん雪‥」


降り出した雪が
あたしを子供にさせたから

夢中にさせたから

横にいた貴方をも
消してしまったから

⏰:10/02/10 16:59 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#555 []
 


 ――――――‥




_

⏰:10/02/10 16:59 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#556 []
 

「おや、おや
随分と大胆‥ですねぇ」


意識が飛びそうなほどに
唇から伝った熱で



‥早くも、雪解けの予感です。


_

⏰:10/02/10 17:00 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#557 []
 
【 お ま け 】

「あ‥あれは事故‥」

「事故?‥ほぉう」

「そうです事故です事故っ!!」

「‥あの後
物足りずに自ら唇を‥」

「言わないでぇえぇぇえっ!!!」


‥めでたし、めでたし。

⏰:10/02/10 17:04 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


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