浮 き 世 の 諸 事 情 。
最新 最初 🆕
#201 []
 
しかも、それから
ずっと面倒見てくれてる。
扱いは‥まぁ考えないとして


お金だってないのに‥。



―‥ただの人助け?
あたしに対する同情かしら

⏰:10/01/30 19:52 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#202 []
 
「さて、」

壱助さんが珍しく
自分から口を開いた

そして立ち上がる。


また‥花街?
だけど、まだ午前中よ?

⏰:10/01/30 19:53 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#203 []
 
「‥行きます、か」

すっと腰を上げて
帯をきつく引っ張り整える


「何処‥行くんですか?」

不安そうに見つめると
ひんやりとした手が
あたしの腕をしっかり捕まえた

⏰:10/01/30 19:54 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#204 []
 
「なっ‥何処に?!」

「その内わかります、よ」




あたしと壱助さんの温度差は
一ヶ月経っても縮まらない

⏰:10/01/30 19:55 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#205 []



「壱助さぁんっ」

こちらの呼びかけに
一切振り返りもせずに
ただ腕を引いて街を歩く

そんな中でも
町娘の黄色い声が聞こえる

"あら、色男ーっ"
"見とれちゃうわぁー"

⏰:10/01/30 19:55 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#206 []
 
自然と眉間にしわが寄った

だけど当の本人は
ぴくりともしない
普段から持て余されてる色男は
もう馴れているのだろう



‥憎たらしい。

⏰:10/01/30 19:56 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#207 []




「あらぁああ!!壱助さんっ
紹介しに?」

うわ‥綺麗な人‥。

団子屋から出てきたその人は
壱助さんを見るやいなや
顔に花を咲かせた

⏰:10/01/30 19:57 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#208 []
 
「今日はちょいと、別件でして」

「あら‥そうなのかい
ちょいと時間があるならさぁ
紹介しておくれよぉっ!」


その人と壱助さんが話す姿は
何故かしっくりきて

‥お似合いだった

⏰:10/01/30 19:58 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#209 []
 
"では‥"と言うと
壱助さんはあたしに
横目で合図をする


「あ‥香夜です!!はじめまして」

ぺこりとぎこちなくお辞儀をした

⏰:10/01/30 19:58 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#210 []
 
「香夜ちゃん?
可愛いじゃないかぁーっ
やっぱり壱助さん、
お目が高いよぉーあんた!!」

ぽんっとあたしの肩を叩いく

その美しい手が
初めてとは思えないくらい
優しくて暖かかった

⏰:10/01/30 19:59 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#211 []
 
「伊代さんにゃあ、劣りますぜ」


あたしなんかと扱いが違う
優しい目で見つめてた
この色男め‥
そんな言葉がぽんと出るなんて

確かに綺麗だし、いい人そう
‥だけど、ちょいと悔しい

⏰:10/01/30 20:00 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#212 []
 
「馬鹿言うんじゃないよぉ!全く」

壱助さんを叩くのも
何となく馴れてる気がして‥


やっぱりあたしなんかは
まだ付き合いが浅いんだって
思い知らされるのだ。

⏰:10/01/30 20:01 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#213 []
 
"団子屋の女将の伊代です"と
笑顔で言われて
ついついつられて笑顔になる


大人の女と言えば
"あの母親"しか印象にないから
なんだか不思議な感じがするの

⏰:10/01/30 20:02 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#214 []
 
「‥では、これで」

息つく間もなく
またぐいっと手を引かれ
伊代さんに軽くお辞儀して
団子屋を後にした


「あれは‥仲いいのね、きっと」

クスっと笑いながら
伊代は二人の背中を眺めた

⏰:10/01/30 20:04 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#215 []




「‥此処ですか?」

壱助さんが足を止めたのは
怪しい雰囲気の
お店‥のような建物の前

手を引かれて入ってみると
これまた怪しいお婆さん

こ‥怖いじゃあありませんか

⏰:10/01/30 20:04 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#216 []
 
「お願いします、ね」

そう言うと今度は
お婆さんに手を引かれて
襖の奥へ


「ちょ‥壱助さん?!」

壱助さんは
こちらに来る様子もなく
側にあった椅子に腰を掛けた

⏰:10/01/30 20:05 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#217 []
 
次の瞬間壱助さんの姿が消え
ばんっと襖が現れた

‥な、何でぇえ?


「あの‥何を‥」


またこの人も
あたしの存在無視ですか‥?

⏰:10/01/30 20:05 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#218 []
 
お婆さんは物差し片手に
あたしを睨み付ける

それはもう‥殺されそうなくらい


「あんた‥年は?」

しゃがれ声が沈黙を破る

「じゅ‥十八‥です」

⏰:10/01/30 20:06 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#219 []
 
"へぇ"と無関心な声を出し
日焼けした黒い手が
こちらに物差しをあてがう

こっちが喋ろうもんなら
キッと睨み付けられる




一体何なんですか?

⏰:10/01/30 20:06 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#220 []
 
「きゃっ‥何するんですか?!」

突然胸を鷲掴みにする
小さな骨張った手

「‥中の下だね」

壱助さんと同じ捨て台詞。

反論する間もなく
お婆さんは何か書き留め
算盤をはじき出した

⏰:10/01/30 20:07 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#221 []
 
"こんなもんかねぇ"と呟くと

「壱助!!ちょっと来な!!」


壱助さんを呼び捨て‥
どんな関係‥?

すると壱助さんが
襖の向こうから現れ
あたしに目もくれずに
お婆さんの元へ

⏰:10/01/30 20:08 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#222 []
 
「こんなもんでどうかねぇ?」

さっきの紙を壱助さんに渡す
少し顔をしかめて
こしょこしょと耳打ち

「まぁ、色男の言うことにゃあ
聞かない訳には‥」


こしょこしょ

こしょこしょ

⏰:10/01/30 20:08 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#223 []
 
「これは、有り難い」

「2、3日したらまた来な」


話は終わったのか
あたしは一切事情を知ることなく


また手を引かれる

⏰:10/01/30 20:09 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#224 []
 
顔色一つ変えない壱助さんに
あたしは事情を聞かなかった





そうじゃない。

‥聞けなかったんだ

⏰:10/01/30 20:10 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#225 []
 

あの耳打ちから漏れた言葉
確かに聞こえたのは





"お金"のやり取り

⏰:10/01/30 20:11 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#226 []
 


ねぇ‥壱助さん




あたしを売るんでしょう?


_

⏰:10/01/30 20:11 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#227 [笹]
第八章 【捨てられて】

*。*。*。*。*
壱助が自分を助けた理由を
考え出した香夜ちゃん
そして何故か
色んな人に嫉妬してしまう

相変わらずな壱助さん

香夜ちゃんを拾った理由は
"売る為"なのか‥否や
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/30 20:15 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#228 [我輩は匿名である]
>>196-230

⏰:10/01/30 21:47 📱:W53H 🆔:QSzgxyWw


#229 []
>>228
いつも安価有難うございます ^^

よかったら感想板にも
いらしてください>< !!

⏰:10/01/30 21:50 📱:D905i 🆔:weUwJGLs


#230 []
 
さて‥これで用も済みやした


―‥もう

おさらば、ですよ



"能事終われり"、ですかね

⏰:10/01/31 19:06 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#231 []



壱助さん
もうさよならですか?

確かにあたしは
お金ばかり喰って
役立たずだし、むしろ足手纏い
特別可愛くもないし
‥中の下だし

連れてるだけ無駄かもしれない

⏰:10/01/31 19:07 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#232 []
 
だけど最初からその気なら
‥優しくしないで欲しかった


死ぬなと言ったのも
遊女屋から連れ戻したのも
全部このため?


せっかく
居場所を見つけたと思ったのに

⏰:10/01/31 19:08 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#233 []
 


壱助さん‥


_

⏰:10/01/31 19:08 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#234 []




壱助さんの様子は
いつもと何一つ変わらない

やっぱりあたしは
"所有物"でしかなかった


ああ‥どうしよう
聞いてみようかな

⏰:10/01/31 19:10 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#235 []
 
だけど"そうです、よ"なんて
はっきり言われちゃったら
泣いちゃうかもしれない

壱助さんは確実に
あたしの変化に気付いてる
いつもより多く
こちらに目配りしてるから‥


深く息を吐く
このまま魂も一緒に抜けそうだ

⏰:10/01/31 19:11 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#236 []
 
結局捕らえられる運命か
結局売られる運命‥か


壱助さんに出会って
人生に少し期待したのに


やっぱり運命は変えられない?

⏰:10/01/31 19:12 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#237 []
 
そんなことを考えてばかりで
目の奥が火傷しそう

ここまできて
泣いたら‥負けだ



「どうか‥しました、か」

見かねた壱助さんが
あたしの前にお茶を差し出す

⏰:10/01/31 19:12 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#238 []
 
これも機嫌取り?
最後くらい優しくしようって?

考え出したら止まらない性格だ

「‥」

目が合わないように
無理やり目を伏せる

⏰:10/01/31 19:13 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#239 []
 
「雨でも‥降るんですか、ね」

晴れ渡る空を眺めてる

「私を‥売るんですか?」


すると壱助さんは珍しく
驚いたような顔をして

そして一瞬にして
いつも通りに戻った

⏰:10/01/31 19:13 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#240 []
 
「さぁ‥」


はぐらかすんだ
いつもそうやって。

都合が悪いとき、
面白がってるとき‥いつもそう

1ヶ月でやっと知れた
貴方の癖です。

⏰:10/01/31 19:14 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#241 []
 
「どうでしょうか、ねぇ」

嫌だ‥嫌だよ‥
嫌だよ、壱助さん

独りにしないでよ‥
どこにも行っちゃ嫌‥


ああ‥堪えきれない。
目の前がぼやける

⏰:10/01/31 19:14 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#242 []
 
寝てしまおう。
今日はもう寝てしまおう。
だけど‥朝が来るのが怖い

「もう、お休みですかい?」

「‥」

背を向けて布団をかぶると
"おや、おや"と
溜め息混じりに聞こえた

布団が冷たい

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#243 []



結局なかなか寝付けなくて
寝てはすぐ目が覚めて‥
それの繰り返し

だけど着実に
夜は明けていって
ついに壱助さんが動き出した


襖の奥から聞こえるしゃがれ声
"迎え"にきたんだ‥

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#244 []
 
あたしは息を潜めて
ぎゅっと小さくなった
体が小刻みに震えてるのが分かる


このまま目を開けなければ
見逃してくれたりしないかな
今から窓の外に逃げ出そうか

そんなことばかりが
頭の中を駆け巡る
脳に冷や汗をかいた

⏰:10/01/31 19:15 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#245 []
 
するとまもなくして
襖が開く音がした


「香夜さん‥」


小さく呼びかけた声
そんな声で呼んだって
あたしの気持ちは和らがないよ

⏰:10/01/31 19:16 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#246 []
 
「香夜さん‥朝です、よ」

貴方って人は
本当にいつもその調子
声に全く感情が漏れない

だから時々
その声があたしを突き刺すの


ねぇ‥壱助さん
貴方にとってあたしは‥

⏰:10/01/31 19:17 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#247 []
 



「いったあぁああぁあい!!!」



縮こまった体が飛び起きる
腹部に走る激痛

⏰:10/01/31 19:17 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#248 []
 
「狸寝入りなど無駄、ですよ」

お腹を抱えて縮こまるあたしに
壱助さんはそう吐き捨てた



思わずむせ返るほど
どうやら強く蹴られたらしい

⏰:10/01/31 19:18 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#249 []
 
「最後くらい‥最後くらい
優しくしてくださいよ!!!」

顔を上げて泣きわめく
しかし目の前には壱助さんだけ
あのお婆さんはいない


しかも何か綺麗な色の
布を抱えている

⏰:10/01/31 19:18 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#250 []
 
「最後‥なら、ね」

珍しく人らしい困った顔で
クスッと含み笑い

「‥?」


「最後なら、優しくします、よ
しかし‥

誰が最後と‥言いました?」

⏰:10/01/31 19:19 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#251 []
 
その瞬間目の前が
山吹の鮮やかな色に染まった


「‥着物‥きれい」


息をのむほど綺麗な色の生地に
赤い花の刺繍がされていた

⏰:10/01/31 19:19 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#252 []
 
「でも‥でも壱助さん
あたしを‥売るんでしょう?!」

そういい終わる前に
"馬、鹿"と口元を緩ませて
それをあたしに差し出した


「一ヶ月、経ったので‥
"所有物"から昇格、ですよ」

⏰:10/01/31 19:20 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#253 []
 
「‥壱助さん
あたしのために‥?」

睫毛を伏せただけで
返事はなかった

だけどわかったよ
"早く着てくだせぇ"と
頭をぽんと撫でてくれた

一ヶ月たてば変わりますか?
壱助さんの声が
柔らかく感じたの

⏰:10/01/31 19:21 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#254 []



「丁度良い‥ようですね」

その着物は袖の長さも
丈の長さも胸周りも腰周りも
全部がぴったりで

そこでやっと
"あぁそう言うことか"って
あのお婆さんを思い出す

と同時に
壱助さんを疑った自分を恥じる

⏰:10/01/31 19:24 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#255 []
 
「壱助さん‥
あ、ありがとう‥ございます」

これでもかと言うくらい
頭を深く下げた


「本当に‥疑い深い人です、よ」

そしてまたお茶を啜る
いつもの壱助さん

⏰:10/01/31 19:26 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#256 []
 
「‥ごめんなさい」

「何故、謝る」

この人は大人だと思う
あたしの知ってる大人なんかより
ずっとずっと大人だ。

「‥ごめんなさい。」

「売り飛ばされたいです、か」

「‥い、嫌です」

⏰:10/01/31 19:29 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#257 []
 
「壱助さんっあたし‥!!」

何処までも貴方は
期待を裏切りやしない。

「‥約束しましょう。」

何処までも貴方は優しくて


「貴女を独りにしない、と」


頭があがらないのです。

⏰:10/01/31 19:33 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#258 [笹]
第九章 【守られて】

*。*。*。*
ちょっぴり甘い話←
ちょっぴり甘い壱助さん

"所有物"から昇格した香夜ちゃん
何に昇格したのかは謎ですがw
壱助さんの偉大さが身に滲みます

甘壱助さん
どんな気持ちで言ったんだか(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/31 19:37 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#259 [我輩は匿名である]
>>226-260

⏰:10/01/31 20:56 📱:W53H 🆔:c7HoKKOs


#260 []
 
嫉妬‥、
私は餓鬼に‥興味はないです、よ



強いて言うなら
‥"保護者"ですか、ね



"親の心、子知らず"

⏰:10/02/01 17:03 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#261 []
 
「いやぁあぁあああ!!」

どんなに暴れても
壱助さんの力に勝てるはずもなく

「少し黙ってくれや、しやせんか」

ぐいっと片手であたしの両腕を掴み
せっせとそれを帯で縛り上げる

前の帯がもういらないからって
そんな事に使わなくても‥

⏰:10/02/01 17:04 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#262 []
 
あっさり両腕を縛られ
捕らわれの身

「解いてください!!」

「何、故」

またお茶を啜る
何事もなかったかのように

「何故って‥こうする理由は?!

ちょっと戻ってくるのが
遅かっただけじゃないですか!!」

⏰:10/02/01 17:05 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#263 []
 
―‥少しの沈黙
一気に空気が凍りついた

カタンと湯飲みを置く
またその落ち着き方が怖い



「ほぉう‥遅かった"だけ"、と」

_

⏰:10/02/01 17:06 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#264 []
 
いつも以上に鋭い目が
あたしを滅多刺しにする

‥心臓が止まりそうですよ



―‥事の発端は今日の午前中の事

⏰:10/02/01 17:06 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#265 []



「えーっと、漢方薬‥と
後は、お茶の葉と‥
それからぁー‥何だっけ?」

朝っぱらから
‥最早あたしの日常の一部だけど
顔面ひっぱたかれて、

買い出しに行ってこいって
買ってくる物を
呪文みたいに聞かされて
ぴょいっと宿から放り出された

⏰:10/02/01 17:07 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#266 []
 
「そんな一回じゃ
覚えられないよー‥もう」

ぶつぶつ言いながら
街のあちこちを行ったりきたり


しかも荷物が増える増える。

これを一人で持てなんて
壱助さんはやっぱり鬼だ

⏰:10/02/01 17:08 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#267 []
 
だけどそんなこと言ったら
どんなことになるか‥


とりあえず、骨一本は犠牲だ‥


いろいろと目に見えてるので
一人で頑張ってた訳です。

⏰:10/02/01 17:09 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#268 []
 
「あらお嬢ちゃん
そんなに大荷物、大変ねぇ‥
財布出せるかい?」

「あぁ‥大丈夫‥です」


袖の中を何とか弄る

手は吊りそうだし肩凝るし
早く済ませて帰りたいったら
この上ない

お金足りたかなぁー‥
‥嘘、ちょっと待って

⏰:10/02/01 17:09 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#269 []
 



「お財布がなぁああい!!!」



_

⏰:10/02/01 17:10 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#270 []
 
だってさっきまでここに‥
どこかに落としたかなぁ
あっれー‥?

がさがさばたばたばたっっ


「うぎゃあぁああっ!!!」


足元が荷物で埋まる
思いっきりぶちまけてしまった

⏰:10/02/01 17:11 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#271 []
 
今日はついてないや‥

溜め息を付き
ぺこぺこ頭を下げて
慌てて荷物を拾う

あーあ、誰か助けてくれな‥


「大丈夫ですかい?」

「ふえ?」

⏰:10/02/01 17:11 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#272 []
 
目の前には
荷物拾いを手伝ってくれてる
男気溢れる人。

って言うか
壱助さんばっかり見てたら
どんな人も
男らしく見えるんだけど‥


「あぁっ‥すみません
ありがとうございます」

⏰:10/02/01 17:12 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#273 []
 
男の人はこうでなくちゃ!!

なぁんて壱助さんを思い浮かべて
思ってしまう不束物です


「これ、貴女の財布ですか?」

「あぁああ!!!あったぁぁ!!!」

確かに壱助さんから預かった財布
いやー助かったぁ
死ななくて済みそうです‥はは

⏰:10/02/01 17:13 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#274 []
 
「ふはは、元気な方だ」

そんな事言われちゃって
しかも目尻下げて笑われて
不覚にも、どきどき

ちゃっちゃと会計済ませて
"お茶でもおごらせて下さい"
なんて言おうもんなら

"お茶は是非と言いたいですが
おごりでは‥"
なんて遠慮するもので

⏰:10/02/01 17:13 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#275 []




「本当に面白い方だ」

本当によく笑う人だなぁ
壱助さんぴくりともしないもんな


んー‥人ってこうあるべきよね

⏰:10/02/01 17:14 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#276 []
 
「よかったらこの後
お時間‥いただけませんか?」

その人は祥吉さんと言って
この街の大工さんらしい。


「あぁ‥はい!!」

まぁ少しくらいならって
思ったわけですよ

⏰:10/02/01 17:15 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#277 []



「‥いい人だったんだもん」

確かにいい人だった
壱助さんばかりといるから余計

「ほぉう‥
知らない叔父さんには
付いて行くなと‥
教わらなかったんですかい?」

縛られたあたしを
舐めるように眺めながら言った

⏰:10/02/01 17:16 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#278 []
 
「そんな‥子供じゃないです」

いつまでも子供扱いして‥
もういい加減嫌なのだ

帯を解こうと必死にもがく
だけどもがけばもがく程
痛くなるくらいに締め付ける



「では‥大人です、か?」

⏰:10/02/01 17:16 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#279 []
 
壱助さんは立ち上がり
着物を畳に擦り付け
こちらににじり寄ってきた

「そ‥そうですよ!!」


もちろん壱助さんは
あたしなんかを大人だなんて
思ってもなくて‥

「男を‥知らないくせに?」

⏰:10/02/01 17:17 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#280 []
 
冷たい手が頬を這う
あの時の壱助さんが蘇る
あの冷え切った心の‥

「前に‥言ったはず、ですが」

首筋を伝い胸元を緩めて

「や‥」

「男はこういう物‥だと」

舌を這わせて

⏰:10/02/01 17:18 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#281 []
 
「いや‥やめて」

「最後まで、されなきゃ‥
わからないんですかい?」

「いやぁあぁっ」


縛られた手は役立たずで
声を上げても無駄だと言われ
ただ泣くしかなかった

⏰:10/02/01 17:18 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#282 []
 
「優しさなんてのは‥
ただの餌、ですよ」

酷いよ‥酷いよ貴方
みんながみんな‥
そういう訳じゃないじゃない


あたしに跨る壱助さんが
冷たい目で見下ろす

祥吉さんも‥そんな目だったかも

⏰:10/02/01 17:19 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#283 []
 
「嬉しかったんです、か

こんな事‥されて」


唇が今にも触れそうなくらい

壱助さんの吐息は暖かかった

⏰:10/02/01 17:20 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#284 []



あれから祥吉さんに
唇を奪われてしまい
運良く?悪く?
壱助さんに見つかってしまい
祥吉さんは何処かへ蹴り飛ばされ



‥あたしはこういう訳で

⏰:10/02/01 17:20 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#285 []
 
「さて‥お仕置きです、よ」


壱助さんは
"子供"と接吻なんて
‥真っ平だそうで


も、もちろんあたしもよ!!
この人としたら
唇食いちぎられそうだもの

⏰:10/02/01 17:21 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#286 []
 
体を離してまたお茶。


お茶お茶お茶お茶お茶お茶お茶



その内体が緑色になるわよ!!
‥もう

⏰:10/02/01 17:22 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#287 []
 
「どう‥されたいです、か」

帯解かれたいです。

「ここで男を知ります、か
あぁ‥それは無理でした」

「へ?」

「‥中の下では、"目覚め"ません」

‥本当に緑色になればいいのに
なんて、思うほど憎い

⏰:10/02/01 17:22 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#288 []
 
「そうです、ねぇ
三角木馬に座るも結構
針山を登るも結構
爪でその皮膚
丁寧に剥いでやりやしょう、か

お薦めは‥
爪との間に針をぶすっと‥」


「ぎゃあぁあぁあっ」

⏰:10/02/01 17:25 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#289 []
 
痛い‥痛すぎる
って言うか

なんでそんな拷問好き?
三角木馬とか‥本格的だし
本物の変態‥


爪とか、ぜーったい無理!!
だったら死んだほうが‥

⏰:10/02/01 17:26 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#290 []
 
「死なせません、ぜ」


急に柔らかくなる声
やっぱりわかる
壱助さんの微妙な声の変化


「無駄な命に、してはいけない」

「‥わかってますよ」

⏰:10/02/01 17:27 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#291 []
 
死んだりしない
お父さんのためにも‥。


「まぁ、今回は‥見逃しましょう
父上から預かった命、ですから」

「ほんとですか?!」


久しぶりの生きた心地ですよ

⏰:10/02/01 17:28 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#292 []
―――――――‥‥




_

⏰:10/02/01 17:28 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#293 []
 
「ぬぁ‥ぬぁあ‥」

「何、か」

「何って‥だって」

「消毒、ですよ」

「えぇえぇええ?!」

⏰:10/02/01 17:29 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#294 []
 


たった一度、触れただけ

一瞬だけ‥重なった。


_

⏰:10/02/01 17:30 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#295 [笹]
第十章 【奪われて】

*。*。*。*。*
遂にしてしまいました(笑)

唇食いちぎられはしなかった
無事です香夜ちゃん

鬼畜壱助さんのリクに
応えようと思ったらこの様←
ただの拷問好き変態に‥。

壱助さんの口は常にお茶なんで
殺菌作用は期待できますw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/01 17:33 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#296 [我輩は匿名である]
>>258-300

⏰:10/02/01 21:28 📱:W53H 🆔:G6YaoaOg


#297 []
 
"立てば芍薬、座れば牡丹、
歩く姿は百合の花"

そんな言葉がありますが
そんなに美しい女性って
実際にいるのかな?


壱助さんは
出会ったことあるんだって

今日はそんな壱助さんの
少し昔のお話です。

⏰:10/02/01 22:32 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#298 []




色がましい声で溢れる此処に
そんな声が一切聞こえない部屋

「また、来やしたぜ?」

毎日のように通いつめるのは
此処目的ではない

「また来たのかい
‥懲りない男だねぇ」

⏰:10/02/01 22:32 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#299 []
 
目的はこの遊女

容姿端麗
性格も気は強いが悪くはない


「まぁ、まぁ」

決まって距離を少しばかり取って
隣で足を崩す

⏰:10/02/01 22:33 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#300 []
 
新しい着物だとか簪だとか
そんなことを言えば
"よく見てるねぇ"と
呆れ顔で笑顔を向ける


真っ白な首筋にある小さな黒子
彼女は好きじゃないと言う


‥私はそうは思わないのですが

⏰:10/02/01 22:33 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#301 []
 
「あんた位だよぉ?
此処へ来て手を出さないの」

「ほぉう‥そりゃあいい」


「金払ってるんだから
何したっていいんだのに‥」


"好き者だねぇ"と酒を差し出す

⏰:10/02/01 22:34 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#302 []
 
「他の輩と‥
一緒にされちゃあ、困りやすから」


他に理由があると言えば
ないとは言い切れません、ね



好きな女にゃ、
金払って手を出す気はないんでね

⏰:10/02/01 22:35 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#303 []
 
「全く‥馬鹿な人」

赤い紅を緩ませて
本当はあどけなさが残る
白いお粉で顔を隠して
金で買われる惨めな女


「あたしが抱いてと言っても
抱かないのかい?」

少し不安そうに顔を覗き込む

そんな顔して
‥何を求めてるんで?

⏰:10/02/01 22:36 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#304 []
 
「"外"に出たら‥いくらでも」

「それなら、あんたのは
一生お目にかかれないねぇ」


嫌味ったらしく
目を細めて呟いた



ほう‥貴女も好き者です、か

⏰:10/02/01 22:36 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#305 []
 
「まだ返し終わりません、か」

心配そうに見つめれば
"一生だよ"と言う


この遊女には莫大の借金がある
自殺した父親の残したものだ

それを返すために
此処で体を売っていると言う

⏰:10/02/01 22:37 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#306 []
 
「一生売ってもね、
終わらないんだよ、好き者さん」


煙管を吹かして
煙を宙に漂わせる

それをぼうっと眺めて
消えるのを見送っていた

⏰:10/02/01 22:37 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#307 []
 
「‥体に悪いですぜ?」

「知ってるさ、
これで死ねるなら‥死にたいよ」

馬鹿なことを言う人です、よ

「‥金なら、私が代わりに‥」


すると大口を開けて笑った
他の女なら下品な姿だ

⏰:10/02/01 22:38 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#308 []
 
「お節介は、よしとくれよ
あんたにゃ関係ないだろう?」

曇った目の奥が
叫んでいるじゃあ、ないですか

"助けてくれ"と
言ってるっというのに


全く遊女は、演技が上手い

⏰:10/02/01 22:39 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#309 []
 
「‥好き者さん?」

最期だと甘えます、か

「壱助と、申しまして」



少し躊躇いやしたか
所詮私は貴女の"顧客"

⏰:10/02/01 22:39 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#310 []
 
「壱助さん‥抱いとくれよ」

真っ白な華奢な肩
何人がそこに触れましたか
‥私は、何人目で?


「此処では‥控えます、よ」

此を嫉妬と言うならば
‥受け入れ、ましょうか。

⏰:10/02/01 22:40 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#311 []
 
「‥汚いからかい?」

「いえ、」

「‥最期に、
あんたに抱かれたいんだよ」

「今日は、これで‥」

あぁ‥貴女と言う人は
私の気持ちを知ってるくせに‥

涙に弱いと知ってお出でで?

⏰:10/02/01 22:41 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#312 []
 
「嫌なんだよ‥
一度でいい‥壱助さん」

やっと子供らしくなって
大きな雫をこぼして

"最期"などと言いますか


「‥もう大人でしょうに、
みっともない、ですよ」

⏰:10/02/01 22:41 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#313 []
 
力なく抱き締めると
しがみつくように
着物に爪を立ててただをこねる


「馬鹿です、ね‥全く」


軽く口元に口づけた

⏰:10/02/01 22:42 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#314 []
 
色がましい声に埋もれて
聞こえる泣き口説く声

背中に訴える枯れた声



貴女を愛した男は
酷く我が儘で

貴女が愛したであろう男は
‥酷く情けなかった

⏰:10/02/01 22:43 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#315 []
 
―‥"籠の鳥"
振り返った時には
何も掴めなかった無力の掌と

煙管と白い着物に染み付いた
美しすぎて恐ろしい赤い花



こんなにも‥
お慕い申し上げていたのに、と

嘆いたって宙に浮いて消えるだけ

⏰:10/02/01 22:43 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#316 []



「立てば芍薬、座れば牡丹
‥歩く姿は何とやら」

月光に浮かぶ
目の前の小娘を‥

「うぅ‥壱、助さん」

また愛そうなんて、

「‥程遠い、か」


嗚呼‥わからない男です、よ

⏰:10/02/01 22:44 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#317 [笹]
番外編 【後ろ髪、引かれて】

*。*。*。*。*。*
何となく切ない物が書きたくて
思いついたお話

壱助さんの昔の悲話。
壱助さんの誠実さと
優しさやらなんやらが
伝わったらいいなぁ ◎
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/01 22:48 📱:D905i 🆔:CnOOZU0s


#318 []
 
消毒だと言っているのに‥


"顔に紅葉を散らす"訳を




教えていただけや、しやせんか

⏰:10/02/02 22:52 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#319 []




「ただいまぁー」

たった五日で
お茶の葉一缶終わっちゃうって
‥飲みすぎでしょうよ

だから今日は
三つも買ってきちゃったっ
安くしてもらえたし
んー‥得した気分

⏰:10/02/02 22:53 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#320 []
 
これで半月はもつよね
って言っても‥半月だけ

「壱助さーん!!
買ってきましたよーお茶の葉」

「‥」


‥無視ですか。
せっかく買ってきてあげたのにぃ

⏰:10/02/02 22:53 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#321 []
 
「‥返事くらいしてくださいよぉ」


ぷぅっと頬を膨らませて
横になってる背中に訴えた


‥チュンチュン

何も音がしない
静かな日だなぁー

⏰:10/02/02 22:54 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#322 []
 
窓の外をじっと眺めて
葉から落ちる雫を目で追った

‥チュンチュン

‥チュンチュン



「‥もっしっかっしってぇ」

⏰:10/02/02 22:55 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#323 []
 
不思議と緩む頬

着物をきっちり整えたまま
左腕を枕にして
横になってる壱助さんに
そろりと近づいた


「‥寝てる?」

‥って言うか、生きてる?

死んでる?って
不安になる程微動だにしなくて
また肌が白いから余計‥。

⏰:10/02/02 22:55 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#324 []
 
「おーい」

目の前で手を振ってみたり
いろんな角度から覗いてみたり

‥どの角度から見ても
綺麗だよねぇ、と感心。


「‥ふふ」

怪しい笑みを浮かべる
壱助さんの寝顔なんて
‥初めてみた。

⏰:10/02/02 22:56 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#325 []
 
‥いつも寝てるのかなぁ
あたしが出かけてる時
こうして、寝溜めしてるのかな


伸びきった首筋
伏せられた長い睫
筋の通った鼻
腰の辺りなんてあたしより‥

「‥きれいですねぇ、本当に」

全く抜け目がないから
憎たらしくなる

⏰:10/02/02 22:56 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#326 []
 
壱助さんの横に寝転がって
ふうっと息を吐く

天井を眺めて
独特の自然の模様を
ぼうっと目に映してみた


よく耳をそばだてると
微かに壱助さんの寝息が
耳をくすぐった

乱れない規則正しい呼吸

⏰:10/02/02 22:57 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#327 []
 
「‥消毒」

ふと横に顔を向けると
色っぽい唇に目が行く

消毒‥消毒かぁ
本当に触れただけだったけど
柔らかかったなぁ‥
しかも、あったかかった

「‥むふっ」

⏰:10/02/02 22:58 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#328 []
 
思わずにやけてしまうほど
あの一瞬は
あたしの脳内を満たして
甘ったるい時間をくれた


「"消毒です、よ"なぁんて‥
そんな消毒がありますかぁ?」

人形のように固まった頬に
語りかける

もちろん返事はない

⏰:10/02/02 22:58 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#329 []
 
なんとなく
あの簡素な返事が恋しくなる
無関心そうな声も
あるとないとじゃ大違いだ


「‥壱助さん?
拾ってくれて、ありがとお」

面と向かって
言えた試しがないから‥
こんな時に言ってみるのは
ずるいかな、

⏰:10/02/02 22:59 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#330 []
 

こんなに誰かの隣が
居心地いいなんて‥
知らなかったなぁ



‥生きてて良かった。

⏰:10/02/02 22:59 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#331 []



「風邪‥引きます、よ」

目を開けると
目の前で小さく丸まる猫一匹

羽織物をかけてやると
微かに声を立てた


『‥拾ってくれて、ありがとお』

‥珍しく素直になるもんで、
起きているとも気付かずに
‥本当に鈍いです、ね

⏰:10/02/02 23:00 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#332 []
 
寝ている時だけは大人しい
子供同然じゃあ、ないですか


目を細めて前髪をそっと撫でた

するすると指の隙間を抜ける
細くて艶のある具合が
何とも垢抜けていて
子供だと言えないほどに美しい

⏰:10/02/02 23:01 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#333 []
 
「ちょいと‥
無防備すぎやしやせん、か」

裾の辺りが少しはだけて
女らしい脚が見える


小さく開いた手に指を添えれば
赤ん坊のように
ぎゅっと握りしめられた

⏰:10/02/02 23:02 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#334 []
 


「本当に‥放っておけやしない」



呆れるように溜め息をつき
緩く笑った

⏰:10/02/02 23:02 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#335 []




あぁ‥寝ちゃった。


壱助さんが起きたら
"寝顔見ちゃったぁーっ"って
からかってやりたかったのに

まぁそんなの
‥からかいの内に
入らないんだろうけど

⏰:10/02/02 23:03 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#336 []
 
「‥んん」

乱暴に目をこすると
辺りがぼやけて見えた

その時の顔と言ったら
相当酷かったに違いない

「あ‥壱助さん、起きてる」

あたしが買ってきた
新しいお茶の缶が開けられていた

⏰:10/02/02 23:03 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#337 []
 
いつものように
正座してお茶を啜る姿を見て
夢でないと確信する


「あぁ、やっと」

顔をちらりとも向けず
そう言った

自分にかけてあった
壱助さん香りがする羽織物
‥何だかいい目覚め

⏰:10/02/02 23:04 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#338 []
 
「夢でも見ました、か」

「夢‥?」

夢なんて見たかな‥
覚えてないや


すると壱助さんは
顔だけこちらに向けて
視線を落とした

⏰:10/02/02 23:04 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#339 []
 
「"壱助さん、
お慕い申し上げておりました"と
寝言で、言っていたもので‥」



一度瞬きをして
一気に顔に熱が走ったのは
言うまでもない。


"鈍い人です、ね"と
壱助はまた茶を啜った

⏰:10/02/02 23:05 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#340 [笹]
第十一章 【魅せられて】

*。*。*。*。*
寝たふりをしてる壱助さんに
全く気付かずに
あれこれ思い耽って
あれこれ言ってみた香夜ちゃん

寝言なんて言ってないのに
まんまと壱助さんの悪戯に
はまって顔を赤くした香夜ちゃん

素晴らしいまでに鈍いです(笑)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/02 23:08 📱:D905i 🆔:0yxagqRA


#341 [我輩は匿名である]
>>290-340

⏰:10/02/03 19:07 📱:W53H 🆔:IjHWvVJs


#342 []
 
鈍い上に‥
喜怒哀楽が激しい、ときた

この上なく‥厄介です、ね


‥まだまだ
子供じゃあ、ないですか


"かわいさ余って憎さ百倍"
そんな言葉がありますが

‥この憎たらしさは、どうだか

⏰:10/02/03 21:25 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#343 []
 
「どうして‥
あんな事したんですか!?」

「大したこと‥
ないじゃあないです、か」

「大した事ない?
鼻血でちゃったんですよ?!
血ですよ?血!血!血ーっ!」

「鼻血くらい
貴女も、出るでしょう」

「それとこれとは別です!!」

「ほう‥、全く鈍い人だ」

⏰:10/02/03 21:25 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#344 []




「伊代さん!!
どう思いますかぁ?!」

せっせと他の客に
団子やらお茶やら運ぶ
女将に訴えた


「んー‥そうだねぇ、
‥はい、団子お待ちーっ」

⏰:10/02/03 21:26 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#345 []
 
眉間に深くシワを寄せて
ぷうっと頬を膨らます

香夜は物凄い形相で団子を喰らい
一席空けた横に座る
壱助を睨みつけた


「またお茶ですかぁ?
体緑色になっちゃいますよ」

低い声を横に向けて放つ
しかし変わらぬ壱助の表情

⏰:10/02/03 21:26 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#346 []
 
「‥五月蝿い猫です、ね」

茶を啜って
"やれ、やれ"と軽くあしらった


「んもーっ!!いらいらするぅ」

キーっと頭をかきむしり
落ち着かない香夜の前に
仕事が落ち着いた伊代が座る


「全く、何したってんだぁい?」

⏰:10/02/03 21:27 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#347 []
 
はぁとため息を付いて
壱助に視線を落とす伊代

「ちょいと、
わからせてやっただけ、ですよ」

「‥何をだい?」



「壱助さん、人殴ったんです!!」

⏰:10/02/03 21:28 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#348 []



珍しく壱助さんが
買い出しに付いて来てくれた今朝


だけどちょっと
ご機嫌斜めなようで
野良猫にキッと睨みをきかせ
下駄を乱暴に鳴らしてた

⏰:10/02/03 21:28 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#349 []
 
「あ‥壱助さん
鯛焼き食べましょうよーっ」

「‥甘味は好みやせん」

「美味しいのにー‥」

「食べたら良いじゃあ、ないですか」

そう言われたから
買いに行ったんです。

買いに行っただけ!ですよ?

それなのに‥

⏰:10/02/03 21:29 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#350 []
 
「鯛焼き一つくださぁーい」

「毎度ありーっ!!
おや、お嬢ちゃん‥
別嬪さんだねぇ」


鯛焼きを売ってたのは
お兄さんって感じの若い人
威勢がよくて粋な感じ

⏰:10/02/03 21:29 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#351 []
 
「へ?
や、やだなぁーお兄さんっ
そんなお世辞言っても
一つしか買いませんよー?」

とか言いながら
やっぱり内心嬉しくて
顔を赤く染めてしまったんです

「手厳しいなぁー
‥今夜、どうだい?」

まさか鯛焼き屋さんから
そんな言葉でるとは
思いもしないじゃない?

⏰:10/02/03 21:30 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#352 []
 
だから驚いて
ついついどもってしまって‥

「おや、
照れた顔もかわいいねぇ」

なんて言われて
"あいよ"って鯛焼きを
わざわざこちら側にきて
渡してくれたわけです

「あ、ありがとうございます」

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#353 []
 
突然背筋が凍りついた
後ろから殺気


カラン‥コロン


壱助さんの下駄の音が
だんだんと大きくなる

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#354 []
 
「あぁ、では‥こっこれで」

「ちょいと、お話くらい‥」

鯛焼き屋さんに
腕を掴まれ引き寄せられた


カラン‥コロン


来る‥来るよぉーっ
鯛焼き屋さん離れてくださ‥

⏰:10/02/03 21:31 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#355 []
 
「‥鯛焼き屋さん、とやら」

低い声がこちらに向かって
刃を剥いた


「んあ?何だぁ?あんた」



たたたたっ鯛焼き屋さん!!
壱助さんに何て口のきき方っ

⏰:10/02/03 21:32 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#356 []
 
壱助さんの切れ長の目が
鯛焼き屋さんを捕らえた

「私の妻に‥
触れないで、いただきたい」


あたしを捕らえた手がぱっと離れ
鯛焼き屋さんの目が開ききり
口がだらしなく開いていた

「つつ‥妻?!
そりゃあ‥失敬し‥」

⏰:10/02/03 21:33 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#357 []
 
―‥ドカッ


壱助さんの拳が
勢いよく鯛焼き屋さんの
顔面に吹っ飛んできた


あたしの足元に倒れ込んだ
彼の鼻から垂れる赤い血


有 り 得 な い !!

⏰:10/02/03 21:34 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#358 []
 
「壱助さん何てこと‥
‥大丈夫ですか?」

"悪いのは俺の方だ"と
軽く笑って謝る鯛焼き屋さん

「壱助さん!!謝って下さい」

正反対にしれっとした顔で
そんな様子も見せない壱助さん

と言うか
まだいらいらしてる模様
眉間にしわが寄っていた

‥人に当たるなんて酷い

⏰:10/02/03 21:34 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#359 []




結局壱助さんは謝らず
あたしが代わりに謝って
鯛焼きをたくさん買って今

「ねぇ?伊代さん
あたし間違ってないですよね?!」

事情を話せばぶり返す熱
自然と声量も大きくなる

「まぁ、いきなり殴るのは
良くないねぇ‥」

呆れ顔で伊代が壱助を見つめる

⏰:10/02/03 21:35 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#360 []
 
「‥わからない人です、ね」

「ただ手を握っただけでしょう?
それだけで殴るなんて‥酷い!!」


明らかな温度差に
伊代はくすりと笑った

「手をあげるのは良くないけど‥
全く、わかりやすいねぇあんた」

⏰:10/02/03 21:36 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#361 []
 
「‥」

「香夜ちゃんも、
わかってやんなよぅ?」


わかってやれって‥
人を殴る気持ちなんて
あたしにはわかんないよ

何だか突然泣きたくなった

⏰:10/02/03 21:36 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#362 []
 
「妻に手出されちゃ‥
誰だって‥ねぇ?」

伊代が目で壱助に訴えると
"全くです、よ"と茶を啜る



そんなのはもう
耳に入らないくらい香夜はご立腹

⏰:10/02/03 21:37 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#363 []
 
「こりゃあ‥手強いです、ね」

涙目で伊代に訴える香夜を
横目で見つめて呟いた



「"妻"と言う言葉も
ご存知ないんですか、ね」

‥ぽつり呟き微笑んだ

⏰:10/02/03 21:38 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#364 [笹]
第十二章 【訴えて】

*。*。*。*。*
しょうもない痴話喧嘩
と言うか喧嘩にもならないくらい
温度差が激しいw

2人の性格の差が
はっきり表れた気がします

伊代さん大人っす

ネタ切れそうですw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/03 21:41 📱:D905i 🆔:s1isUj7A


#365 [我輩は匿名である]
>>340-370

⏰:10/02/04 08:23 📱:W53H 🆔:1leDQ1V.


#366 []
 
私の飼い猫は、
幼い頃に親の愛情を
あまり受けてないようで‥

そうとなれば、親代わり



"蝶よ花よ"と育てましょう、か

⏰:10/02/04 19:11 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#367 []




またお茶の葉がなくなり
また買い出し
半月もたなかった‥有り得ない


壱助さんを連れてくると
喧嘩の原因になりかねないので
今日はひとりです。

⏰:10/02/04 19:12 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#368 []
 
「‥。」

一枚のチラシが
お茶屋さんの壁に貼ってあった
ぴらぴらと風になびいて
音をたててるもんだから
ついつい目が行った

「‥わぁ」

胸を時めかせた

⏰:10/02/04 19:12 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#369 []




「壱助さぁぁああん!!!」

子供みたいに駆け寄って
息を切らせて叫ぶ

「何、か」

珍しくお茶飲んでない‥
って、もう無いんだった

ぼうっと窓の外を眺めて
枝に止まる雀を
愛おしそうに見つめてる

⏰:10/02/04 19:13 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#370 []
 
‥お茶なくても
機嫌良いときあるんだぁ

新しい発見である。


「壱助さん!!今日の夜お祭り!!」

そう
あのチラシは夏祭りの物で
心惹かれたの

⏰:10/02/04 19:13 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#371 []
 
だって小さな時に
数回しか行ったことないんだもん
‥水飴とか食べたいし


「それが何、か」

早く茶を渡せと言わんばかりに
湯飲みをカタカタ鳴らす

‥依存症ですかあなた

⏰:10/02/04 19:14 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#372 []
 
「一緒に行きましょうよーっ!!」

人が勇気出して誘ってるのに
"何、故"と言う

乙女心わかれーっ!!もうっ

「‥水飴食べたいんですぅ」

やっぱり今日は
ご機嫌がよろしいらしい壱助さん

「ほぉう‥よし、よし」

睫を伏せて口角を上げ
一度だけ頷いた

⏰:10/02/04 19:15 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#373 []



「壱助さん早くぅっ!!」

浴衣の袖をひらひらさせて
下駄が忙しなく踊る


「まぁ、まぁ」

と言って出てきた壱助さんは
目眩がするほど美しすぎた

緩く着こなした浴衣
懐から見える白い肌の面積が
いつもより確実に多い

⏰:10/02/04 19:16 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#374 []
 
こりゃあ‥
落ち着いてあるけない‥
いかんいかん!!
しっかりしろ香夜!!


「水飴は逃げやしやせん、よ」


‥それでもって
今日はかなり穏やかだから
少し調子が狂います

⏰:10/02/04 19:16 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#375 []
 
壱助さんの一歩後ろを歩く
‥いい匂いがする。

提灯のぼんやりした明かりが
壱助さんの首筋を照らして
この世の物とは思えないくらい

本当に綺麗で‥

やっぱり女なんじゃないかとか
疑ってしまう

⏰:10/02/04 19:18 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#376 []
 
お昼の街の賑わいとは
また違う雰囲気で
家族連れや恋仲の人達が
たくさんいた

周りの人たちに
あたしと壱助さんは
‥どう映ってるんだろう


一歩の距離がもどかしくなる

⏰:10/02/04 19:18 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#377 []



「お父さん!!金魚すくい!!」

小さな女の子が
父親の浴衣の袖を引っ張った

「おぉ!懐かしいなぁ
やってみるかい?」

目線を合わせて小さく屈んで
答えた笑顔が羨ましい


思わず足が止まった
お父さん‥か

⏰:10/02/04 19:19 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#378 []
 
‥ギュウ

突然手に冷たい感覚
目をやれば真っ白で綺麗な手

「金魚すくい‥やりたい、かい」

視線を前に向けたまま
壱助さんがそう言った

「‥え?」

今日の壱助さんは
やっぱりどこか可笑しい

⏰:10/02/04 19:19 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#379 []
 
きっとこの握った手も
ぎこちない喋り方も
壱助さんなりの気配りだ
‥何となくそんな気がした


何も言わずに
あたしの答えを待つ

器用そうに見えて
案外不器用なのかもな‥


今日二つめの新しい発見

⏰:10/02/04 19:20 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#380 []



結局金魚すくいやって
やっぱり壱助さん器用で
ひょいひょいすくうもんだから
叔父さんも困り顔


言うまでもなくあたしは
一匹もすくえず‥。

と言うか正直な所
壱助さんの横顔に見とれてた
睫‥また伸びてた気がしました。

⏰:10/02/04 19:21 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#381 []
 
"猫のくせに、
魚一匹も捕まえられぬとは‥
‥やれ、やれ"


クスっと鼻であしらわれ
いつもの調子の壱助さんに
少し緊張がほぐれた

⏰:10/02/04 19:21 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#382 []




「あ!水飴だよ壱助さん!」

まるで子供なのだ
壱助さんの手を引いて
人混みを掻き分けて先走る

だけどそれでも構わない
だって水飴なんて久しぶりよ!!

「はい、はい」

水飴を手にしたあたしに
呆れるように返事をした

⏰:10/02/04 19:22 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#383 []
 
水飴をびろんと伸ばして
目を輝かせて巻き取る

キラキラ光るそれを
目を細めて眺める壱助さんと
自然と目があった

「‥食べますか?」

「甘味は‥好みません、で」

あぁそうだったと
気落ちするあたしの手を
また引いて歩く

⏰:10/02/04 19:22 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#384 []
 

親子みたいかな?

それとも恋仲同士?



‥何でもいいのだ
ただ今の時間が心地いいの

⏰:10/02/04 19:23 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#385 []



人が疎らになり
明かりもあまり届かない土手へ

蒸し暑かった人混みで
じわりと汗をかいた背中に
ひんやりした心地いい風が吹く


水飴を銜えて
浴衣を気にしながら腰掛けた

⏰:10/02/04 19:23 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#386 []
 
「壱助さんって‥」

あたしの口は
急に語り出すから冷や汗物


"愛する人いますか?"なんて
聞こうとするのだから
‥本当に恐ろしい

⏰:10/02/04 19:24 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#387 []
 
「人混みは疲れます、ね」

「え?あぁ‥
そ‥そうですねぇーあはは」


壱助さんの声が
久しぶりにはっきり聞こえたから
何だか、どきっとした

⏰:10/02/04 19:25 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#388 []
 
「‥満足ですかい?」


水飴を頬張るあたしを見つめて
壱助さんが呟いた


いやもう
壱助さんの浴衣姿だけで満足‥
なんて言えませんよ。ええ

⏰:10/02/04 19:26 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#389 []
 
「はいっ!!
ありがとうございまし‥」


あれ‥?


突然目の前がひっくり返る
微かに首筋に感じる温もり

⏰:10/02/04 19:26 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#390 []
 
「いぃいっ壱助さん?!」

暗くてよかった‥
絶対今あたし顔赤いよ‥


「たまには、
いいじゃあ‥ないです、か」

甘い声が耳をくすぐる

⏰:10/02/04 19:27 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#391 []
 
手を引き寄せられて
壱助さんの膝を
枕にしてしまったあたし


それだけで心臓が壊れそうなのに
華奢で大きな手が
ふわっとあたしの髪を撫でて


もう‥香夜は死にそうですよ

⏰:10/02/04 19:28 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#392 []
 
「‥香夜さん」



優しく頬を撫でて


ねぇ‥壱助さん

⏰:10/02/04 19:28 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#393 []
「―――――‥、」




"あたしもです"と囁いた。

⏰:10/02/04 19:29 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#394 [笹]
番外編 【微笑んで】

*。*。*。*。*
甘甘リクに応えようと
頑張ってみました番外編

しかし会話少なすぎるw
しかも甘くないよーっ ←

すみません
出直してきます(´;ω;`)w

最後の言葉は
ご想像にお任せします //
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/04 19:33 📱:D905i 🆔:5gVCO4/Q


#395 [我輩は匿名である]
>>360-390

⏰:10/02/05 12:42 📱:W53H 🆔:QBCwpTC2


#396 []
 
最近、猫は‥危なっかしい



"親"としての責任が
問われます故‥


そこら寄り付く輩を
‥退治せねばぁ、なりませんで


"親の意見と茄子の花は
千に一つも仇はない"

⏰:10/02/05 22:14 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#397 []
―‥鬼も風邪を引くらしい。

また新しい発見である。


と言うわけで
漢方薬でも買ってこようと
また街に出たのです

やっと此処にも馴れてきて
顔も覚えてもらえるようになった

⏰:10/02/05 22:17 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#398 []
 
「‥さて、そろそろ戻らなきゃ
壱助さんに‥。」

いつだって死と隣り合わせ
壱助さんは殺しはしないって
言ってはいるけど‥

「爪の間に針を‥」


考えるだけで心臓が痛みますよ

⏰:10/02/05 22:18 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#399 []
 
ふうっと深く息を付いて
足早に宿に戻ろうとした


‥足が動かない、あれ?



足がずしりと重い
もしかして死神?迎えに?

⏰:10/02/05 22:18 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#400 []
 
思わず引きつる顔を
恐る恐る下に向けると


「‥え?」


そこにはあたしの着物に
ぎゅっとしがみつく子供
着物に顔を埋めたまま離さない

あたし‥子供産んだかしら
なーんて訳の分からんことを
真剣に考えてしまう

⏰:10/02/05 22:19 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194