浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#401 [笹]
「ごるぁぁぁああ!!!」
突然‥
物凄い形相をした男の人が
こちら目掛けて突進してきたのだ
‥いつだって死と隣り合わせ。
「ちょ‥何何なんなのー?!」
あたふたするものの
子供が地蔵のように重く
ぴくりともしない足
:10/02/05 22:20
:D905i
:mdMMDFsU
#402 [笹]
し、し‥‥死ぬ。
_
:10/02/05 22:21
:D905i
:mdMMDFsU
#403 [笹]
「こっち来るなよぉお!!」
「お前っ!!
米粒を茶碗に残すなって
あれだけ言っただろう!!」
は?
「見えなかったんだぁ!」
「言い訳するなー!!」
明らかに男の人の視線は
この子供に向いている
:10/02/05 22:21
:D905i
:mdMMDFsU
#404 [笹]
「あ‥あのぅ」
あたしを盾にして隠れる子供
とっつかまえようと
あたしの前で機敏に動く人
そしてあたしの周りで始まる
いたちごっこ。
「一粒だけだろーっ!」
「お前っ見えてるじゃあないか!!」
「うぅ‥来るなぁあ!!」
‥厄介な物に巻き込まれました
:10/02/05 22:22
:D905i
:mdMMDFsU
#405 [笹]
:
:
:
「いやぁーお恥ずかしい所を」
先程の鬼みたいな顔とは
打って変わって
がははと笑うその人は
"茂七"と言うらしい。
とても人がよさそうだ
隣にちょこんと座る
口を尖らせた少年は"正宗"くん
米一粒を残した少年だ
:10/02/05 22:23
:D905i
:mdMMDFsU
#406 [笹]
「正宗は姉貴の子供でして」
「お姉さんの‥そうでしたか」
「姉貴は病弱なもんで、
よく俺が世話するんですが‥」
見る限り
あまり懐いてなさそうだ
「茂七‥怒ると怖いんだもん」
正宗くんが拗ねた様子で呟いた
子供らしい理由に
思わずクスリと笑ってしまう程
:10/02/05 22:23
:D905i
:mdMMDFsU
#407 [笹]
「迷惑かけちゃいやしたし‥
飯でもおごらせてくださいよ!」
非常に爽やかである
うん‥いい青年ってかんじ
‥なんて品定めするほど
あたしは男を知りません
「本当ですかぁっ?」
食べ物には目がありません
:10/02/05 22:24
:D905i
:mdMMDFsU
#408 [笹]
"道草を喰わない、こと"
‥鬼が呼んでいる
"でないと‥お仕置きです、よ"
か‥帰らねば
:10/02/05 22:24
:D905i
:mdMMDFsU
#409 [笹]
「お言葉に甘えたい所ですが、
"鬼"に殺されるので‥あは」
「鬼?」
「鬼のような人が、待ってるので」
:10/02/05 22:26
:D905i
:mdMMDFsU
#410 [笹]
:
:
:
何だか足取りが軽い
だって明日
男の人とお食事なんて‥
「うふふー」
「ほぉう‥
こりゃあ随分と
遅い帰りで、いらっしゃる」
心臓‥いや
体の全部の臓器がびくりとした
:10/02/05 22:27
:D905i
:mdMMDFsU
#411 [笹]
「あぁあ‥ちょっと」
あははなんて笑って見せても
‥もちろん無駄で
布団の上で正座をする壱助さんは
怪しい笑みを浮かべた
「病人をほったらかしにするとは
‥薄情な人です、ねぇ」
:10/02/05 22:28
:D905i
:mdMMDFsU
#412 [笹]
額にあてていた濡れた手拭いを
ピンと張って‥戦闘態勢ですね
「いや、そのぉ‥」
「お仕置きがそんなに
‥お好きです、か」
「ひぃっ!!」
「自虐的です、ね」
「‥ッうぅ!!!」
:10/02/05 22:29
:D905i
:mdMMDFsU
#413 [笹]
壱助さんの右手が
あたしの首をぐっと掴む
細い指が食い込むのが分かる
「く‥るひぃ」
「風邪を引いてます故‥
少々手に力が入りませんで」
鬼‥鬼鬼鬼!!
「もっと苦しんだ顔が
見たいもの、ですが‥ねぇ」
死ぬ‥窒息死‥馬鹿力‥
:10/02/05 22:29
:D905i
:mdMMDFsU
#414 [笹]
にやりと微笑む壱助さん
優しい笑顔なのだ
いや優しすぎる笑顔なのだ
笑顔が怖いと思うのは
壱助さんくらいだよ
「い‥ひふへ」
ぱっと手が離されると
肺が破裂しそうなほど息を吸い
酸素が脳に一気に入って
体が浮きそうになった
:10/02/05 22:30
:D905i
:mdMMDFsU
#415 [笹]
「‥んぐっはぁ」
「何を‥してたんですかい?」
手拭いをこっちに差し出し
"早く濡らして絞れ"と言うように
顔に押し付ける
もう治ったんじゃないですか?
壱助さん不死身そうだし
「それが‥」
:10/02/05 22:31
:D905i
:mdMMDFsU
#416 [笹]
:
:
冷たい水に手を浸ける
壱助さんの手みたい‥
ぎゅっと絞りながら事情を話すと
乱暴に手拭いを受け取った
「その茂七とやらは‥何者で?」
少し気だるそうに
帯を緩めて白い肌が顔を出す
いつになっても慣れない
この美しさ
:10/02/05 22:31
:D905i
:mdMMDFsU
#417 [笹]
「すごくいい人そうでしたよ!
金物屋さんをやってるそうで‥」
「ほぉう‥」
明らかに話し聞いてないし‥
興味ないなら聞かなきゃいいのに
ずずっと茶を啜るのは
いつもと変わらず元気な気がする
:10/02/05 22:32
:D905i
:mdMMDFsU
#418 [笹]
「私は香夜さんの
‥"親代わり"です、ぜ?」
親代わり‥うん
まぁそうなのかもしれない
自分で言うのもあれだけど
"飼い主"同然である
「まぁ‥そうですねぇ」
:10/02/05 22:33
:D905i
:mdMMDFsU
#419 [笹]
心配してくれてるのかな?
それとも‥"焼き餅"かなぁー
なぁーんて‥
壱助さんは
あたしみたいな子供に
妬くような人じゃないけど
:10/02/05 22:33
:D905i
:mdMMDFsU
#420 [笹]
「そやつに会う‥
義務が、あります‥ねぇ」
カタンと湯飲みが音を立てる
あの口角だけ上げた笑みは
この世で一番恐ろしいのだ
:10/02/05 22:35
:D905i
:mdMMDFsU
#421 [笹]
:10/02/05 22:40
:D905i
:mdMMDFsU
#422 [我輩は匿名である]
:10/02/06 08:59
:W53H
:evpZsMz6
#423 [笹]
:
:
:
「‥何で付いてくるんですかぁ」
結局付いてきた壱助さん
改め保護者さま
「"責任"ですから、ね」
下駄が立てる音は
明らかに不機嫌そうである
:10/02/06 21:16
:D905i
:uaVNeT2k
#424 [笹]
放たれる威圧感に
周りの人々も寄り付かず
町娘たちは
黙って壱助さんを目で追った
「別にそんな‥
ご飯頂くだけですよー」
「二人で来るなと‥
言われてお出でで?」
痛いところをつくものです
:10/02/06 21:18
:D905i
:uaVNeT2k
#425 [笹]
「‥風邪は?
もう治ったんですか?」
「‥ごほごほ
まだ‥です、が」
変な演技しないでくださいよ
棒読みの咳なんて
初めて聞きましたよ、もう
「だったら
寝てなくちゃだめです!!」
立ち止まって後ろを向き
訴えてみても‥無駄
:10/02/06 21:18
:D905i
:uaVNeT2k
#426 [笹]
「あんまり茂七さんに
突っかからないでくださいよ?」
せっかくの楽しみが‥
仕方なく溜め息を付き
前を向いた瞬間だった。
「んぎゃっ!!」
後ろからど突かれて
顔面から地面に突っ込み
走る激痛、土の味
:10/02/06 21:19
:D905i
:uaVNeT2k
#427 [笹]
言うまでもなく
犯人は壱助さんです
「風邪を引いてます故‥
ちょいと、意識が朦朧と‥ねぇ」
鋭い切れ長の目が見下ろす
行かないでほしいなら
素直に言えばいいのに‥
体がいくつあっても足りない位
それでもって
よく耐えられるなと自讃する
:10/02/06 21:19
:D905i
:uaVNeT2k
#428 [笹]
「香夜さん?!大丈夫ですかい?」
心配そうな面持ちで
駆けつけてくれたのは
茂七さんだった
‥ちょっと、間が悪いです
「あぁ‥大丈夫ですよぉーう」
おどけながら立ち上がり
着物の埃をはらった
:10/02/06 21:20
:D905i
:uaVNeT2k
#429 [笹]
"やだー恥ずかしいなー"なんて
へらへらしてるのは
どうやら場違いだったみたい
「‥女性に何てことするんだ!!」
‥茂七さんっ命知らずっ!!
「ほぉう‥」
少し笑みを浮かべて目を細める
逆鱗に触れた合図です
:10/02/06 21:21
:D905i
:uaVNeT2k
#430 [笹]
壱助さんは絶対に
茂七さんみたいな‥
こういう熱い人が嫌いだと思う
‥の前に、男が嫌いだと思う。
:10/02/06 21:21
:D905i
:uaVNeT2k
#431 [笹]
:
:
:
「えっと‥
此方が昨日話した茂七さん」
目の前に座る彼を紹介
茂七さんは間が悪そうに
軽く会釈をした
そして‥
隣に座る威厳ある父(仮)
やはり茶を啜る父(仮)
:10/02/06 21:22
:D905i
:uaVNeT2k
#432 [笹]
「それで‥此方が‥」
「‥香夜の兄、です」
あ‥兄と来ましたか?!
まぁ夫とかよりはましだけど
兄‥はぁ、
あたしの兄にしては美しすぎる
「え、ちょっと‥壱助さ‥」
「"お兄様"です、よ」
いつもより張った声が
ずしりと重くのし掛かる
:10/02/06 21:23
:D905i
:uaVNeT2k
#433 [笹]
「お兄様でいらっしゃいましたか
これは誠に無礼な事を‥」
深々と頭を下げる茂七さん
‥残念ながら
お兄様じゃないんですぅ
「いえ、いえ」
‥この雰囲気で
一体何を話すのか
:10/02/06 21:23
:D905i
:uaVNeT2k
#434 [笹]
:
:
「香夜さんは今お幾つで?」
カチャカチャ
「十八ですよっ」
ズルズル
「いやー一番美しい時だぁ!!」
カツカツ
「やだなぁーっ
そんな事ないですってー」
コツコツ
:10/02/06 21:24
:D905i
:uaVNeT2k
#435 [笹]
ねぇわざとでしょう?
ねぇわざとなんでしょう?
その音!!
食事の時なんて
あたしが音立てると
五月蠅いって怒るじゃない‥
「いち‥じゃない、お兄様?」
「何、か」
「もう少し‥」
:10/02/06 21:25
:D905i
:uaVNeT2k
#436 [笹]
「あぁ、
香夜は本当に良い妹でして‥
あれやこれやとお声が
良く掛かるんですが、ねぇ」
口角が上がった
しかも饒舌
声掛かってるのは貴方でしょ
「もう心に決めた者が
‥居るそうですぜ?」
"ねぇ"と横目で訴え
足をぐいっと踏みにじられ
強要される同意
:10/02/06 21:26
:D905i
:uaVNeT2k
#437 [笹]
「香夜さん‥そうなんですかい?」
茂七さんの見開いた目が
何とも印象的で
「ふぇっ?!
あぁ‥えっと‥まぁ‥うぅん」
語尾を弱めれば
潰され行く足の指
「ゔ‥い、居ますぅ!!!」
もうヤケだ
箸を握りしめて声を張る
折角、いい出会いだと思ったのに
あたし一生嫁に行けないのか‥
:10/02/06 21:27
:D905i
:uaVNeT2k
#438 [笹]
:
:
結局威圧感に負け
大したお話も出来ず終い
「ご馳走様でした
何か、空気悪くなってしまって
申し訳なかったです‥」
頭が上がりませんよ
お兄様‥鬼ぃ様。はは
しかし茂七さんの返事は
予想外だった
:10/02/06 21:28
:D905i
:uaVNeT2k
#439 [笹]
「いやぁそんなそんな!!
お兄様にも早速ご挨拶出来まして
‥これからが楽しみですね!!」
がははとまた笑い
あたしの肩をバシバシ叩く
これから?
‥あたし一応さっき
心に決めた人がいるって‥
:10/02/06 21:28
:D905i
:uaVNeT2k
#440 [笹]
「こんな別嬪さんと
恋仲になれるなんて
俺も運がいいなぁ!!」
ほ?
何を勘違いしてるのか
どこまで前向きなのか
「とんだ勘違い野郎です、ね」
背を向けてぽつり呟いたのは
もちろんお兄(鬼)様。
:10/02/06 21:29
:D905i
:uaVNeT2k
#441 [笹]
刀で一突きするように
躊躇なく毒を吐く
その度ひやひやさせられるのは
言うまでもない
「さ、帰りますよ香夜さん」
腕を掴むでなく
ぎゅっとあたしの手を握りしめ
思い切り引き寄せられた
:10/02/06 21:29
:D905i
:uaVNeT2k
#442 [笹]
「‥?」
ぽかんと口をだらしなく開けた
茂七さんをよそ目に
壱助さんの唇が
あたしの首筋に触れた
「ちょちょちょいっ!!!
お‥お兄様何を‥?!」
わけわかりません
状況が読めません
:10/02/06 21:30
:D905i
:uaVNeT2k
#443 [笹]
「‥"壱助さん"です、よ」
「え‥お兄様じゃあ」
目をぱちくりさせて
珍しい物を見るような茂七さん
こんな変な所見られるなんて‥
恥ずかしすぎる!!
:10/02/06 21:30
:D905i
:uaVNeT2k
#444 [笹]
血液が体を
何度も何度も巡るのがわかる
勢いの良い鼓動が帯びる熱
「‥妻です、よ
さぁて、帰ったら直ぐに
此の火照った体を頂こう、か」
首筋を一舐め
生暖かい感覚に支配され
足の力が抜けそうだ
「なな‥なっ」
顔を真っ赤にした茂七さんは
嵐のように目の前から去った
:10/02/06 21:31
:D905i
:uaVNeT2k
#445 [笹]
もう‥もう‥もう!!!
「壱助さんのすけべぇえぇえ!!!」
「おや、おや
威勢が良い妹です、ね」
破廉恥なクセに美しいから
結局、憎めない訳ですが‥
:10/02/06 21:32
:D905i
:uaVNeT2k
#446 [笹]
:10/02/06 21:35
:D905i
:uaVNeT2k
#447 [我輩は匿名である]
:10/02/07 09:32
:W53H
:CcPPBOhA
#448 [我輩は匿名である]
:10/02/07 09:33
:W53H
:CcPPBOhA
#449 [れぃ]
:10/02/07 11:31
:N04A
:eBOH6ab6
#450 [笹]
酒は人を変えますが、
酔った姿が‥本当の姿
とも言うもんで‥。
しかし、酒に飲まれては
だらしなくなるものです、よ
"赤いは酒の咎"なんぞ‥
言い訳は無用です、ぜ
:10/02/07 18:26
:D905i
:zJfCkqns
#451 [笹]
:
:
―‥ある日の事である。
宿から聞こえるむせび声
何かと思って襖を開ければ
ぽつり部屋の片隅で
‥うずくまる"雌猫"一匹
「うぅ‥ッグズ」
‥酒臭い
虚しく転がる一升瓶
滴がぽたり
:10/02/07 18:26
:D905i
:zJfCkqns
#452 [笹]
足袋が畳に擦れる音に
ぴくりと反応しこちらを向いた
「壱助さぁああぁん」
酷い顔‥ですねぇ
「遅かったじゃ‥ッヒク
遅かったじゃらいれすかぁ」
四つん這いで着物にしがみつく
流石"雌猫"
:10/02/07 18:26
:D905i
:zJfCkqns
#453 [笹]
「‥酔ってるんで?」
「酔ってまぁぁあっしゅ!!」
"えへへ"なんて言いながら
右手を挙げて見上げた
‥厄介な者に出くわしやした、ね
:10/02/07 18:27
:D905i
:zJfCkqns
#454 [笹]
:
:
先程からひっきりなしに
だらしない笑みを浮かべ
一人騒ぎ立てる
「‥香夜さん」
「なんれすかぁ?ッヒク」
火照った体をよじり
目の前に座った
:10/02/07 18:27
:D905i
:zJfCkqns
#455 [笹]
「‥騒がしいのです、が」
そんな事で
黙るとも思わないが
他にかける言葉がないもんで
「壱助さんも‥
飲みましゅかぁあ?」
馬鹿でかい声が鼓膜を突き刺す
:10/02/07 18:28
:D905i
:zJfCkqns
#456 [笹]
「結構、です」
すると寂しそうに肩を落とし
"飲みましぇん?"と二度押し
―‥全く、困ったもんです、よ
:10/02/07 18:28
:D905i
:zJfCkqns
#457 [笹]
:
:
「まだ‥寝ませんで?」
既に日付が変わり
静まり返った闇に包まれ
照らすは月の光のみ
子供のようにぐずるので
布団を乱暴に投げつけると
ぱたりと声がしなくなる
急に大人しくなられると
ちょいと、不安になるもので‥
:10/02/07 18:29
:D905i
:zJfCkqns
#458 [笹]
「風邪‥引きます、よ」
顔にかかった布団を
除けてやれば
―‥ やられたもんだ
「ぶぁぁあっ!!」
‥糞、餓鬼
:10/02/07 18:30
:D905i
:zJfCkqns
#459 [笹]
飛び出した両手が首に絡みつき
無理やり布団の中に押し込まれた
「命知らずです、ね」
こちらの気も知らずに
‥貴女と言う人は
:10/02/07 18:30
:D905i
:zJfCkqns
#460 [笹]
背を向けて目を瞑る
乱れた鼓動を整えて
深く溜め息を吐く
調子が狂います、ぜ
「寝ちゃう‥んれすかぁ?」
「‥」
背中に問う声が
情けないほどに弱まった
:10/02/07 18:31
:D905i
:zJfCkqns
#461 [笹]
「んう‥」
しなびた声が耳にかかる
こちらに現れた小さな白い手
生娘が男を‥襲う気ですかい?
後ろから抱きついた貴女は
何を思ってるのか‥
いつもなら頬を染めて
嫌だと喚くと言うのに
:10/02/07 18:31
:D905i
:zJfCkqns
#462 [笹]
全く、酒は人を変えます故‥
そのせいで虚しくなるのも
また‥然り
「‥壱助さん」
背中に響く声が
こんなにも、こんなにも‥
「何、か」
色めいて聞こえるのも
:10/02/07 18:32
:D905i
:zJfCkqns
#463 [笹]
「‥寂しかった」
‥酒の力ですか、ね
小さく震える体を
抱き締めてやりたいのに
どうしてこうも、躊躇うか
‥情けないもんです
:10/02/07 18:32
:D905i
:zJfCkqns
#464 [笹]
:
:
「‥馬鹿です、ねぇ」
答えるような幼い寝息
月明かりに照らされた肌に
そっと触れる
呆れるほどに無防備で
着物を掴んだ柔らかな手が
ぴくりと呼吸した
:10/02/07 18:33
:D905i
:zJfCkqns
#465 [笹]
「‥放って、置けやしない」
他の輩の前で
酒など飲ませてたまるかと
仕様もない独占欲に駆られ
‥小さな体を思い切り抱き寄せた
:10/02/07 18:33
:D905i
:zJfCkqns
#466 [笹]
:
:
久しぶりに眠りに付いた
目を覚ますと
長い睫を伏せた"猫"
昨晩の艶やかさは何処へやら
‥何時ものあどけなさを残す姿
はだけた浴衣から
美しい鎖骨が見え
小さく微笑み遠慮がちに触れた
:10/02/07 18:34
:D905i
:zJfCkqns
#467 [笹]
「ん‥う」
眩しそうに目を細めた酔っ払い
ちょいと間を置いて目を見開き
どうやら我に返った様子
「あ‥え?そそ‥添い寝?!」
:10/02/07 18:34
:D905i
:zJfCkqns
#468 [笹]
色気のない声を出し
あたふたする姿を見て
何故か安堵を覚えたもので‥
「壱助さん‥え?やだぁっ」
頬を紅くして
布団に顔をうずめた
何を考えたんですか、ね
そんな簡単に
手なんか出しやしない‥ですぜ
:10/02/07 18:35
:D905i
:zJfCkqns
#469 [笹]
「あたし‥何かしました?」
しかし覚えてないとなると
「昨夜は‥
楽しませていただきました、よ」
ちょいと悔しい物があるもんで
:10/02/07 18:36
:D905i
:zJfCkqns
#470 [笹]
「嘘‥うそぉおお!?」
貴女の恥じらい困惑する顔を
見たくなって‥しまう。
意地の悪い男‥です、よ
:10/02/07 18:37
:D905i
:zJfCkqns
#471 [笹]
:10/02/07 18:40
:D905i
:zJfCkqns
#472 [笹]
時には
究極の選択が迫られることが
誰にでもあるもの、です
自分の無力さに
酷く腹が立つ‥こともある
"断腸の思い"で
時に人は物事を切り捨て
生きていかなければならない
それが‥人生と言うものです、よ
:10/02/08 20:12
:D905i
:hMEINdHE
#473 [笹]
:
:
「雨なんて珍しいですよね」
ザァ―‥
今日は珍しく
此の街に雨が降った
濡れた地面の独特の匂いが
鼻の奥をくすぐる
真っ赤な番傘から落ちる
雨滴に睫を濡らした
:10/02/08 20:13
:D905i
:hMEINdHE
#474 [笹]
「‥あたしも入れてください」
「何、故」
もちろんあたしは
傘なんて持っていなくて
壱助さんの傘の中に
一緒に入れてもらうつもりで
今日は街に出た
だけどやっぱり
そううまくは行かないもの
:10/02/08 20:13
:D905i
:hMEINdHE
#475 [笹]
「濡れちゃうぅ‥」
ぐいぐい無理やり
頭を突っ込んでみても
大きな手で押し出される
「ちょっとくらい
いいじゃないですかぁっ!」
ぷうと頬を膨らませても
「ね?壱助さぁあん、うふん」
ない色気を絞り出しても
:10/02/08 20:14
:D905i
:hMEINdHE
#476 [笹]
「濡れたくらいで死ぬほど
‥か弱くないでしょう、貴女」
‥無駄ですか。
横目でぼそり呟かれた
これが図星だから辛い
:10/02/08 20:14
:D905i
:hMEINdHE
#477 [笹]
「高い着物ですから‥
汚されては困りやすから、ね」
そう言って
傘を少しこちらに傾けた
「やっぱり壱助さんって
案外優しいですよねっ」
「‥水溜まりにその顔、
突っ込まれたいんですかい?」
「いや‥結構です!!!」
壱助さんは
褒められるのが嫌いだそうです
:10/02/08 20:15
:D905i
:hMEINdHE
#478 [笹]
:
:
雨となると
いつもの街もどこか寂しい
賑わいは雨音に変わる
「壱助さん、鯛焼き食べたーい」
「‥」
壱助さんの足が急に止まる
濡れぬように
慌てて傘の中に戻った
「どうしたんですか?」
:10/02/08 20:15
:D905i
:hMEINdHE
#479 [笹]
壱助さんの視線の先には
小さな竹薮
薄暗くて気味が悪い
「‥血腥い」
「え?」
壱助さんは顔をしかめて
そこから目を離さない
雨音と竹のきしむ音の向こうに
聞こえたのは生々しく鈍い音
荒れ狂った女の声
:10/02/08 20:16
:D905i
:hMEINdHE
#480 [笹]
「どうしてお前はいつもいつも!!」
バシンッバシンッ
「言うことが聞けないんだい!」
ドガッ
「この役立たず!!」
「‥ッゲホッ、かぁさ‥ん」
「お前なんかねぇ‥お前なんか」
:10/02/08 20:16
:D905i
:hMEINdHE
#481 [笹]
足が震えた
何とも言えない感情が
わぁっとこみ上げてくる
悔しさに唇を噛み締め
拳を握った
自然とそちらへ足が向かう
「香夜さん‥」
行くなと壱助さんが
あたしの着物の袖を引いた
:10/02/08 20:17
:D905i
:hMEINdHE
#482 [笹]
「‥死んじゃうかもしれない」
そう言って振り払い
声のするほうへ足を進めた
:10/02/08 20:17
:D905i
:hMEINdHE
#483 [笹]
:
:
そこには物凄い形相をした
母親らしき女の人と
この雨の中
裸でうずくまる少年
少年の体は
いたるところに痣ができ
歪に腫れ上がった跡や
刃物で切られたような
鋭い傷が無数にあった
母親に思い切りぶたれ
蹴飛ばされ‥
:10/02/08 20:18
:D905i
:hMEINdHE
#484 [笹]
昔の自分と少年を重ねた
「‥やめ‥なさいよ」
憤りに得体の知れない
幼い頃の感情が湧き上がる
「お前なんか
生まれてこなければよかった!!」
ドガッ
「ごめ‥なさい、ゲホッ‥んぐ」
少年の口から吐き出された
真っ赤な血が雨に消える
:10/02/08 20:18
:D905i
:hMEINdHE
#485 [笹]
声を張ろうと
大きく息をすると
壱助さんがあたしの腕を掴んだ
「‥帰ります、よ」
「何言ってるんですか‥?
このままじゃあの子‥」
目の奥から今にも
熱いものが溢れそうで
今止めなかったら
この子は死ぬかもしれない
今あたしが助けなきゃ‥
:10/02/08 20:18
:D905i
:hMEINdHE
#486 [笹]
「貴女に‥何ができるんで?」
いつになく真剣な眼差しが
訴えかける
:10/02/08 20:19
:D905i
:hMEINdHE
#487 [笹]
「何って‥
助けるんですあの子を!!」
手を振り払おうとしても
壱助さんの手は
掴んで離さなかった
ひどい‥壱助さん
「壱助さんにはわからないんです
親に暴力を振るわれて
黙って耐えて‥」
:10/02/08 20:19
:D905i
:hMEINdHE
#488 [笹]
不安定な言葉を
無理に立て直しながら
何度も何度も振り払おうとした
「助けた所で‥
彼は、幸せになれますかい?」
悲しそうな壱助さんの目が
捕らえて離さない
幸せ‥?
幸せに決まってるじゃない
:10/02/08 20:20
:D905i
:hMEINdHE
#489 [笹]
「彼を助けて、その後
貴女が養うとでも‥?」
「それは‥」
「見知らぬ土地に放されても
‥彼は死に至るでしょう。
貴女は、彼の家庭の事情を
全てご存知なんですかい?
彼はあんな母親でも、
慕っているかも‥しれない」
何も言い返せない自分に
腹が立った
:10/02/08 20:21
:D905i
:hMEINdHE
#490 [笹]
「中途半端に
情に流されて動いては‥
却って苦しめることになる。」
だけど‥だけど
あの子死んじゃうよ‥
「今此処で
あの母親に何か言えば
‥彼は本当に殺されます、よ」
うずくまる少年が
ちらりとこちらを向いた
:10/02/08 20:21
:D905i
:hMEINdHE
#491 [笹]
助けを求めるでもない
憎しみも悲しみも
何も訴えてこない
曇った目をしていた。
恐怖をも覚えるほど
一番辛くさせる眼差しだった
:10/02/08 20:22
:D905i
:hMEINdHE
#492 [笹]
:
:
‥雨は止まない
さっきの少年の目が
頭に焼き付いて離れない
あたしには
何もできないと言う悔しさ
一方的に押しつけてしまった
自分の感情。
もうわからないよ‥壱助さん
:10/02/08 20:23
:D905i
:hMEINdHE
#493 [笹]
「死んじゃったら‥
死んじゃったら‥どうしよう」
ぶわっと泣き出し
顔を両手でふさいだ
これは不安よりも恐怖で
自分の無力さへの
憤りでもあった
たくさんの思いが
複雑に絡みうめき
涙になって流れてゆく
:10/02/08 20:23
:D905i
:hMEINdHE
#494 [笹]
「香夜さん‥」
畳を擦ってこちらに寄り添い
後ろから優しく
壱助さんが抱きしめた
「‥あたし‥もう」
濡れた体を
優しく撫でるように
手拭いをあてがう
:10/02/08 20:23
:D905i
:hMEINdHE
#495 [笹]
「もう、何も見なくていい‥
何も考えなくていいんです、よ」
いつもより暖かい
壱助さんの手が
あたしの目を覆った。
:10/02/08 20:24
:D905i
:hMEINdHE
#496 [笹]
「何も‥。
しかし、あの目を
一生忘れてはいけません、ぜ
あの目を忘れた瞬間‥
貴女は彼を‥
見殺しにした事となる。」
:10/02/08 20:25
:D905i
:hMEINdHE
#497 [笹]
人は本当に無力で
結局は願うことしかできない。
そのもどかしさが
絡みついてうめき声を上げる
それでもこの願いが
少しでも、たった一瞬でも
誰かを救えると言うのなら
あたしは一生
願うことをやめないでしょう
:10/02/08 20:25
:D905i
:hMEINdHE
#498 [笹]
―‥そして
"生きることを諦めない"と
心に誓うのです。
_
:10/02/08 20:26
:D905i
:hMEINdHE
#499 [笹]
:10/02/08 20:29
:D905i
:hMEINdHE
#500 [笹]
どんなに気が強い"猫"も
どんなに意地っ張りな"猫"も
本人の気付かぬ内に
心が虚空に蝕まれるもの
心が"綿のよう"になれば
それも一気に
音を立てて崩れ出すものです、よ
:10/02/09 18:49
:D905i
:rBP2/YbM
#501 [笹]
「香夜さん‥、」
昨日の雨も
夜中の内に上がり
澄んだ青空が広がった
―‥チュンチュン
「朝です、よ」
:10/02/09 18:50
:D905i
:rBP2/YbM
#502 [笹]
ベチンッ
「いぃったあぁい!!!」
またいつもの朝を迎えた
いつになったら
あたしは1人で起きられるのか
‥こんな毎日毎日
顔面叩かれてたら、腫れてしまう
:10/02/09 18:50
:D905i
:rBP2/YbM
#503 [笹]
そして今日も
壱助さんはお美しい
‥只でさえ朝早いのに
着物もきっちり来て
全く寝起きって感じがしない
やっぱり寝てないのかな?
ゆっくり体を起こす
夢にあの少年が出てきて
うなされたのか‥
少し体が汗ばんでる気もした
:10/02/09 18:51
:D905i
:rBP2/YbM
#504 [笹]
「‥」
無言で見つめる壱助さんの手には
空になったお茶の葉の袋
「あのぉ、」
「‥何、か」
何でいつもそう
仏頂面なのかしら‥。
:10/02/09 18:51
:D905i
:rBP2/YbM
#505 [笹]
笑ったりしたら絶対‥
‥笑わなくてももてるから
憎いんだった。
「お茶‥」
「買ってきてください、ね」
「そうじゃなくてぇ‥」
「買ってきてください、ね」
:10/02/09 18:52
:D905i
:rBP2/YbM
#506 [笹]
「‥もうちょっと」
「早く」
こう言うときだけ
笑顔を浮かべる
壱助さんは
笑わなくていいかも‥。
:10/02/09 18:52
:D905i
:rBP2/YbM
#507 [笹]
またぼうっと窓の外を眺めてる
そんな壱助さんを
ぼうっと見つめるあたし
こちらに目を向けてないのに
"何、か"と言う
背中にも目がついてるのかしら
未だに壱助さんは
沢山の謎に包まれています
:10/02/09 18:53
:D905i
:rBP2/YbM
#508 [笹]
「‥行って参ります」
そう言って
しぶしぶ布団から
出たその時であった
「‥あれ?」
足元がふわり浮くような
不思議な感覚に襲われ
頭が石のように重く感じ
そのまま意識が飛び
体が‥
:10/02/09 18:53
:D905i
:rBP2/YbM
#509 [笹]
:
:
:
一瞬どこかへ旅立った
自分を引き戻し
はっと目を覚ます
目の前には
切れ長の目の肌が白い‥
「壱助さん‥?」
はて‥
何があったんだろうか
:10/02/09 18:54
:D905i
:rBP2/YbM
#510 [笹]
「‥危なっかしいです、ね」
目を細めて、呆れた様子
今‥この体勢は‥
この頭に触れるのは‥
「ひざ‥膝枕」
思わず上擦った声に
ごくりと唾を飲んだ
:10/02/09 18:54
:D905i
:rBP2/YbM
#511 [笹]
壱助さんに
膝枕をしてもらうなんて
壱助さんの
お膝様をお借りするなんて
‥なんて命知らずなんだ
「わわっ
ごっごめんなさいこんなっ」
慌てふためくあたしの顔は
きっと真っ赤に染まってる
火がでるほど熱かった
:10/02/09 18:55
:D905i
:rBP2/YbM
#512 [笹]
下から見る壱助さんの姿は
彫刻みたいに鼻が高くて
また睫長くなってる気がして
たった一度だけ触れた唇が
あの優しい感覚を蘇らせた
‥同じ世界の人間か疑うほど
親の顔が見てみたい
「そんなに‥
か弱かったんですかい?」
「へ?」
:10/02/09 18:55
:D905i
:rBP2/YbM
#513 [笹]
すると見る見る内に
いい匂いと共に近づく
あの美しい顔
「ちょっちょっ壱助さんっ?!」
また消毒ですか?!
待ってよ心の準備ってもんが‥
:10/02/09 18:56
:D905i
:rBP2/YbM
#514 [笹]
‥コツン
え?
恐る恐る目を開けると
近すぎてぼやけて見えるが
やっぱり美しい壱助さんの顔
:10/02/09 18:56
:D905i
:rBP2/YbM
#515 [笹]
「な‥えぇ‥?」
触れていたのは
唇と唇ではなく額と額
残念ながら‥
いや、べ別に残念じゃないけど‥
消毒ではありませんでした
:10/02/09 18:57
:D905i
:rBP2/YbM
#516 [笹]
しばらくの間壱助さんは
寝てるのかと疑うほどに
ぴくりともしなかった
火照った頬を
くすぐる規則正しい呼吸
こっちは緊張しすぎて
息苦しいと言うのに‥
壱助さん
いろいろと手慣れすぎです
:10/02/09 18:57
:D905i
:rBP2/YbM
#517 [笹]
「壱‥助さぁん?」
すると
一時の眠りから覚めたように
目を開けてすっと顔を離した
それと同時にあたしは
その間呼吸できなかった分を
部屋の空気を全部吸い取るくらい
思いっきり体に取り込んだ
:10/02/09 18:58
:D905i
:rBP2/YbM
#518 [笹]
「‥全く、」
いやいや
いきなりそんなことされた
こっちが全くですよ
「たったあれ如きで‥
熱を出すとは、ね」
「熱?」
:10/02/09 18:58
:D905i
:rBP2/YbM
#519 [笹]
そう言われてみれば
朝からちょっと体が重かったかも
昨日の雨にやられたかな?
「情けない‥ですね」
はぁっとため息を吐くと
:10/02/09 18:58
:D905i
:rBP2/YbM
#520 [笹]
ガサッ
一気に目の前が暗くなった
‥お茶の匂い
間違いなく
今あたしに被さってるのは
さっきまで壱助さんが手にしてた
お茶の葉の空袋
そっか‥
じゃあ今日はお茶お預けかぁ
:10/02/09 18:59
:D905i
:rBP2/YbM
#521 [笹]
「‥ごめんなさい」
自分の声が袋中を駆け巡り
また耳の奥へ帰る
きっとお茶は
壱助さんの命の次に大切なもの
そう考えたら
何だか急に申し訳なくなった
:10/02/09 18:59
:D905i
:rBP2/YbM
#522 [笹]
グシャッ
耳を突き刺すような音と共に
朝と同じ激痛が顔面に走る
「ったぁあいぃ!!」
何でこうも壱助さんは
顔面攻撃が好きなんだろうか‥
ただでさえ不細工なのに‥もう
:10/02/09 19:00
:D905i
:rBP2/YbM
#523 [笹]
息つく暇もなく
壱助さんはやりたい放題
「うわっまぶしっ!!」
一気に袋を取り去られ
急にさす光の眩しさに
目の前が眩んだ
じーっとこちらを見つめる
美しい視線とぶつかった
:10/02/09 19:00
:D905i
:rBP2/YbM
#524 [笹]
まばたきもしないで
ただじっと‥
熱のせいか頭が働かない
いつもなら
考えなくとも口が勝手に
喋り出すのになぁ
:10/02/09 19:01
:D905i
:rBP2/YbM
#525 [笹]
:
:
「どんな‥夢を?」
先に口を開いたのは
壱助さんの方だった
ひんやりした雪のような手が
額にそっと触れた
‥心地いい
:10/02/09 19:01
:D905i
:rBP2/YbM
#526 [笹]
「昨日の‥少年の」
蚊の鳴くような声で答えると
"そうです、か"と
何かを考え込んでる顔で言った
壱助さんの手は
まるで魔法の手みたいで
熱を吸い取っていくような
‥そんな気がした
:10/02/09 19:02
:D905i
:rBP2/YbM
#527 [笹]
それから
何を言うでもなく‥
壱助さんは優しく
あたしの額辺りを撫でて
また空を眺めてた
「壱助さん‥空好きですよね」
大した答えなど
期待してなかった
「‥何か見えるんですか?」
返事のない横顔に続けて問った
:10/02/09 19:02
:D905i
:rBP2/YbM
#528 [笹]
「‥いえ、何も」
「どうしてそんなに
眺めてるんですか?いつも
何か考え事でも?」
するとぴたりと手が止まった
:10/02/09 19:03
:D905i
:rBP2/YbM
#529 [笹]
「何も‥考えたくないから
こうして居るんです、よ」
気のせいだろうか
いつもより少しだけ
横顔が寂しそうに見えた
‥見ていられなかった
今日のあたしはどうかしてる
:10/02/09 19:03
:D905i
:rBP2/YbM
#530 [笹]
――――‥
_
:10/02/09 19:04
:D905i
:rBP2/YbM
#531 [笹]
ふわりと
お茶の香りが宙を舞う
体が勝手に動いてしまった
‥きっと壱助さんが
その左手で魔法をかけたのだ
衝動的に起き上がり
壱助さんを
胸の中に押し込めた
:10/02/09 19:04
:D905i
:rBP2/YbM
#532 [笹]
ぎゅうっと綺麗な背中を
壊れそうなくらい
強く抱きしめると
壱助さんは力なく応えた
「‥泣いてるんで?」
わからない
わからないけど
‥涙が止まらなかった
:10/02/09 19:05
:D905i
:rBP2/YbM
#533 [笹]
「壱助さ‥ん
何処にも‥行かないで」
情けなく弱々しい声を
涙と一緒に落とした
何故そんなことを言ったのか
‥わからない
だけど急に不安になった
独りにされてしまいそうで
壱助さんはこんなあたしに
‥疲れているんじゃないかって
:10/02/09 19:05
:D905i
:rBP2/YbM
#534 [笹]
「約束、したでしょう
独りにしない‥と」
包み込むように
ぎこちなくあたしを撫でた手に
一瞬にして不安が吸い取られた
:10/02/09 19:06
:D905i
:rBP2/YbM
#535 [笹]
あたしの、居場所は
―‥貴方の隣。
_
:10/02/09 19:07
:D905i
:rBP2/YbM
#536 [笹]
:10/02/09 19:10
:D905i
:rBP2/YbM
#537 [笹]
まだまだ子供な"飼い猫"が
ぼうっと空ばかり眺めて
雪を待ちわびているもんで‥
"色は思案の外"と
良く言われます故‥
―‥自分でも、
良くわかりゃしないのですが、ね
:10/02/10 16:47
:D905i
:yQPzNAIc
#538 [笹]
:
:
雲が低い
空一面を灰色に染める
「‥雪ですか、ね」
冷えた空気が息を白く染めた
:10/02/10 16:48
:D905i
:yQPzNAIc
#539 [笹]
:
:
「お帰りなさいっ」
窓から乗り出すような勢いで
雪が降るのを待ちわびていると
壱助さんが帰ってきた
「今日、雪降りますかねぇ?」
別に雪は珍しくない
だけど真っ白に染められた街に
なんだかとてもわくわくして
何時になっても
目を輝かせてしまうのだ
:10/02/10 16:48
:D905i
:yQPzNAIc
#540 [笹]
「‥さぁ、ね」
後ろで聞こえた素っ気ない声に
着物と肌がすれる音が続く
「‥んう」
また黙って着替えて‥
着替えるときは声かけてって
あれだけ言ってるのに
気付かぬふりをして
じっと空とにらめっこ
:10/02/10 16:49
:D905i
:yQPzNAIc
#541 [笹]
―‥だけど沈黙となれば
どこかむず痒い
「外、寒かったですか?」
「そりゃあ‥ねぇ」
今度は畳と着物がすれる音
どうやら着替え終わったらしい
:10/02/10 16:50
:D905i
:yQPzNAIc
#542 [笹]
流石に手が冷えてきた
外へ向けた息も白い
「囲炉裏があると
やっぱり冬はいいですよねぇ」
なーんて
あたしにとっては珍しかった
囲炉裏に暖かさを求めて
振り返ってみたものの‥
:10/02/10 16:50
:D905i
:yQPzNAIc
#543 [笹]
「壱助さん!!」
どうしてそうも貴方は‥
囲炉裏の前に立ちはだかる
壱助さんの背中
「ちゃ‥ちゃんと袖!!」
時々よくわかんない所で
壱助さんは半裸になりたがる
‥露出狂だ。
:10/02/10 16:51
:D905i
:yQPzNAIc
#544 [笹]
そして何度見ても
この美しさには慣れない
雪みたいに真っ白だから
囲炉裏に近づいたら
溶けちゃうんじゃないかって
馬鹿みたいな心配をするほど
一気に火照った顔を
ぷいっと背けて
また空に目を向けた
雪‥やっぱり降らないかなぁ
:10/02/10 16:51
:D905i
:yQPzNAIc
#545 [笹]
:
:
結局"まぁ、まぁ"と言って
言うことを聞いてくれず‥
って言うか
何が"まぁ、まぁ"よ!!
あたしだって暖まりたいのにぃ‥
:10/02/10 16:52
:D905i
:yQPzNAIc
#546 [笹]
「雪が降りそうだって言うのに
何でわざわざ‥
着物下ろすんですかぁ?」
少し乱暴に唇を尖らせて
後ろにある背中に訴えると
「いいじゃあ、ないですか」
と、満足げな声が返ってきた
:10/02/10 16:53
:D905i
:yQPzNAIc
#547 [笹]
ちらりと少し顔を向けて
横目で様子をうかがえば
胡座をかいた片膝に
頬杖を付いてくつろいでいる
あったかそう‥
行きたい‥けど
そんな半裸の男の人の
隣になんか並べない!と言う
‥生娘の葛藤。
ただただ時間が過ぎ
体が冷え行くだけだった
:10/02/10 16:53
:D905i
:yQPzNAIc
#548 [笹]
:
:
「‥へっくしゅん!!」
このままじゃ風邪引く‥
冷えた手を口元の前で握りしめ
はぁーっと息を吹きかける
「やれ、やれ」
:10/02/10 16:54
:D905i
:yQPzNAIc
#549 [笹]
やれやれって‥
そもそも壱助さんが
変態な趣味持ってるからよ!!
最早此処まで来ると
動いてたまるかとヤケになるもの
「仕方のない人、ですねぇ」
_
:10/02/10 16:55
:D905i
:yQPzNAIc
#550 [笹]
――‥ ギュウゥ
一気にあたしの体を温めたのは
後ろからいきなり
抱きついてきた壱助さんだった
:10/02/10 16:55
:D905i
:yQPzNAIc
#551 [笹]
「維持など張らずに‥
此方に来れば良いものを」
首を抱くようにして
絡みつく腕が
男らしいくせに美しくもある
「べ‥別に、維持なんて‥」
言い訳を並べようとした口に
華奢な指が触れた
:10/02/10 16:57
:D905i
:yQPzNAIc
#552 [笹]
「ほぉう‥」
「壱助さんが‥
あく‥悪趣味だから」
いつもと違って
暖かい壱助さんの体に
とても違和感を覚えて
なんだかいつもとは
別の人のような気もして‥
乱れる鼓動を
止めてしまいたかった
:10/02/10 16:57
:D905i
:yQPzNAIc
#553 [笹]
「‥こいつぁ、手厳しい」
急に横で見せた含み笑いに
いつもより瞬きを多めにして
顔を背けてみる
「おや‥顔が赤く‥」
「言わないで下さいぃっ!!」
もう‥香夜は溶けそうです。
:10/02/10 16:58
:D905i
:yQPzNAIc
#554 [笹]
そんな火照った顔を見るために
出し惜しみしてたかのように
ちらちらと粉雪が舞う
「雪だぁあっ!!
ほらっ壱助さん雪‥」
降り出した雪が
あたしを子供にさせたから
夢中にさせたから
横にいた貴方をも
消してしまったから
:10/02/10 16:59
:D905i
:yQPzNAIc
#555 [笹]
――――――‥
_
:10/02/10 16:59
:D905i
:yQPzNAIc
#556 [笹]
「おや、おや
随分と大胆‥ですねぇ」
意識が飛びそうなほどに
唇から伝った熱で
‥早くも、雪解けの予感です。
_
:10/02/10 17:00
:D905i
:yQPzNAIc
#557 [笹]
【 お ま け 】
「あ‥あれは事故‥」
「事故?‥ほぉう」
「そうです事故です事故っ!!」
「‥あの後
物足りずに自ら唇を‥」
「言わないでぇえぇぇえっ!!!」
‥めでたし、めでたし。
:10/02/10 17:04
:D905i
:yQPzNAIc
#558 [笹]
番外編 【待ちわびて】
*。*。*。*。*。*
急に寒くなったので
甘甘をご提供 ////
なんかいろいろとあれですが←
あくまで番外編なので
好きにさせていただきましたw
外ばっかり見てる上に
意地っ張りな香夜ちゃんに
してやったりの壱助さん
香夜ちゃん案外大胆w
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/
:10/02/10 17:07
:D905i
:yQPzNAIc
#559 [笹]
貴女がそうしたいと言うならば
私は何も言いません、よ
"去るもの追わず"
:10/02/14 01:33
:D905i
:AHFqEp8k
#560 [笹]
「‥」
あの日から
口数が確実に減った
何を考えているのか‥
正座したまま虚ろな目
「どうか‥しました、か」
「‥いえ、別に」
不思議なほど此の調子
此方の調子が狂います、よ
:10/02/14 01:34
:D905i
:AHFqEp8k
#561 [笹]
夜になれば寝付きもせず
声を殺して泣く、ときた
‥どうしたもんか、ねぇ
「‥壱助さん」
畳に話しかけて‥
私は此方なのですが
:10/02/14 01:34
:D905i
:AHFqEp8k
#562 [笹]
「何、か」
「壱助さんは‥」
言葉が途切れた
いや‥躊躇っているのでしょう
小さく喉が動いた
:10/02/14 01:35
:D905i
:AHFqEp8k
#563 [笹]
「壱助さんは‥本当にあたしと
ずっと一緒に?」
「居ます、よ」
嫌だとでも言いますかい?
去る者は追わぬ主義ですが‥
「恋仲の人が出来たら‥
あたし、邪魔ですよね?」
:10/02/14 01:35
:D905i
:AHFqEp8k
#564 [笹]
そんな事で‥
今まで泣いてたの、か
全く‥貴女と言う人は
「ほう‥」
「あたしなんかと居たら
一生結婚できませんよ?
壱助さん‥絶対いい人に‥」
:10/02/14 01:36
:D905i
:AHFqEp8k
#565 [笹]
「其れならば‥去る、と?」
「‥んう」
下を向いて肩を震わせる
本当に意地が悪い奴です
貴女を何処までも困らせたい
:10/02/14 01:36
:D905i
:AHFqEp8k
#566 [笹]
「香夜さん次第です、よ」
「‥足手纏いな気がして」
悩みなど無さそうな顔を
している人ほど
押し潰されそうになっている
‥そんな物です
:10/02/14 01:37
:D905i
:AHFqEp8k
#567 [笹]
「あたし、どじだし‥五月蠅いし
色気もないし、使えないし‥」
自分を何だとお思いで?
ちょいと安く見積もりすぎでは‥
「どう‥したいんで?」
貴女は私を苦しめる
:10/02/14 01:38
:D905i
:AHFqEp8k
#568 [笹]
「‥」
何処までも、何処までも
「答えられぬと言うなら‥」
「一日‥時間を下さい」
お考えになろうと‥いうこと、か
別れもそう遠くはない、と
:10/02/14 01:38
:D905i
:AHFqEp8k
#569 [笹]
:
:
背を向けて眠りにつく
香夜さんが悩んでいる事は
正直言えば下らない
無駄な心配でしかない
しかし貴女にとっては
大問題なのでしょう
‥本当に鈍い人だ
だから放って置けないと言うのに
:10/02/14 01:39
:D905i
:AHFqEp8k
#570 [笹]
後ろの気配が息を潜めて
ゆっくりと布団から抜け出した
小さく鼻を啜り
着物がはらりと脱げる音
帯をきっちりしめて
‥音が止まる
:10/02/14 01:40
:D905i
:AHFqEp8k
#571 [笹]
闇に包まれて
何も見えないはずなのに
何故でしょう、ね
貴女の泣き顔が目に浮かぶ‥
"行くな"と声をかける事も
抱き寄せる事も
肝心な時に限ってできずに
体が動かなくなる
:10/02/14 01:40
:D905i
:AHFqEp8k
#572 [笹]
私は、
何に躊躇っているのでしょう、ね
―‥ 足音が消えた
:10/02/14 01:40
:D905i
:AHFqEp8k
#573 [笹]
:
:
一睡もできずに
唯ぼうっと
月明かりが照らす畳の網目を
雑に何度も目で追った
重い体を起こし
消えた隣の温もりに
そっと手を添える
「‥馬鹿です、ね」
:10/02/14 01:41
:D905i
:AHFqEp8k
#574 [笹]
枕元に置き手紙
『最後の挨拶くらい
しっかりしたかったのですが
壱助さんの顔を見たら
辛くなると思ったので‥
どうか、お許し下さい。
本当にお世話になりました』
綺麗に整った文字が
一カ所滲んでいた
:10/02/14 01:41
:D905i
:AHFqEp8k
#575 [笹]
「もうだいぶ
連れ添ったと言うのに‥
淡泊な別れです、ね‥香夜さん」
目を細めて
ぼやけた文字を撫でた
:10/02/14 01:42
:D905i
:AHFqEp8k
#576 [笹]
本当に意地っ張りな人だ
最後の最後まで
香夜さん‥
貴女は貴女でした、ね
_
:10/02/14 01:43
:D905i
:AHFqEp8k
#577 [笹]
:10/02/14 01:46
:D905i
:AHFqEp8k
#578 [笹]
自分で腹を括ったって
後悔は
情が籠もれば籠もるほど
溢れかえってくるもので
何度泣いても泣き足りない
でも、泣くことしか
あたしにはできないのだから‥
"声涙、倶に下る"
:10/02/14 22:37
:D905i
:AHFqEp8k
#579 [笹]
:
:
理由は簡単で
これ以上
迷惑をかけたくなかった
あの日あたしの居場所は
壱助さんの隣しかないって
そう思った
だけど‥だけど違う
今までとは確実に何かが違う
:10/02/14 22:38
:D905i
:AHFqEp8k
#580 [笹]
いけないことに
気がついてしまった気がして
もう一緒に居られないって
‥そう思ったの
できるならこんなこと
したくなかった‥
離れたくなかった
:10/02/14 22:38
:D905i
:AHFqEp8k
#581 [笹]
意地悪だけど根は優しいし
あたしを認めてくれたから
あたしを助けてくれたから
「はぁ‥」
もう泣きそうだ
家出てから
泣かないって決めたのに‥
壱助さんといたら
すぐ泣いちゃう
‥居心地いいんだよね、それだけ
:10/02/14 22:39
:D905i
:AHFqEp8k
#582 [笹]
「猫ぉ‥
これからどうしよう」
野良猫がすり寄ってきた
そんなに可哀想に見えたかな
「‥行くあてがないや」
飢え死にするかも‥
んう‥壱助さぁん
「ミャァウ」
真っ黒な瞳が
こちらを覗き込む
:10/02/14 22:40
:D905i
:AHFqEp8k
#583 [笹]
「お前も‥独りかぁ」
思いっきり撫でてやる
毛の下から伝わる暖かさに
何故か胸が苦しくなった
‥また遊女屋かなぁ
:10/02/14 22:40
:D905i
:AHFqEp8k
#584 [笹]
「‥香夜ちゃん?」
「‥伊代さぁああぁん!」
:10/02/14 22:41
:D905i
:AHFqEp8k
#585 [笹]
:
:
「でもさぁ香夜ちゃん?
壱助さん心配するだろう?」
不安そうな顔で
伊代さんはお茶を差し出した
「でも‥
去るのもあたし次第だって
壱助さん言ってたし‥」
「んん‥まぁねぇ
あの人も‥」
そう言って眉を下げて
緩く微笑んだ
:10/02/14 22:41
:D905i
:AHFqEp8k
#586 [笹]
「‥?」
「香夜ちゃんと"同じ"さぁ」
「同じ?」
意味深な言葉を残し
頬杖を尽きながら団子を食らう
伊代さんはいつも幸せそう
:10/02/14 22:42
:D905i
:AHFqEp8k
#587 [笹]
湯飲みの中をぼうっと覗き込む
深い緑色の奥に
自分のみっともない顔が
ぼやけて映し出された
お茶‥まだ大丈夫だよね
この前買ってきたばかりだし
「‥はぁ」
体に染み付いた習慣が
余計虚しくさせて、ため息
:10/02/14 22:42
:D905i
:AHFqEp8k
#588 [笹]
「でも、どうするんだい?
これから一人じゃあ‥」
「んー‥」
出された団子に目もくれず
緑色をじっと見つめる
「あたしんちでよけりゃあ‥
汚いけど、使うかい?」
「え?!いいんですかっ?」
:10/02/14 22:43
:D905i
:AHFqEp8k
#589 [笹]
思わず身を乗り出した
しかしすぐさま冷静になり
この朗報の穴に気づく
「でも‥壱助さん
来ますよね‥此処」
見つかっては
合わせる顔がないの
もう会わない
迷惑かけないって決めたから
:10/02/14 22:43
:D905i
:AHFqEp8k
#590 [笹]
結局飢え死に‥
じゃなきゃ、遊女屋
でも遊女屋だって
壱助さん来るかもしれない‥
何を考えても
壱助さんばかり絡んで
情けないほどに
自分は頼ってばかりだったと
改めて実感するのだ
:10/02/14 22:44
:D905i
:AHFqEp8k
#591 [笹]
「まぁ‥来るけどさぁ
部屋貸すから、ね?」
母親のような笑みを
此方に向けた伊代さん
母親の笑みなんて
あたしにはわからないけど
:10/02/14 22:45
:D905i
:AHFqEp8k
#592 [笹]
「でも‥タダで借りるなんて」
「それなら、うちで雇うよ?
裏方ならできるだろう?」
裏方‥そっか
表にでなきゃいいんだ
「よろしくお願いします!!」
:10/02/14 22:45
:D905i
:AHFqEp8k
#593 [笹]
いつか壱助さんが
迎えに来てくれたら‥なんて
仕様もない希望を抱いていた
日が経てば経つほどに
このもどかしさは
恐ろしいくらいに膨れ上がり
壱助さんは
‥あたしを蝕んでいくの
:10/02/14 22:46
:D905i
:AHFqEp8k
#594 [笹]
:10/02/14 22:51
:D905i
:AHFqEp8k
#595 [笹]
去るものは追わぬ主義
確か‥
私はそう言いました、ね
"乙に澄ます"のも
終わりにしやしょう、か
:10/02/14 22:57
:D905i
:AHFqEp8k
#596 [笹]
:
:
「香夜ちゃーん!!」
「はぁい!」
あれから一週間
あたしの知る限りでは
壱助さんは此処には来ておらず
伊代さんと伊代さんのご家族に
本当に親切にしてもらい
不自由なく生活してます
:10/02/14 22:57
:D905i
:AHFqEp8k
#597 [笹]
だけどやっぱり
忘れることができなくて
夢に見ては
涙に濡れた頬を拭う
夢の中でしか会えないなら
ずっと眠りについてたいくらい
:10/02/14 22:58
:D905i
:AHFqEp8k
#598 [笹]
朝独りでに目が覚めて
笑いもせずにあたしを見下ろして
"朝です、よ"って言う
そんな声を脳裏から
無理矢理に引っ張り出せば
虚しさが増すばかり
‥馬鹿だなぁ、あたし
:10/02/14 22:58
:D905i
:AHFqEp8k
#599 [笹]
「ちょいと、
買い出し行ってくるから
その間店番‥お願いできる?」
店番‥
表にでなきゃ、か‥
「あぁ‥はい!」
お世話になってるんだもの
しっかり働かなきゃ
:10/02/14 22:59
:D905i
:AHFqEp8k
#600 [笹]
:
:
「‥あぁああ」
独りになると‥貴方ばかり
会いたくない
合わせる顔もない
‥だけど何処かで
ふらりと現れる壱助さんに
期待してるみたい
:10/02/14 22:59
:D905i
:AHFqEp8k
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