浮 き 世 の 諸 事 情 。
最新 最初 🆕
#401 []
 
「ごるぁぁぁああ!!!」

突然‥
物凄い形相をした男の人が
こちら目掛けて突進してきたのだ


‥いつだって死と隣り合わせ。

「ちょ‥何何なんなのー?!」

あたふたするものの
子供が地蔵のように重く
ぴくりともしない足

⏰:10/02/05 22:20 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#402 []
 

し、し‥‥死ぬ。


_

⏰:10/02/05 22:21 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#403 []
 
「こっち来るなよぉお!!」

「お前っ!!
米粒を茶碗に残すなって
あれだけ言っただろう!!」

は?

「見えなかったんだぁ!」

「言い訳するなー!!」

明らかに男の人の視線は
この子供に向いている

⏰:10/02/05 22:21 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#404 []
 
「あ‥あのぅ」

あたしを盾にして隠れる子供

とっつかまえようと
あたしの前で機敏に動く人


そしてあたしの周りで始まる
いたちごっこ。

「一粒だけだろーっ!」

「お前っ見えてるじゃあないか!!」

「うぅ‥来るなぁあ!!」


‥厄介な物に巻き込まれました

⏰:10/02/05 22:22 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#405 []




「いやぁーお恥ずかしい所を」

先程の鬼みたいな顔とは
打って変わって
がははと笑うその人は
"茂七"と言うらしい。

とても人がよさそうだ

隣にちょこんと座る
口を尖らせた少年は"正宗"くん
米一粒を残した少年だ

⏰:10/02/05 22:23 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#406 []
 
「正宗は姉貴の子供でして」

「お姉さんの‥そうでしたか」

「姉貴は病弱なもんで、
よく俺が世話するんですが‥」

見る限り
あまり懐いてなさそうだ

「茂七‥怒ると怖いんだもん」

正宗くんが拗ねた様子で呟いた
子供らしい理由に
思わずクスリと笑ってしまう程

⏰:10/02/05 22:23 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#407 []
 
「迷惑かけちゃいやしたし‥
飯でもおごらせてくださいよ!」


非常に爽やかである
うん‥いい青年ってかんじ

‥なんて品定めするほど
あたしは男を知りません

「本当ですかぁっ?」

食べ物には目がありません

⏰:10/02/05 22:24 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#408 []
 
"道草を喰わない、こと"

‥鬼が呼んでいる


"でないと‥お仕置きです、よ"


か‥帰らねば

⏰:10/02/05 22:24 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#409 []
 
「お言葉に甘えたい所ですが、
"鬼"に殺されるので‥あは」


「鬼?」



「鬼のような人が、待ってるので」

⏰:10/02/05 22:26 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#410 []




何だか足取りが軽い
だって明日
男の人とお食事なんて‥

「うふふー」


「ほぉう‥
こりゃあ随分と
遅い帰りで、いらっしゃる」


心臓‥いや
体の全部の臓器がびくりとした

⏰:10/02/05 22:27 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#411 []
 
「あぁあ‥ちょっと」

あははなんて笑って見せても
‥もちろん無駄で

布団の上で正座をする壱助さんは
怪しい笑みを浮かべた


「病人をほったらかしにするとは
‥薄情な人です、ねぇ」

⏰:10/02/05 22:28 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#412 []
 
額にあてていた濡れた手拭いを
ピンと張って‥戦闘態勢ですね


「いや、そのぉ‥」

「お仕置きがそんなに
‥お好きです、か」

「ひぃっ!!」

「自虐的です、ね」

「‥ッうぅ!!!」

⏰:10/02/05 22:29 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#413 []
 
壱助さんの右手が
あたしの首をぐっと掴む
細い指が食い込むのが分かる


「く‥るひぃ」

「風邪を引いてます故‥
少々手に力が入りませんで」

鬼‥鬼鬼鬼!!


「もっと苦しんだ顔が
見たいもの、ですが‥ねぇ」

死ぬ‥窒息死‥馬鹿力‥

⏰:10/02/05 22:29 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#414 []
 
にやりと微笑む壱助さん
優しい笑顔なのだ
いや優しすぎる笑顔なのだ

笑顔が怖いと思うのは
壱助さんくらいだよ


「い‥ひふへ」


ぱっと手が離されると
肺が破裂しそうなほど息を吸い
酸素が脳に一気に入って
体が浮きそうになった

⏰:10/02/05 22:30 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#415 []
 
「‥んぐっはぁ」

「何を‥してたんですかい?」


手拭いをこっちに差し出し
"早く濡らして絞れ"と言うように
顔に押し付ける


もう治ったんじゃないですか?
壱助さん不死身そうだし

「それが‥」

⏰:10/02/05 22:31 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#416 []



冷たい水に手を浸ける
壱助さんの手みたい‥

ぎゅっと絞りながら事情を話すと
乱暴に手拭いを受け取った


「その茂七とやらは‥何者で?」

少し気だるそうに
帯を緩めて白い肌が顔を出す
いつになっても慣れない
この美しさ

⏰:10/02/05 22:31 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#417 []
 
「すごくいい人そうでしたよ!
金物屋さんをやってるそうで‥」


「ほぉう‥」


明らかに話し聞いてないし‥
興味ないなら聞かなきゃいいのに

ずずっと茶を啜るのは
いつもと変わらず元気な気がする

⏰:10/02/05 22:32 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#418 []
 
「私は香夜さんの
‥"親代わり"です、ぜ?」

親代わり‥うん
まぁそうなのかもしれない

自分で言うのもあれだけど
"飼い主"同然である


「まぁ‥そうですねぇ」

⏰:10/02/05 22:33 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#419 []
 
心配してくれてるのかな?

それとも‥"焼き餅"かなぁー
なぁーんて‥

壱助さんは
あたしみたいな子供に
妬くような人じゃないけど

⏰:10/02/05 22:33 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#420 []
 

「そやつに会う‥
義務が、あります‥ねぇ」


カタンと湯飲みが音を立てる


あの口角だけ上げた笑みは
この世で一番恐ろしいのだ

⏰:10/02/05 22:35 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#421 [笹]
第十二章 【現れて/前編】

*。*。*。*。*。*
珍しく二部に分けました ゚ω゚

リクにありました
ライバル・鬼畜壱助さんを
盛り込んでみましたw

んーうまく書けない
後編がんばります !!
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/05 22:40 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#422 [我輩は匿名である]
>>380-430

⏰:10/02/06 08:59 📱:W53H 🆔:evpZsMz6


#423 []




「‥何で付いてくるんですかぁ」

結局付いてきた壱助さん
改め保護者さま

「"責任"ですから、ね」

下駄が立てる音は
明らかに不機嫌そうである

⏰:10/02/06 21:16 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#424 []
 
放たれる威圧感に
周りの人々も寄り付かず
町娘たちは
黙って壱助さんを目で追った


「別にそんな‥
ご飯頂くだけですよー」

「二人で来るなと‥
言われてお出でで?」

痛いところをつくものです

⏰:10/02/06 21:18 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#425 []
 
「‥風邪は?
もう治ったんですか?」

「‥ごほごほ
まだ‥です、が」


変な演技しないでくださいよ
棒読みの咳なんて
初めて聞きましたよ、もう

「だったら
寝てなくちゃだめです!!」

立ち止まって後ろを向き
訴えてみても‥無駄

⏰:10/02/06 21:18 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#426 []
 
「あんまり茂七さんに
突っかからないでくださいよ?」

せっかくの楽しみが‥
仕方なく溜め息を付き
前を向いた瞬間だった。


「んぎゃっ!!」

後ろからど突かれて
顔面から地面に突っ込み
走る激痛、土の味

⏰:10/02/06 21:19 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#427 []
 
言うまでもなく
犯人は壱助さんです

「風邪を引いてます故‥
ちょいと、意識が朦朧と‥ねぇ」

鋭い切れ長の目が見下ろす
行かないでほしいなら
素直に言えばいいのに‥

体がいくつあっても足りない位
それでもって
よく耐えられるなと自讃する

⏰:10/02/06 21:19 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#428 []
 
「香夜さん?!大丈夫ですかい?」

心配そうな面持ちで
駆けつけてくれたのは
茂七さんだった


‥ちょっと、間が悪いです

「あぁ‥大丈夫ですよぉーう」

おどけながら立ち上がり
着物の埃をはらった

⏰:10/02/06 21:20 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#429 []
 
"やだー恥ずかしいなー"なんて
へらへらしてるのは

どうやら場違いだったみたい


「‥女性に何てことするんだ!!」

‥茂七さんっ命知らずっ!!

「ほぉう‥」

少し笑みを浮かべて目を細める
逆鱗に触れた合図です

⏰:10/02/06 21:21 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#430 []
 

壱助さんは絶対に
茂七さんみたいな‥

こういう熱い人が嫌いだと思う



‥の前に、男が嫌いだと思う。

⏰:10/02/06 21:21 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#431 []




「えっと‥
此方が昨日話した茂七さん」

目の前に座る彼を紹介
茂七さんは間が悪そうに
軽く会釈をした

そして‥
隣に座る威厳ある父(仮)
やはり茶を啜る父(仮)

⏰:10/02/06 21:22 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#432 []
 
「それで‥此方が‥」

「‥香夜の兄、です」

あ‥兄と来ましたか?!
まぁ夫とかよりはましだけど

兄‥はぁ、
あたしの兄にしては美しすぎる

「え、ちょっと‥壱助さ‥」

「"お兄様"です、よ」

いつもより張った声が
ずしりと重くのし掛かる

⏰:10/02/06 21:23 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#433 []
 
「お兄様でいらっしゃいましたか
これは誠に無礼な事を‥」

深々と頭を下げる茂七さん

‥残念ながら
お兄様じゃないんですぅ

「いえ、いえ」

‥この雰囲気で
一体何を話すのか

⏰:10/02/06 21:23 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#434 []



「香夜さんは今お幾つで?」

カチャカチャ

「十八ですよっ」

ズルズル

「いやー一番美しい時だぁ!!」

カツカツ

「やだなぁーっ
そんな事ないですってー」

コツコツ

⏰:10/02/06 21:24 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#435 []
 
ねぇわざとでしょう?
ねぇわざとなんでしょう?

その音!!
食事の時なんて
あたしが音立てると
五月蠅いって怒るじゃない‥


「いち‥じゃない、お兄様?」

「何、か」

「もう少し‥」

⏰:10/02/06 21:25 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#436 []
 
「あぁ、
香夜は本当に良い妹でして‥
あれやこれやとお声が
良く掛かるんですが、ねぇ」

口角が上がった
しかも饒舌
声掛かってるのは貴方でしょ

「もう心に決めた者が
‥居るそうですぜ?」

"ねぇ"と横目で訴え
足をぐいっと踏みにじられ
強要される同意

⏰:10/02/06 21:26 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#437 []
 
「香夜さん‥そうなんですかい?」

茂七さんの見開いた目が
何とも印象的で

「ふぇっ?!
あぁ‥えっと‥まぁ‥うぅん」

語尾を弱めれば
潰され行く足の指

「ゔ‥い、居ますぅ!!!」

もうヤケだ
箸を握りしめて声を張る

折角、いい出会いだと思ったのに
あたし一生嫁に行けないのか‥

⏰:10/02/06 21:27 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#438 []



結局威圧感に負け
大したお話も出来ず終い

「ご馳走様でした
何か、空気悪くなってしまって
申し訳なかったです‥」

頭が上がりませんよ
お兄様‥鬼ぃ様。はは

しかし茂七さんの返事は
予想外だった

⏰:10/02/06 21:28 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#439 []
 
「いやぁそんなそんな!!
お兄様にも早速ご挨拶出来まして
‥これからが楽しみですね!!」

がははとまた笑い
あたしの肩をバシバシ叩く

これから?
‥あたし一応さっき
心に決めた人がいるって‥

⏰:10/02/06 21:28 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#440 []
 
「こんな別嬪さんと
恋仲になれるなんて
俺も運がいいなぁ!!」

ほ?
何を勘違いしてるのか
どこまで前向きなのか


「とんだ勘違い野郎です、ね」


背を向けてぽつり呟いたのは
もちろんお兄(鬼)様。

⏰:10/02/06 21:29 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#441 []
 
刀で一突きするように
躊躇なく毒を吐く
その度ひやひやさせられるのは
言うまでもない


「さ、帰りますよ香夜さん」

腕を掴むでなく
ぎゅっとあたしの手を握りしめ
思い切り引き寄せられた

⏰:10/02/06 21:29 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#442 []
 
「‥?」

ぽかんと口をだらしなく開けた
茂七さんをよそ目に


壱助さんの唇が
あたしの首筋に触れた

「ちょちょちょいっ!!!
お‥お兄様何を‥?!」

わけわかりません
状況が読めません

⏰:10/02/06 21:30 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#443 []
 
「‥"壱助さん"です、よ」

「え‥お兄様じゃあ」

目をぱちくりさせて
珍しい物を見るような茂七さん


こんな変な所見られるなんて‥
恥ずかしすぎる!!

⏰:10/02/06 21:30 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#444 []
 
血液が体を
何度も何度も巡るのがわかる
勢いの良い鼓動が帯びる熱


「‥妻です、よ
さぁて、帰ったら直ぐに
此の火照った体を頂こう、か」

首筋を一舐め
生暖かい感覚に支配され
足の力が抜けそうだ

「なな‥なっ」

顔を真っ赤にした茂七さんは
嵐のように目の前から去った

⏰:10/02/06 21:31 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#445 []
 

もう‥もう‥もう!!!


「壱助さんのすけべぇえぇえ!!!」


「おや、おや
威勢が良い妹です、ね」


破廉恥なクセに美しいから
結局、憎めない訳ですが‥

⏰:10/02/06 21:32 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#446 [笹]
第十三章 【現れて/後編】

*。*。*。*。*
兄としての心配か
男としての心配か
微妙な所です壱助さん(笑)

香夜ちゃん
振り回されっぱなしだし←

とんだ破廉恥野郎です、ねw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/06 21:35 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#447 [我輩は匿名である]
>>390-440

⏰:10/02/07 09:32 📱:W53H 🆔:CcPPBOhA


#448 [我輩は匿名である]
>>420-440

⏰:10/02/07 09:33 📱:W53H 🆔:CcPPBOhA


#449 [れぃ]
>>2-200
>>201-400
>>401-600

⏰:10/02/07 11:31 📱:N04A 🆔:eBOH6ab6


#450 []
 
酒は人を変えますが、
酔った姿が‥本当の姿
とも言うもんで‥。

しかし、酒に飲まれては
だらしなくなるものです、よ


"赤いは酒の咎"なんぞ‥
言い訳は無用です、ぜ

⏰:10/02/07 18:26 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#451 []



―‥ある日の事である。

宿から聞こえるむせび声
何かと思って襖を開ければ
ぽつり部屋の片隅で
‥うずくまる"雌猫"一匹


「うぅ‥ッグズ」

‥酒臭い

虚しく転がる一升瓶
滴がぽたり

⏰:10/02/07 18:26 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#452 []
 
足袋が畳に擦れる音に
ぴくりと反応しこちらを向いた


「壱助さぁああぁん」

酷い顔‥ですねぇ

「遅かったじゃ‥ッヒク
遅かったじゃらいれすかぁ」

四つん這いで着物にしがみつく
流石"雌猫"

⏰:10/02/07 18:26 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#453 []
 
「‥酔ってるんで?」

「酔ってまぁぁあっしゅ!!」


"えへへ"なんて言いながら
右手を挙げて見上げた



‥厄介な者に出くわしやした、ね

⏰:10/02/07 18:27 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#454 []



先程からひっきりなしに
だらしない笑みを浮かべ
一人騒ぎ立てる


「‥香夜さん」

「なんれすかぁ?ッヒク」

火照った体をよじり
目の前に座った

⏰:10/02/07 18:27 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#455 []
 
「‥騒がしいのです、が」

そんな事で
黙るとも思わないが
他にかける言葉がないもんで


「壱助さんも‥
飲みましゅかぁあ?」


馬鹿でかい声が鼓膜を突き刺す

⏰:10/02/07 18:28 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#456 []
 
「結構、です」


すると寂しそうに肩を落とし
"飲みましぇん?"と二度押し



―‥全く、困ったもんです、よ

⏰:10/02/07 18:28 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#457 []



「まだ‥寝ませんで?」

既に日付が変わり
静まり返った闇に包まれ
照らすは月の光のみ

子供のようにぐずるので
布団を乱暴に投げつけると
ぱたりと声がしなくなる

急に大人しくなられると
ちょいと、不安になるもので‥

⏰:10/02/07 18:29 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#458 []
 
「風邪‥引きます、よ」

顔にかかった布団を
除けてやれば


―‥ やられたもんだ



「ぶぁぁあっ!!」

‥糞、餓鬼

⏰:10/02/07 18:30 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#459 []
 
飛び出した両手が首に絡みつき
無理やり布団の中に押し込まれた


「命知らずです、ね」


こちらの気も知らずに
‥貴女と言う人は

⏰:10/02/07 18:30 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#460 []
 
背を向けて目を瞑る
乱れた鼓動を整えて
深く溜め息を吐く

調子が狂います、ぜ


「寝ちゃう‥んれすかぁ?」

「‥」

背中に問う声が
情けないほどに弱まった

⏰:10/02/07 18:31 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#461 []
 
「んう‥」

しなびた声が耳にかかる
こちらに現れた小さな白い手


生娘が男を‥襲う気ですかい?


後ろから抱きついた貴女は
何を思ってるのか‥

いつもなら頬を染めて
嫌だと喚くと言うのに

⏰:10/02/07 18:31 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#462 []
 
全く、酒は人を変えます故‥
そのせいで虚しくなるのも
また‥然り


「‥壱助さん」

背中に響く声が
こんなにも、こんなにも‥

「何、か」

色めいて聞こえるのも

⏰:10/02/07 18:32 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#463 []
 
「‥寂しかった」


‥酒の力ですか、ね

小さく震える体を
抱き締めてやりたいのに
どうしてこうも、躊躇うか


‥情けないもんです

⏰:10/02/07 18:32 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#464 []



「‥馬鹿です、ねぇ」


答えるような幼い寝息
月明かりに照らされた肌に
そっと触れる

呆れるほどに無防備で
着物を掴んだ柔らかな手が
ぴくりと呼吸した

⏰:10/02/07 18:33 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#465 []
 
「‥放って、置けやしない」


他の輩の前で
酒など飲ませてたまるかと
仕様もない独占欲に駆られ


‥小さな体を思い切り抱き寄せた

⏰:10/02/07 18:33 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#466 []



久しぶりに眠りに付いた
目を覚ますと
長い睫を伏せた"猫"

昨晩の艶やかさは何処へやら
‥何時ものあどけなさを残す姿


はだけた浴衣から
美しい鎖骨が見え
小さく微笑み遠慮がちに触れた

⏰:10/02/07 18:34 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#467 []
 
「ん‥う」

眩しそうに目を細めた酔っ払い


ちょいと間を置いて目を見開き
どうやら我に返った様子


「あ‥え?そそ‥添い寝?!」

⏰:10/02/07 18:34 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#468 []
 
色気のない声を出し
あたふたする姿を見て
何故か安堵を覚えたもので‥


「壱助さん‥え?やだぁっ」

頬を紅くして
布団に顔をうずめた

何を考えたんですか、ね


そんな簡単に
手なんか出しやしない‥ですぜ

⏰:10/02/07 18:35 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#469 []
 
「あたし‥何かしました?」

しかし覚えてないとなると


「昨夜は‥
楽しませていただきました、よ」


ちょいと悔しい物があるもんで

⏰:10/02/07 18:36 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#470 []
 

「嘘‥うそぉおお!?」



貴女の恥じらい困惑する顔を
見たくなって‥しまう。


意地の悪い男‥です、よ

⏰:10/02/07 18:37 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#471 [笹]
番外編 【呑んで、呑まれて】

*。*。*。*。*。*
またもや番外編 !!

香夜ちゃんをもっと
積極的にさせたかったです
もっと壱助さんを
もどかしくさせたかったぁあ

とりあえず壱助さんは
そんな簡単に襲ったりしない
素敵な男性です w
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/07 18:40 📱:D905i 🆔:zJfCkqns


#472 []
 
時には
究極の選択が迫られることが
誰にでもあるもの、です


自分の無力さに
酷く腹が立つ‥こともある


"断腸の思い"で
時に人は物事を切り捨て
生きていかなければならない

それが‥人生と言うものです、よ

⏰:10/02/08 20:12 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#473 []


「雨なんて珍しいですよね」

ザァ―‥

今日は珍しく
此の街に雨が降った

濡れた地面の独特の匂いが
鼻の奥をくすぐる

真っ赤な番傘から落ちる
雨滴に睫を濡らした

⏰:10/02/08 20:13 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#474 []
 
「‥あたしも入れてください」

「何、故」

もちろんあたしは
傘なんて持っていなくて
壱助さんの傘の中に
一緒に入れてもらうつもりで
今日は街に出た

だけどやっぱり
そううまくは行かないもの

⏰:10/02/08 20:13 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#475 []
 
「濡れちゃうぅ‥」

ぐいぐい無理やり
頭を突っ込んでみても
大きな手で押し出される


「ちょっとくらい
いいじゃないですかぁっ!」

ぷうと頬を膨らませても

「ね?壱助さぁあん、うふん」

ない色気を絞り出しても

⏰:10/02/08 20:14 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#476 []
 
「濡れたくらいで死ぬほど
‥か弱くないでしょう、貴女」


‥無駄ですか。
横目でぼそり呟かれた

これが図星だから辛い

⏰:10/02/08 20:14 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#477 []
 
「高い着物ですから‥
汚されては困りやすから、ね」

そう言って
傘を少しこちらに傾けた

「やっぱり壱助さんって
案外優しいですよねっ」

「‥水溜まりにその顔、
突っ込まれたいんですかい?」

「いや‥結構です!!!」

壱助さんは
褒められるのが嫌いだそうです

⏰:10/02/08 20:15 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#478 []



雨となると
いつもの街もどこか寂しい
賑わいは雨音に変わる

「壱助さん、鯛焼き食べたーい」

「‥」

壱助さんの足が急に止まる
濡れぬように
慌てて傘の中に戻った

「どうしたんですか?」

⏰:10/02/08 20:15 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#479 []
 
壱助さんの視線の先には
小さな竹薮
薄暗くて気味が悪い

「‥血腥い」

「え?」

壱助さんは顔をしかめて
そこから目を離さない

雨音と竹のきしむ音の向こうに
聞こえたのは生々しく鈍い音
荒れ狂った女の声

⏰:10/02/08 20:16 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#480 []
 
「どうしてお前はいつもいつも!!」

バシンッバシンッ

「言うことが聞けないんだい!」

ドガッ

「この役立たず!!」

「‥ッゲホッ、かぁさ‥ん」

「お前なんかねぇ‥お前なんか」

⏰:10/02/08 20:16 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#481 []
 
足が震えた
何とも言えない感情が
わぁっとこみ上げてくる

悔しさに唇を噛み締め
拳を握った

自然とそちらへ足が向かう

「香夜さん‥」

行くなと壱助さんが
あたしの着物の袖を引いた

⏰:10/02/08 20:17 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#482 []
 


「‥死んじゃうかもしれない」



そう言って振り払い
声のするほうへ足を進めた

⏰:10/02/08 20:17 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#483 []



そこには物凄い形相をした
母親らしき女の人と
この雨の中
裸でうずくまる少年

少年の体は
いたるところに痣ができ
歪に腫れ上がった跡や
刃物で切られたような
鋭い傷が無数にあった

母親に思い切りぶたれ
蹴飛ばされ‥

⏰:10/02/08 20:18 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#484 []
 
昔の自分と少年を重ねた

「‥やめ‥なさいよ」

憤りに得体の知れない
幼い頃の感情が湧き上がる

「お前なんか
生まれてこなければよかった!!」

ドガッ

「ごめ‥なさい、ゲホッ‥んぐ」

少年の口から吐き出された
真っ赤な血が雨に消える

⏰:10/02/08 20:18 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#485 []
 
声を張ろうと
大きく息をすると
壱助さんがあたしの腕を掴んだ

「‥帰ります、よ」

「何言ってるんですか‥?
このままじゃあの子‥」

目の奥から今にも
熱いものが溢れそうで

今止めなかったら
この子は死ぬかもしれない
今あたしが助けなきゃ‥

⏰:10/02/08 20:18 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#486 []
 


「貴女に‥何ができるんで?」



いつになく真剣な眼差しが
訴えかける

⏰:10/02/08 20:19 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#487 []
 
「何って‥
助けるんですあの子を!!」

手を振り払おうとしても
壱助さんの手は
掴んで離さなかった


ひどい‥壱助さん

「壱助さんにはわからないんです
親に暴力を振るわれて
黙って耐えて‥」

⏰:10/02/08 20:19 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#488 []
 
不安定な言葉を
無理に立て直しながら
何度も何度も振り払おうとした


「助けた所で‥
彼は、幸せになれますかい?」

悲しそうな壱助さんの目が
捕らえて離さない

幸せ‥?
幸せに決まってるじゃない

⏰:10/02/08 20:20 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#489 []
 
「彼を助けて、その後
貴女が養うとでも‥?」

「それは‥」

「見知らぬ土地に放されても
‥彼は死に至るでしょう。
貴女は、彼の家庭の事情を
全てご存知なんですかい?
彼はあんな母親でも、
慕っているかも‥しれない」

何も言い返せない自分に
腹が立った

⏰:10/02/08 20:21 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#490 []
 
「中途半端に
情に流されて動いては‥
却って苦しめることになる。」

だけど‥だけど
あの子死んじゃうよ‥

「今此処で
あの母親に何か言えば
‥彼は本当に殺されます、よ」

うずくまる少年が
ちらりとこちらを向いた

⏰:10/02/08 20:21 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#491 []
 
助けを求めるでもない
憎しみも悲しみも
何も訴えてこない
曇った目をしていた。



恐怖をも覚えるほど

一番辛くさせる眼差しだった

⏰:10/02/08 20:22 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#492 []



‥雨は止まない

さっきの少年の目が
頭に焼き付いて離れない

あたしには
何もできないと言う悔しさ
一方的に押しつけてしまった
自分の感情。


もうわからないよ‥壱助さん

⏰:10/02/08 20:23 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#493 []
 
「死んじゃったら‥
死んじゃったら‥どうしよう」

ぶわっと泣き出し
顔を両手でふさいだ

これは不安よりも恐怖で
自分の無力さへの
憤りでもあった

たくさんの思いが
複雑に絡みうめき
涙になって流れてゆく

⏰:10/02/08 20:23 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#494 []
 
「香夜さん‥」

畳を擦ってこちらに寄り添い
後ろから優しく
壱助さんが抱きしめた

「‥あたし‥もう」

濡れた体を
優しく撫でるように
手拭いをあてがう

⏰:10/02/08 20:23 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#495 []
 
「もう、何も見なくていい‥
何も考えなくていいんです、よ」


いつもより暖かい
壱助さんの手が
あたしの目を覆った。

⏰:10/02/08 20:24 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#496 []
 
「何も‥。

しかし、あの目を
一生忘れてはいけません、ぜ
あの目を忘れた瞬間‥

貴女は彼を‥
見殺しにした事となる。」

⏰:10/02/08 20:25 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#497 []
 
人は本当に無力で
結局は願うことしかできない。

そのもどかしさが
絡みついてうめき声を上げる


それでもこの願いが
少しでも、たった一瞬でも
誰かを救えると言うのなら

あたしは一生
願うことをやめないでしょう

⏰:10/02/08 20:25 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#498 []
 

―‥そして
"生きることを諦めない"と
心に誓うのです。


_

⏰:10/02/08 20:26 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#499 [笹]
第十三章 【無力さ、覚えて】

*。*。*。*。*
珍しく内容があるものを ←

とりあえず
壱助さん喋りまくり
なんとなく喋らせたかったw
そんでもって
どんなときも冷静沈着

香夜ちゃん
ひとつ大人になるの巻

つまらん(´・ω・`)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/08 20:29 📱:D905i 🆔:hMEINdHE


#500 []
 
どんなに気が強い"猫"も

どんなに意地っ張りな"猫"も



本人の気付かぬ内に
心が虚空に蝕まれるもの


心が"綿のよう"になれば
それも一気に
音を立てて崩れ出すものです、よ

⏰:10/02/09 18:49 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#501 []
 
「香夜さん‥、」

昨日の雨も
夜中の内に上がり
澄んだ青空が広がった


―‥チュンチュン


「朝です、よ」

⏰:10/02/09 18:50 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#502 []
 
ベチンッ


「いぃったあぁい!!!」


またいつもの朝を迎えた
いつになったら
あたしは1人で起きられるのか

‥こんな毎日毎日
顔面叩かれてたら、腫れてしまう

⏰:10/02/09 18:50 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#503 []
 
そして今日も
壱助さんはお美しい

‥只でさえ朝早いのに
着物もきっちり来て
全く寝起きって感じがしない

やっぱり寝てないのかな?



ゆっくり体を起こす
夢にあの少年が出てきて
うなされたのか‥
少し体が汗ばんでる気もした

⏰:10/02/09 18:51 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#504 []
 
「‥」

無言で見つめる壱助さんの手には
空になったお茶の葉の袋


「あのぉ、」

「‥何、か」

何でいつもそう
仏頂面なのかしら‥。

⏰:10/02/09 18:51 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#505 []
 
笑ったりしたら絶対‥

‥笑わなくてももてるから
憎いんだった。


「お茶‥」

「買ってきてください、ね」

「そうじゃなくてぇ‥」

「買ってきてください、ね」

⏰:10/02/09 18:52 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#506 []
 
「‥もうちょっと」

「早く」

こう言うときだけ
笑顔を浮かべる


壱助さんは
笑わなくていいかも‥。

⏰:10/02/09 18:52 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#507 []
 
またぼうっと窓の外を眺めてる
そんな壱助さんを
ぼうっと見つめるあたし

こちらに目を向けてないのに
"何、か"と言う


背中にも目がついてるのかしら
未だに壱助さんは
沢山の謎に包まれています

⏰:10/02/09 18:53 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#508 []
 
「‥行って参ります」

そう言って
しぶしぶ布団から
出たその時であった


「‥あれ?」

足元がふわり浮くような
不思議な感覚に襲われ
頭が石のように重く感じ

そのまま意識が飛び
体が‥

⏰:10/02/09 18:53 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#509 []




一瞬どこかへ旅立った
自分を引き戻し
はっと目を覚ます

目の前には
切れ長の目の肌が白い‥


「壱助さん‥?」

はて‥
何があったんだろうか

⏰:10/02/09 18:54 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#510 []
 
「‥危なっかしいです、ね」

目を細めて、呆れた様子


今‥この体勢は‥
この頭に触れるのは‥


「ひざ‥膝枕」


思わず上擦った声に
ごくりと唾を飲んだ

⏰:10/02/09 18:54 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#511 []
 
壱助さんに
膝枕をしてもらうなんて
壱助さんの
お膝様をお借りするなんて


‥なんて命知らずなんだ


「わわっ
ごっごめんなさいこんなっ」

慌てふためくあたしの顔は
きっと真っ赤に染まってる
火がでるほど熱かった

⏰:10/02/09 18:55 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#512 []
 
下から見る壱助さんの姿は
彫刻みたいに鼻が高くて
また睫長くなってる気がして

たった一度だけ触れた唇が
あの優しい感覚を蘇らせた

‥同じ世界の人間か疑うほど
親の顔が見てみたい

「そんなに‥
か弱かったんですかい?」

「へ?」

⏰:10/02/09 18:55 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#513 []
 
すると見る見る内に
いい匂いと共に近づく
あの美しい顔

「ちょっちょっ壱助さんっ?!」


また消毒ですか?!
待ってよ心の準備ってもんが‥

⏰:10/02/09 18:56 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#514 []
 


‥コツン



え?

恐る恐る目を開けると
近すぎてぼやけて見えるが
やっぱり美しい壱助さんの顔

⏰:10/02/09 18:56 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#515 []
 
「な‥えぇ‥?」

触れていたのは
唇と唇ではなく額と額

残念ながら‥

いや、べ別に残念じゃないけど‥
消毒ではありませんでした

⏰:10/02/09 18:57 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#516 []
 
しばらくの間壱助さんは
寝てるのかと疑うほどに
ぴくりともしなかった

火照った頬を
くすぐる規則正しい呼吸

こっちは緊張しすぎて
息苦しいと言うのに‥

壱助さん
いろいろと手慣れすぎです

⏰:10/02/09 18:57 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#517 []
 
「壱‥助さぁん?」


すると
一時の眠りから覚めたように
目を開けてすっと顔を離した

それと同時にあたしは
その間呼吸できなかった分を
部屋の空気を全部吸い取るくらい
思いっきり体に取り込んだ

⏰:10/02/09 18:58 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#518 []
 
「‥全く、」

いやいや
いきなりそんなことされた
こっちが全くですよ


「たったあれ如きで‥
熱を出すとは、ね」

「熱?」

⏰:10/02/09 18:58 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#519 []
 
そう言われてみれば
朝からちょっと体が重かったかも

昨日の雨にやられたかな?


「情けない‥ですね」


はぁっとため息を吐くと

⏰:10/02/09 18:58 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#520 []
 
ガサッ

一気に目の前が暗くなった
‥お茶の匂い

間違いなく
今あたしに被さってるのは
さっきまで壱助さんが手にしてた
お茶の葉の空袋


そっか‥
じゃあ今日はお茶お預けかぁ

⏰:10/02/09 18:59 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#521 []
 
「‥ごめんなさい」

自分の声が袋中を駆け巡り
また耳の奥へ帰る

きっとお茶は
壱助さんの命の次に大切なもの

そう考えたら
何だか急に申し訳なくなった

⏰:10/02/09 18:59 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#522 []
 
グシャッ

耳を突き刺すような音と共に
朝と同じ激痛が顔面に走る


「ったぁあいぃ!!」


何でこうも壱助さんは
顔面攻撃が好きなんだろうか‥
ただでさえ不細工なのに‥もう

⏰:10/02/09 19:00 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#523 []
 
息つく暇もなく
壱助さんはやりたい放題


「うわっまぶしっ!!」

一気に袋を取り去られ
急にさす光の眩しさに
目の前が眩んだ

じーっとこちらを見つめる
美しい視線とぶつかった

⏰:10/02/09 19:00 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#524 []
 
まばたきもしないで
ただじっと‥


熱のせいか頭が働かない

いつもなら
考えなくとも口が勝手に
喋り出すのになぁ

⏰:10/02/09 19:01 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#525 []



「どんな‥夢を?」

先に口を開いたのは
壱助さんの方だった

ひんやりした雪のような手が
額にそっと触れた


‥心地いい

⏰:10/02/09 19:01 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#526 []
 
「昨日の‥少年の」

蚊の鳴くような声で答えると
"そうです、か"と
何かを考え込んでる顔で言った


壱助さんの手は
まるで魔法の手みたいで
熱を吸い取っていくような
‥そんな気がした

⏰:10/02/09 19:02 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#527 []
 
それから
何を言うでもなく‥
壱助さんは優しく
あたしの額辺りを撫でて
また空を眺めてた


「壱助さん‥空好きですよね」

大した答えなど
期待してなかった

「‥何か見えるんですか?」

返事のない横顔に続けて問った

⏰:10/02/09 19:02 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#528 []
 
「‥いえ、何も」

「どうしてそんなに
眺めてるんですか?いつも
何か考え事でも?」



するとぴたりと手が止まった

⏰:10/02/09 19:03 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#529 []
 
「何も‥考えたくないから
こうして居るんです、よ」


気のせいだろうか
いつもより少しだけ
横顔が寂しそうに見えた


‥見ていられなかった
今日のあたしはどうかしてる

⏰:10/02/09 19:03 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#530 []
 

――――‥


_

⏰:10/02/09 19:04 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#531 []
 
ふわりと
お茶の香りが宙を舞う

体が勝手に動いてしまった
‥きっと壱助さんが
その左手で魔法をかけたのだ


衝動的に起き上がり
壱助さんを
胸の中に押し込めた

⏰:10/02/09 19:04 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#532 []
 
ぎゅうっと綺麗な背中を
壊れそうなくらい
強く抱きしめると
壱助さんは力なく応えた

「‥泣いてるんで?」


わからない
わからないけど
‥涙が止まらなかった

⏰:10/02/09 19:05 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#533 []
 
「壱助さ‥ん
何処にも‥行かないで」

情けなく弱々しい声を
涙と一緒に落とした


何故そんなことを言ったのか
‥わからない

だけど急に不安になった
独りにされてしまいそうで

壱助さんはこんなあたしに
‥疲れているんじゃないかって

⏰:10/02/09 19:05 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#534 []
 

「約束、したでしょう
独りにしない‥と」


包み込むように
ぎこちなくあたしを撫でた手に
一瞬にして不安が吸い取られた

⏰:10/02/09 19:06 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#535 []
 

あたしの、居場所は


―‥貴方の隣。

_

⏰:10/02/09 19:07 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#536 [笹]
第十四章 【寂しさ、溢れて】

*。*。*。*。*
続けてしんみり系
申し訳ない(´・ω・`)

壱助さんのそんな顔をみたら
急に不安や寂しさが
溢れ出してしまった香夜ちゃん

昨日の事で
精神的にやられてた模様。

だけど壱助さんがいれば
安心ですねーっ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/09 19:10 📱:D905i 🆔:rBP2/YbM


#537 []
 
まだまだ子供な"飼い猫"が
ぼうっと空ばかり眺めて
雪を待ちわびているもんで‥



"色は思案の外"と
良く言われます故‥



―‥自分でも、
良くわかりゃしないのですが、ね

⏰:10/02/10 16:47 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#538 []
 



雲が低い
空一面を灰色に染める


「‥雪ですか、ね」



冷えた空気が息を白く染めた

⏰:10/02/10 16:48 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#539 []


「お帰りなさいっ」

窓から乗り出すような勢いで
雪が降るのを待ちわびていると
壱助さんが帰ってきた


「今日、雪降りますかねぇ?」

別に雪は珍しくない
だけど真っ白に染められた街に
なんだかとてもわくわくして
何時になっても
目を輝かせてしまうのだ

⏰:10/02/10 16:48 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#540 []
 
「‥さぁ、ね」

後ろで聞こえた素っ気ない声に
着物と肌がすれる音が続く


「‥んう」

また黙って着替えて‥
着替えるときは声かけてって
あれだけ言ってるのに

気付かぬふりをして
じっと空とにらめっこ

⏰:10/02/10 16:49 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#541 []
 
―‥だけど沈黙となれば
どこかむず痒い


「外、寒かったですか?」

「そりゃあ‥ねぇ」


今度は畳と着物がすれる音
どうやら着替え終わったらしい

⏰:10/02/10 16:50 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#542 []
 
流石に手が冷えてきた
外へ向けた息も白い


「囲炉裏があると
やっぱり冬はいいですよねぇ」

なーんて
あたしにとっては珍しかった
囲炉裏に暖かさを求めて
振り返ってみたものの‥

⏰:10/02/10 16:50 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#543 []
 
「壱助さん!!」

どうしてそうも貴方は‥

囲炉裏の前に立ちはだかる
壱助さんの背中


「ちゃ‥ちゃんと袖!!」


時々よくわかんない所で
壱助さんは半裸になりたがる
‥露出狂だ。

⏰:10/02/10 16:51 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#544 []
 
そして何度見ても
この美しさには慣れない

雪みたいに真っ白だから
囲炉裏に近づいたら
溶けちゃうんじゃないかって
馬鹿みたいな心配をするほど


一気に火照った顔を
ぷいっと背けて
また空に目を向けた


雪‥やっぱり降らないかなぁ

⏰:10/02/10 16:51 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#545 []



結局"まぁ、まぁ"と言って
言うことを聞いてくれず‥


って言うか
何が"まぁ、まぁ"よ!!

あたしだって暖まりたいのにぃ‥

⏰:10/02/10 16:52 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#546 []
 
「雪が降りそうだって言うのに
何でわざわざ‥
着物下ろすんですかぁ?」

少し乱暴に唇を尖らせて
後ろにある背中に訴えると


「いいじゃあ、ないですか」

と、満足げな声が返ってきた

⏰:10/02/10 16:53 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#547 []
 
ちらりと少し顔を向けて
横目で様子をうかがえば
胡座をかいた片膝に
頬杖を付いてくつろいでいる


あったかそう‥
行きたい‥けど
そんな半裸の男の人の
隣になんか並べない!と言う

‥生娘の葛藤。


ただただ時間が過ぎ
体が冷え行くだけだった

⏰:10/02/10 16:53 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#548 []



「‥へっくしゅん!!」


このままじゃ風邪引く‥
冷えた手を口元の前で握りしめ
はぁーっと息を吹きかける


「やれ、やれ」

⏰:10/02/10 16:54 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#549 []
 
やれやれって‥
そもそも壱助さんが
変態な趣味持ってるからよ!!


最早此処まで来ると
動いてたまるかとヤケになるもの


「仕方のない人、ですねぇ」

_

⏰:10/02/10 16:55 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#550 []
 



――‥ ギュウゥ



一気にあたしの体を温めたのは
後ろからいきなり
抱きついてきた壱助さんだった

⏰:10/02/10 16:55 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#551 []
 
「維持など張らずに‥
此方に来れば良いものを」

首を抱くようにして
絡みつく腕が
男らしいくせに美しくもある


「べ‥別に、維持なんて‥」


言い訳を並べようとした口に
華奢な指が触れた

⏰:10/02/10 16:57 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#552 []
 
「ほぉう‥」

「壱助さんが‥
あく‥悪趣味だから」

いつもと違って
暖かい壱助さんの体に
とても違和感を覚えて


なんだかいつもとは
別の人のような気もして‥

乱れる鼓動を
止めてしまいたかった

⏰:10/02/10 16:57 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#553 []
 
「‥こいつぁ、手厳しい」


急に横で見せた含み笑いに
いつもより瞬きを多めにして
顔を背けてみる


「おや‥顔が赤く‥」

「言わないで下さいぃっ!!」


もう‥香夜は溶けそうです。

⏰:10/02/10 16:58 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#554 []
 
そんな火照った顔を見るために
出し惜しみしてたかのように
ちらちらと粉雪が舞う


「雪だぁあっ!!
ほらっ壱助さん雪‥」


降り出した雪が
あたしを子供にさせたから

夢中にさせたから

横にいた貴方をも
消してしまったから

⏰:10/02/10 16:59 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#555 []
 


 ――――――‥




_

⏰:10/02/10 16:59 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#556 []
 

「おや、おや
随分と大胆‥ですねぇ」


意識が飛びそうなほどに
唇から伝った熱で



‥早くも、雪解けの予感です。


_

⏰:10/02/10 17:00 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#557 []
 
【 お ま け 】

「あ‥あれは事故‥」

「事故?‥ほぉう」

「そうです事故です事故っ!!」

「‥あの後
物足りずに自ら唇を‥」

「言わないでぇえぇぇえっ!!!」


‥めでたし、めでたし。

⏰:10/02/10 17:04 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#558 [笹]
番外編 【待ちわびて】

*。*。*。*。*。*
急に寒くなったので
甘甘をご提供 ////

なんかいろいろとあれですが←
あくまで番外編なので
好きにさせていただきましたw

外ばっかり見てる上に
意地っ張りな香夜ちゃんに
してやったりの壱助さん

香夜ちゃん案外大胆w
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/10 17:07 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#559 []
 
貴女がそうしたいと言うならば

私は何も言いません、よ



"去るもの追わず"

⏰:10/02/14 01:33 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#560 []
 
「‥」

あの日から
口数が確実に減った

何を考えているのか‥
正座したまま虚ろな目

「どうか‥しました、か」

「‥いえ、別に」

不思議なほど此の調子
此方の調子が狂います、よ

⏰:10/02/14 01:34 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#561 []
 
夜になれば寝付きもせず
声を殺して泣く、ときた

‥どうしたもんか、ねぇ


「‥壱助さん」

畳に話しかけて‥
私は此方なのですが

⏰:10/02/14 01:34 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#562 []
 

「何、か」

「壱助さんは‥」


言葉が途切れた
いや‥躊躇っているのでしょう
小さく喉が動いた

⏰:10/02/14 01:35 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#563 []
 
「壱助さんは‥本当にあたしと
ずっと一緒に?」

「居ます、よ」


嫌だとでも言いますかい?
去る者は追わぬ主義ですが‥


「恋仲の人が出来たら‥
あたし、邪魔ですよね?」

⏰:10/02/14 01:35 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#564 []
 
そんな事で‥
今まで泣いてたの、か

全く‥貴女と言う人は


「ほう‥」

「あたしなんかと居たら
一生結婚できませんよ?
壱助さん‥絶対いい人に‥」

⏰:10/02/14 01:36 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#565 []
 
「其れならば‥去る、と?」

「‥んう」

下を向いて肩を震わせる


本当に意地が悪い奴です
貴女を何処までも困らせたい

⏰:10/02/14 01:36 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#566 []
 

「香夜さん次第です、よ」

「‥足手纏いな気がして」


悩みなど無さそうな顔を
している人ほど
押し潰されそうになっている

‥そんな物です

⏰:10/02/14 01:37 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#567 []
 
「あたし、どじだし‥五月蠅いし
色気もないし、使えないし‥」


自分を何だとお思いで?
ちょいと安く見積もりすぎでは‥


「どう‥したいんで?」

貴女は私を苦しめる

⏰:10/02/14 01:38 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#568 []
 
「‥」

何処までも、何処までも

「答えられぬと言うなら‥」


「一日‥時間を下さい」


お考えになろうと‥いうこと、か

別れもそう遠くはない、と

⏰:10/02/14 01:38 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#569 []



背を向けて眠りにつく

香夜さんが悩んでいる事は
正直言えば下らない
無駄な心配でしかない

しかし貴女にとっては
大問題なのでしょう


‥本当に鈍い人だ
だから放って置けないと言うのに

⏰:10/02/14 01:39 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#570 []
 
後ろの気配が息を潜めて
ゆっくりと布団から抜け出した

小さく鼻を啜り
着物がはらりと脱げる音

帯をきっちりしめて


‥音が止まる

⏰:10/02/14 01:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#571 []
 
闇に包まれて
何も見えないはずなのに

何故でしょう、ね
貴女の泣き顔が目に浮かぶ‥


"行くな"と声をかける事も
抱き寄せる事も
肝心な時に限ってできずに
体が動かなくなる

⏰:10/02/14 01:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#572 []
 
私は、
何に躊躇っているのでしょう、ね



―‥ 足音が消えた

⏰:10/02/14 01:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#573 []



一睡もできずに
唯ぼうっと
月明かりが照らす畳の網目を
雑に何度も目で追った

重い体を起こし
消えた隣の温もりに
そっと手を添える


「‥馬鹿です、ね」

⏰:10/02/14 01:41 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#574 []
 
枕元に置き手紙

『最後の挨拶くらい
しっかりしたかったのですが
壱助さんの顔を見たら
辛くなると思ったので‥

どうか、お許し下さい。
本当にお世話になりました』


綺麗に整った文字が
一カ所滲んでいた

⏰:10/02/14 01:41 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#575 []
 
「もうだいぶ
連れ添ったと言うのに‥
淡泊な別れです、ね‥香夜さん」



目を細めて
ぼやけた文字を撫でた

⏰:10/02/14 01:42 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#576 []
 

本当に意地っ張りな人だ



最後の最後まで
香夜さん‥

貴女は貴女でした、ね

_

⏰:10/02/14 01:43 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#577 [笹]
第十五章 【温もり、消えて】

*。*。*。*。*。*
バレンタインなのに
えぇえーっな展開w

香夜ちゃんどーしたのっ?
ねぇどーしたのっ?!
壱助さん止めなさいよっ
抱きしめちゃいなさいよっ
あんたいつから
奥手になったのよw

不安定な、お2人様です
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/14 01:46 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#578 []
 
自分で腹を括ったって

後悔は
情が籠もれば籠もるほど
溢れかえってくるもので

何度泣いても泣き足りない

でも、泣くことしか
あたしにはできないのだから‥

"声涙、倶に下る"

⏰:10/02/14 22:37 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#579 []



理由は簡単で

これ以上
迷惑をかけたくなかった

あの日あたしの居場所は
壱助さんの隣しかないって
そう思った

だけど‥だけど違う
今までとは確実に何かが違う

⏰:10/02/14 22:38 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#580 []
 
いけないことに
気がついてしまった気がして


もう一緒に居られないって
‥そう思ったの



できるならこんなこと
したくなかった‥
離れたくなかった

⏰:10/02/14 22:38 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#581 []
 
意地悪だけど根は優しいし

あたしを認めてくれたから
あたしを助けてくれたから


「はぁ‥」

もう泣きそうだ
家出てから
泣かないって決めたのに‥

壱助さんといたら
すぐ泣いちゃう
‥居心地いいんだよね、それだけ

⏰:10/02/14 22:39 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#582 []
 
「猫ぉ‥
これからどうしよう」

野良猫がすり寄ってきた
そんなに可哀想に見えたかな

「‥行くあてがないや」

飢え死にするかも‥
んう‥壱助さぁん

「ミャァウ」

真っ黒な瞳が
こちらを覗き込む

⏰:10/02/14 22:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#583 []
 
「お前も‥独りかぁ」


思いっきり撫でてやる

毛の下から伝わる暖かさに
何故か胸が苦しくなった



‥また遊女屋かなぁ

⏰:10/02/14 22:40 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#584 []
 
「‥香夜ちゃん?」




「‥伊代さぁああぁん!」

⏰:10/02/14 22:41 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#585 []



「でもさぁ香夜ちゃん?
壱助さん心配するだろう?」

不安そうな顔で
伊代さんはお茶を差し出した

「でも‥
去るのもあたし次第だって
壱助さん言ってたし‥」

「んん‥まぁねぇ
あの人も‥」

そう言って眉を下げて
緩く微笑んだ

⏰:10/02/14 22:41 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#586 []
 
「‥?」

「香夜ちゃんと"同じ"さぁ」

「同じ?」

意味深な言葉を残し
頬杖を尽きながら団子を食らう


伊代さんはいつも幸せそう

⏰:10/02/14 22:42 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#587 []
 
湯飲みの中をぼうっと覗き込む

深い緑色の奥に
自分のみっともない顔が
ぼやけて映し出された


お茶‥まだ大丈夫だよね
この前買ってきたばかりだし

「‥はぁ」

体に染み付いた習慣が
余計虚しくさせて、ため息

⏰:10/02/14 22:42 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#588 []
 
「でも、どうするんだい?
これから一人じゃあ‥」

「んー‥」

出された団子に目もくれず
緑色をじっと見つめる


「あたしんちでよけりゃあ‥
汚いけど、使うかい?」

「え?!いいんですかっ?」

⏰:10/02/14 22:43 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#589 []
 
思わず身を乗り出した

しかしすぐさま冷静になり
この朗報の穴に気づく


「でも‥壱助さん
来ますよね‥此処」

見つかっては
合わせる顔がないの
もう会わない
迷惑かけないって決めたから

⏰:10/02/14 22:43 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#590 []
 
結局飢え死に‥
じゃなきゃ、遊女屋

でも遊女屋だって
壱助さん来るかもしれない‥


何を考えても
壱助さんばかり絡んで

情けないほどに
自分は頼ってばかりだったと
改めて実感するのだ

⏰:10/02/14 22:44 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#591 []
 
「まぁ‥来るけどさぁ
部屋貸すから、ね?」


母親のような笑みを
此方に向けた伊代さん

母親の笑みなんて
あたしにはわからないけど

⏰:10/02/14 22:45 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#592 []
 
「でも‥タダで借りるなんて」

「それなら、うちで雇うよ?
裏方ならできるだろう?」


裏方‥そっか
表にでなきゃいいんだ


「よろしくお願いします!!」

⏰:10/02/14 22:45 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#593 []
 
いつか壱助さんが
迎えに来てくれたら‥なんて
仕様もない希望を抱いていた


日が経てば経つほどに
このもどかしさは
恐ろしいくらいに膨れ上がり

壱助さんは
‥あたしを蝕んでいくの

⏰:10/02/14 22:46 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#594 [笹]
第十六章 【嘆いてみても】

*。*。*。*。*
遂に絡みがなくなったw
あー早く絡ませたい←
いやでも
これからどうなるかは
あたしの頭の中次第w

2人の絡みが好きな皆様
もう少々お付き合いください
(´・ω・`)ね
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/14 22:51 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#595 []
 
去るものは追わぬ主義

確か‥
私はそう言いました、ね



"乙に澄ます"のも


終わりにしやしょう、か

⏰:10/02/14 22:57 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#596 []



「香夜ちゃーん!!」

「はぁい!」

あれから一週間
あたしの知る限りでは
壱助さんは此処には来ておらず

伊代さんと伊代さんのご家族に
本当に親切にしてもらい
不自由なく生活してます

⏰:10/02/14 22:57 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#597 []
 
だけどやっぱり
忘れることができなくて

夢に見ては
涙に濡れた頬を拭う


夢の中でしか会えないなら
ずっと眠りについてたいくらい

⏰:10/02/14 22:58 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#598 []
 
朝独りでに目が覚めて

笑いもせずにあたしを見下ろして
"朝です、よ"って言う
そんな声を脳裏から
無理矢理に引っ張り出せば

虚しさが増すばかり


‥馬鹿だなぁ、あたし

⏰:10/02/14 22:58 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#599 []
 
「ちょいと、
買い出し行ってくるから
その間店番‥お願いできる?」

店番‥
表にでなきゃ、か‥


「あぁ‥はい!」

お世話になってるんだもの
しっかり働かなきゃ

⏰:10/02/14 22:59 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#600 []



「‥あぁああ」

独りになると‥貴方ばかり

会いたくない
合わせる顔もない

‥だけど何処かで
ふらりと現れる壱助さんに
期待してるみたい

⏰:10/02/14 22:59 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


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