浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#2 [笹]
気が付いたら
生い茂った竹林の中
竹が風に揺れて
ミシミシ音を立ている
ぼやけた世界に
あたしは目をつむって‥
この世に別れを告げた。
:10/01/24 18:12 :D905i :ZJpO7xz6
#3 [笹]
『こっちに来るんじゃないよ!!
‥汚らわしい!!』
バチンッ
あたしは‥人間なのだろうか
『お前のせいで‥お前のせいで‥
父ちゃん死んじゃったじゃないか!
お前が殺したんだ!!化け物!!』
:10/01/24 18:14 :D905i :ZJpO7xz6
#4 [笹]
ドカッ ドカッ ‥
鈍い音と鋭い衝撃が体を伝った
あたしは何故生まれてきたのか‥
よく‥わからなかった
:10/01/24 18:18 :D905i :ZJpO7xz6
#5 [笹]
『いや‥やめてよお母さ‥』
『汚い声で呼ぶんじゃない!!
あたしはお前の母親じゃない!』
『‥ご‥めんなさい‥。』
幸せの意味を知らずに終わった
つまらない人生だったな‥
:10/01/24 18:21 :D905i :ZJpO7xz6
#6 [笹]
:
:
:
「‥ごめん‥なさいっ
ごめんなさい‥許し‥て」
‥あれ?
あぁ‥あたし死んだんだ
痛み無かったし‥
死ぬってそんな辛くないんだ‥
:10/01/24 18:22 :D905i :ZJpO7xz6
#7 [笹]
ぼうっと差し込む光に
思わず目を細めた
これから地獄行きか天国行きか
決めるんだろーなぁ‥
まぁ
あたしは地獄に決まってる‥
あたしは人殺しだもんね
:10/01/24 18:23 :D905i :ZJpO7xz6
#8 [笹]
ほら‥やってきたよ神様だ
神様って案外普通なんだなぁ‥
もっとこう‥何て言うか‥
あーでも‥綺麗な顔かも
神様ってこんな美形なんだぁ‥
:10/01/24 18:25 :D905i :ZJpO7xz6
#9 [笹]
「‥あぁ、やっと」
神様と目があった
なんだか胸が飛び跳ねた
恐怖じゃない何か別の‥
「本当に‥あんな所にいたら
今頃喰われてましたよ?貴女」
‥ん?
:10/01/24 18:26 :D905i :ZJpO7xz6
#10 [笹]
「運が良かったです‥ね」
ちょっと待てよ
「あのー‥」
恐る恐る声をかけてみた
起き上がろうとしたけど
体に力が入らなかった
「こら、病人‥動いたら死にますよ?」
もしかしたらあたし‥
:10/01/24 18:27 :D905i :ZJpO7xz6
#11 [笹]
「生きてます‥か?」
すると神様は切れ長の目で
こっちをじっーと見つめ
あたしの隣に腰をかけた
逆光でよくわからなかったけど
よく見ればかなり色白で鼻が高い
怪しい‥雰囲気
:10/01/24 18:27 :D905i :ZJpO7xz6
#12 [笹]
「あのまま‥置き去りにしても
よかったんですけど、ね」
クスっと鼻で笑い
これまた綺麗な手であたしの顔を撫でた
「助けて‥くれたんですか?
こんなあたしを?」
こんなボロボロの着物着て
髪もボサボサで化粧もしてない
こんな汚らしいあたしを‥
:10/01/24 18:28 :D905i :ZJpO7xz6
#13 [笹]
「拾っただけ、ですよ」
あぁ‥なんて優しい人なんだ
神様だ神様だ!!!
嬉しさのあまり涙を浮かべた
‥のもつかの間
神様はやっぱり存在しないのだ
:10/01/24 18:29 :D905i :ZJpO7xz6
#14 [笹]
:
:
:
「で?貴女、名前‥は?」
独特の語り口調の神様は
何とも落ち着いた様子で
お茶を入れている
あ‥睫毛すごい長い。
いーなー‥羨ましい
この人‥何才くらいなんだろう
:10/01/24 18:35 :D905i :ZJpO7xz6
#15 [笹]
「‥名前は、と聞いているんです
聞こえませんか?この耳、は」
ギュッ
「いぃいっっ!!!!
ちょっと何するんですかっ!!
は‥離してくださいっ」
神様はあたしの耳を右手で
それはもう思いっきり引っ張り
左手は全く別物かのように
湯呑みを口元に運んでいた
:10/01/24 18:36 :D905i :ZJpO7xz6
#16 [笹]
嫌な‥
予感‥
がします‥。
:10/01/24 18:37 :D905i :ZJpO7xz6
#17 [笹]
「うぅ‥っかや!!‥かやです!!」
涙をいっぱいに溜めて叫んだ
途端に神様のお仕置きは終わった
い‥痛い‥痛すぎる
:10/01/24 18:38 :D905i :ZJpO7xz6
#18 [笹]
「ほう、"かや"とは‥
どんな字を‥あてるのですか?」
ズズズーっと茶をすする音が
部屋中に響き渡った
「‥"香"る"夜"です」
:10/01/24 18:39 :D905i :ZJpO7xz6
#19 [笹]
「‥」
「‥香る‥よ‥」
「何とも‥、夜が期待できそうです、ね」
顔をゆっくりこちらに向けて
意味ありげに怪しく笑った
:10/01/24 18:39 :D905i :ZJpO7xz6
#20 [笹]
「な‥//
べべ‥別にそういう‥
ヤらしい名前じゃ‥」
「誰が‥
"ヤらしい"と言いました?」
あたし‥からかわれてる?
てか‥何なのこの人 !!
この余裕綽々なかんじ‥
:10/01/24 18:40 :D905i :ZJpO7xz6
#21 [笹]
「‥あ‥貴方のお名前は?」
話を切り替えるので
‥精一杯なほど
この人は話がうまいというか
川が流れていくように
するする進んで
いつの間にか自分もその流れに‥
「名前?‥何故言わなきゃいけないのですか?」
何故って‥この人
:10/01/24 18:41 :D905i :ZJpO7xz6
#22 [笹]
―‥ 一体、何なの ?
_
:10/01/24 18:42 :D905i :ZJpO7xz6
#23 [笹]
:
:
:
「あぁ‥そうだ」
「‥な、何ですか?」
「私が‥香夜を‥」
そう言いながら
ミシミシと近づいて
「拾った、わけですから‥」
遂には吐息がかかるくらいにまで
何故か高鳴る鼓動
:10/01/24 19:06 :D905i :ZJpO7xz6
#24 [笹]
「だ‥だから何ですか?」
飛び出した自分の声が
震えていたのがわかった
喰われそうな‥
気もしなくもなかった
:10/01/24 19:08 :D905i :ZJpO7xz6
#25 [笹]
「今日から貴女は‥
私の、所有物です」
:10/01/24 19:08 :D905i :ZJpO7xz6
#26 [笹]
しょ‥しょ‥
「所有物?!‥何ですかそれ!!」
ふ‥ふざけないでよ
あたし一応人間よ?
こんな訳の分からない人の
所有物になんかぁ‥
:10/01/24 19:09 :D905i :ZJpO7xz6
#27 [笹]
「所有物の意味も知らないんですか?」
なんとも悠長に
普通のことかのように
振る舞ってるけどこの人‥
「わかります!!
馬鹿にしないでください!!」
「ほう、
それならお分かりでしょう?
‥今日から貴女は私の‥」
誘拐よ!!監禁よ!!
犯罪だわ‥こんなの!!
:10/01/24 19:10 :D905i :ZJpO7xz6
#28 [笹]
「べ‥別に!!
誰も‥助けてなんて
言ってないじゃないですか!!」
さっきまでは
あんなに感謝してたのに‥はは
だけどこんなの納得いかない!!
:10/01/24 19:11 :D905i :ZJpO7xz6
#29 [笹]
「自分の立場‥
お分かりで、お出でで?
それなら‥死にます、か?」
:10/01/24 19:12 :D905i :ZJpO7xz6
#30 [笹]
人の言葉に
こんな凍り付いたことはない
この表情‥この目つき
本気‥だっ‥!!
思わず声を失った
あたし‥殺される‥?
:10/01/24 19:13 :D905i :ZJpO7xz6
#31 [笹]
「そうですねぇ‥
選ぶ権利を与えましょう、か
首絞めも結構
殴る蹴るその他も結構
刃物で刺すも結構‥
あぁ‥
切腹と言う手もありますねぇ
いや、しかし‥
私の着物が汚れるのは‥
ちょいと厄介ですからぁ‥ねぇ」
冷たい手があたしの首を這う
え‥苦しいの‥やだよ?
:10/01/24 19:14 :D905i :ZJpO7xz6
#32 [笹]
「何でもよいのなら‥
首をちょいと‥」
「やややややっ!!
やめて下さいぃいっ!!」
「それでは‥
所有物、と言うことで‥契約を」
ニコッと愛想良く笑ったが
なんと言うか‥心晴れず。
:10/01/24 19:15 :D905i :ZJpO7xz6
#33 [笹]
「‥って言うか!!
話逸らさないでくださいよ!!」
「さぁ‥」
むくっと立ち上がって
また壁にもたれかかり
‥ぼうっと空を眺めてた
無理矢理に体を起こしてみるが
やっぱり重い
:10/01/24 19:16 :D905i :ZJpO7xz6
#34 [笹]
「名前です!!貴方の!!」
「名前‥
何故"所有物"に教えな‥」
「名前無くちゃ‥
呼べないじゃないですか!!
ふ‥不便です!!」
なんかイライラしてきた‥
ほんとに何なのよ!!
もう‥嫌
:10/01/24 19:18 :D905i :ZJpO7xz6
#35 [笹]
「不便‥ねぇ
そうですね‥呼び名、か」
こうやってもったいぶるのも
あたしを馬鹿にしてるんだわ
逃げ出さなくちゃ‥!!
「逃げようなんて‥無駄、ですよ」
:10/01/24 19:18 :D905i :ZJpO7xz6
#36 [笹]
背筋がぞっとした
何かが不気味な冷たい物が
這い上がってくるような‥
「に、逃げようなんて‥!!」
「‥思っていらっしゃる」
鋭い眼差しが捉えて離さない
"イケない物に出くわした"
そんな気もしたけれど
美しすぎて、見とれてしまって
動けなくなっていた。
:10/01/26 16:10 :D905i :3fGEyA9k
#37 [笹]
‥見透かされてる?
特別な力でも持ってるの?
「あの‥」
だらしなく開けたままの口から
間の抜けた声が出た
その人は表情を全く変えずに
ゆっくりとこちらに視線を落とす
「何か、」
捕まえておきながら
その関心なさそうな声‥
:10/01/26 16:15 :D905i :3fGEyA9k
#38 [笹]
「どうするつもりですか?」
すると
やっと眉間がピクリと動いて
また同じ口調で"何を、"と言う
きっとこの人とあたしの性格は
正反対なのだと思う
ここまで白けてる人‥初めて
:10/01/26 16:20 :D905i :3fGEyA9k
#39 [笹]
ムスッとして少し睨みつける
‥動じない。
もっと睨みつける
‥全く。
ここまで来ると‥
何故か芽生える、寂しさ
:10/01/26 16:21 :D905i :3fGEyA9k
#40 [笹]
「どう、されたいんで?」
お茶をすすって放った声は
すごく低くて部屋中に響き渡った
「どうって‥
どうされたいも、こうされたいも
言わなくてもわかるでしょう?
所有物なんて嫌です!!絶対に」
つい声が大きくなってしまった
はっとして咄嗟に下を向く
:10/01/26 16:26 :D905i :3fGEyA9k
#41 [笹]
―‥沈黙
何故か急に恥ずかしくなる
「では‥夫婦にでも、なりますか?」
「め‥め、おと?!
ふざけるのもいい加減に‥」
と、言い終わる前に
あの綺麗な手で塞がれた馬鹿でかい声は情けなく語尾を弱めた
:10/01/26 16:32 :D905i :3fGEyA9k
#42 [笹]
「あまり大きな声を出されると‥」
ばつが悪そうに
眉を下げて小声で‥
初めて人らしい振る舞いを見た
「ほら‥、」
足音が近づいてきた襖に目をやる
:10/01/26 16:37 :D905i :3fGEyA9k
#43 [笹]
「壱助さん?
如何なさいましたか?」
襖の向こうから
落ち着いた女の人の声が聞こえた
「あぁ‥いえ、
どうか、お気になさらず」
目に見えない向こうの人に
その人は律儀に頭を下げた
足音が遠ざかると
すっと口元から冷たい感覚が消え
妙な緊張と息苦しさに
深く息を付いた
:10/01/26 16:42 :D905i :3fGEyA9k
#44 [笹]
あ‥なるほど、
「壱助‥さん?」
馴れ馴れしく、だけどぎこちなく
「‥」
興味なさそうな
冷たい目がこちらを向いたが
‥あたしは見逃さなかった。
"壱助さん"の口元が
少しだけ、ほんの少しだけ緩んだ
:10/01/26 16:47 :D905i :3fGEyA9k
#45 [笹]
:10/01/26 16:55 :D905i :3fGEyA9k
#46 [笹]
浮き世、とは
辛く儚い世の中の事‥。
‥誰にでも
思い出したくない過去は
あるもの、ですよ
威勢の良い、この"捨て猫"も
また‥然り。
:10/01/26 22:25 :D905i :3fGEyA9k
#47 [笹]
:
:
:
どうやって逃げ出そうか‥
取り敢えずここは宿みたい。
さっきの女の人は
ここの女将さんのようだ
壱助さん、とやらは
逃げようと企んでるのをわかって
あたしから目を逸らさないのか‥
:10/01/26 22:29 :D905i :3fGEyA9k
#48 [笹]
「何か‥変ですか?」
様子を伺うように
恐る恐る目を合わせてみる
「いえ‥、何も」
真っ直ぐに伸びた長い睫
綺麗な首筋、透き通った肌
見れば見るほど美しくて、
ただ見てるだけで
惚れてしまいそう‥。
:10/01/26 22:32 :D905i :3fGEyA9k
#49 [笹]
って、何考えてるのよ!!
はっと我に返って
"そうですか"とぶっきらぼうに
目を伏せながら呟いた。
「ただ‥」
あの綺麗な手が
今度はあたしの髪を撫でる
外がだんだんと橙色に染まる
窓からの光が
壱助さんの横顔を染める。
:10/01/26 22:38 :D905i :3fGEyA9k
#50 [笹]
綺麗な夕日色に
壱助さんの美しさが
何とも、ぴたりと合っていて
女のあたしが嫉妬しそうなほど
色っぽく映し出した。
"ただ‥"の後に続く言葉を
あたしは黙って待った
普段はせっかちだから
こんなことは‥有り得ないのに
:10/01/26 22:41 :D905i :3fGEyA9k
#51 [笹]
「可愛らしいな、と‥」
_
:10/01/26 22:42 :D905i :3fGEyA9k
#52 [笹]
いや、まさかと思った。
‥お世辞に違いないのだ
こんな美しい人に
"可愛らしい"なんて言われても
正直、嫌味にしか聞こえない
そんなことを言って
あたしが油断したすきに
"喰ってしまおう"とか、
きっと考えているんだ‥。
そう疑わなければ、
自分を見失ってしまいそうで
急に忙しくなった鼓動に
気づかぬ振りをする
:10/01/26 22:46 :D905i :3fGEyA9k
#53 [笹]
そんなあたしをよそに
クスッと鼻で笑って
ゆっくりと立ち上がった。
着物の裾や襟を整えて‥
「ちょいと、野暮用に」
畳が擦れる音
襖に手をかけゆっくり開ける音
ひとつひとつに
何故か奥ゆかしさを感じる
:10/01/26 22:50 :D905i :3fGEyA9k
#54 [笹]
「野暮用‥?今から?」
「まぁ、‥はい」
"此処から出ないで下さい、よ"
相変わらずの口調で
そう言い残して去っていった。
まだ少しだけ落ち着かない胸に
手を当てて深く息を吐いた
:10/01/26 22:53 :D905i :3fGEyA9k
#55 [笹]
畳の匂いが鼻の奥をくすぐる
こんなに安心して
畳の上に寝そべったのは
もう‥いつぶりだろう
ぼーっと天井を眺める
「あ‥今が狙い目‥だ」
:10/01/26 22:56 :D905i :3fGEyA9k
#56 [笹]
:
:
:
だけど頭をよぎるのは
壱助さんの言い付け。
会ったばかりの人の言い付けを
何故守ろうとするのか‥
逃げてしまえばこっちの物
「此処から出ないで下さい、よ」
口調を真似して呟いた
:10/01/26 22:59 :D905i :3fGEyA9k
#57 [笹]
何となく逃げられない気がした
逃げても捕まりそうな気がした
いや、
逃げたら捕まえてほしいのかも‥
わからない
大人なんて嫌いだ。
なのに‥誰かに心配されたい
誰かに求められたいと思う
:10/01/26 23:01 :D905i :3fGEyA9k
#58 [笹]
と、言うより
恐らく‥いや絶対
逃げたら‥
殺される気がしたのだ。
:10/01/26 23:03 :D905i :3fGEyA9k
#59 [笹]
死んでもいいと思ったくせに
死にたくないと今思うのは、
まだ人間らしい証拠なのかな‥
大の字になって
"所有物"は"所有物"なりに
いろいろと考えた
「‥はぁ」
ため息がいつの間にやら癖になった
:10/01/26 23:05 :D905i :3fGEyA9k
#60 [笹]
:
:
:
どれくらい経っただろう
急に寂しくなってきた‥。
『あんたのせいで‥!!』
独りになると、
『死んじまったじゃないか!!』
決まって甦る
『この人殺し!!化け物!!』
痛い思い出
:10/01/27 00:42 :D905i :.cEN1Iy.
#61 [笹]
もしもあの時‥
お父さんに助けを求めなかったら
『お父さん‥助けてぇ!!』
無事だったのかな。
『‥香夜!!』
あの時の‥
飛び散った父の生々しい血が
べたりと頬に付いたあの感触が
―‥未だに忘れられない
:10/01/27 00:48 :D905i :.cEN1Iy.
#62 [笹]
頬を伝う冷たいものを
恐る恐る手で拭い
涙だとわかって安堵した。
結局誰かに捕まるなら、
あの時連れ去られてしまえば
お父さんは生きていたのかも‥
「‥痛い、」
母親が残した体中の傷が疼いた
:10/01/27 00:54 :D905i :.cEN1Iy.
#63 [笹]
着物で隠せるのが唯一の幸い
背中だから、時々
寝返りをうつと痛むけど‥
ふぅっと息を吐いて
鏡越しに醜い背中を眺めた
‥痛々しい傷
爪を立てられたり
刃物を振り回されたり
今思えばあの時の母は、
何かに取り憑かれてたんじゃないかと疑ってしまうほどだ
:10/01/27 01:02 :D905i :.cEN1Iy.
#64 [笹]
「化け物は‥」
「母親の方‥ですか?」
振り返ると
いつ帰ってきたのか
‥壱助さんの姿が
足音くらい立ててよ‥
びっくりしたぁ
「お‥お帰りなさい」
「‥折角、良い隙をあげたのに」
:10/01/27 13:12 :D905i :.cEN1Iy.
#65 [笹]
壱助さん
あんた訳わかんないよ‥
捕まえて"所有物"だ"夫婦"だ
逃げられないと言っておきながら
あたしに逃げるための
時間を与えるなんて‥ねぇ。
「言い付けは守る主義ですから」
急いで腕を通した着物の胸元を
忙しなく直しながら言った
:10/01/27 13:15 :D905i :.cEN1Iy.
#66 [笹]
"それは、それは"と満足そうに
少し距離を置いて正座する、
壱助さんは無関心なのか
ただ口数が少ない方なのか
よくわからない
「勢いの良い、"猫娘"」
「へ?」
「かと、思いきや」
「や?」
「傷を負った"捨て猫"と、きた」
:10/01/27 13:21 :D905i :.cEN1Iy.
#67 [笹]
それでいて、
口を開いたかと思えば
訳のわからないことばかり
「‥何の話ですか?」
「幼き頃のその傷は、」
「だから何の‥」
「少々貴女には深すぎた」
「‥」
見透かされたのか、
独り言を聞かれたのか、
そんなことは気にならない
:10/01/27 13:25 :D905i :.cEN1Iy.
#68 [笹]
自然と口が開く
「でも、あたしには‥
この傷を背負う義務がある」
「義、務」
ぽつり、呟いた壱助さんの口が
少し歪んで見えた
「"生きたい"って思わなければ
何もかもが上手くいったんです。
あたしさえ犠牲になれば‥
死ななくて済んだ‥。」
情けない自分の声が憎らしい
:10/01/27 13:30 :D905i :.cEN1Iy.
#69 [笹]
「母を許そうとは思いません。
そこまで出来た人間ではないし
自分の事も‥許せないんです
だから‥仕方ない事です」
ぷつり、ぷつりと
出た言葉を紡ぎ合わせると
壱助さんは目を細めた。
:10/01/27 13:34 :D905i :.cEN1Iy.
#70 [笹]
「ほぅ‥興味深いです、ね」
本当に興味あるのかな‥
目をこちらに向けもせず
お茶を入れる姿は
どうも、そうは見えない‥。
「香夜さんが、助けを求めた時
代わりに父親が殺されると‥
予期していたなら、
貴女は確かに‥人殺しです」
胸が痛む。息が少し上がった
何故‥知ってるの?
:10/01/27 16:56 :D905i :.cEN1Iy.
#71 [笹]
「しかし‥その様なことは
貴女でなくても、考えませんぜ
よって、罪意識は無用です、よ」
わからない。
今まであんなに自分を攻めてきた
そう思って‥孤独に生きてきた
母の暴力にも耐えたのに‥
「貴女は、悪くない‥香夜さん」
:10/01/27 17:01 :D905i :.cEN1Iy.
#72 [笹]
いきなり救われてしまっても、
自分への対応の仕方がわからない
「忘れられない過去も、
思い出したくない過去も、
誰にでも有るじゃぁないですか
もっと‥肩の力、抜きましょう」
目の奥が痛いくらいに熱くなる
目の前の壱助さんが
‥一気にぼやけた
:10/01/27 17:06 :D905i :.cEN1Iy.
#73 [笹]
あぁ‥もう
人前で泣かないと決めたのに。
「一つだけ、忘れなければ‥」
懸命に涙を拭ってみても
指の隙間から溢れ出る
何が悲しいの‥?
何が辛いの‥?
どうして‥こんなに‥。
「父上に救われた、その命
無駄な物に‥してはいけない」
:10/01/27 17:11 :D905i :.cEN1Iy.
#74 [笹]
壱助さんは
今どんな顔をしてるのかな‥
どんな思いで、どんな表情で‥
「死のう、なんざぁ‥
もう‥これっきりに、」
壱助さんの冷たい手が
あたしの手首を掴む
「‥っ」
恥ずかしくて堪らない
お父さんに、申し訳ない
「‥しましょう、か」
:10/01/27 17:16 :D905i :.cEN1Iy.
#75 [笹]
手首の腫れ上がった傷口を
細い指が撫でる
お父さん‥お父さん
‥ごめんなさい
「う‥っ‥グズ」
必死に声を殺しても
ただただ辛いだけで、虚しくて
悔しいだけだった
:10/01/27 17:20 :D905i :.cEN1Iy.
#76 [笹]
「壱助‥ッさん‥グズ」
「‥何か、」
落ち着いた声がどこか懐かしくて
「死にた‥くな‥ッ‥で」
本当は死にたくなんかない。
あの時お父さんに
生を訴えた時と同じ
死にたくなんかないんだ‥
:10/01/27 17:23 :D905i :.cEN1Iy.
#77 [笹]
「よし、よし」
ぽん、とぎこちなく
あたしの頭を撫でた手に
救われた気がした。
その瞬間に
子供のように声を上げて泣いた
壱助さんの懐に顔を埋めて
何年分もの涙を流した。
:10/01/27 17:26 :D905i :.cEN1Iy.
#78 [笹]
:
:
:
「おや、おや」
窓から差し込む
満月の優しすぎる光が照らす
「子供です、ね‥香夜さんは」
泣き疲れたあたしを抱いて
壱助さんがクスッと笑った。
:10/01/27 17:29 :D905i :.cEN1Iy.
#79 [笹]
:10/01/27 17:42 :D905i :.cEN1Iy.
#80 [笹]
一週間もすりゃぁ、
人の性格も良くわかるもので
"捨て猫"はと言うと
泣くは、喚くは‥
かと思えば、眠りにつき
何かと‥忙しない猫でして、ね
それに加えて、頑固ときた
"言うは易いが行うは難い"
頑固者には、身に滲みる言葉です
:10/01/28 13:15 :D905i :Ad90U/U2
#81 [笹]
:
:
:
ある晴れた日の事である。
「あら、壱助さんじゃないかぁ
相変わらず‥色男だねぇ」
団子屋の腰掛けに座ろうとすると
そこの女将がやって来た。
「あぁ‥伊代さん
ご無沙汰しておりました、ね」
壱助は律儀に正座をして頭を下げた
:10/01/28 13:20 :D905i :Ad90U/U2
#82 [笹]
「聞いたよー?壱助さんよぉ、
最近若い子‥、
連れて歩いてるそうじゃないか」
伊代はお茶を差し出し
興味深い様子で身を乗り出した
「只の‥"捨て猫"ですよ」
「そんなぁ、隠さなくたって‥」
クスクスと笑って
壱助の肩をポンと叩く
:10/01/28 13:25 :D905i :Ad90U/U2
#83 [笹]
「紹介しておくれよー
今日は連れてないのかい?」
「えぇ‥、
自立するそうです、よ」
「自立?」
伊代は不思議そうに首を傾げる
話好きな伊代は
話に花を咲かせる"花咲女将"
愛想もいいもんだから
此処はいつでも大繁盛
:10/01/28 13:30 :D905i :Ad90U/U2
#84 [笹]
「"遊女になる"‥と、ね」
うっすら笑って茶を啜り
壱助は団子を手に取った
「ゆ‥遊女って‥何でまた」
伊代は緩んだ顔を引き締め
唾をごくりと飲んだ
:10/01/28 13:33 :D905i :Ad90U/U2
#85 [笹]
:
:
:
こうなったのも、つい今朝の事。
『もういいです!
‥あたし
花街に行って遊女になります!
それで沢山稼いで
壱助さん見返してやります!!』
「と、言うもんでねぇ」
今朝の出来事を坦々と語る姿を
伊代はそわそわしながら見つめた
:10/01/28 14:09 :D905i :Ad90U/U2
#86 [笹]
「まさか壱助さん‥
止めなかったのかい?!」
つい大きくなってしまった声に
他の客も反応する
「止めましたよ、もちろん
"男を知らないくせに
良く言えたもんだ‥。
雇ってもらえませんぜ"、と」
「そんな言い方しちゃあ、
余計維持になるじゃないかぁ!」
他の客の視線も気にならないほど
慌てふためく伊代
:10/01/28 14:14 :D905i :Ad90U/U2
#87 [笹]
手にした団子をじっと眺め
変わらぬ口調で壱助は続ける
『だ‥大丈夫ですっ!!
あたし、経験あぁ‥あります!』
「と、分かりやすい嘘まで付いて
維持を張るもんですから‥
"這っても黒豆、ですね"、と」
楽しそうな顔の壱助とは対照に
呆れたような顔の伊代
:10/01/28 14:19 :D905i :Ad90U/U2
#88 [笹]
『く‥黒豆?!
一体何なんですか?
人を所有物、猫呼ばわりして
‥仕舞いには黒豆?
いい加減にしてくださいよ!!
あたしそんなに色黒くないし
背丈だって人並みです!!』
「‥と、色をなしてしまいまして」
"参った、参った"と微笑し
頭を軽く叩く壱助
:10/01/28 14:24 :D905i :Ad90U/U2
#89 [笹]
伊代は深くため息を付いて
"全く‥"と頭を抱えた
「そんな言葉、
若い子が分かる訳ないだろう?
その子の反応は妥当だよ、全く」
「そうですか、ね」
無関心そうに団子を口に入れ
満足そうな顔をする
:10/01/28 14:27 :D905i :Ad90U/U2
#90 [笹]
「ちょいと壱助さん!!
そんな純粋な子、
からかうのは程々にしなよぉ?
ましてや、維持っ張りの子を‥」
眉間に軽くしわを寄せた伊代を
横目でちらりと見つめる
「本当に‥"這っても黒豆"
素直に止めればいいものを、
維持を張って‥ねぇ
‥仕様がない"猫"です、ね」
:10/01/28 14:32 :D905i :Ad90U/U2
#91 [笹]
:
:
:
――‥花街
そこは遊女屋が集まる町の事。
本来あたしみたいな生女が
足を運ぶような所じゃない。
「いや‥でも‥」
『宿代を‥
払ってあげてると言うのに、』
「引き下がるわけには‥」
『あぁ‥"所有物"には
宿代はかかりませんでした、ね』
「いかない‥!」
:10/01/28 14:38 :D905i :Ad90U/U2
#92 [笹]
壱助さんの言葉が頭をよぎる
悔しい‥情けない。
唇を思い切り噛み締めて
一軒の遊女屋に足を踏み入れた
絶対‥ぜぇぇぇぇったい!!
稼いで、見返してやるんだから!!
:10/01/28 14:41 :D905i :Ad90U/U2
#93 [笹]
:
:
:
団子の串を静かに皿に置いて
"ご馳走様でした"と手を合わせる
「でも、壱助さんよぉ‥
心配してなそうな素振りだけど
本当は
居ても立っても居られなくて
出てきたんじゃないのかい?」
ニヤニヤしながら
伊代は壱助の脇腹を肘で小突いた
:10/01/28 14:45 :D905i :Ad90U/U2
#94 [笹]
「まさか、
心配するも何も‥
"産毛ばかりの捨て猫"ですから
誰でも良いって訳じゃ
ないでしょうから、ね」
すっと腰を上げて下駄を履く
「男の力にゃ、勝てないよぉ?
可愛い子なんだろうから‥
すぐに客が‥」
そう言い終わる前に
軽く頭を下げて去っていった
:10/01/28 14:50 :D905i :Ad90U/U2
#95 [笹]
「意地っ張りなのは‥
"おあいこ"なんじゃないかねぇ」
伊代は、壱助の背中を見つめ
"やれやれ"と緩く微笑んだ
:10/01/28 14:53 :D905i :Ad90U/U2
#96 [笹]
:
:
:
「で、あんた‥
経験はあるのかい?」
梅の花のような香りがする部屋で
此処の遊女屋を取り仕切る
"京さん"は煙管を蒸かして言う
「え?!あぁ‥えっとぉ」
全身にどっと汗をかき
後ろに隠した手が忙しなくなる
:10/01/28 15:05 :D905i :Ad90U/U2
#97 [笹]
「‥悪いけど、生娘は雇えないよ」
冷たく言い放つ声の後ろで
男女の色がましい声が聞こえる
やっぱり‥
あたしの来る所じゃないかも
「ささ、産毛の子猫ちゃんは
お家に帰って
"おまんま"でも喰ってな」
煙を顔に吹きかけられて
しかも子供扱いされて‥
:10/01/28 15:11 :D905i :Ad90U/U2
#98 [笹]
引き下がってたまるか‥!!
「経験‥あります!!」
色がましい声をかき消すように
顔にかかった煙を吹き飛ばす様に
大声で言ってしまった
:10/01/28 15:13 :D905i :Ad90U/U2
#99 [笹]
"ほぉう"と言って
目を細めて赤い唇を吊り上げた
「それなら‥
今晩から早速、仕事だよ」
げ‥いきなり今晩から?
辺りはもう急かすかのように
夕日色に染まっていた
:10/01/28 15:17 :D905i :Ad90U/U2
#100 [笹]
:
:
:
「んふ‥もう‥、
あぁん‥まだ駄目よぉ」
「まだ駄目なのかい?
此処はこんなに‥」
‥‥‥早くも、
消 え た い !!
:10/01/28 15:20 :D905i :Ad90U/U2
#101 [笹]
襖の向こうから聞こえる声
耳を塞いでも聞こえてくる
「声で・か・す・ぎ!!」
小声なりに強めに
襖に向かって叫んでみた
「えーっと‥
まずは、お客さんにお酒注いで
それからー‥笑顔を忘れない
初めてのお客さんには
積極的に詰め寄る‥
って、
あたしも初めてなんだけど」
:10/01/28 15:24 :D905i :Ad90U/U2
#102 [笹]
初めてって痛いって聞くけど‥
まぁ‥そうは言ってもねぇ?
そーんなに、
泣くほど痛いはず‥ない
「‥よね、」
ごくりと唾を飲み込み
手汗を着物で拭う
:10/01/28 15:26 :D905i :Ad90U/U2
#103 [笹]
鏡に映る自分の姿
いつもとは違う
あたしじゃないみたい‥
真っ赤な着物に山吹色の帯
真っ赤な紅に綺麗なかんざし
「初めて抱かれるって‥
どんな感じ、なのかなぁ」
鏡の向こうの自分に投げかける
初めてくらい愛する人に‥
捧げたかったなぁ
:10/01/28 15:29 :D905i :Ad90U/U2
#104 [笹]
「香夜、お客様がいらしたよ」
さっきとは打って変わって
商売様の笑顔の京さん
声は一段、いや二段くらい
高くなっている
"香夜は、今日からなんですよ
手加減してやってくださいな"
にやりと笑って襖を閉めた
ついに‥来てしまった
:10/01/28 15:33 :D905i :Ad90U/U2
#105 [笹]
「い‥いらっしゃいまし」
思わず声が上擦った
正座をして深く頭を下げる
このまま‥頭を上げたくない
そんな気持ちに駆られる
「可愛らしい方です、ね
頭をお上げくださいな」
あぁ何か落ち着く声‥
この人なら何とか‥
:10/01/28 15:37 :D905i :Ad90U/U2
#106 [笹]
「ひぃぃぃいいぃぃ!!!!」
頭を上げて驚いて腰を抜かした
なんで‥なんで‥
「い‥壱助さん?!」
紛れもなく
あたしの目の前にいる男は
今朝喧嘩した壱助さんである
「どうして‥こんな所に?!」
:10/01/28 15:39 :D905i :Ad90U/U2
#107 [笹]
紛れもなく、紛れもなく
この美しさは壱助さん
「おや、おや
どうして‥名前をご存知で?」
この調子も壱助さん
「どうしてって‥香夜ですよ」
「あぁ‥香夜さん
お綺麗になられました、ね」
分かってたくせに‥わざとらしい
:10/01/28 15:43 :D905i :Ad90U/U2
#108 [笹]
「‥あたしの事
様子、見にきたんですか?」
ふてくされ気味に一応酒を注ぐ
「様子‥
さぁ何の事、でしょうね」
あの怪しい笑みを浮かべて
酒を手に取る
お隣は‥
どうやら"行為"に至ったらしい
色がましい声が耳にへばりつく
:10/01/28 15:47 :D905i :Ad90U/U2
#109 [笹]
沈黙‥と行きたいとこだけど
お隣の声の"おかげ"‥
"せい"で沈黙が破られる
―‥気まずい。
「香夜さん‥」
やっぱり素直に‥
「本当に‥」
謝ろうかな‥ぁ
:10/01/28 15:50 :D905i :Ad90U/U2
#110 [笹]
「お綺麗です、ね」
頬に冷たい感覚
あの綺麗な手で頬を包み込まれた
壱助さんの目が
いつもとどこか違う‥
「い‥壱助さん?」
「お美しい‥」
「壱助さん‥?ちょっと‥」
:10/01/28 15:52 :D905i :Ad90U/U2
#111 [笹]
あっという間に
壱助さんの顔がこちらに迫る
その向こうには天井が見える
壱助さん‥ちょっと待ってよ
たった一杯で酔ってるの?
「壱助さん‥
からかうのは止めてください」
引きつる笑顔を向けても
無駄だった
:10/01/28 15:55 :D905i :Ad90U/U2
#112 [笹]
やだ‥
「こんなに‥胸元を開けて」
「や‥」
細くて白い指が胸元を這う
「積極的です、ね」
「壱助さん‥」
華奢な手でも力は強かった
上で捕らえられた両腕が
びくともしなかった
:10/01/28 15:59 :D905i :Ad90U/U2
#113 [笹]
「まだ生娘となれば‥」
「いやぁ‥」
「こちらも力が入ります、ね」
「止めて‥壱助さん」
「そんな顔も、惹かれますねぇ」
首筋にねっとりと這う舌
思わず体が飛び跳ねる
:10/01/28 16:02 :D905i :Ad90U/U2
#114 [笹]
最初から‥
このつもりだったの?
最初から‥
喰らうつもりだったの?
ねぇ壱助さん‥
あたし、わかんないよ
せっかく‥せっかく
心が開ける人ができたのに
壱助さん‥
そんな簡単に信じたあたしが
馬鹿だったのかな‥、
:10/01/28 16:04 :D905i :Ad90U/U2
#115 [笹]
もう‥いいや、
もう‥
「今朝の威勢はどこ、に?」
首筋から感覚が消えた
「男とは‥こういう者、ですよ」
溢れ出した涙を
壱助さんの手が拭う
:10/01/28 16:09 :D905i :Ad90U/U2
#116 [笹]
「言わんこっちゃ、ない」
そして‥笑った。
:10/01/28 16:10 :D905i :Ad90U/U2
#117 [笹]
:10/01/28 16:13 :D905i :Ad90U/U2
#118 [笹]
嗚呼‥
何て馬鹿なことを‥
本当にあたしは愚かだ。
今更、後悔しても及ばない
この前は優しく抱き締めてくれた
だけど、今は違う
壱助さん‥怖いだけです。
"呉牛、月に喘ぐ"
:10/01/28 19:08 :D905i :Ad90U/U2
#119 [笹]
:
:
:
「どんな、お気持ちで?」
もう‥諦めました、か
「‥悔しい、だけです」
帯を緩めてみても無関心
触れてみれば、
怯えるようにぴくりと跳ねる
どうしたもんか‥。
:10/01/28 19:09 :D905i :Ad90U/U2
#120 [笹]
「壱助さん‥」
あまりに情けない声で
「何か、ご要望がお有りで?」
蚊の泣くような声で
「こうして‥いつも?」
尋ねるものですから
「手加減、している方ですぜ」
悪者になったような気分ですよ
:10/01/28 19:09 :D905i :Ad90U/U2
#121 [笹]
「‥悔しい」
やはり香夜さんは子供で
「何故、」
泣きじゃくって
「たった一週間で‥
貴方を知った気になってた」
焼き餅を焼いて
:10/01/28 19:10 :D905i :Ad90U/U2
#122 [笹]
「それは、それは」
しかし、少しだけ‥
「壱助さん‥」
色めいて、‥全く
「‥」
香夜さん、貴女は私を‥
:10/01/28 19:11 :D905i :Ad90U/U2
#123 [笹]
「抱いて‥下さい」
―‥どうしたいの、か
_
:10/01/28 19:13 :D905i :Ad90U/U2
#124 [笹]
含み笑い、体を離せば
"どうして"と言うような顔をする
どうかしている、貴女は
「いたッ‥」
目を覚ませと額を叩いても
張り合いがありゃしない
:10/01/28 19:14 :D905i :Ad90U/U2
#125 [笹]
「‥さぁ、帰りますよ」
「‥はい」
そんな顔されちゃぁ、
着物を直す手も躊躇います、ぜ
:10/01/28 19:15 :D905i :Ad90U/U2
#126 [笹]
本当に‥貴女という人は
「壱助‥さん」
―‥本当に
:10/01/28 19:16 :D905i :Ad90U/U2
#127 [笹]
「‥ごめんなさい。」
世話が焼ける"子猫"です、ね
:10/01/28 19:16 :D905i :Ad90U/U2
#128 [笹]
:10/01/28 19:23 :D905i :Ad90U/U2
#129 [笹]
"矯めるなら若木のうち"
悪い癖や欠点などは
柔軟な"幼少"のうちに直さねば
成長してからでは直しにくい。
―‥そういう事、ですよ
:10/01/28 20:25 :D905i :Ad90U/U2
#130 [笹]
:
:
:
穏やかな朝に
不釣り合いな‥
「いッ‥たぁああぁあいぃい!!」
激痛の目覚まし。
:10/01/28 20:25 :D905i :Ad90U/U2
#131 [笹]
「朝から‥騒がしいです、ね」
人の顔面ひっぱたいといて‥
憎い‥憎すぎる
「朝くらい穏やかに‥」
起き上がり目線を上げると
「起きさせて‥」
:10/01/28 20:26 :D905i :Ad90U/U2
#132 [笹]
異様な重い空気と
壱助さんの鋭い視線
「ください‥」
迫力に
「‥な、何でも‥ないです」
負けました。
:10/01/28 20:27 :D905i :Ad90U/U2
#133 [笹]
:
:
「お金は‥稼げたんですかい?」
明らかにいつもより声質が鋭い
そして、正座‥辛い
「いえ‥全く」
ちゅんちゅん、と鳴く雀
こけこけ、と鳴く鶏
ぼろぼろ、と泣く私
‥惨めです本当に
:10/01/28 20:28 :D905i :Ad90U/U2
#134 [笹]
「情けない」
「ご、ごもっとも‥です」
後悔先に立たずとは
このこと‥ですね
じりじり迫る壱助さんの視線
じりじり痺れる足
呆れたように深く息を吐き
いらいらしているのか
組んだ腕を片指で叩く壱助さん
:10/01/28 20:28 :D905i :Ad90U/U2
#135 [笹]
「出来ないことは言わない事、
意地を張っても構いはしないが
分かりやすい嘘は無用。」
まるで子を叱る父である。
いつもより少し声を張って
語尾が乱暴だ。
:10/01/28 20:29 :D905i :Ad90U/U2
#136 [笹]
「"私は愚かな雌猫です。
自らの体を安売りした上に、
情けないことに結果は皆無でした
このような事を以後繰り返さぬ様
壱助様には逆らわず
忠実である事をここに誓います"
はい、復唱」
「え‥?
そんないきなり言われても‥」
:10/01/28 20:30 :D905i :Ad90U/U2
#137 [笹]
壱助さん=優しい
「人の話は、よく聞く事」
取り消したいと思います
「わ、私は‥愚かな雌猫です。
えーっと‥何だっけ‥?」
やっぱり鬼だと思います
:10/01/28 20:31 :D905i :Ad90U/U2
#138 [笹]
「"自分の体を安売りした上に"」
だってこんな威圧感のある目
‥初めてですよ
「あぅ‥
自分の体を安売りした上に‥」
「‥」
「愚かな事‥」
:10/01/28 20:32 :D905i :Ad90U/U2
#139 [笹]
「最初から、はいもう一度」
鬼‥鬼‥鬼!!!!
:10/01/28 20:32 :D905i :Ad90U/U2
#140 [笹]
「壱助様は
鬼ではなく神様です、よ」
うわ‥読まれてる‥
貴方の笑顔は最恐です、よと
:10/01/28 20:33 :D905i :Ad90U/U2
#141 [笹]
だけど‥、何でだろう
そんな思いとは裏腹に
壱助さんの傍はどこか落ち着く
居場所‥見つけました。
:10/01/28 20:34 :D905i :Ad90U/U2
#142 [笹]
許される限り
あなたの傍に置いて頂きたい
_
:10/01/28 20:35 :D905i :Ad90U/U2
#143 [笹]
「自分の事は、大切にして下さい
‥世話をかけますから、ね」
「‥は、はいっ!!」
思わず顔が緩みます
:10/01/28 20:37 :D905i :Ad90U/U2
#144 [笹]
「では‥最初から、はいもう一度」
「えぇ‥まだやるんですかぁ?」
「"壱助様には逆らわず"です、よ」
「‥はぁーい」
やっぱり、
よく考えておきます‥
:10/01/28 20:39 :D905i :Ad90U/U2
#145 [笹]
:10/01/28 20:44 :D905i :Ad90U/U2
#146 [我輩は匿名である]
:10/01/28 21:30 :W53H :4WiSLrw2
#147 [笹]
まだ幼い雌猫が、
体を売ろうなんざぁ‥
馬鹿げた話です。
本当に危なっかしいもんです、よ
あれこれ口で言うよりも
心の中で考えてる事のほうが
ずっと痛切じゃありやせんか
私は、そういう気質なもんで‥
"鳴かぬ蛍が身を焦がす"って、か
:10/01/29 00:39 :D905i :XWctwuXA
#148 [笹]
:
:
:
「またですかぁ?」
まただ。
"ちょいと野暮用に"って
壱助さんは決まって夕方に
下駄を履いて出て行く
「すぐに‥戻ります、よ」
なんだかあれから
更に子供扱いされてる気がする
:10/01/29 00:43 :D905i :XWctwuXA
#149 [笹]
あたしの思い違いかもしれない
だけど‥、何となくあの日から
距離が‥遠くなった気がするの
距離って言うのは、
座った時とかの間隔のことだけど
「考えすぎかなぁー‥」
壱助さんの背中をぼうっと見つめ
あたしはただ
力なく手を振るだけだった
:10/01/29 00:46 :D905i :XWctwuXA
#150 [笹]
"野暮用"って何だろう‥
拗ねた子供のように
口をつんと尖らせて畳に寝転ぶ
『手加減、してる方ですぜ』
「‥まさかっ、」
:10/01/29 00:50 :D905i :XWctwuXA
#151 [笹]
:
:
:
「壱助さんじゃないかぁ!!」
「あぁ‥伊代さん」
にこりと微笑む壱助の腕を
伊代がしっかりと捕まえた
「"あぁ‥"じゃないよぉ!!
どうなったんだい?!」
手に汗握るように
またそわそわしている
:10/01/29 15:19 :D905i :XWctwuXA
#152 [笹]
「どうなった、と言いますと?」
"惚けるんじゃないよ"と
伊代がせかす
:10/01/29 15:20 :D905i :XWctwuXA
#153 [笹]
:
:
「そうかそうかぁー
無事だったのかい」
見たこともない人間を
全く子供かのように心配するほど
伊代は人情味に溢れてる
:10/01/29 15:21 :D905i :XWctwuXA
#154 [笹]
「そんなに心配しなくても、
大丈夫でしたが、ね」
いつものように茶を啜り
団子を手に取り眺める
「壱助さん!あんたねぇ
女の子にとっちゃあ
事によっては死のうと思うくらい
大事になるんだからさぁ‥
ちゃんと面倒見てやんなよぅ?」
:10/01/29 15:21 :D905i :XWctwuXA
#155 [笹]
女は女の味方である。
そうは言っても
壱助の無関心さには
女じゃなくてもこう言うだろうと
伊代は思うのだ
「それでぇ‥"猫ちゃん"は
何ともなかったのかい?」
腕を組んで
まるでお説教をしてるようだ
:10/01/29 15:22 :D905i :XWctwuXA
#156 [笹]
「何とも、無かったんじゃあ‥」
『たった一週間で
貴方を知った気になってた‥』
‥どうした、もんかねぇ
:10/01/29 15:23 :D905i :XWctwuXA
#157 [笹]
「‥ないですか、ねぇ」
壱助は団子に口を付けず
そのまま皿に置いた
「連れて歩くなら、
もっとしっかりしなよぉ!!」
べしんっと一発
壱助の肩にお見舞い
:10/01/29 15:24 :D905i :XWctwuXA
#158 [笹]
「しかし‥少々」
『‥抱いて、ください』
―‥酒でも飲んだ、か
―‥空気に飲まれた、か
それとも‥
:10/01/29 15:24 :D905i :XWctwuXA
#159 [笹]
「飲まれちまったようで、」
―‥正気、か
あの時の目は虚ろではなかった
だとしたら、 やはり
:10/01/29 15:25 :D905i :XWctwuXA
#160 [笹]
「"酒でも飲ませて襲った"
なんて言わないだろうねぇ?」
‥否定はできません、ぜ
「まさか‥そうなのかい?」
驚くように伊代は口をはっと塞ぐ
:10/01/29 15:26 :D905i :XWctwuXA
#161 [笹]
「いえ、いえ
せめて‥人並みでないと、ね」
その言葉に
ぽかんとだらしなく口を開けた
"人並み?"と目で訴えられて
:10/01/29 15:27 :D905i :XWctwuXA
#162 [笹]
「中の‥下では、何とも」
壱助はそう言い残し
団子をそのままにして
去っていった
:10/01/29 15:27 :D905i :XWctwuXA
#163 [笹]
:
:
:
さて、どうしたもんか
「‥ニャァ」
珍しく思い耽って宿に戻る
入り口手前で
何故か躊躇していると
一匹の猫が足元にすり寄ってきた
:10/01/29 15:28 :D905i :XWctwuXA
#164 [笹]
"獣はあまり好かないんで、ね"と
少し冷たい視線を向けると
寂しそうにニャァと鳴いた
「‥"猫"はどうして、こうも」
その場にしゃがみこみ
喉元を撫でてやる
:10/01/29 15:29 :D905i :XWctwuXA
#165 [笹]
「‥気まぐれなのか、ねぇ」
普段は猫なんて
寄って来やしないんですが
「ミャァ‥ウ」
‥撫でてやると
可愛い声を出すもんで
:10/01/29 15:30 :D905i :XWctwuXA
#166 [笹]
「情けない‥奴です、よ」
目を細めて微笑した
:10/01/29 15:30 :D905i :XWctwuXA
#167 [笹]
すりすりと身を寄せて
何を、考えているんで?
人と猫は
分かり合えませんか、ね
「発情期です‥か」
猫の丸い目がパチクリする
惚けるんですかい?
:10/01/29 15:31 :D905i :XWctwuXA
#168 [笹]
"さて‥"と腰を上げようとすると
"嫌だ"と言うように身を乗り出す
「"飼い猫"が‥妬くんでね」
大きく一撫でして立ち上がる
:10/01/29 15:31 :D905i :XWctwuXA
#169 [笹]
「‥隠れても無駄、ですよ」
「ひぁぁああっ!!」
びくりと肩を持ち上げて
‥苦笑いする猫が一匹。
:10/01/29 15:32 :D905i :XWctwuXA
#170 [笹]
「いいいっ壱助さんっ
おかっ‥お帰りなさぁい」
「何してお出でで?」
‥どうしたもんか、ね
:10/01/29 15:33 :D905i :XWctwuXA
#171 [笹]
「‥心配で、‥壱助さんの事が」
馴れては、いるんですぜ?
しかし情けない‥男です、よ
:10/01/29 15:34 :D905i :XWctwuXA
#172 [笹]
:10/01/29 15:38 :D905i :XWctwuXA
#173 [笹]
"腹立てるより義理立てろ"
腹を立てて何になるんで?
どうにもなりや、しやせんよ
本当に、訳の分からない厄介者を
拾ってしまったもんです、ね
:10/01/29 16:48 :D905i :XWctwuXA
#174 [笹]
:
:
壱助さんが‥猫としゃべってた
有り得ない‥
あんなに動物嫌いなのに!!
熱でもあるのかなぁ
「何、か」
「い‥いえ、何も」
‥気のせいか。
:10/01/29 16:48 :D905i :XWctwuXA
#175 [笹]
「さっきから‥何か、」
ついついじっと見てしまう
意識はしてないんだけど‥
まぁ、壱助さん綺麗だし
普通は見とれるものよね
‥自問自答である。
:10/01/29 16:49 :D905i :XWctwuXA
#176 [笹]
「壱助さん‥もしかして‥」
無意識のうちに
あたしは口が開いてしまう
壱助さんにこんな事聞くなんて
虎の穴に手突っ込むようなもの
「もしかして、花街に‥」
・・・って、
:10/01/29 16:50 :D905i :XWctwuXA
#177 [笹]
「何で脱いでるんですかぁああ?!」
_
:10/01/29 16:51 :D905i :XWctwuXA
#178 [笹]
真珠みたいに白い肌
まるで歌舞伎の女形みたいに
綺麗な顔わしてるもんだから
体も華奢なのかと思ったら
案外‥と言うか
かなりしっかりしてて
搾られてるってかんじ‥。
腰の当たりがすごく色っぽくて
何て綺麗なんだろうこの人は‥
:10/01/29 16:51 :D905i :XWctwuXA
#179 [笹]
って‥
いちいち描写したくなるほど
美しかった
「ちょっ‥と
いきなり何してるんですか!!」
腰のあたりまで着物を下ろし
ぎろりと此方を睨み付けられる
:10/01/29 16:52 :D905i :XWctwuXA
#180 [笹]
「何とは‥
着替えの意味もご存知でない?」
またそうやって‥
「ご存知ですぅ!!
着替えるなら一言かけてから‥」
からかうんだから
:10/01/29 16:53 :D905i :XWctwuXA
#181 [笹]
"着替えます、よ"って
‥今更遅いですよぉ
熱くなる顔を抑えて
黙って背を向けた
するすると帯が解ける音
そんな音でさえ
壱助さんは色っぽくしてしまう
:10/01/29 16:54 :D905i :XWctwuXA
#182 [笹]
「終わりました、よ」
一呼吸置いて体の向きを返る
いちいちドキドキして
あたし馬鹿みたいだなぁ‥
おいおい壱助さん
時が止まってるじゃあ
ありませんか。
「ちゃんと腕通してくださいぃ!!」
:10/01/29 16:54 :D905i :XWctwuXA
#183 [笹]
また半裸状態
露出狂ですかあなた‥もう
「はい、はい」
くつくつと笑いながら袖を通す
着物が畳を擦る音に
壱助さんの呼吸が答える
「花街が‥どうかしやした、か」
:10/01/29 16:55 :D905i :XWctwuXA
#184 [笹]
目の前に正座して
長い睫を柔らかく揺らす
調子狂いますよ‥本当に
「壱助さん‥
いつもいつも野暮用って、
本当は、花街に
行ってるんじゃないですか?」
軽く唇を噛んで頬を膨らます
:10/01/29 16:55 :D905i :XWctwuXA
#185 [笹]
「そうだったら‥何、か」
動揺する様子もない
掴み所がない人ね
「やっぱり‥そうなんですか?」
語尾が弱くなる
聞かなきゃよかったって
これまた後悔先に立たず。
:10/01/29 16:56 :D905i :XWctwuXA
#186 [笹]
「さぁ‥ね」
妖しい笑みを浮かべた時は
あたしをからかってるのだ
「行くな、と?」
「当たり前です‥!
何か‥嫌なんですよぉ」
「ほぉう」
:10/01/29 16:57 :D905i :XWctwuXA
#187 [笹]
すると
壱助さんがぬっと身を乗り出し
じっと見つめてきたもんで
不意を付かれて倒れ込んだ
「それなら‥香夜さんが
お相手を、していただけるんで?」
:10/01/29 16:57 :D905i :XWctwuXA
#188 [笹]
急に体が重くなる
あたしを見下ろすその目が憎い
壱助さんは、ずるいよ
「‥嫌です」
「おや、この前は‥
色めいて抱けと言ったのに」
「‥あ、あれは」
自分でもよくわかりません
何て言えるはずもなく
:10/01/29 16:58 :D905i :XWctwuXA
#189 [笹]
「色んな遊女を抱いてる人に
‥抱かれたくはありません」
目を伏せて
のしかかる体を押し上げる
「こいつぁ‥手厳しい」
雪みたいな手が頬を撫でた
‥また喰らおうとするの?
:10/01/29 16:59 :D905i :XWctwuXA
#190 [笹]
「中の下では‥」
雪がするする首筋を流れ
胸元をするりと抜けた
「"目覚めない"もんで、ね」
胸にひんやりとした感覚
睨みつけるように
鋭い目であたしを突き刺す
:10/01/29 16:59 :D905i :XWctwuXA
#191 [笹]
「きゃああぁああぁあっ」
いざと言うときに
力は発揮されるようで
どんと壱助さんの体を突き飛ばし
目をむき出しにした
:10/01/29 17:00 :D905i :XWctwuXA
#192 [笹]
有り得ないっ有り得ない!!!
「壱助さんの‥
すけべぇええぇえぇ!!!!」
もう、お嫁にいけません。うぅ
:10/01/29 17:00 :D905i :XWctwuXA
#193 [笹]
「そんなに怒っていては‥
嫁に行けません、よ」
「壱助さんのせいですぅう!!!」
目一杯叫んでやった。
―‥壱助さんの馬鹿やろうっ!!
:10/01/29 17:02 :D905i :XWctwuXA
#194 [笹]
:10/01/29 17:06 :D905i :XWctwuXA
#195 [我輩は匿名である]
:10/01/29 21:42 :W53H :CL/ESoxg
#196 [我輩は匿名である]
:10/01/29 21:42 :W53H :CL/ESoxg
#197 [笹]
死にそうな所を
拾ってやったと言うのに‥
疑い深い猫、ですよ
少しは恩でも返そうと
‥思わないんですかい?
"猫は三年の恩を三日で忘れる"
‥って、ね
:10/01/30 19:50 :D905i :weUwJGLs
#198 [笹]
:
:
:
何をするでもない
壱助さんはいつもこう。
正座してお茶を入れて啜って
少し間を置いてまた啜って‥
飲み終えたら
‥―立ち膝で窓際に座る
ぼうっと空ばかり眺めて
何が面白いのだろう。
:10/01/30 19:50 :D905i :weUwJGLs
#199 [笹]
立ち膝で座ってる時の
少しはだけた着物から見える
白い肌が何とも‥。
あー‥羨ましさを越えて憎らしい
‥ねぇ壱助さん
あたしが居ること忘れてる?
存在消されてる?
:10/01/30 19:51 :D905i :weUwJGLs
#200 [笹]
そういえば、壱助さんは何で‥
あたしを助けてくれたの?
:10/01/30 19:52 :D905i :weUwJGLs
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