浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#911 [笹]
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あの後
幸太郎さんにはしっかりと
気持ちを伝えてきた
とても残念そうに
眉を下げていたけれど
『お幸せに』って言って
諦めてくれた
お幸せにって‥
何か変な気もするけれど
:10/03/20 21:22 :D905i :Z99/cef.
#912 [笹]
だってあたしと壱助さんは
恋仲じゃあ‥ないんだし
こんな感情に
気付いちゃいけないんだ
辛いだけ、そうでしょ?
貴方はかなりの色男
それに年だって‥離れてる
って言っても
何歳なのか知らないけどね
:10/03/20 21:23 :D905i :Z99/cef.
#913 [笹]
でも友人と言ったら
違う気がするし
お父さんでもないしね
お兄さんでもないかも‥
世話好きな所は
お母さんっぽいけれど、
壱助さんはどうなんだろう
あたしのこと‥
どう思ってるんだろう
:10/03/20 21:23 :D905i :Z99/cef.
#914 [笹]
「"所有物"‥ですよ」
「‥え?」
澄み切った空を仰いで
艶容な唇が弧を描いた
って言うか‥
何で心のなかが読めるのよ
「おや、おや」
相変わらず冷静で
その上どこか呑気で
伏せた長い睫が揺れている
:10/03/20 21:24 :D905i :Z99/cef.
#915 [笹]
「‥見頃、ですね」
ひらり、桃色の花びらが舞う
くすっと笑った壱助さんの手が
此方に伸びてきた
「何‥何ですか?」
食らうつもりなのかと
思わず肩をびくつかせる
:10/03/20 21:25 :D905i :Z99/cef.
#916 [笹]
「なぁに‥食らいやしません、よ」
その美しい手が
あたしの頭を一撫ですると
二本の細い指に摘まれた
桜の花びら
それを日の光にかざし
緩く微笑んだ
「春です、ね」
その姿はとても煌びやかで
見とれてしまったの
:10/03/20 21:26 :D905i :Z99/cef.
#917 [笹]
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:
鮮やかに桜色に染まった街外れ
これは絶景、間違いないよ
揺れる花に人々の賑わい
酒の甘い香りがほんのり漂う
酔っ払いは好まない
だけど花見の時くらいは
心を許してしまうんだ
「ほぉう‥酒豪、ときたか」
:10/03/20 21:26 :D905i :Z99/cef.
#918 [笹]
酒飲みを見つめたあたしに
壱助さんの低い声がかかる
「え‥ち、違いますよ!!
あたしお酒得意じゃないし!!」
「それは、それは
‥良い事を聞きました」
細めた目で此方を見つめる
何を企んでいるのやら
:10/03/20 21:27 :D905i :Z99/cef.
#919 [笹]
「本日は‥盛大に、いきますぜ」
片手に二本ずつ一升瓶を抱えて
微笑んだ貴方
以外とこの腕は力がある
どこから持ってきたんですかそれ
酒豪は貴方でしょう‥?
:10/03/20 21:27 :D905i :Z99/cef.
#920 [笹]
:
:
「あ‥伊代さん!!」
「香夜ちゃんじゃないかぁ!!
久しぶりだねぇ」
相変わらず元気な伊代さん
ここ最近何かと忙しくて
顔出しができてなかった
「伊代さんもお花見ですか?」
「出張だよぉ!!」
:10/03/20 21:27 :D905i :Z99/cef.
#921 [笹]
この笑顔が好きだ
くしゃっと笑って
ぽんと肩をたたかれる
「花見にゃ団子だろう?
だからこうして、売りに来たのさ」
なるほどと頷き
目の前に置かれた
色とりどりの団子に目を向ける
:10/03/20 21:28 :D905i :Z99/cef.
#922 [笹]
「じゃあ伊代さんっ
お団子くださいなっ」
「はいよぉ!!
そいやぁ‥壱助さんは?」
団子を手際よく皿に乗せ
真っ黒な瞳が此方を見つめる
「"酒のお供が欲しいです、ねぇ"
って‥お使いに来たわけです」
:10/03/20 21:29 :D905i :Z99/cef.
#923 [笹]
あの人は本当に動かない
相当な事がないと動かない
そしてあの言葉の威圧感
‥遠まわしに言わなくても
"あの人らしいね"と呟いて
沢山の団子を手渡された
「香夜ちゃん!!
乗せられちゃだめよぉ?」
別れを告げた背中に
一言そう告げられた
‥何の事だろう
:10/03/20 21:29 :D905i :Z99/cef.
#924 [笹]
:
:
"主人"の元へ戻れば
桜の木に寄りかかり
立て膝をついてすでに飲酒中
はらはらと舞う花びらを
愛おしそうに見つめて
お猪口を口に運ぶ
何て綺麗なんだろう
その色っぽさに何度嫉妬した事か
:10/03/20 21:31 :D905i :Z99/cef.
#925 [笹]
「はい、どーぞ」
山のかかった調達品を
目の前にどさっと差し出せば
一瞬その量に目を見開いた
「‥食いしん坊」
鼻で笑いながら
横目でちらり見つめられ
「な‥別に
あたし一人分じゃないですぅ!!」
:10/03/20 21:31 :D905i :Z99/cef.
#926 [笹]
結局いつも通り
意地になって反論してしまう
乗せられるとは
こういうことかな?
隣に腰を下ろせば
ふわり漂う壱助さんの香り
着物の襟から伸びた
首筋が淡く溶けてしまいそう
何だか緊張する
体がじわりと熱を帯びた
:10/03/20 21:32 :D905i :Z99/cef.
#927 [笹]
「おや‥何処かで酒を
召してきたんですかい?」
「飲んでないですよっ!」
そう答えれば怪しげに笑い
細い指があたしの頬に触れた
「良い色に染まってます故‥
そうなのかな、とね」
:10/03/20 21:32 :D905i :Z99/cef.
#928 [笹]
完璧にからかわれてる‥
そうわかっててもやっぱり駄目で
「んもっ‥馬鹿っ!!」
羞恥に目を潤ませて
その指を払いのければ
一気に顔が熱くなり
:10/03/20 21:33 :D905i :Z99/cef.
#929 [笹]
「‥紅い」
楽しそうに笑みを浮かべ
お猪口を此方に差し出した
乗せられる‥
やっぱりこういうことかぁ
:10/03/20 21:34 :D905i :Z99/cef.
#930 [笹]
:
:
あっという間に日が暮れて
昼とはまた違う
大人な雰囲気の夜桜
賑わいはさらに増して
陽気に踊り出す人々もちらほら
あんなにあった団子も
いつの間にかあと数個
:10/03/20 21:34 :D905i :Z99/cef.
#931 [笹]
「あぁっ
もう‥飲めないれす‥ッヒク」
自分でもわかってた
だんだん酔っていくのを
頭がぼーっとして
何だか楽しくなって
勧められればぐいぐいと
調子に乗らされました
:10/03/20 21:34 :D905i :Z99/cef.
#932 [笹]
「まぁ、まぁ
まだ夜は長い‥ですよ」
お猪口いっぱいに
とくとくと酒を注がれる
透き通ったこの液体が
あたしの中をめぐって
気分よくさせてるのか
見た目なんて
水と変わりやしないのに
:10/03/20 21:36 :D905i :Z99/cef.
#933 [笹]
「おっとっと」
結局溢れそうなそれを
口元に運んで一気に飲み干す
頭じゃわかってる
頭ん中は至って冷静
だけど体は分離してる
もう空の瓶が
いち、に、さん、し‥
あれ?
四本以上あるのはなぜだ
どこから湧いて出てきたんだ
:10/03/20 21:37 :D905i :Z99/cef.
#934 [笹]
それにしても‥
「いちしゅけさんは‥
お酒‥ちゅよいれすねぇ」
今にもふらり倒れそうなあたし
打って変わって
先ほどから全く変化のない貴方
顔色一つ変えやしない
化け物かって思いますよ
:10/03/20 21:37 :D905i :Z99/cef.
#935 [笹]
「まぁ‥ね」
「ふぅん‥
そおいえば、いちしゅけさん」
完璧に呂律が回ってない
もうさすがにやめよう
「想い人っていましゅかあ?」
あたしは何を聞いてるんだ
:10/03/20 21:38 :D905i :Z99/cef.
#936 [笹]
唯一の生き残りの頭さえ
じわじわと蝕まれ
甘ったるいやつに洗脳されていく
「そうですねぇ‥」
ぐいっと言った喉の辺りが
むず痒くなるほど綺麗で
「います、かね」
:10/03/20 21:38 :D905i :Z99/cef.
#937 [笹]
遠くを見つめた壱助さん
その瞳には
一体何が映っているのか
あたしの知り得たことじゃない
だけどこうも知りたくなる
そしてその返事に
胸がぎゅうっと締め付けられた
酔っているからかな
どうも変に愛おしい
:10/03/20 21:39 :D905i :Z99/cef.
#938 [笹]
俯き地面を見つめれば
優しく頭を撫でられた
優しくしないでほしい
今は涙腺が弱ってるんです
「叶うかどうかは‥
厳しいところ、ですがね」
そっと見上げれば
困ったように微笑んで
:10/03/20 21:40 :D905i :Z99/cef.
#939 [笹]
厳しいところって
人妻にでも恋してるのかな
それとも男性だったり?
こんなにも色男だもん
落ちない相手がみてみたい
「だいじょぶれす、きっと
あたしが‥保証しま‥しゅ」
遂に限界を迎え
ふわり体が宙を浮く
:10/03/20 21:41 :D905i :Z99/cef.
#940 [笹]
よりかかった隣の肩は
見た目以上に柔らかく
落ちた花びらが頬をくすぐり
そのまま眠りについた
:10/03/20 21:41 :D905i :Z99/cef.
#941 [笹]
:
:
小さな寝息
口元に手をかざせば
やっと確認できるほど
「保証‥ねぇ」
一人酒はやはり
ちょいと物寂しい
愛らしい寝顔を眺めて飲むのも
また一興‥ですかね
:10/03/20 21:42 :D905i :Z99/cef.
#942 [笹]
もたれた頭を
抱き寄せるように撫でれば
ぴくりと片手が跳ね
此方の着物をつかんだ
「本人に言われちゃぁ‥
参ったもんだ」
呆れ顔で見つめれば
幸せそうに笑みをこぼした想い人
:10/03/20 21:42 :D905i :Z99/cef.
#943 [笹]
「あり‥と」
「‥」
「壱‥けさ‥ありが‥と」
素直な寝言に
抱き締めたくなるほどの
愛おしさを覚える
酒のせいですか、ね
やたらと反応してしまう
:10/03/20 21:43 :D905i :Z99/cef.
#944 [笹]
「ずっと‥と‥いっ‥しょ」
頬を伝った滴
人聞きが悪いかも知れませんが
貴女の涙は、美しい
‥叶おうが叶わまいが
関係ないですぜ
:10/03/20 21:43 :D905i :Z99/cef.
#945 [笹]
貴女がずっと隣にいりゃあ
文句はない、ですから
「‥承知」
涙を片指で拭い
幼い額に唇をそっと寄せた
春の香り、ふわり
:10/03/20 21:44 :D905i :Z99/cef.
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