浮き世の諸事情｡

　
：
：

｢それより‥!!｣

｢まだ､何か｣

貴女は素直な娘だと
思うのですが‥

ちょいと怒った様子で
此方に詰め寄ってきた

ふわり､香る貴女

　
｢何ですかあれ!!｣

大人の色気とは程遠い
首筋のあどけなさ
自然に染まった唇の色が
何とも‥柔らかく

｢あれ､とは？｣

じっと睨みをきかせても
今回ばかりは
怖じ気付かずに‥強気､と来た

　
｢さっき遊女さんに‥｣

｢はい､はい
近頃､あのような行為からは
疎遠だったもので‥
ついつい‥力んでしまい｣

くすっと鼻であしらえば
不満そうに顔をしかめる

　
確かにアレは
意図的なもので
思いの外､血が出てしまい

しかし
一体‥何だって言うんで？

｢そうじゃなくて!!｣

随分と今日は
はっきりと物を言う

　
私に睨みをきかせるとは‥
何様のおつもりなのか､ねぇ

｢誘惑に負けたんですか？!｣

｢‥誘､惑｣

あぁ‥なるほど､ねぇ

　

｢妬いていらっしゃるんで？｣

貴女は本当に
‥可愛らしい人だ

しかし､何時もは此処で
違うと頬を染めて声を張る

　
｢そりゃ‥妬きますよ｣

｢ほぉう｣

どうしたもんか‥ねぇ
珍しい話だ

一向に目を逸らそうとせず
潤んだ瞳の色に魅了され

‥自分に呆れるもんで

　
｢よし､よし｣

誤魔化そうと頭を撫でても
機嫌は直らず

‥しぶとい､ですね

｢子供扱いしないでくださいぃ!｣

そんなつもりは
さらさら無いのですが‥

　
子供を相手にするほど
暇じゃあない

｢では､何ですか
あのように‥されたいとでも？｣

言い寄られては立場がない

やれやれと睫を伏せれば

　

――――‥

やられだもんだ

_

　
押し当てられた唇
随分と‥強引な方だ

盛りの猫ですか､貴女は

堅く閉じられた瞼が
時折ぴくりと動く

数秒押し当て満足したのか
急に離して頬を染めた

　
｢‥消毒ですかい？｣

羞恥に溢れた熱を
瞳に目一杯溜めて
不満そうな唇

｢‥下手くそ｣

｢へ？｣

そう吐き捨てて含み笑い

　
香夜さん‥
あんたは本当に
子供じみた事をするもんだ

｢ちょいと‥
大人になったらどうです､か｣

‥あんたが悪い

　
その不満そうな唇に
思い知らせてやりましょう､か

｢ふぁっ｣

漂う桃色に､本日は‥身を任せ｡

_