浮 き 世 の 諸 事 情 。
最新 最初 全
#578 [笹]
自分で腹を括ったって
後悔は
情が籠もれば籠もるほど
溢れかえってくるもので
何度泣いても泣き足りない
でも、泣くことしか
あたしにはできないのだから‥
"声涙、倶に下る"
:10/02/14 22:37 :D905i :AHFqEp8k
#579 [笹]
:
:
理由は簡単で
これ以上
迷惑をかけたくなかった
あの日あたしの居場所は
壱助さんの隣しかないって
そう思った
だけど‥だけど違う
今までとは確実に何かが違う
:10/02/14 22:38 :D905i :AHFqEp8k
#580 [笹]
いけないことに
気がついてしまった気がして
もう一緒に居られないって
‥そう思ったの
できるならこんなこと
したくなかった‥
離れたくなかった
:10/02/14 22:38 :D905i :AHFqEp8k
#581 [笹]
意地悪だけど根は優しいし
あたしを認めてくれたから
あたしを助けてくれたから
「はぁ‥」
もう泣きそうだ
家出てから
泣かないって決めたのに‥
壱助さんといたら
すぐ泣いちゃう
‥居心地いいんだよね、それだけ
:10/02/14 22:39 :D905i :AHFqEp8k
#582 [笹]
「猫ぉ‥
これからどうしよう」
野良猫がすり寄ってきた
そんなに可哀想に見えたかな
「‥行くあてがないや」
飢え死にするかも‥
んう‥壱助さぁん
「ミャァウ」
真っ黒な瞳が
こちらを覗き込む
:10/02/14 22:40 :D905i :AHFqEp8k
#583 [笹]
「お前も‥独りかぁ」
思いっきり撫でてやる
毛の下から伝わる暖かさに
何故か胸が苦しくなった
‥また遊女屋かなぁ
:10/02/14 22:40 :D905i :AHFqEp8k
#584 [笹]
「‥香夜ちゃん?」
「‥伊代さぁああぁん!」
:10/02/14 22:41 :D905i :AHFqEp8k
#585 [笹]
:
:
「でもさぁ香夜ちゃん?
壱助さん心配するだろう?」
不安そうな顔で
伊代さんはお茶を差し出した
「でも‥
去るのもあたし次第だって
壱助さん言ってたし‥」
「んん‥まぁねぇ
あの人も‥」
そう言って眉を下げて
緩く微笑んだ
:10/02/14 22:41 :D905i :AHFqEp8k
#586 [笹]
「‥?」
「香夜ちゃんと"同じ"さぁ」
「同じ?」
意味深な言葉を残し
頬杖を尽きながら団子を食らう
伊代さんはいつも幸せそう
:10/02/14 22:42 :D905i :AHFqEp8k
#587 [笹]
湯飲みの中をぼうっと覗き込む
深い緑色の奥に
自分のみっともない顔が
ぼやけて映し出された
お茶‥まだ大丈夫だよね
この前買ってきたばかりだし
「‥はぁ」
体に染み付いた習慣が
余計虚しくさせて、ため息
:10/02/14 22:42 :D905i :AHFqEp8k
#588 [笹]
「でも、どうするんだい?
これから一人じゃあ‥」
「んー‥」
出された団子に目もくれず
緑色をじっと見つめる
「あたしんちでよけりゃあ‥
汚いけど、使うかい?」
「え?!いいんですかっ?」
:10/02/14 22:43 :D905i :AHFqEp8k
#589 [笹]
思わず身を乗り出した
しかしすぐさま冷静になり
この朗報の穴に気づく
「でも‥壱助さん
来ますよね‥此処」
見つかっては
合わせる顔がないの
もう会わない
迷惑かけないって決めたから
:10/02/14 22:43 :D905i :AHFqEp8k
#590 [笹]
結局飢え死に‥
じゃなきゃ、遊女屋
でも遊女屋だって
壱助さん来るかもしれない‥
何を考えても
壱助さんばかり絡んで
情けないほどに
自分は頼ってばかりだったと
改めて実感するのだ
:10/02/14 22:44 :D905i :AHFqEp8k
#591 [笹]
「まぁ‥来るけどさぁ
部屋貸すから、ね?」
母親のような笑みを
此方に向けた伊代さん
母親の笑みなんて
あたしにはわからないけど
:10/02/14 22:45 :D905i :AHFqEp8k
#592 [笹]
「でも‥タダで借りるなんて」
「それなら、うちで雇うよ?
裏方ならできるだろう?」
裏方‥そっか
表にでなきゃいいんだ
「よろしくお願いします!!」
:10/02/14 22:45 :D905i :AHFqEp8k
#593 [笹]
いつか壱助さんが
迎えに来てくれたら‥なんて
仕様もない希望を抱いていた
日が経てば経つほどに
このもどかしさは
恐ろしいくらいに膨れ上がり
壱助さんは
‥あたしを蝕んでいくの
:10/02/14 22:46 :D905i :AHFqEp8k
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194