浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#970 []



何にもやましいことはない
だって倫次は幼なじみ
壱助さんはお‥恩人だし

何にも気にすることはない

「‥」

そうよ‥何も

⏰:10/03/26 16:58 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#971 []
 
「壱助さんって
甘いもの好きでしたっけ?」

「いえ、別に」

倫次が持ってきたお茶を啜らず
用意されていた和菓子を
丁寧に切って口の中へ

ゆっくりそうに見えて
案外食べるの早い

⏰:10/03/26 16:58 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#972 []
あっという間に平らげて
不満げにこちらを見つめてきた


「お茶飲まな‥あぁあああぁっ!」

するり伸びてきた手が
あたしの和菓子をひょいと摘み
あの艶容な唇に触れ
吸い込まれた

⏰:10/03/26 16:59 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#973 []
 
「それ‥それあたしのぉぉおっ」

食べたかった‥
すごく美味しそうだったのに

"犯人"の憎たらしい流し目
む か つ く !!

まだ熱いお茶を
いっきに口に流し込んだ
その熱さに喉が痛んだが
見栄を張った

⏰:10/03/26 16:59 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#974 []
 
流れていくのがわかる
どくどくと内側から痛めつけられ
何だか妙に切なくなった


頬杖をついた横顔
貴方の見つめる先に
何があるのかなんて‥

⏰:10/03/26 17:00 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#975 []



「わぁっすごい!!」

広がる桜並木
舞う花びらが鮮やかな絨毯を作る
その横に流れる川のせせらぎ
澄み切った青空と浮かぶ白い雲

‥春真っ盛りだ

⏰:10/03/26 17:00 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#976 []
 
「あまりはしゃいでいると
‥怪我、しますよ」

あまりにも重苦しい空気に
耐えきれなくなって
散歩に行こうと誘おうとしたら
壱助さんの方からお誘いが

何だか表情も
柔らかくなったみたい

この風景と壱助さんの組み合わせ
‥絶景だ

⏰:10/03/26 17:01 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#977 []
 
それを目に焼き付けるように
そっと目を閉じた


「何を‥していらっしゃる」

「いや‥いい景色だなぁって」

ゆっくり目を開ければ絶景
長い睫にすらっと筋の通った鼻
きめの細かい真っ白な肌
荒れを知らない色っぽい唇

⏰:10/03/26 17:01 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#978 []
 
‥って

「ち‥近いんですけど」

吐息が頬をかすめる
思わず息を潜めてしまうほど
美しすぎて‥
体が熱を帯びていく

「まぁ、まぁ」

まぁまぁって貴方‥

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#979 []
 
「さぁ‥早くしないと
日が暮れてちまいます、よ」

そう余裕たっぷりに囁き
あたしの手を取る


もの凄く近いはず
それなのに貴方の背中は
遠く遠く離れて見える

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#980 []
 
いつまでもいつまでも
追っていくのだろうか
結局は追いつかずに‥


気付いているのです
ほんとはね、気付いてる

この気持ちが何なのか

⏰:10/03/26 17:02 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#981 []




温泉どっぷり浸かって
いろいろ考えた

‥いろいろ

廊下に浴衣が擦れる音
ぼんやり映る自分の顔
なんて情けないんだ

⏰:10/03/26 17:03 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#982 []
 
考えたって無駄なんだけど
考えてしまう

あぁ‥もう嫌


襖をゆっくり開ければ
浴衣を着た壱助さんの後ろ姿

首に手拭い巻いてるけど
この人は汗をかくのだろうか

⏰:10/03/26 17:03 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#983 []
 
「早いですね」

「まぁ‥男、ですから」

胡座をかいた横には
お猪口とお酒の瓶
‥酒豪

男の一人酒‥
邪魔しちゃ悪いかな?

⏰:10/03/26 17:04 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#984 []
 
じゃあ、そろそろ時間だし‥

「‥香夜さん」

少し甘ったるい声が
立ち去ろうとしたあたしを
呼び止めた


「何処、へ」

「あぁ‥えっと
ちょっと‥外に」

⏰:10/03/26 17:04 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#985 []
 
何となく言葉を濁らせて
倫次のとこへ行くとは
言えなかった

これがいけないのか
‥やましいわけじゃないの

「幼、なじみ」

いつの間にかその声は
耳元で囁いて
風呂上がりの貴方の体は
少しまだ暖かかった

⏰:10/03/26 17:05 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#986 []
 
「壱助さん‥?」

腰を抱かれて
そのまま身を委ねてしまった


「‥倫次、待ってます」

「私の‥
知ったこっちゃ、ないのですが」

知ったこっちゃあってほしい‥

⏰:10/03/26 17:05 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#987 []
 
首にかかる吐息が
少しお酒を漂わせて
酔ってんのかな?

「すぐ、戻りますから」

「それなら‥行かなくても
いいじゃあ、ないですか」

「‥んん」

⏰:10/03/26 17:06 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#988 []
 
口ごもれば‥
さすがに壱助さんも子供じゃない

「‥体が冷えます故
早く、戻ること」

そう言うと
するり腰から腕が溶けた
軽くなった腰を上げ

足早に部屋を出た。

⏰:10/03/26 17:06 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


#989 []
 
ねぇ、壱助さん

貴方の手が
引き止めたのは

お酒のせいじゃ
‥ないのでしょうか?


何時だって貴方は
あたしを惑わせて‥

⏰:10/03/26 17:08 📱:D905i 🆔:1zJ6QS4Y


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