浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#147 [笹]
まだ幼い雌猫が、
体を売ろうなんざぁ‥
馬鹿げた話です。
本当に危なっかしいもんです、よ
あれこれ口で言うよりも
心の中で考えてる事のほうが
ずっと痛切じゃありやせんか
私は、そういう気質なもんで‥
"鳴かぬ蛍が身を焦がす"って、か
:10/01/29 00:39 :D905i :XWctwuXA
#148 [笹]
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「またですかぁ?」
まただ。
"ちょいと野暮用に"って
壱助さんは決まって夕方に
下駄を履いて出て行く
「すぐに‥戻ります、よ」
なんだかあれから
更に子供扱いされてる気がする
:10/01/29 00:43 :D905i :XWctwuXA
#149 [笹]
あたしの思い違いかもしれない
だけど‥、何となくあの日から
距離が‥遠くなった気がするの
距離って言うのは、
座った時とかの間隔のことだけど
「考えすぎかなぁー‥」
壱助さんの背中をぼうっと見つめ
あたしはただ
力なく手を振るだけだった
:10/01/29 00:46 :D905i :XWctwuXA
#150 [笹]
"野暮用"って何だろう‥
拗ねた子供のように
口をつんと尖らせて畳に寝転ぶ
『手加減、してる方ですぜ』
「‥まさかっ、」
:10/01/29 00:50 :D905i :XWctwuXA
#151 [笹]
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:
:
「壱助さんじゃないかぁ!!」
「あぁ‥伊代さん」
にこりと微笑む壱助の腕を
伊代がしっかりと捕まえた
「"あぁ‥"じゃないよぉ!!
どうなったんだい?!」
手に汗握るように
またそわそわしている
:10/01/29 15:19 :D905i :XWctwuXA
#152 [笹]
「どうなった、と言いますと?」
"惚けるんじゃないよ"と
伊代がせかす
:10/01/29 15:20 :D905i :XWctwuXA
#153 [笹]
:
:
「そうかそうかぁー
無事だったのかい」
見たこともない人間を
全く子供かのように心配するほど
伊代は人情味に溢れてる
:10/01/29 15:21 :D905i :XWctwuXA
#154 [笹]
「そんなに心配しなくても、
大丈夫でしたが、ね」
いつものように茶を啜り
団子を手に取り眺める
「壱助さん!あんたねぇ
女の子にとっちゃあ
事によっては死のうと思うくらい
大事になるんだからさぁ‥
ちゃんと面倒見てやんなよぅ?」
:10/01/29 15:21 :D905i :XWctwuXA
#155 [笹]
女は女の味方である。
そうは言っても
壱助の無関心さには
女じゃなくてもこう言うだろうと
伊代は思うのだ
「それでぇ‥"猫ちゃん"は
何ともなかったのかい?」
腕を組んで
まるでお説教をしてるようだ
:10/01/29 15:22 :D905i :XWctwuXA
#156 [笹]
「何とも、無かったんじゃあ‥」
『たった一週間で
貴方を知った気になってた‥』
‥どうした、もんかねぇ
:10/01/29 15:23 :D905i :XWctwuXA
#157 [笹]
「‥ないですか、ねぇ」
壱助は団子に口を付けず
そのまま皿に置いた
「連れて歩くなら、
もっとしっかりしなよぉ!!」
べしんっと一発
壱助の肩にお見舞い
:10/01/29 15:24 :D905i :XWctwuXA
#158 [笹]
「しかし‥少々」
『‥抱いて、ください』
―‥酒でも飲んだ、か
―‥空気に飲まれた、か
それとも‥
:10/01/29 15:24 :D905i :XWctwuXA
#159 [笹]
「飲まれちまったようで、」
―‥正気、か
あの時の目は虚ろではなかった
だとしたら、 やはり
:10/01/29 15:25 :D905i :XWctwuXA
#160 [笹]
「"酒でも飲ませて襲った"
なんて言わないだろうねぇ?」
‥否定はできません、ぜ
「まさか‥そうなのかい?」
驚くように伊代は口をはっと塞ぐ
:10/01/29 15:26 :D905i :XWctwuXA
#161 [笹]
「いえ、いえ
せめて‥人並みでないと、ね」
その言葉に
ぽかんとだらしなく口を開けた
"人並み?"と目で訴えられて
:10/01/29 15:27 :D905i :XWctwuXA
#162 [笹]
「中の‥下では、何とも」
壱助はそう言い残し
団子をそのままにして
去っていった
:10/01/29 15:27 :D905i :XWctwuXA
#163 [笹]
:
:
:
さて、どうしたもんか
「‥ニャァ」
珍しく思い耽って宿に戻る
入り口手前で
何故か躊躇していると
一匹の猫が足元にすり寄ってきた
:10/01/29 15:28 :D905i :XWctwuXA
#164 [笹]
"獣はあまり好かないんで、ね"と
少し冷たい視線を向けると
寂しそうにニャァと鳴いた
「‥"猫"はどうして、こうも」
その場にしゃがみこみ
喉元を撫でてやる
:10/01/29 15:29 :D905i :XWctwuXA
#165 [笹]
「‥気まぐれなのか、ねぇ」
普段は猫なんて
寄って来やしないんですが
「ミャァ‥ウ」
‥撫でてやると
可愛い声を出すもんで
:10/01/29 15:30 :D905i :XWctwuXA
#166 [笹]
「情けない‥奴です、よ」
目を細めて微笑した
:10/01/29 15:30 :D905i :XWctwuXA
#167 [笹]
すりすりと身を寄せて
何を、考えているんで?
人と猫は
分かり合えませんか、ね
「発情期です‥か」
猫の丸い目がパチクリする
惚けるんですかい?
:10/01/29 15:31 :D905i :XWctwuXA
#168 [笹]
"さて‥"と腰を上げようとすると
"嫌だ"と言うように身を乗り出す
「"飼い猫"が‥妬くんでね」
大きく一撫でして立ち上がる
:10/01/29 15:31 :D905i :XWctwuXA
#169 [笹]
「‥隠れても無駄、ですよ」
「ひぁぁああっ!!」
びくりと肩を持ち上げて
‥苦笑いする猫が一匹。
:10/01/29 15:32 :D905i :XWctwuXA
#170 [笹]
「いいいっ壱助さんっ
おかっ‥お帰りなさぁい」
「何してお出でで?」
‥どうしたもんか、ね
:10/01/29 15:33 :D905i :XWctwuXA
#171 [笹]
「‥心配で、‥壱助さんの事が」
馴れては、いるんですぜ?
しかし情けない‥男です、よ
:10/01/29 15:34 :D905i :XWctwuXA
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