浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#396 []
 
最近、猫は‥危なっかしい



"親"としての責任が
問われます故‥


そこら寄り付く輩を
‥退治せねばぁ、なりませんで


"親の意見と茄子の花は
千に一つも仇はない"

⏰:10/02/05 22:14 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#397 []
―‥鬼も風邪を引くらしい。

また新しい発見である。


と言うわけで
漢方薬でも買ってこようと
また街に出たのです

やっと此処にも馴れてきて
顔も覚えてもらえるようになった

⏰:10/02/05 22:17 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#398 []
 
「‥さて、そろそろ戻らなきゃ
壱助さんに‥。」

いつだって死と隣り合わせ
壱助さんは殺しはしないって
言ってはいるけど‥

「爪の間に針を‥」


考えるだけで心臓が痛みますよ

⏰:10/02/05 22:18 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#399 []
 
ふうっと深く息を付いて
足早に宿に戻ろうとした


‥足が動かない、あれ?



足がずしりと重い
もしかして死神?迎えに?

⏰:10/02/05 22:18 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#400 []
 
思わず引きつる顔を
恐る恐る下に向けると


「‥え?」


そこにはあたしの着物に
ぎゅっとしがみつく子供
着物に顔を埋めたまま離さない

あたし‥子供産んだかしら
なーんて訳の分からんことを
真剣に考えてしまう

⏰:10/02/05 22:19 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#401 []
 
「ごるぁぁぁああ!!!」

突然‥
物凄い形相をした男の人が
こちら目掛けて突進してきたのだ


‥いつだって死と隣り合わせ。

「ちょ‥何何なんなのー?!」

あたふたするものの
子供が地蔵のように重く
ぴくりともしない足

⏰:10/02/05 22:20 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#402 []
 

し、し‥‥死ぬ。


_

⏰:10/02/05 22:21 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#403 []
 
「こっち来るなよぉお!!」

「お前っ!!
米粒を茶碗に残すなって
あれだけ言っただろう!!」

は?

「見えなかったんだぁ!」

「言い訳するなー!!」

明らかに男の人の視線は
この子供に向いている

⏰:10/02/05 22:21 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#404 []
 
「あ‥あのぅ」

あたしを盾にして隠れる子供

とっつかまえようと
あたしの前で機敏に動く人


そしてあたしの周りで始まる
いたちごっこ。

「一粒だけだろーっ!」

「お前っ見えてるじゃあないか!!」

「うぅ‥来るなぁあ!!」


‥厄介な物に巻き込まれました

⏰:10/02/05 22:22 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#405 []




「いやぁーお恥ずかしい所を」

先程の鬼みたいな顔とは
打って変わって
がははと笑うその人は
"茂七"と言うらしい。

とても人がよさそうだ

隣にちょこんと座る
口を尖らせた少年は"正宗"くん
米一粒を残した少年だ

⏰:10/02/05 22:23 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#406 []
 
「正宗は姉貴の子供でして」

「お姉さんの‥そうでしたか」

「姉貴は病弱なもんで、
よく俺が世話するんですが‥」

見る限り
あまり懐いてなさそうだ

「茂七‥怒ると怖いんだもん」

正宗くんが拗ねた様子で呟いた
子供らしい理由に
思わずクスリと笑ってしまう程

⏰:10/02/05 22:23 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#407 []
 
「迷惑かけちゃいやしたし‥
飯でもおごらせてくださいよ!」


非常に爽やかである
うん‥いい青年ってかんじ

‥なんて品定めするほど
あたしは男を知りません

「本当ですかぁっ?」

食べ物には目がありません

⏰:10/02/05 22:24 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#408 []
 
"道草を喰わない、こと"

‥鬼が呼んでいる


"でないと‥お仕置きです、よ"


か‥帰らねば

⏰:10/02/05 22:24 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#409 []
 
「お言葉に甘えたい所ですが、
"鬼"に殺されるので‥あは」


「鬼?」



「鬼のような人が、待ってるので」

⏰:10/02/05 22:26 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#410 []




何だか足取りが軽い
だって明日
男の人とお食事なんて‥

「うふふー」


「ほぉう‥
こりゃあ随分と
遅い帰りで、いらっしゃる」


心臓‥いや
体の全部の臓器がびくりとした

⏰:10/02/05 22:27 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#411 []
 
「あぁあ‥ちょっと」

あははなんて笑って見せても
‥もちろん無駄で

布団の上で正座をする壱助さんは
怪しい笑みを浮かべた


「病人をほったらかしにするとは
‥薄情な人です、ねぇ」

⏰:10/02/05 22:28 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#412 []
 
額にあてていた濡れた手拭いを
ピンと張って‥戦闘態勢ですね


「いや、そのぉ‥」

「お仕置きがそんなに
‥お好きです、か」

「ひぃっ!!」

「自虐的です、ね」

「‥ッうぅ!!!」

⏰:10/02/05 22:29 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#413 []
 
壱助さんの右手が
あたしの首をぐっと掴む
細い指が食い込むのが分かる


「く‥るひぃ」

「風邪を引いてます故‥
少々手に力が入りませんで」

鬼‥鬼鬼鬼!!


「もっと苦しんだ顔が
見たいもの、ですが‥ねぇ」

死ぬ‥窒息死‥馬鹿力‥

⏰:10/02/05 22:29 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#414 []
 
にやりと微笑む壱助さん
優しい笑顔なのだ
いや優しすぎる笑顔なのだ

笑顔が怖いと思うのは
壱助さんくらいだよ


「い‥ひふへ」


ぱっと手が離されると
肺が破裂しそうなほど息を吸い
酸素が脳に一気に入って
体が浮きそうになった

⏰:10/02/05 22:30 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#415 []
 
「‥んぐっはぁ」

「何を‥してたんですかい?」


手拭いをこっちに差し出し
"早く濡らして絞れ"と言うように
顔に押し付ける


もう治ったんじゃないですか?
壱助さん不死身そうだし

「それが‥」

⏰:10/02/05 22:31 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#416 []



冷たい水に手を浸ける
壱助さんの手みたい‥

ぎゅっと絞りながら事情を話すと
乱暴に手拭いを受け取った


「その茂七とやらは‥何者で?」

少し気だるそうに
帯を緩めて白い肌が顔を出す
いつになっても慣れない
この美しさ

⏰:10/02/05 22:31 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#417 []
 
「すごくいい人そうでしたよ!
金物屋さんをやってるそうで‥」


「ほぉう‥」


明らかに話し聞いてないし‥
興味ないなら聞かなきゃいいのに

ずずっと茶を啜るのは
いつもと変わらず元気な気がする

⏰:10/02/05 22:32 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#418 []
 
「私は香夜さんの
‥"親代わり"です、ぜ?」

親代わり‥うん
まぁそうなのかもしれない

自分で言うのもあれだけど
"飼い主"同然である


「まぁ‥そうですねぇ」

⏰:10/02/05 22:33 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#419 []
 
心配してくれてるのかな?

それとも‥"焼き餅"かなぁー
なぁーんて‥

壱助さんは
あたしみたいな子供に
妬くような人じゃないけど

⏰:10/02/05 22:33 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


#420 []
 

「そやつに会う‥
義務が、あります‥ねぇ」


カタンと湯飲みが音を立てる


あの口角だけ上げた笑みは
この世で一番恐ろしいのだ

⏰:10/02/05 22:35 📱:D905i 🆔:mdMMDFsU


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