浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#297 [笹]
"立てば芍薬、座れば牡丹、
歩く姿は百合の花"
そんな言葉がありますが
そんなに美しい女性って
実際にいるのかな?
壱助さんは
出会ったことあるんだって
今日はそんな壱助さんの
少し昔のお話です。
:10/02/01 22:32 :D905i :CnOOZU0s
#298 [笹]
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:
色がましい声で溢れる此処に
そんな声が一切聞こえない部屋
「また、来やしたぜ?」
毎日のように通いつめるのは
此処目的ではない
「また来たのかい
‥懲りない男だねぇ」
:10/02/01 22:32 :D905i :CnOOZU0s
#299 [笹]
目的はこの遊女
容姿端麗
性格も気は強いが悪くはない
「まぁ、まぁ」
決まって距離を少しばかり取って
隣で足を崩す
:10/02/01 22:33 :D905i :CnOOZU0s
#300 [笹]
新しい着物だとか簪だとか
そんなことを言えば
"よく見てるねぇ"と
呆れ顔で笑顔を向ける
真っ白な首筋にある小さな黒子
彼女は好きじゃないと言う
‥私はそうは思わないのですが
:10/02/01 22:33 :D905i :CnOOZU0s
#301 [笹]
「あんた位だよぉ?
此処へ来て手を出さないの」
「ほぉう‥そりゃあいい」
「金払ってるんだから
何したっていいんだのに‥」
"好き者だねぇ"と酒を差し出す
:10/02/01 22:34 :D905i :CnOOZU0s
#302 [笹]
「他の輩と‥
一緒にされちゃあ、困りやすから」
他に理由があると言えば
ないとは言い切れません、ね
好きな女にゃ、
金払って手を出す気はないんでね
:10/02/01 22:35 :D905i :CnOOZU0s
#303 [笹]
「全く‥馬鹿な人」
赤い紅を緩ませて
本当はあどけなさが残る
白いお粉で顔を隠して
金で買われる惨めな女
「あたしが抱いてと言っても
抱かないのかい?」
少し不安そうに顔を覗き込む
そんな顔して
‥何を求めてるんで?
:10/02/01 22:36 :D905i :CnOOZU0s
#304 [笹]
「"外"に出たら‥いくらでも」
「それなら、あんたのは
一生お目にかかれないねぇ」
嫌味ったらしく
目を細めて呟いた
ほう‥貴女も好き者です、か
:10/02/01 22:36 :D905i :CnOOZU0s
#305 [笹]
「まだ返し終わりません、か」
心配そうに見つめれば
"一生だよ"と言う
この遊女には莫大の借金がある
自殺した父親の残したものだ
それを返すために
此処で体を売っていると言う
:10/02/01 22:37 :D905i :CnOOZU0s
#306 [笹]
「一生売ってもね、
終わらないんだよ、好き者さん」
煙管を吹かして
煙を宙に漂わせる
それをぼうっと眺めて
消えるのを見送っていた
:10/02/01 22:37 :D905i :CnOOZU0s
#307 [笹]
「‥体に悪いですぜ?」
「知ってるさ、
これで死ねるなら‥死にたいよ」
馬鹿なことを言う人です、よ
「‥金なら、私が代わりに‥」
すると大口を開けて笑った
他の女なら下品な姿だ
:10/02/01 22:38 :D905i :CnOOZU0s
#308 [笹]
「お節介は、よしとくれよ
あんたにゃ関係ないだろう?」
曇った目の奥が
叫んでいるじゃあ、ないですか
"助けてくれ"と
言ってるっというのに
全く遊女は、演技が上手い
:10/02/01 22:39 :D905i :CnOOZU0s
#309 [笹]
「‥好き者さん?」
最期だと甘えます、か
「壱助と、申しまして」
少し躊躇いやしたか
所詮私は貴女の"顧客"
:10/02/01 22:39 :D905i :CnOOZU0s
#310 [笹]
「壱助さん‥抱いとくれよ」
真っ白な華奢な肩
何人がそこに触れましたか
‥私は、何人目で?
「此処では‥控えます、よ」
此を嫉妬と言うならば
‥受け入れ、ましょうか。
:10/02/01 22:40 :D905i :CnOOZU0s
#311 [笹]
「‥汚いからかい?」
「いえ、」
「‥最期に、
あんたに抱かれたいんだよ」
「今日は、これで‥」
あぁ‥貴女と言う人は
私の気持ちを知ってるくせに‥
涙に弱いと知ってお出でで?
:10/02/01 22:41 :D905i :CnOOZU0s
#312 [笹]
「嫌なんだよ‥
一度でいい‥壱助さん」
やっと子供らしくなって
大きな雫をこぼして
"最期"などと言いますか
「‥もう大人でしょうに、
みっともない、ですよ」
:10/02/01 22:41 :D905i :CnOOZU0s
#313 [笹]
力なく抱き締めると
しがみつくように
着物に爪を立ててただをこねる
「馬鹿です、ね‥全く」
軽く口元に口づけた
:10/02/01 22:42 :D905i :CnOOZU0s
#314 [笹]
色がましい声に埋もれて
聞こえる泣き口説く声
背中に訴える枯れた声
貴女を愛した男は
酷く我が儘で
貴女が愛したであろう男は
‥酷く情けなかった
:10/02/01 22:43 :D905i :CnOOZU0s
#315 [笹]
―‥"籠の鳥"
振り返った時には
何も掴めなかった無力の掌と
煙管と白い着物に染み付いた
美しすぎて恐ろしい赤い花
こんなにも‥
お慕い申し上げていたのに、と
嘆いたって宙に浮いて消えるだけ
:10/02/01 22:43 :D905i :CnOOZU0s
#316 [笹]
:
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「立てば芍薬、座れば牡丹
‥歩く姿は何とやら」
月光に浮かぶ
目の前の小娘を‥
「うぅ‥壱、助さん」
また愛そうなんて、
「‥程遠い、か」
嗚呼‥わからない男です、よ
:10/02/01 22:44 :D905i :CnOOZU0s
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