浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#342 [笹]
鈍い上に‥
喜怒哀楽が激しい、ときた
この上なく‥厄介です、ね
‥まだまだ
子供じゃあ、ないですか
"かわいさ余って憎さ百倍"
そんな言葉がありますが
‥この憎たらしさは、どうだか
:10/02/03 21:25 :D905i :s1isUj7A
#343 [笹]
「どうして‥
あんな事したんですか!?」
「大したこと‥
ないじゃあないです、か」
「大した事ない?
鼻血でちゃったんですよ?!
血ですよ?血!血!血ーっ!」
「鼻血くらい
貴女も、出るでしょう」
「それとこれとは別です!!」
「ほう‥、全く鈍い人だ」
:10/02/03 21:25 :D905i :s1isUj7A
#344 [笹]
:
:
:
「伊代さん!!
どう思いますかぁ?!」
せっせと他の客に
団子やらお茶やら運ぶ
女将に訴えた
「んー‥そうだねぇ、
‥はい、団子お待ちーっ」
:10/02/03 21:26 :D905i :s1isUj7A
#345 [笹]
眉間に深くシワを寄せて
ぷうっと頬を膨らます
香夜は物凄い形相で団子を喰らい
一席空けた横に座る
壱助を睨みつけた
「またお茶ですかぁ?
体緑色になっちゃいますよ」
低い声を横に向けて放つ
しかし変わらぬ壱助の表情
:10/02/03 21:26 :D905i :s1isUj7A
#346 [笹]
「‥五月蝿い猫です、ね」
茶を啜って
"やれ、やれ"と軽くあしらった
「んもーっ!!いらいらするぅ」
キーっと頭をかきむしり
落ち着かない香夜の前に
仕事が落ち着いた伊代が座る
「全く、何したってんだぁい?」
:10/02/03 21:27 :D905i :s1isUj7A
#347 [笹]
はぁとため息を付いて
壱助に視線を落とす伊代
「ちょいと、
わからせてやっただけ、ですよ」
「‥何をだい?」
「壱助さん、人殴ったんです!!」
:10/02/03 21:28 :D905i :s1isUj7A
#348 [笹]
:
:
珍しく壱助さんが
買い出しに付いて来てくれた今朝
だけどちょっと
ご機嫌斜めなようで
野良猫にキッと睨みをきかせ
下駄を乱暴に鳴らしてた
:10/02/03 21:28 :D905i :s1isUj7A
#349 [笹]
「あ‥壱助さん
鯛焼き食べましょうよーっ」
「‥甘味は好みやせん」
「美味しいのにー‥」
「食べたら良いじゃあ、ないですか」
そう言われたから
買いに行ったんです。
買いに行っただけ!ですよ?
それなのに‥
:10/02/03 21:29 :D905i :s1isUj7A
#350 [笹]
「鯛焼き一つくださぁーい」
「毎度ありーっ!!
おや、お嬢ちゃん‥
別嬪さんだねぇ」
鯛焼きを売ってたのは
お兄さんって感じの若い人
威勢がよくて粋な感じ
:10/02/03 21:29 :D905i :s1isUj7A
#351 [笹]
「へ?
や、やだなぁーお兄さんっ
そんなお世辞言っても
一つしか買いませんよー?」
とか言いながら
やっぱり内心嬉しくて
顔を赤く染めてしまったんです
「手厳しいなぁー
‥今夜、どうだい?」
まさか鯛焼き屋さんから
そんな言葉でるとは
思いもしないじゃない?
:10/02/03 21:30 :D905i :s1isUj7A
#352 [笹]
だから驚いて
ついついどもってしまって‥
「おや、
照れた顔もかわいいねぇ」
なんて言われて
"あいよ"って鯛焼きを
わざわざこちら側にきて
渡してくれたわけです
「あ、ありがとうございます」
:10/02/03 21:31 :D905i :s1isUj7A
#353 [笹]
突然背筋が凍りついた
後ろから殺気
カラン‥コロン
壱助さんの下駄の音が
だんだんと大きくなる
:10/02/03 21:31 :D905i :s1isUj7A
#354 [笹]
「あぁ、では‥こっこれで」
「ちょいと、お話くらい‥」
鯛焼き屋さんに
腕を掴まれ引き寄せられた
カラン‥コロン
来る‥来るよぉーっ
鯛焼き屋さん離れてくださ‥
:10/02/03 21:31 :D905i :s1isUj7A
#355 [笹]
「‥鯛焼き屋さん、とやら」
低い声がこちらに向かって
刃を剥いた
「んあ?何だぁ?あんた」
たたたたっ鯛焼き屋さん!!
壱助さんに何て口のきき方っ
:10/02/03 21:32 :D905i :s1isUj7A
#356 [笹]
壱助さんの切れ長の目が
鯛焼き屋さんを捕らえた
「私の妻に‥
触れないで、いただきたい」
あたしを捕らえた手がぱっと離れ
鯛焼き屋さんの目が開ききり
口がだらしなく開いていた
「つつ‥妻?!
そりゃあ‥失敬し‥」
:10/02/03 21:33 :D905i :s1isUj7A
#357 [笹]
―‥ドカッ
壱助さんの拳が
勢いよく鯛焼き屋さんの
顔面に吹っ飛んできた
あたしの足元に倒れ込んだ
彼の鼻から垂れる赤い血
有 り 得 な い !!
:10/02/03 21:34 :D905i :s1isUj7A
#358 [笹]
「壱助さん何てこと‥
‥大丈夫ですか?」
"悪いのは俺の方だ"と
軽く笑って謝る鯛焼き屋さん
「壱助さん!!謝って下さい」
正反対にしれっとした顔で
そんな様子も見せない壱助さん
と言うか
まだいらいらしてる模様
眉間にしわが寄っていた
‥人に当たるなんて酷い
:10/02/03 21:34 :D905i :s1isUj7A
#359 [笹]
:
:
:
結局壱助さんは謝らず
あたしが代わりに謝って
鯛焼きをたくさん買って今
「ねぇ?伊代さん
あたし間違ってないですよね?!」
事情を話せばぶり返す熱
自然と声量も大きくなる
「まぁ、いきなり殴るのは
良くないねぇ‥」
呆れ顔で伊代が壱助を見つめる
:10/02/03 21:35 :D905i :s1isUj7A
#360 [笹]
「‥わからない人です、ね」
「ただ手を握っただけでしょう?
それだけで殴るなんて‥酷い!!」
明らかな温度差に
伊代はくすりと笑った
「手をあげるのは良くないけど‥
全く、わかりやすいねぇあんた」
:10/02/03 21:36 :D905i :s1isUj7A
#361 [笹]
「‥」
「香夜ちゃんも、
わかってやんなよぅ?」
わかってやれって‥
人を殴る気持ちなんて
あたしにはわかんないよ
何だか突然泣きたくなった
:10/02/03 21:36 :D905i :s1isUj7A
#362 [笹]
「妻に手出されちゃ‥
誰だって‥ねぇ?」
伊代が目で壱助に訴えると
"全くです、よ"と茶を啜る
そんなのはもう
耳に入らないくらい香夜はご立腹
:10/02/03 21:37 :D905i :s1isUj7A
#363 [笹]
「こりゃあ‥手強いです、ね」
涙目で伊代に訴える香夜を
横目で見つめて呟いた
「"妻"と言う言葉も
ご存知ないんですか、ね」
‥ぽつり呟き微笑んだ
:10/02/03 21:38 :D905i :s1isUj7A
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