浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#831 [笹]
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だんだんと遠くなる
あたしたちの距離
「え‥?あの‥」
見上げれば戸惑う男性
こんな痴話喧嘩に
巻き込まれてしまっては
当然の反応
:10/03/11 13:34 :D905i :dGcWPyzM
#832 [笹]
その男性は
年齢で言えば30才前半くらい
優しい雰囲気の‥
「ほぉう‥」
ぴくりと眉を上げ
品定めするように視線を送り
最後の一突きと言わんばかりに
:10/03/11 13:35 :D905i :dGcWPyzM
#833 [笹]
「その小娘は‥
人並み以下ですが、ね
実に自虐行為を好みます故
‥痛いのがお好きです、ぜ
見かけによらず破廉恥ですから
たっぷりと遊んで‥くだせぇ」
にこっと怪しく微笑み
あたしの隣の男性に告げた
:10/03/11 13:35 :D905i :dGcWPyzM
#834 [笹]
「な‥そんなことないっ!!」
顔を真っ赤にして
否定した先には二つの背中
寄り添う娘さん
壱助さんの下駄の音が
遠く遠く‥消えてった
上手く行かない‥
今日は厄日なのかもしれない
:10/03/11 13:36 :D905i :dGcWPyzM
#835 [笹]
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ちょいと、
意地が悪すぎた‥か
ぼうっと空を見上げれば
灰色に染まり光が遮られ
隣に座る娘
慣れないような化粧に
顔を白々とさせ
不釣り合いな紅が一層‥
:10/03/11 13:36 :D905i :dGcWPyzM
#836 [笹]
「壱助さん?」
貴女以外の娘に
名前を呼ばれるのは
あまり慣れていないもんで
‥居心地が悪い、
「何、か」
目配せすれば
いつの間にか縮まった距離
:10/03/11 13:37 :D905i :dGcWPyzM
#837 [笹]
欲しいものなど‥
ないんですが、ね
「"あの子"のこと‥
慕っていらっしゃるの?」
さぁ‥
今まで出逢った方々と
違いますからね、香夜さんは
:10/03/11 13:37 :D905i :dGcWPyzM
#838 [笹]
「さぁ、ね」
「それなら‥」
随分と積極的だ‥
華奢な手が此方の手を捕らえ
自らの胸元に添えた
「おや、おや」
「私を‥見て頂けます?」
:10/03/11 13:38 :D905i :dGcWPyzM
#839 [笹]
そのようにされても
何も‥
私の心は何処へやら
つまらぬ話です、よ
「そうです、ね
今夜は‥そうしましょう、か」
_
:10/03/11 13:38 :D905i :dGcWPyzM
#840 [笹]
空になった体が
娘の小さな体に覆い被さる
嬉しそうにそして恥じらい
睫を伏せて身を任せ
素直に倒れた朱色の着物
「ずっと‥夢でしたの」
この笑みは
私に向けられたものなのか
:10/03/11 13:39 :D905i :dGcWPyzM
#841 [笹]
はたまた‥
香夜さん、
貴女に勝ったという
嫌らしいもの‥なのか
何だか‥わかりゃしない
仕込んできたかと言うくらい
緩く結ばれた帯を
するりと解く
手慣れた自らの指に
この上ない嫌悪感を抱いた
:10/03/11 13:40 :D905i :dGcWPyzM
#842 [笹]
欲しいものなど
‥ないんですが、ね
触れた肌、濡れた吐息
何を頼りにすれば‥良いのか
強請る声、汚れた水音
貴女の透明感が身に沁みる
:10/03/11 13:40 :D905i :dGcWPyzM
#843 [笹]
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今宵は満月
隣で寝息を立てる娘に
伸ばした腕をするりと抜き
そのまま布団を抜け出した
雑に浴衣を羽織り
力強く帯を締める
体に染み着いたような香りを
かき消すかのように
背中を夜風に当てた
:10/03/11 13:41 :D905i :dGcWPyzM
#844 [笹]
「―‥、」
久々に煙管に手を伸ばし
全てを洗い流そうと
煙を体に取り込んで
‥帰ってこない、と来りゃぁ
"やられっちまった"‥か
得体の知れない感情を
煙に混ぜて満月を隠した
:10/03/11 13:42 :D905i :dGcWPyzM
#845 [笹]
一番に恨んでいるのは
‥己の身、ですがね
空中分解したそれを
未だ直視できないでいる
「貴女を‥
濁らせたく、ない故に」
どうにもこうにも
‥気付いてはならぬ思いが先回り
:10/03/11 13:44 :D905i :dGcWPyzM
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