浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#846 [笹]
:10/03/11 13:49 :D905i :dGcWPyzM
#847 [笹]
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「あの‥
ご迷惑をお掛けしてしまい
本当に申し訳ありませんでした」
額を畳にこすりつけ
深々とお詫びをした
しかし此処は
男性の住まいらしき所
‥やっぱりそんな
一筋縄ではいかないかな?
:10/03/11 13:50 :D905i :dGcWPyzM
#848 [笹]
壱助さんが
あんな破廉恥なこと言わなければ
はぁ‥。
頭に浮かぶ貴方の隣に
あの娘さんが寄り添って
少し‥不愉快なのです
:10/03/11 13:51 :D905i :dGcWPyzM
#849 [笹]
「頭を御上げください
そんな、お気になさらず‥」
見た目通り優しい方で
暖かくて柔らかい
目尻に出来た笑い皺が
人の良さを引き立てた
「本当に‥
あたしのこの性格のせいで」
:10/03/11 13:52 :D905i :dGcWPyzM
#850 [笹]
お詫びしようにも
壱助さんがそばにいないあたしは
無能で一銭も持ってない
ただ頭を下げるしかできないのだ
「これも何かの縁ですから‥」
初めて会った気がしない
其れほどの安心感
:10/03/11 13:52 :D905i :dGcWPyzM
#851 [笹]
「あたし‥香夜と申します!!
お金もないし、色気もないけど
お裁縫は得意なので‥
お着物の解れなど有りましたら
‥な、何なりと!!」
案の定
男性からはクスッと笑い声
本当にあたしって役立たず
俯き指で畳の網目をなぞった
:10/03/11 13:53 :D905i :dGcWPyzM
#852 [笹]
「自分は"幸太郎"と申します
年は‥香夜さんより
一回りくらい上です、たぶん
不器用なもんで‥
裁縫は苦手ですね」
柔らかい笑顔を浮かべた
一回りくらい上なら
お父さんと同じくらいかな‥
生きてたら‥、
幸太郎さんと同じくらい
:10/03/11 13:53 :D905i :dGcWPyzM
#853 [笹]
催眠術にかかったように
頭の中がぽーっとした
もう与えられることのない
父からの愛情を‥
今目の前に見てしまう
「今は、一人暮らしですが‥
自分には妻と娘が居ました。」
何故かその時胸が泣いた
:10/03/11 13:54 :D905i :dGcWPyzM
#854 [笹]
幸太郎の姿が
亡き父と重なってしまった
隠れていた寂しさが
奥の方から湧き上がる
「もう、十年も前ですか‥
三人で暮らしていた住まいが
‥火事に遭いまして
全焼でした、
真っ黒な炭になった木材が
ぼろぼろと崩れていく光景は
本当に‥見てられませんでした」
:10/03/11 13:54 :D905i :dGcWPyzM
#855 [笹]
遠くの過去が
最早思い出となってるのか
ほんのり浮かんだ悲しげな笑みが
胸を突き刺した
「自分は丁度出掛けてまして‥
帰ってきたら‥"それ"だけ。
逃げ切れなかった妻と娘は‥」
:10/03/11 13:55 :D905i :dGcWPyzM
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