浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#787 [笹]
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壱助さんは早起きだ
とんでもなく早起きだ
目が覚めたらいつも
着物をきっちり着付けて
正座をしてお茶を啜ってる
もちろん激痛を伴う
顔面平手打ちの目覚ましを
あたしに喰らわせてから‥
:10/03/08 17:28 :D905i :6zJg1U3A
#788 [笹]
だけど今日は‥
すっと目が覚めた
痛みはない。
春の柔らかな風が頬をくすぐった
「おはよ‥ございます」
:10/03/08 17:30 :D905i :6zJg1U3A
#789 [笹]
呂律の回りきらない
寝ぼけ眼でそう言った
珍しく着くずした着物
胡座をかいてぼうっとしてる
まさか‥寝起き?
「随分と‥早いもんだ」
:10/03/08 17:31 :D905i :6zJg1U3A
#790 [笹]
よく見ればまだ日は昇りかけ
太陽の光がこちらに差し込む
「あぁ‥うんと
何か目が覚めちゃって」
胸元を整え髪を結い直せば
どことなく‥
穏やかな表情の壱助さん
:10/03/08 17:31 :D905i :6zJg1U3A
#791 [笹]
「おや、おや」
眠そうなその目は
とろんと睫で覆われ
無防備なまでの唇に
あたしの胸が鳴いた
どうしてこうも‥
いちいち色気を振りまくのか
いつだってあたしの鼓動は
忙しなく遊ばれる
:10/03/08 17:32 :D905i :6zJg1U3A
#792 [笹]
「夢でも‥見ました、か」
「‥夢、あぁ‥うぅん」
誤魔化すのは無駄だと
言わんばかりに
こちらに向けられた鋭い視線
「い‥壱助さんこそ!!」
:10/03/08 17:32 :D905i :6zJg1U3A
#793 [笹]
壱助さんこそ何だと言うのかしら
あたしの口は‥もう
とろけそうなあたしの頭の中は
まだまだ目覚めない様子
「何、か」
にこっとつり上がった口元に
応じるように瞳が笑う
:10/03/08 17:33 :D905i :6zJg1U3A
#794 [笹]
壱助さんが‥わ、笑ってる
相変わらず美しい手で
膝の上に頬杖をついて
うっすら浮かべた笑みを
惜しげもなく向けられた
何を企んでるのかしら‥?
「え‥ええっと」
:10/03/08 17:33 :D905i :6zJg1U3A
#795 [笹]
残念ながら寝起きの頭は働かず
‥もとから
働かす頭もないけれど
「‥ゆ、夢!
見たんじゃないですか?!」
訳の分からぬ発言を
壱助さんは軽く
クスッと鼻であしらった
:10/03/08 17:34 :D905i :6zJg1U3A
#796 [笹]
"壱助さんこそ
夢見たんじゃないですか?!"
うん‥意味がわからない
「ゆ、め‥
そうですねぇ‥見ました、ね」
珍しくあたしの問いかけに
まともに答えた‥!!
おかしい‥怪しいわよ
:10/03/08 17:35 :D905i :6zJg1U3A
#797 [笹]
ゆっくり昇る光が
壱助さんの頬を照らした
透き通るような肌
もう、恐ろしいくらい‥
「どんな夢?」
前のめりになり
興味津々に目を輝かせてみた
だって壱助さんが
自分の内を語るなんて
あり得ないことだから
:10/03/08 17:35 :D905i :6zJg1U3A
#798 [笹]
「ほぉう‥気になります、か」
勢いで突き出した顔は
案外大胆で‥
春風に揺られて
壱助さんの香りも運ばれてきた
:10/03/08 17:36 :D905i :6zJg1U3A
#799 [笹]
意地悪そうに
視線で体を撫でられて
急に帯びてきた熱を
誤魔化そうとまばたきを多めに
"はい"と頷けば
満足げに笑った
:10/03/08 17:36 :D905i :6zJg1U3A
#800 [笹]
:
:
それから少々の沈黙
なかなか開かない口
え‥まさか
このまま言わないつもり?
らしいと言えばらしいけど‥
:10/03/08 17:37 :D905i :6zJg1U3A
#801 [笹]
「そうです、ねぇ」
「早く教えてくださいよぉ!!」
「香夜さんは‥どんな?」
正座をして急かすあたしに
余裕たっぷりにそう言った
話をそらすのが本当に上手い
:10/03/08 17:37 :D905i :6zJg1U3A
#802 [笹]
「‥言えません」
昨晩みた夢は壱助さんに‥
そんなこと
死んでも言いたくない!!
「私に逆らう、と?」
卑怯だ‥壱助さん
:10/03/08 17:38 :D905i :6zJg1U3A
#803 [笹]
「絶対絶対絶対!!
絶対言いませんっ!!」
勢いでそう吐き捨てて
畳を押し返し立ち上がった
くるりと背を向ければ
‥ガシッ
急に冷たい感覚が
手首を纏って
:10/03/08 17:38 :D905i :6zJg1U3A
#804 [笹]
‥グイッ
下にかかる力に負けて
情けなくも
ふらりと呆気なく崩れてしまった
「んわっ‥」
すとんと腰を落としたとこは
壱助さんの胡座の中
:10/03/08 17:39 :D905i :6zJg1U3A
#805 [笹]
これ‥もしかして
「これは、これは」
ぎゅうっと後ろから首を抱かれ
耳元に迫る低い声
これって‥
高鳴る胸を抑えようと
そっと呼吸をした
:10/03/08 17:39 :D905i :6zJg1U3A
#806 [笹]
「正夢です‥ね」
そう囁いた声が
電気になって頭に流れて
昨晩の夢と溶け合った‥
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:10/03/08 17:40 :D905i :6zJg1U3A
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