浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#423 []




「‥何で付いてくるんですかぁ」

結局付いてきた壱助さん
改め保護者さま

「"責任"ですから、ね」

下駄が立てる音は
明らかに不機嫌そうである

⏰:10/02/06 21:16 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#424 []
 
放たれる威圧感に
周りの人々も寄り付かず
町娘たちは
黙って壱助さんを目で追った


「別にそんな‥
ご飯頂くだけですよー」

「二人で来るなと‥
言われてお出でで?」

痛いところをつくものです

⏰:10/02/06 21:18 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#425 []
 
「‥風邪は?
もう治ったんですか?」

「‥ごほごほ
まだ‥です、が」


変な演技しないでくださいよ
棒読みの咳なんて
初めて聞きましたよ、もう

「だったら
寝てなくちゃだめです!!」

立ち止まって後ろを向き
訴えてみても‥無駄

⏰:10/02/06 21:18 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#426 []
 
「あんまり茂七さんに
突っかからないでくださいよ?」

せっかくの楽しみが‥
仕方なく溜め息を付き
前を向いた瞬間だった。


「んぎゃっ!!」

後ろからど突かれて
顔面から地面に突っ込み
走る激痛、土の味

⏰:10/02/06 21:19 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#427 []
 
言うまでもなく
犯人は壱助さんです

「風邪を引いてます故‥
ちょいと、意識が朦朧と‥ねぇ」

鋭い切れ長の目が見下ろす
行かないでほしいなら
素直に言えばいいのに‥

体がいくつあっても足りない位
それでもって
よく耐えられるなと自讃する

⏰:10/02/06 21:19 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#428 []
 
「香夜さん?!大丈夫ですかい?」

心配そうな面持ちで
駆けつけてくれたのは
茂七さんだった


‥ちょっと、間が悪いです

「あぁ‥大丈夫ですよぉーう」

おどけながら立ち上がり
着物の埃をはらった

⏰:10/02/06 21:20 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#429 []
 
"やだー恥ずかしいなー"なんて
へらへらしてるのは

どうやら場違いだったみたい


「‥女性に何てことするんだ!!」

‥茂七さんっ命知らずっ!!

「ほぉう‥」

少し笑みを浮かべて目を細める
逆鱗に触れた合図です

⏰:10/02/06 21:21 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#430 []
 

壱助さんは絶対に
茂七さんみたいな‥

こういう熱い人が嫌いだと思う



‥の前に、男が嫌いだと思う。

⏰:10/02/06 21:21 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#431 []




「えっと‥
此方が昨日話した茂七さん」

目の前に座る彼を紹介
茂七さんは間が悪そうに
軽く会釈をした

そして‥
隣に座る威厳ある父(仮)
やはり茶を啜る父(仮)

⏰:10/02/06 21:22 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#432 []
 
「それで‥此方が‥」

「‥香夜の兄、です」

あ‥兄と来ましたか?!
まぁ夫とかよりはましだけど

兄‥はぁ、
あたしの兄にしては美しすぎる

「え、ちょっと‥壱助さ‥」

「"お兄様"です、よ」

いつもより張った声が
ずしりと重くのし掛かる

⏰:10/02/06 21:23 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#433 []
 
「お兄様でいらっしゃいましたか
これは誠に無礼な事を‥」

深々と頭を下げる茂七さん

‥残念ながら
お兄様じゃないんですぅ

「いえ、いえ」

‥この雰囲気で
一体何を話すのか

⏰:10/02/06 21:23 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#434 []



「香夜さんは今お幾つで?」

カチャカチャ

「十八ですよっ」

ズルズル

「いやー一番美しい時だぁ!!」

カツカツ

「やだなぁーっ
そんな事ないですってー」

コツコツ

⏰:10/02/06 21:24 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#435 []
 
ねぇわざとでしょう?
ねぇわざとなんでしょう?

その音!!
食事の時なんて
あたしが音立てると
五月蠅いって怒るじゃない‥


「いち‥じゃない、お兄様?」

「何、か」

「もう少し‥」

⏰:10/02/06 21:25 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#436 []
 
「あぁ、
香夜は本当に良い妹でして‥
あれやこれやとお声が
良く掛かるんですが、ねぇ」

口角が上がった
しかも饒舌
声掛かってるのは貴方でしょ

「もう心に決めた者が
‥居るそうですぜ?」

"ねぇ"と横目で訴え
足をぐいっと踏みにじられ
強要される同意

⏰:10/02/06 21:26 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#437 []
 
「香夜さん‥そうなんですかい?」

茂七さんの見開いた目が
何とも印象的で

「ふぇっ?!
あぁ‥えっと‥まぁ‥うぅん」

語尾を弱めれば
潰され行く足の指

「ゔ‥い、居ますぅ!!!」

もうヤケだ
箸を握りしめて声を張る

折角、いい出会いだと思ったのに
あたし一生嫁に行けないのか‥

⏰:10/02/06 21:27 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#438 []



結局威圧感に負け
大したお話も出来ず終い

「ご馳走様でした
何か、空気悪くなってしまって
申し訳なかったです‥」

頭が上がりませんよ
お兄様‥鬼ぃ様。はは

しかし茂七さんの返事は
予想外だった

⏰:10/02/06 21:28 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#439 []
 
「いやぁそんなそんな!!
お兄様にも早速ご挨拶出来まして
‥これからが楽しみですね!!」

がははとまた笑い
あたしの肩をバシバシ叩く

これから?
‥あたし一応さっき
心に決めた人がいるって‥

⏰:10/02/06 21:28 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#440 []
 
「こんな別嬪さんと
恋仲になれるなんて
俺も運がいいなぁ!!」

ほ?
何を勘違いしてるのか
どこまで前向きなのか


「とんだ勘違い野郎です、ね」


背を向けてぽつり呟いたのは
もちろんお兄(鬼)様。

⏰:10/02/06 21:29 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#441 []
 
刀で一突きするように
躊躇なく毒を吐く
その度ひやひやさせられるのは
言うまでもない


「さ、帰りますよ香夜さん」

腕を掴むでなく
ぎゅっとあたしの手を握りしめ
思い切り引き寄せられた

⏰:10/02/06 21:29 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#442 []
 
「‥?」

ぽかんと口をだらしなく開けた
茂七さんをよそ目に


壱助さんの唇が
あたしの首筋に触れた

「ちょちょちょいっ!!!
お‥お兄様何を‥?!」

わけわかりません
状況が読めません

⏰:10/02/06 21:30 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#443 []
 
「‥"壱助さん"です、よ」

「え‥お兄様じゃあ」

目をぱちくりさせて
珍しい物を見るような茂七さん


こんな変な所見られるなんて‥
恥ずかしすぎる!!

⏰:10/02/06 21:30 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#444 []
 
血液が体を
何度も何度も巡るのがわかる
勢いの良い鼓動が帯びる熱


「‥妻です、よ
さぁて、帰ったら直ぐに
此の火照った体を頂こう、か」

首筋を一舐め
生暖かい感覚に支配され
足の力が抜けそうだ

「なな‥なっ」

顔を真っ赤にした茂七さんは
嵐のように目の前から去った

⏰:10/02/06 21:31 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


#445 []
 

もう‥もう‥もう!!!


「壱助さんのすけべぇえぇえ!!!」


「おや、おや
威勢が良い妹です、ね」


破廉恥なクセに美しいから
結局、憎めない訳ですが‥

⏰:10/02/06 21:32 📱:D905i 🆔:uaVNeT2k


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