浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#763 [笹]
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春になって
辺りの木々が鮮やかになる
新芽が生えて鶯が鳴く
暖かな空気と
鼻をくすぐる梅の香り
「‥香夜さん」
いろいろあったけど
壱助さんとは
一応仲良くやってる‥つもり
:10/02/26 16:21 :D905i :ABxgeLMY
#764 [笹]
相変わらず
意地悪してくるけど‥
「何ですか?」
突拍子もないことを言う
何を考えてるのかは
未だによくわからない
「行きます、よ」
とりあえず
肝心なところを言わないのが
壱助さん流なんだと思う
:10/02/26 16:22 :D905i :ABxgeLMY
#765 [笹]
「行くって‥何処へ?」
そんなあたしの質問には
耳も傾けず
流れるような細い指が
腕に絡まる
どきっとしてしまう
恐ろしいほどの貴方の色気
:10/02/26 16:23 :D905i :ABxgeLMY
#766 [笹]
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怒ってるわけじゃないみたい
‥売られることはなさそう
いつもよりゆっくりと
下駄の音を緩くして
艶容な口元が柔らかい
だからと言って
笑ってるわけでもなく
いつもの仏頂面
:10/02/26 16:24 :D905i :ABxgeLMY
#767 [笹]
「もう春ですねぇー」
小鳥のさえずりに耳を傾ける
「えぇ‥そのようです、ね」
春が嫌いなのか何なのか
ちっとも嬉しくなさそう
:10/02/26 16:24 :D905i :ABxgeLMY
#768 [笹]
「壱助さんは
四季で一番いつが好きですか?」
そう問えば
横目でちらり此方を覗く
「‥貴女は?」
繋ぎ目から伝わる温かさ
春はさすがに
冷え性も治るのかな?
:10/02/26 16:25 :D905i :ABxgeLMY
#769 [笹]
「あたしは春が好きです!!」
だから今こうして
外を歩いているのが楽しい
「‥ほぉう
それはまた‥何、故?」
珍しく壱助さんが
あたしに興味をしめしてる
:10/02/26 16:25 :D905i :ABxgeLMY
#770 [笹]
春だから?暖かいから?
そんなことが理由なら
壱助さんはとても単純な事になる
「ぽかぽかして暖かいし、
ほら!小鳥のさえずりって
聞くと何だか幸せになるし!!
‥あとは、お花が綺麗っ」
「‥へぇ」
:10/02/26 16:26 :D905i :ABxgeLMY
#771 [笹]
‥自分から聞いておいて
そりゃぁないよ‥壱助さん
いつもと同じ無関心な声が
たった一言そう告げる
「で、壱助さんは?」
少し歩幅を大きくして
顔を覗き込む
:10/02/26 16:26 :D905i :ABxgeLMY
#772 [笹]
「ご存知ですかい?」
「‥何を?」
「春の陽気にさそわれて
動物たちが活動を、始める」
「だからいいんですよ春!!
賑やかじゃないですかぁっ」
「ついでに‥変質者も、ね」
:10/02/26 16:26 :D905i :ABxgeLMY
#773 [笹]
つり上がった口元と
冷たい視線が訴えた
「あたしの何処がっ‥
変質者なんですかぁっ?!」
「おや、おや
わからないとは‥可哀想な方、だ」
吐き捨てた言葉がぐさり
意地悪!意地悪ーっ!
:10/02/26 16:27 :D905i :ABxgeLMY
#774 [笹]
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もうだいぶ歩いて街から外れた
人がめっきりいなくなり
真っ青な空が一面に広がる
「んぅー‥」
ぷうっと頬を膨らませる
正直歩き疲れたし
何処へ向かってるかもわかんない
:10/02/26 16:28 :D905i :ABxgeLMY
#775 [笹]
ただただ手を引かれる
少しだけ心細い
「‥」
「んわっ!!」
急に壱助さんの足が止まり
背中に顔が埋まった
鼻‥痛い
:10/02/26 16:28 :D905i :ABxgeLMY
#776 [笹]
「急に止まんないでくださ‥」
―‥ガンッ!!!
目の前の鮮やかな緑が歪み
一気に真っ暗になった
:10/02/26 16:28 :D905i :ABxgeLMY
#777 [笹]
:
:
ふわり鼻をくすぐる
体の中が色づくような
華やかな梅の香り
「痛たた‥ったぁ‥あぁ?!」
頭を抑えながら体を起こせば
一面に広がる梅の花
:10/02/26 16:29 :D905i :ABxgeLMY
#778 [笹]
柔らかな赤い花
さわやかな白い花
愛らしい桃色の花
‥天国?
そう疑ってしまうほど
こんな景色‥見たことない
:10/02/26 16:29 :D905i :ABxgeLMY
#779 [笹]
「‥石頭」
「へ?」
隣から聞こえたその声は
不機嫌そうな壱助さん
「ちょいと踵が‥
痺れてしまいやした、よ」
胡座をかいて
右の踵を軽くさすりながら
呆れたようなため息を漏らす
:10/02/26 16:30 :D905i :ABxgeLMY
#780 [笹]
ってか‥踵って
踵落とししたんかいっ!!!
どうりで頭が
割れそうに痛むわけだ
「壱助さん‥此処‥」
いつもならそこで
"酷ーい!!"なんてわめくのに
不思議とそんな思いが
この景色の中に吸い込まれていく
:10/02/26 16:30 :D905i :ABxgeLMY
#781 [笹]
「冬が‥好きでしたが、ね」
長い睫を伏せて
膝に落ちた花びらを愛でる
なんだか一つの作品みたいに
壱助さんは
こんな素敵な空間に
あっという間に溶け込んでしまう
:10/02/26 16:31 :D905i :ABxgeLMY
#782 [笹]
「今は、春‥ですかね」
「春‥春やっぱりいいですよね!!」
初めて意見が合った気がする
春の力は素晴らしい
:10/02/26 16:31 :D905i :ABxgeLMY
#783 [笹]
「しかし、そのうち‥」
純白の指で摘んだ
真っ赤な花びらをじっと眺めて
「夏が好きに‥なります、よ」
ふっと息を吹きかけると
踊るように舞った
‥―梅の香りに誘われて
:10/02/26 16:31 :D905i :ABxgeLMY
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