浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#631 []
 
やっと心配事も
‥無くなりました、ね

"愁眉を開く"とでも言いましょう

心配事‥と言うほどの物でも
ないような気もしますが


分かりやすい上に
‥鈍い、ときた

今後が最大の心配事です、ね

⏰:10/02/15 20:59 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#632 []



久しぶりの宿
畳の匂いに囲炉裏の暖かさ
壱助さんがお茶を啜る音

何だか妙に嬉しくて
落ち着いていられない

「今後とも‥
よろしくお願いいたします」

額を畳にこすりつけ
深く頭を下げた

⏰:10/02/15 21:00 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#633 []
 
「‥自分のした事を
お分かりでお出でで?」

湯飲みを置き
こちらに近付く着物が擦れる音


お仕置き‥か

まぁ仕方ないよね
これだけお世話になった人に
置き手紙だけ残して
姿を消したんだもの

⏰:10/02/15 21:01 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#634 []
 

「頭を‥上げて下さい、よ」


どんな形相をしてるのか‥

目があった瞬間
その目力だけで殺されそうだ

⏰:10/02/15 21:02 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#635 []



ごくりと唾を飲み
恐る恐る顔をあげれば
思いの外、穏やかな‥

と言うか
いつもと変わらぬ仏頂面


「あの‥えーっと‥」

目が泳ぐとはこのことですね

⏰:10/02/15 21:02 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#636 []
 
お顔を直視できませぬ
いや、でも
美しいお顔‥拝見したいかも

あれやこれやと
頭の中を駆け巡り
一週間の距離に戸惑う


「‥香夜さん」

⏰:10/02/15 21:03 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#637 []
 
首筋を這う冷たい手

お仕置き‥
コッチのお仕置きですか?

それとも
首をちょいと‥のアレですか?


「こ‥心の準備が‥」

⏰:10/02/15 21:03 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#638 []
 
何時だって壱助さんは
あたしの予想通りには行かない

‥期待には応えてくれるけど


するりとソレは首筋を通り抜け

「壱助‥さん?」

ぎゅうっと抱き寄せられた

⏰:10/02/15 21:04 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#639 []
 
不安定になり
壱助さんに体を預ける

この胸板、薄く見せておいて
包み込むように広い

あったかい‥


壱助さんの傍は
本当に落ち着くのだ

⏰:10/02/15 21:05 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#640 []
 
「香夜さん‥あんただけだ」

「へ‥?」

顔を首元に埋め
低い声が体に響いた

ぎゅうっと力を込めて
少し苦しいくらいに
強く抱きしめられて

今までにないくらい
こんなに誰かに求められたのは
初めてなのかもしれない

⏰:10/02/15 21:05 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#641 []
 
目の奥が熱くなる


この言葉の意味が
あたしの思う意味じゃなくても
がっかりしない

むしろ気にならない

言葉以上に伝わる温もりを
あたしは信じたいです

⏰:10/02/15 21:06 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#642 []



しばらく動かず何も言わず
聞こえるのは
整った壱助さんの呼吸と
自分の忙しない鼓動

どうしたらその呼吸が
乱れるますか?
どうしたら頬を赤く染めますか?

仕様もないことばかり
最近では考えてしまうの

⏰:10/02/15 21:06 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#643 []
 
「壱助さん‥?」

もしかしたら
寝ているのかもしれない

‥それくらい静かで

「あの、
壱助さん‥あたしの事‥」

「香夜さん‥」

「は‥はい」

⏰:10/02/15 21:07 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#644 []
 
さっきから
まともに会話ができていない

全てが何処かぎこちないの


「あんただけだ‥」

「壱助さん‥それは‥」

「こんなに、
子供じみた事をするのは‥」

「子供っ‥?」

⏰:10/02/15 21:08 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#645 []
 
やっぱり
あたしの予想通りにはいかない

ぐいぐいと力が強まれば
いつの間にか
呼吸を乱す原因になり


「壱助さ‥くる、苦ひいっ」

「本当に貴女と言う人は‥」

⏰:10/02/15 21:08 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#646 []
 
その内背骨が
粉々になりそうなほど

「痛い‥いたっ‥
今ぼきって!ぼきっていった!!」

「"所有物"と言う分際で‥
此方が緩く扱いだしたのを
良いことに‥ねぇ」

「壱助さん!!ぐぇっ
本当に‥本当に砕け‥っう」

⏰:10/02/15 21:09 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#647 []
 
めりめりと
背中からひしめく音

今回ばかりは
やっぱり一本くらい犠牲に‥


「随分と、度胸がお有りで‥」


それなのに
耳元で囁く色っぽい声に
全身が熱を帯びてしまう

⏰:10/02/15 21:09 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#648 []
 
「本当に‥ごめんなさ‥うぃ
もう‥こんなっ‥んぐ!!」

この勢いに乗って
内蔵が破裂しそうな気もしてくる

「それとも何ですか‥
余程、自虐行為がお好みで?」

何故でしょう壱助さん
人を戒めてる時でさえ
冷静さは保ちつつ
それでいて色めいて

⏰:10/02/15 21:10 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#649 []
 
もはやその冷静さは‥冷酷。


「もう二度と‥離れませんーっ!!
だから許してくだ‥」


すると呆気ないほどに
するりと手放され
みっともなくそのまま
倒れ込んだ

多少背中が痛むものの
‥背骨さん健在です!!

⏰:10/02/15 21:10 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#650 []
 
「言いました、ね?」

「‥え?」


呼吸を整え少し帯を緩めつつ
体を無理やり起こせば

何事もなかったかのように
綺麗に正座している壱助さん

⏰:10/02/15 21:11 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#651 []
 
「二度と離れない、と」

にやりとつり上がった
艶容な口元

「‥言いましたけど」

だから何ですかと言う話である


不思議そうに見つめれば
満足そうに茶を啜った

⏰:10/02/15 21:11 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#652 []
 

そしてまた貴方は呟いた


"あんただけだ。"‥と


_

⏰:10/02/15 21:12 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


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