浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#248 []
 
「狸寝入りなど無駄、ですよ」

お腹を抱えて縮こまるあたしに
壱助さんはそう吐き捨てた



思わずむせ返るほど
どうやら強く蹴られたらしい

⏰:10/01/31 19:18 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#249 []
 
「最後くらい‥最後くらい
優しくしてくださいよ!!!」

顔を上げて泣きわめく
しかし目の前には壱助さんだけ
あのお婆さんはいない


しかも何か綺麗な色の
布を抱えている

⏰:10/01/31 19:18 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#250 []
 
「最後‥なら、ね」

珍しく人らしい困った顔で
クスッと含み笑い

「‥?」


「最後なら、優しくします、よ
しかし‥

誰が最後と‥言いました?」

⏰:10/01/31 19:19 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#251 []
 
その瞬間目の前が
山吹の鮮やかな色に染まった


「‥着物‥きれい」


息をのむほど綺麗な色の生地に
赤い花の刺繍がされていた

⏰:10/01/31 19:19 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#252 []
 
「でも‥でも壱助さん
あたしを‥売るんでしょう?!」

そういい終わる前に
"馬、鹿"と口元を緩ませて
それをあたしに差し出した


「一ヶ月、経ったので‥
"所有物"から昇格、ですよ」

⏰:10/01/31 19:20 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#253 []
 
「‥壱助さん
あたしのために‥?」

睫毛を伏せただけで
返事はなかった

だけどわかったよ
"早く着てくだせぇ"と
頭をぽんと撫でてくれた

一ヶ月たてば変わりますか?
壱助さんの声が
柔らかく感じたの

⏰:10/01/31 19:21 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#254 []



「丁度良い‥ようですね」

その着物は袖の長さも
丈の長さも胸周りも腰周りも
全部がぴったりで

そこでやっと
"あぁそう言うことか"って
あのお婆さんを思い出す

と同時に
壱助さんを疑った自分を恥じる

⏰:10/01/31 19:24 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#255 []
 
「壱助さん‥
あ、ありがとう‥ございます」

これでもかと言うくらい
頭を深く下げた


「本当に‥疑い深い人です、よ」

そしてまたお茶を啜る
いつもの壱助さん

⏰:10/01/31 19:26 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#256 []
 
「‥ごめんなさい」

「何故、謝る」

この人は大人だと思う
あたしの知ってる大人なんかより
ずっとずっと大人だ。

「‥ごめんなさい。」

「売り飛ばされたいです、か」

「‥い、嫌です」

⏰:10/01/31 19:29 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


#257 []
 
「壱助さんっあたし‥!!」

何処までも貴方は
期待を裏切りやしない。

「‥約束しましょう。」

何処までも貴方は優しくて


「貴女を独りにしない、と」


頭があがらないのです。

⏰:10/01/31 19:33 📱:D905i 🆔:HYkp9PyY


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