浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#480 [笹]
「どうしてお前はいつもいつも!!」
バシンッバシンッ
「言うことが聞けないんだい!」
ドガッ
「この役立たず!!」
「‥ッゲホッ、かぁさ‥ん」
「お前なんかねぇ‥お前なんか」
:10/02/08 20:16 :D905i :hMEINdHE
#481 [笹]
足が震えた
何とも言えない感情が
わぁっとこみ上げてくる
悔しさに唇を噛み締め
拳を握った
自然とそちらへ足が向かう
「香夜さん‥」
行くなと壱助さんが
あたしの着物の袖を引いた
:10/02/08 20:17 :D905i :hMEINdHE
#482 [笹]
「‥死んじゃうかもしれない」
そう言って振り払い
声のするほうへ足を進めた
:10/02/08 20:17 :D905i :hMEINdHE
#483 [笹]
:
:
そこには物凄い形相をした
母親らしき女の人と
この雨の中
裸でうずくまる少年
少年の体は
いたるところに痣ができ
歪に腫れ上がった跡や
刃物で切られたような
鋭い傷が無数にあった
母親に思い切りぶたれ
蹴飛ばされ‥
:10/02/08 20:18 :D905i :hMEINdHE
#484 [笹]
昔の自分と少年を重ねた
「‥やめ‥なさいよ」
憤りに得体の知れない
幼い頃の感情が湧き上がる
「お前なんか
生まれてこなければよかった!!」
ドガッ
「ごめ‥なさい、ゲホッ‥んぐ」
少年の口から吐き出された
真っ赤な血が雨に消える
:10/02/08 20:18 :D905i :hMEINdHE
#485 [笹]
声を張ろうと
大きく息をすると
壱助さんがあたしの腕を掴んだ
「‥帰ります、よ」
「何言ってるんですか‥?
このままじゃあの子‥」
目の奥から今にも
熱いものが溢れそうで
今止めなかったら
この子は死ぬかもしれない
今あたしが助けなきゃ‥
:10/02/08 20:18 :D905i :hMEINdHE
#486 [笹]
「貴女に‥何ができるんで?」
いつになく真剣な眼差しが
訴えかける
:10/02/08 20:19 :D905i :hMEINdHE
#487 [笹]
「何って‥
助けるんですあの子を!!」
手を振り払おうとしても
壱助さんの手は
掴んで離さなかった
ひどい‥壱助さん
「壱助さんにはわからないんです
親に暴力を振るわれて
黙って耐えて‥」
:10/02/08 20:19 :D905i :hMEINdHE
#488 [笹]
不安定な言葉を
無理に立て直しながら
何度も何度も振り払おうとした
「助けた所で‥
彼は、幸せになれますかい?」
悲しそうな壱助さんの目が
捕らえて離さない
幸せ‥?
幸せに決まってるじゃない
:10/02/08 20:20 :D905i :hMEINdHE
#489 [笹]
「彼を助けて、その後
貴女が養うとでも‥?」
「それは‥」
「見知らぬ土地に放されても
‥彼は死に至るでしょう。
貴女は、彼の家庭の事情を
全てご存知なんですかい?
彼はあんな母親でも、
慕っているかも‥しれない」
何も言い返せない自分に
腹が立った
:10/02/08 20:21 :D905i :hMEINdHE
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