浮 き 世 の 諸 事 情 。
最新 最初 🆕
#539 []


「お帰りなさいっ」

窓から乗り出すような勢いで
雪が降るのを待ちわびていると
壱助さんが帰ってきた


「今日、雪降りますかねぇ?」

別に雪は珍しくない
だけど真っ白に染められた街に
なんだかとてもわくわくして
何時になっても
目を輝かせてしまうのだ

⏰:10/02/10 16:48 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#540 []
 
「‥さぁ、ね」

後ろで聞こえた素っ気ない声に
着物と肌がすれる音が続く


「‥んう」

また黙って着替えて‥
着替えるときは声かけてって
あれだけ言ってるのに

気付かぬふりをして
じっと空とにらめっこ

⏰:10/02/10 16:49 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#541 []
 
―‥だけど沈黙となれば
どこかむず痒い


「外、寒かったですか?」

「そりゃあ‥ねぇ」


今度は畳と着物がすれる音
どうやら着替え終わったらしい

⏰:10/02/10 16:50 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#542 []
 
流石に手が冷えてきた
外へ向けた息も白い


「囲炉裏があると
やっぱり冬はいいですよねぇ」

なーんて
あたしにとっては珍しかった
囲炉裏に暖かさを求めて
振り返ってみたものの‥

⏰:10/02/10 16:50 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#543 []
 
「壱助さん!!」

どうしてそうも貴方は‥

囲炉裏の前に立ちはだかる
壱助さんの背中


「ちゃ‥ちゃんと袖!!」


時々よくわかんない所で
壱助さんは半裸になりたがる
‥露出狂だ。

⏰:10/02/10 16:51 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#544 []
 
そして何度見ても
この美しさには慣れない

雪みたいに真っ白だから
囲炉裏に近づいたら
溶けちゃうんじゃないかって
馬鹿みたいな心配をするほど


一気に火照った顔を
ぷいっと背けて
また空に目を向けた


雪‥やっぱり降らないかなぁ

⏰:10/02/10 16:51 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#545 []



結局"まぁ、まぁ"と言って
言うことを聞いてくれず‥


って言うか
何が"まぁ、まぁ"よ!!

あたしだって暖まりたいのにぃ‥

⏰:10/02/10 16:52 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#546 []
 
「雪が降りそうだって言うのに
何でわざわざ‥
着物下ろすんですかぁ?」

少し乱暴に唇を尖らせて
後ろにある背中に訴えると


「いいじゃあ、ないですか」

と、満足げな声が返ってきた

⏰:10/02/10 16:53 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#547 []
 
ちらりと少し顔を向けて
横目で様子をうかがえば
胡座をかいた片膝に
頬杖を付いてくつろいでいる


あったかそう‥
行きたい‥けど
そんな半裸の男の人の
隣になんか並べない!と言う

‥生娘の葛藤。


ただただ時間が過ぎ
体が冷え行くだけだった

⏰:10/02/10 16:53 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


#548 []



「‥へっくしゅん!!」


このままじゃ風邪引く‥
冷えた手を口元の前で握りしめ
はぁーっと息を吹きかける


「やれ、やれ」

⏰:10/02/10 16:54 📱:D905i 🆔:yQPzNAIc


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194