浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#73 []
 
あぁ‥もう
人前で泣かないと決めたのに。


「一つだけ、忘れなければ‥」

懸命に涙を拭ってみても
指の隙間から溢れ出る

何が悲しいの‥?
何が辛いの‥?
どうして‥こんなに‥。

「父上に救われた、その命
無駄な物に‥してはいけない」

⏰:10/01/27 17:11 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#74 []
 
壱助さんは
今どんな顔をしてるのかな‥
どんな思いで、どんな表情で‥

「死のう、なんざぁ‥
もう‥これっきりに、」

壱助さんの冷たい手が
あたしの手首を掴む

「‥っ」

恥ずかしくて堪らない
お父さんに、申し訳ない

「‥しましょう、か」

⏰:10/01/27 17:16 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#75 []
 
手首の腫れ上がった傷口を
細い指が撫でる

お父さん‥お父さん
‥ごめんなさい

「う‥っ‥グズ」

必死に声を殺しても
ただただ辛いだけで、虚しくて
悔しいだけだった

⏰:10/01/27 17:20 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#76 []
 
「壱助‥ッさん‥グズ」

「‥何か、」

落ち着いた声がどこか懐かしくて

「死にた‥くな‥ッ‥で」

本当は死にたくなんかない。

あの時お父さんに
生を訴えた時と同じ

死にたくなんかないんだ‥

⏰:10/01/27 17:23 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#77 []
 
「よし、よし」

ぽん、とぎこちなく
あたしの頭を撫でた手に
救われた気がした。

その瞬間に
子供のように声を上げて泣いた


壱助さんの懐に顔を埋めて
何年分もの涙を流した。

⏰:10/01/27 17:26 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#78 []




「おや、おや」


窓から差し込む
満月の優しすぎる光が照らす


「子供です、ね‥香夜さんは」


泣き疲れたあたしを抱いて
壱助さんがクスッと笑った。

⏰:10/01/27 17:29 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#79 [笹]
第二章 【救われて】

威勢のいい
香夜ちゃんの辛い過去

普段は興味なんて無さそうなのに
いきなり饒舌になる壱助さん。
なんだ、喋れるんじゃない(笑)

出会ったばかりでも
誰かを救えてしまうんだから、
言葉の力は偉大ですね。
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/01/27 17:42 📱:D905i 🆔:.cEN1Iy.


#80 [笹]
 
一週間もすりゃぁ、
人の性格も良くわかるもので


"捨て猫"はと言うと
泣くは、喚くは‥
かと思えば、眠りにつき

何かと‥忙しない猫でして、ね

それに加えて、頑固ときた
"言うは易いが行うは難い"
頑固者には、身に滲みる言葉です

⏰:10/01/28 13:15 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#81 []




ある晴れた日の事である。

「あら、壱助さんじゃないかぁ
相変わらず‥色男だねぇ」

団子屋の腰掛けに座ろうとすると
そこの女将がやって来た。

「あぁ‥伊代さん
ご無沙汰しておりました、ね」

壱助は律儀に正座をして頭を下げた

⏰:10/01/28 13:20 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#82 []
 
「聞いたよー?壱助さんよぉ、
最近若い子‥、
連れて歩いてるそうじゃないか」

伊代はお茶を差し出し
興味深い様子で身を乗り出した

「只の‥"捨て猫"ですよ」

「そんなぁ、隠さなくたって‥」

クスクスと笑って
壱助の肩をポンと叩く

⏰:10/01/28 13:25 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


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