浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#898 [笹]
「‥香夜さん」
少し引っ掻いただけで
血が滲みはじめて
久しぶりの感覚にぞっとした
真っ赤な液体が
爪の間をすり抜けて滲みた
:10/03/18 15:48 :D905i :WpH3kYYs
#899 [笹]
「あたし‥どうかしてる
どうかしてる‥よ、
もう‥消えちゃいた‥」
『「‥香夜っ!!」』
はっとした
また父親と重なった声
:10/03/18 15:48 :D905i :WpH3kYYs
#900 [笹]
壱助さんが声をあげた
思わず顔を見上げれば
どこかそれは悲しそうな顔で
しわの寄った眉間
鋭いのに優しい目
「契りを交わしたはず、ですよ
そのお命‥無駄にはしない、と」
:10/03/18 15:49 :D905i :WpH3kYYs
#901 [笹]
今あたしを叱ってくれるのは
貴方だけで‥
真剣に向き合ってくれる
その瞳で包んで
「本当に‥世話が焼ける」
「い‥ち助さん」
流れるような細い指で
手首を包み込まれれば
どくどくと生命が鳴いてる
:10/03/18 15:49 :D905i :WpH3kYYs
#902 [笹]
生きてる心地がした
「何処へ行こうが
貴方の勝手ですが、ね‥」
深いため息を此方に向けて
そう自由にされてしまうと
どうしたらいいかわからなくてね
何処へも行きたくなくなるんです
:10/03/18 15:49 :D905i :WpH3kYYs
#903 [笹]
:
:
「壱助さん‥
迷惑じゃないんですか?」
「何、が」
「あたしの世話とか‥」
もじもじと不安げに
そう呟いて見上げた
:10/03/18 15:52 :D905i :WpH3kYYs
#904 [笹]
「そう‥ですねぇ」
ちょいと深刻に考えすぎるのが
貴女の性格
「やっぱり迷惑‥ですよね」
肩をぐったり落として
貴女が落ち込めば
辺りは薄暗くなって渦を巻く
しかし、微笑ましくも思う
:10/03/18 15:55 :D905i :WpH3kYYs
#905 [笹]
「私に迷惑をかけるのは
まぁ‥構いませんが、ねぇ」
茶を入れれば湯気がたつ
まだ部屋は冷えて
桜の蕾が桃色に染まる
「ちょいとばかり‥
面倒な方が、扱い甲斐がある」
鼻で軽くあしらえば
馬鹿にされてる事にも気付かず
真っ直ぐな瞳が此方を向く
:10/03/18 15:59 :D905i :WpH3kYYs
#906 [笹]
「さて、どう‥しますか」
意地悪気に問えば
少し躊躇って唇を浮つかせ
「此処だ、あたしの居場所」
自らに言い聞かせるように
ぽつり呟いて頷いた
:10/03/18 16:03 :D905i :WpH3kYYs
#907 [笹]
それでも離れると言ったなら
‥止めていた、でしょうね
不安に握った拳を
柔らかく解いて立ち上がる
「壱助さん‥何処に?」
「丁重に‥お断りしてきましょう」
本音を言えば‥
私だけの貴女にしたいんですが
:10/03/18 16:06 :D905i :WpH3kYYs
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