浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#82 []
 
「聞いたよー?壱助さんよぉ、
最近若い子‥、
連れて歩いてるそうじゃないか」

伊代はお茶を差し出し
興味深い様子で身を乗り出した

「只の‥"捨て猫"ですよ」

「そんなぁ、隠さなくたって‥」

クスクスと笑って
壱助の肩をポンと叩く

⏰:10/01/28 13:25 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#83 []
 
「紹介しておくれよー
今日は連れてないのかい?」

「えぇ‥、
自立するそうです、よ」

「自立?」

伊代は不思議そうに首を傾げる

話好きな伊代は
話に花を咲かせる"花咲女将"
愛想もいいもんだから
此処はいつでも大繁盛

⏰:10/01/28 13:30 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#84 []
 
「"遊女になる"‥と、ね」

うっすら笑って茶を啜り
壱助は団子を手に取った

「ゆ‥遊女って‥何でまた」


伊代は緩んだ顔を引き締め
唾をごくりと飲んだ

⏰:10/01/28 13:33 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#85 []




こうなったのも、つい今朝の事。

『もういいです!
‥あたし
花街に行って遊女になります!
それで沢山稼いで
壱助さん見返してやります!!』

「と、言うもんでねぇ」

今朝の出来事を坦々と語る姿を
伊代はそわそわしながら見つめた

⏰:10/01/28 14:09 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#86 []
 
「まさか壱助さん‥
止めなかったのかい?!」

つい大きくなってしまった声に
他の客も反応する

「止めましたよ、もちろん
"男を知らないくせに
良く言えたもんだ‥。
雇ってもらえませんぜ"、と」

「そんな言い方しちゃあ、
余計維持になるじゃないかぁ!」

他の客の視線も気にならないほど
慌てふためく伊代

⏰:10/01/28 14:14 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#87 []
 
手にした団子をじっと眺め
変わらぬ口調で壱助は続ける

『だ‥大丈夫ですっ!!
あたし、経験あぁ‥あります!』

「と、分かりやすい嘘まで付いて
維持を張るもんですから‥
"這っても黒豆、ですね"、と」

楽しそうな顔の壱助とは対照に
呆れたような顔の伊代

⏰:10/01/28 14:19 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#88 []
 
『く‥黒豆?!
一体何なんですか?
人を所有物、猫呼ばわりして
‥仕舞いには黒豆?
いい加減にしてくださいよ!!
あたしそんなに色黒くないし
背丈だって人並みです!!』

「‥と、色をなしてしまいまして」

"参った、参った"と微笑し
頭を軽く叩く壱助

⏰:10/01/28 14:24 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#89 []
 
伊代は深くため息を付いて
"全く‥"と頭を抱えた

「そんな言葉、
若い子が分かる訳ないだろう?
その子の反応は妥当だよ、全く」

「そうですか、ね」

無関心そうに団子を口に入れ
満足そうな顔をする

⏰:10/01/28 14:27 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#90 []
 
「ちょいと壱助さん!!
そんな純粋な子、
からかうのは程々にしなよぉ?
ましてや、維持っ張りの子を‥」

眉間に軽くしわを寄せた伊代を
横目でちらりと見つめる

「本当に‥"這っても黒豆"
素直に止めればいいものを、
維持を張って‥ねぇ

‥仕様がない"猫"です、ね」

⏰:10/01/28 14:32 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


#91 []




――‥花街
そこは遊女屋が集まる町の事。

本来あたしみたいな生女が
足を運ぶような所じゃない。

「いや‥でも‥」

『宿代を‥
払ってあげてると言うのに、』

「引き下がるわけには‥」

『あぁ‥"所有物"には
宿代はかかりませんでした、ね』

「いかない‥!」

⏰:10/01/28 14:38 📱:D905i 🆔:Ad90U/U2


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